飛龍の拳
ひりゅうのけん
概要
社名変更前の『株式会社 日本ゲーム』時代に開発したアーケードゲーム『北派少林 飛龍の拳』を始祖とする格闘アクションゲームシリーズ。
同じく自社開発のカンフーアクションゲーム『チャイニーズヒーロー』を始祖とする『スーパーチャイニーズ』シリーズと共に、カルチャーブレーンを代表する看板作品筆頭に名を連ねる。
構成
操作レバー入力方向とボタンの組み合わせから繰り出される豊富な攻撃方法はテクノスジャパン(1995年倒産)の『空手道』やコナミ(現・コナミホールディングス)の『イー・アル・カンフー』に類似するが、1985年当時の三人称視点格闘アクションゲームで防御と必殺技、さらには投げ技を初めて一元的に搭載した画期的な作品であり、プレイヤーこそ拳法家ではあるが対戦相手はプロレスラー、ボクサー、空手家などが居並ぶ異種格闘技戦という斬新な設定で人気を博した。
当時は筐体基板性能の中でも特にROM容量の制限に頭を悩ませ、同時に新たなゲームジャンルの開拓が求められた時期であり、各社が開発したものは「1つの格闘技に基づくルールで進行する固定画面型アクションゲーム」、例えばプロレスゲームやボクシングゲームが主流を占めていた。格闘技のジャンルを固定することでキャラクターモーションを共通化し、相手を別個の存在として登場させる際もモーションデータを切り替える、頭部データを切り替える、カラーステータスを変更するといった簡素な差別化に留めることでデータ容量の節約に努め、その代わりに目を惹く派手な演出を盛り込んで各社の特色とするためである。
ところが、『北派少林』では相手となる拳法家以外はその格闘技らしい外観と攻撃方法、体格に見合った攻撃力やリーチを備えた別個の独立データを持ち、相手に応じた間合いの取り方や攻防の駆け引きを瞬時に要求される、即ち攻撃一辺倒によるゴリ押しや運に頼ったガチャ押し、相手の確定動作法則に基づくパターンプレイだけでは簡単にクリア出来ない瞬発的戦略性を世に問い、それを成功に導いたのである。これらの点から見れば、カプコンが1987年に開発した『ストリートファイター』よりも先に異種格闘ゲームとしてあるべき基礎をほぼ完成させており、格闘ゲームの歴史において極めて重要な意味を持つ作品と言える。
しかし、ファミリーコンピュータの隆盛を極める時勢に倣ってコンシューマソフト開発事業への方向転換を決定し、骨子となるマークシステムを正式に「心眼システム」と名付け、「ラッシュ」に続く特殊攻撃「急所」「闘気」を追加し、その上で巨悪に立ち向かうストーリー性を加味したアクションRPG『飛龍の拳 奥義の書』をファミコン用自社作品第2号として開発した。この独創的なゲームデザインが好評を博し、以降も様々なプラットフォームでリメイク版を含む27作品(うち開発停止11作品)を展開する一大シリーズに発展した。
飛龍の拳
かつて嵩山少林寺で北派少林拳の修行に励んでいた寿安が、夢の中で見た龍の舞い飛ぶ姿に着想を得て編み出した剛勇無双の拳だが、ある日を境に行方を眩ませた寿安と共に少林寺から失伝した。
その後、深山幽谷の龍飛峰に隠遁した寿安が拾い育てた龍飛に技術のみ断片的に伝授されたものの、寿安が謎の組織『龍の牙』に暗殺された際に飛龍の拳の全容を記した秘伝書6巻のうち『心眼の書』を除く5巻を奪われてしまった。
この拳の真骨頂は、高速回転蹴りを維持したまま飛翔、滞空し、そのまま相手めがけて急降下する一撃必殺の脚技にある。しかし、小学生を中心とする当時の購買層は「拳=パンチ」と単純に解釈する者が多く、「拳と言いながらキックを出しているではないか」という揚げ足取りが横行した。
主要人物
龍戦士
「赤き凶星来たる時、我必ずや復活せん」の予言を残して封印された大魔神が後の世に復活する凶事を阻止するべく、天界を守護する龍天大聖が地上へ派遣した5人の聖戦士。
長い時の流れを経て四散した各自の子孫に龍戦士の自覚は無いものの、少林寺唐仙房で天界の秘奥義を守る羅漢を通じて龍飛が、残る4人も秘宝『ヴィジャヤの剣』の力で覚醒した。
- 龍飛(りゅうひ)
寿安が命を賭けて遺した秘伝書『心眼の書』を元涯の下で皆伝し、奪われた秘伝書5巻を取り戻して仇敵フーズ・フーを敗り、第1回異種格闘技世界大会王者となった後も龍飛峰に戻って黙々と修行に励む拳法家。
