概要
CV:石田彰
生年月日:2000年9月13日(15歳)
データ上の生年月日はセカンドインパクトと同日、全経歴抹消済み。
一人称は「僕」。常に柔和な微笑をたたえ、音楽を好み、ミステリアスで哲学的な発言が多い。
正体は旧約聖書でいう”自由意思を司る天使”にあたる使徒「タブリス」である。
自在にエヴァとのシンクロ率を操り、搭乗せずとも操縦することが可能。
ATフィールドを自在に展開し、空中を浮遊して移動する、目線だけでロックを解除するといった様々な特殊能力を持っている。
TV版では第17使徒、貞本漫画版では第12使徒。新劇場版:Qでは第1の使徒だったが、フォースインパクト発生時に13番目の使徒へ落とされる。
TVシリーズ版・貞本義行による漫画版・新劇場版で、それぞれ設定は異なるが、仲間を失い傷ついた碇シンジの前に現れ、彼と友情を結ぶも、セントラルドグマでの戦いによって死亡する流れは共通している。
上述の各媒体における設定の違い(及び主に髪型の相違)から、準備稿版のカヲルを「準(準カヲ)」TV版のカヲルを「庵(庵カヲ)」、貞本漫画版を「貞(貞カヲ)」、新劇場版を「新(新カヲ)」、中でも3作目『Q』の彼を指して「Q(Qカヲ)」等とファンが呼び分けることがある。
主なメディアミックス
TVシリーズ・旧劇場版
TV版の登場は第24話「最後のシ者」のみだが、OPは1話から一瞬のみだが登場している。
初期構想では、もっと早い段階から登場する予定だったらしい。
「欠点を全てクリアした、完璧な碇シンジ」というプロットに基づくキャラクターとなっている。
交響曲第九番の鼻歌を歌いながら現れシンジと出会い、交流を深めていく。
精神を病んだアスカに代わり、フィフスチルドレンとしてEVA弐号機に搭乗する。
その正体はゼーレの派遣した「最後のシ者」、第17使徒タブリスであった。
シンジと友情を結ぶも束の間、カヲルは本来の役目を果たすべく、セントラルドグマの白い巨人・アダムとの接触を試みる。しかしそこにいるのがリリスだと悟ると、「君達には未来が必要だ」とシンジに告げ、シンジの手によって死ぬことを選ぶ。
劇場版「Air」ではカヲルをダミープラグのベースとしたEVA量産機が登場。
続く「まごころを、君に」にてシンジの目には巨大化した綾波レイと一体となって映った。
貞本漫画版
貞本義行自身は元々「子供っぽいキャラクター」としてデザインした経緯があった為、「基本的に人間の感情がよく分からない、好奇心旺盛、好戦的で男の子っぽい性格」といった、貞本が抱いた元来のイメージの影響が顕著に出ている。
初登場は7巻。本格的な登場期間は9〜11巻で、9巻の冒頭でシンジと出会う。
シンジとの関係性や過程は全く異なるが、最終的にはTV版と同じ結末を辿る。
第12使徒・タブリスとしてシンジと対峙した際に、シンジの手にかかって死ぬ道を選び死亡。
旧劇場版と異なり、補完が行われる段階では特に姿を見せず、シンジとの接触もなかった(シンジの回想では登場している)。
Cut2014年12月号のインタビューで貞本氏は
「カヲルはシンジのことを一番わかってくれている存在なんですよね。わかっているが故に、僕のことを本当に好きだったら殺して欲しいと、矛盾に満ちた踏み絵を突きつけるっていうね」「現実的にシンジが“人を好きになる”ことと向き合うエピソードで、カヲルを存在させたっていうことです」とコメントしている。
新劇場版
『序』の段階から登場するが、本格的に動きを見せるのは『Q』からとなる。
『序』と『破』それぞれのラストでは、まだ面識が無い筈のシンジに向けて「また3番目とはね。変わらないな君は」「今度こそ君だけは幸せにしてみせるよ」と発言するなど、TV版、旧劇場版に登場したカヲルと同一人物なのではないかと思われる描写がある。
『序』ではカヲルの原画を本編漫画版作者の貞本義行が担当した為、髪形や雰囲気が漫画版に近い。
『破』ではMark.06でカシウスの槍を投げ、疑似シン化形態となってサードインパクトを起こそうとしているEVA初号機を止めようとした。
『Q』では綾波レイに連れられネルフ本部に戻ったシンジの前に現れる。
碇ゲンドウはシンジに「その少年と共にエヴァ13号機に乗れ」とだけ伝える(ちなみに第13号機はダブルエントリーシステム)。
孤立するシンジに声をかけてピアノを共に連弾したり、故障したS-DATを直してあげたり、彼に誘われて一緒に寝転がって星を見たり、脆い階段で手を差し伸べたりと友情を深めていく。
TVシリーズとの大きな差異として、二人で横たわった場面で「僕は君に会うために生まれてきたんだね」と断言している(TV版は「生まれてきたのかもしれない」)。
完成したエヴァ13号機でセントラルドグマに降下した際、リリスとMark.06に刺さっていた槍が、2つともロンギヌスの槍である事を訝しみ、TV版では見られなかった動揺を見せる。
シンジはカヲルやアスカによる制止も虚しく、槍を抜いてしまう。
カヲルは「まさか第1使徒の僕が13番目の使徒に堕とされるとは…始まりと終わりは同じという訳か」という言葉を漏らし、自身がフォースインパクトのトリガーであると認識していた事から、これを食い止めるため自死を決意。
シンジに「そんな顔をしないで。また会えるよ。」と笑顔で告げたのち、首のDSSチョーカーが爆発し死亡。
その命をもって世界の崩壊を阻止した。
特筆事項として『Q』のカヲルは、他メディアと違い、一貫してシンジの味方であり、彼の気持ちを裏切っていない。
また『序』の段階から庵野秀明により新劇場版の設定や役割などについてのレクチャーをキャスト陣で唯一受けているという石田彰は、『Q』収録後のインタビューでカヲルについて
「前のサイクルとは違う筈なのに、何度やってもやはり同じ轍を踏んでしまう。それでも線路のポイントを違うところに切り替えてみたい。大きなものの流れに対して、なんとかあがいてみたいという想いがあって、生き残るべきシンジの身代わりになっていくんでしょうね」
と語っている。
よってカヲルは記憶を保持したまま、幾度も世界をループしていると解釈する事も可能だが、ミスリードを狙っているとも受け取れるため、現代階での設定は一切不明である。
『Q』でもMark.06に乗るかと思われたが、これは『破』と『Q』の間にセントラルドグマで槍に貫かれており、実物を見ても「リリンに自立型に改良されて利用された機体の成れの果て」とあまり興味がなさそうであった。
その他のメディアミックス
『新世紀エヴァンゲリオン2』
条件が揃えば仲間になる。ディラックの海に飲み込まれたEVA4号機を呼び出して参戦。量産機との戦いではレイが戦線離脱するため、EVA参号機の鈴原トウジともども貴重な戦力になる。
個別シーンでは、叶うならば将来の夢はメイクアップアーティストだとシンジに告白している。
『スーパーロボット大戦』シリーズ
『F完結編』
初登場作における役割はTV版とほぼ同じであり、隠しバッドエンドのラスボスとして参号機に搭乗するが空中には攻撃不可能なため弱い。
『新機動戦記ガンダムW』のカトル・ラバーバ・ウィナーの戦死や初号機の暴走などが条件。
『α』『MX』
再起不能になったアスカの代わりに弐号機を操ってセントラルドグマにてシンジ達と対峙するが、敵がカヲル1人しか居ないため実質イベントバトルとなっている。
『第3次α』
エヴァ最終シナリオで登場。
初号機のコピーと量産機を用いて多元次元補完計画を進めるゲンドウに立ち向かうシンジ達に助力。レイの代わりにEVA零号機を借りて1話ゲストで使える(合体攻撃は使用不可)。
ラスボス戦では今まで死亡したキャラが主人公達を激励するイベントがあるが、カヲルもシンジを激励してくれる。
また『MX』の出来事を知っている節がありその劇中のセリフからの推測でファンの間では
「第3次αのカヲルは死と再生の輪廻によって滅びたMXの世界のカヲル本人」
ではないかと言われている。
『L』
新劇場版からの参戦だが、原作再現が『序』と『破』前半までで終了したため実質イベントキャラ。
『第3次スーパーロボット大戦Z 』
『時獄篇』ではイベントキャラとして登場。
基本的に物腰柔らかく穏やかな性格だが「吐き気を催す邪悪」や「親友の友人が死ぬことになった原因」に対しては不快感や憤りを見せる等珍しい所も見せている(逆に言えばあのカヲルがその感情を見せる程の気持ち)と言える。