古今東西の武芸を学び、世界の強豪に挑む中で独自の戦闘術を模索する武道家。龍飛とは面識があり、第1回異種格闘技世界大会A予選第1試合で拳を交えている。
武術の師である両親を殺害した龍の牙を探し求める拳法界の超新星。龍飛とは面識があり、第1回異種格闘技世界大会A予選第2試合で拳を交えている。
- ワイラー
特殊部隊『ホワイトテンプル』に所属するCIA南米担当局員。連絡が途絶したRPG社の生物兵器研究所を調査する第一次派遣隊に参加し、命からがら落ち延びた唯一の生存者。
- 昇龍(しょうりゅう)
龍天大聖と大魔神の戦いを記した秘録に従い、龍の牙を600年間追い続けてきた秘密結社『征魔団』の若き総帥。人の身にあって人ならざる桁外れの神通力を持つ。
龍の牙
天界の追放者や暗黒界のならず者で構成されており、「牙闘士」(きばとうし)と呼ばれる戦闘員が組織の大多数を占める。
- フーズ・フー
フドウの実弟であり、大魔神復活のために人間界に潜伏して龍の牙を指揮する龍魔王。
牙龍獣士や魔界衆を使って龍飛の抹殺を企んだが悉く失敗し、自身も大望成就を果たせぬまま消滅した。
- フドウ
フーズ・フーの実兄であり、魔界衆や月光衆を凌駕する力を持つ五大明王を傘下に置く「魔将明王」を名乗る龍魔王。
大魔神の力を得て天界、人間界、暗黒界を統べる宇宙の覇者となる野望を抱くが、天界の神宝『日輪剣』を顕現して龍天大聖の力を宿した合体龍戦士の前に敗れた。
魔獣軍(まじゅうぐん)
寿安を殺めて奪った秘伝書『脚』『拳』『躍』『剛』『跳』を持つ5名の上級牙闘士。
フーズ・フーの命を受けて第1回異種格闘技世界大会に参加し、格闘家を装ったジャングル・ターガン(ムエタイ)、こくうんさい(拳法)、ライオンキッド(マーシャルアーツ)、むげんしろう(空手)、デーモンカブキ(プロレス)の姿で、試合中の事故に見せかけた龍飛の抹殺に臨む。
魔界衆四天王(まかいしゅう してんのう)
暗黒界魔界衆を束ねる持国天王ダリタラー、広目天王ビルークシャ、多聞天王バイシュラ、増長天王ビラダーカの4名から成る集団。
フーズ・フーの軍師を務めるバイシュラは龍の牙の息がかかったRPG社の生物兵器研究所で邪神ナーガの製造研究を進め、残る3名は龍戦士の抹殺を目論む。
その他
- 寿安(じゅあん)
龍飛の育ての親であり、武術の師。
自ら編み出した拳の奥義を6巻の秘伝書に纏め、突如として苦楽を共にした元涯にすら告げないまま少林寺を離れて龍飛峰に隠遁した武僧。後に、龍の牙が放った刺客によって暗殺され、この時に奪われた秘伝書5巻が龍飛とフーズ・フーの因縁の発端を作った物語のキーパーソン。
- 元涯(げんがい)
少林寺を統括する貫主であり、若き日の寿安と共に切磋琢磨して遂に「少林寺の至宝」とまで謳われた達人。
寿安亡き後に少林寺を訪ねた龍飛を快く迎え入れ、北派少林拳の奥義に加えて『心眼の書』に記された「心眼の教え」を伝授した。
- 龍天大聖(りゅうてんたいせい)
遥か昔に天界を襲った大魔神を曼荼羅に封印した最強の聖戦士。
封印の際に大魔神が遺した予言に不吉の兆しを感じ取り、何者かの手によって簡単に封印を解かれないように曼荼羅の要点を4つの宝珠、5枚の鏡、5枚の翼に分割して人間界の各地に隠し、それらの監視に当たる、ひいては大魔王復活を阻止するために5人の聖戦士を地上へ派遣した。
なお、龍戦士の合体法力で現れる黄金の戦士も龍天大聖を名乗るが、それが本人を召喚したものであるかは不明。
- 大魔神(だいまじん)
天界を守護する龍天大聖に封印された暗黒界の宗主。
龍の牙の存在理由が大魔神復活のただ一点にあると言っても等しく、あらゆる暗黒法力を操る恐るべき力を持つ三面六臂の巨魔。封印される前に遺した予言の通り、赤い凶星が現れた際に一度は復活したが龍戦士たちの活躍で再び曼荼羅に封印され、別の方法で一切の封縛を退ける完全復活を企んだフドウによって復活目前に漕ぎ着けた時も日輪剣を手にした龍戦士の奮闘で千載一遇の好機を失った。
関連イラスト
「おのれ龍飛、このスザクの顔に永劫消えぬ傷を刻み付けた屈辱…必ず晴らしてくれる!!」
「スキあり!!お前は、もうすでに死んでいる!!」
「…ぐぶ…ほが!!てなワケないだろ!!」