『天獄篇』では第3話にて顔見せした後、EVA13号機にサブパイロットとして搭乗する。
本作でようやく正式に自軍部隊に参戦し音声も新規収録されている。
ちなみに、『破』仕様の顔グラがプラグスーツを着たものに変わっている。
『スーパーロボット大戦V』
条件を満たすと参戦。
出番もあるし生存するのだがスタッフが扱いに困っているマリより扱いが悪いという悲惨な状況となっている。
その他
エヴァ関連の各種スピンオフゲームや漫画には殆ど登場しているが、TVアニメ版を意識したキャラ付けとなっていることが多い。
人気と影響
甘い声とルックス、シンジとの擬似同性愛的描写などによって、特に女性からの人気が非常に高い。
TVシリーズでの実質的な登場は第24話のみながら、キャラクターグッズ、フィギュアなどの商品展開も1990年代から活発で、栗山千明や沢尻エリカが「理想の男性」として名を挙げるなど有名人のファンも多い。
どの媒体においても、極端に露出は少ないながらも人気は常に安定しており、
2008年10月25日にはファンブック「ALL ABOUT 渚カヲル A CHILD OF THE EVANGELION」が発売。
2015年4月10日(シトの日)には写真集「KAWORU 2015 -渚カヲル写真集-」が発売。
2016年にはJR西日本の「エヴァ新幹線」(500系)で車内放送を担当。
またパチンコやパチスロでは、画面に登場した瞬間に確変大当たりやビッグボーナスが確定したり、設定6が確定したりする鉄板(プレミアム)キャラとなっているため、ギャンブラーからの支持も厚い。
カヲル系
カヲルの登場により、その後の日本のアニメーション界は「カヲル系」「カヲルみたいなキャラ」という、新たなキャラクター類型が定着することになったとサンキュータツオは分析している。また「カヲルのようなキャラ」の多くを、その後実際に石田彰が演じている。
秋瀬或や北城睦実のように、カヲルをイメージして造形されたキャラクターも多い。
エピソード・逸話
名前
姓は偏と旁を分けると「シ者」、すなわち使者(→使徒)であり死者。
名前は「オワリ」を五十音順で1字後にずらしたものから「カヲル」。
姓と合わせると「シ者オワリ」→「渚カヲル」となる言葉遊びとなっている。
モデル
TV放送当時庵野秀明と親交があった幾原邦彦がモデルと言われているが、容姿なのか性格なのか、あるいは庵野との関係性においてなのか、詳細は不明。
幻の24話
TVシリーズ24話の脚本を担当した薩川昭夫による初期稿が、1996年発行「別冊JUNE」6月号に掲載されており、「幻の24話」として現在も読むことができる。
没となった初期稿(第1稿、第2稿)では、カヲルが転校生として女生徒から人気を博し「カヲル様」と呼ばれる・ピアノを弾く・紺色の水兵服を着ている・自傷癖(手首に幾筋もの傷)がある・夕焼けの中でシンジと裸で泳ぐ、等の描写が登場する。
またト書きには「ぞっとするような美貌の持ち主」といった容姿についての描写がある。
量産機
EVA量産機はカヲルのダミープラグで稼働するため、旧劇場版公開時に発売された量産機のフィギュアは雑誌で「カヲル君の魂、入ってます!」などのコピーが付けられ女性ファンの購買欲を煽るものになっていた。
なお量産機の声はEVA初号機の声を林原めぐみが担当しているのと同じ理屈から石田彰が担当している。
外部リンク
niconico動画 【公式】新世紀エヴァンゲリオン-幻の24話 第1稿
文章 新世紀エヴァンゲリオン 第弐拾四話「最後のシ者」(第弐稿)
関連イラスト
関連タグ
作品
新世紀エヴァンゲリオン ヱヴァンゲリヲン新劇場版 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q
別表記
セリフ
機体
EVA弐号機 EVA量産機 EVA4号機 エヴァンゲリオンMark.6 エヴァンゲリオン第13号機
グループタグ
カヲルトリオ カヲシン シンカヲ カヲアス/LAK カヲレイ/LRK
その他関連タグ