この記事ではザラブ星人の化けた元祖にせウルトラマンについて述べる(ザラブ星人に関しては当該項目を参照)。
それ以外の偽物のウルトラヒーローはニセウルトラマンの記事を参考。
データ
身長: | 40メートル |
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体重: | 2万5千トン |
出身地: | ザラブ星(東京ビル街とも) |
概要
『ウルトラマン』第18話「遊星から来た兄弟」に登場。
ハヤタ隊員を捕らえたザラブ星人が、ウルトラマンの評判を落とすために化けた姿。
赤黒く光るつり上がった目、尖った耳、鋭い顎、身体に走る黒いライン、カールしたつま先が本物との違い(ただし当時のBタイプウルトラマンもつま先がカールしている)。
一目で分かる偽物だが、誰も気が付かなかった事で有名。ムラマツキャップも偽物の可能性に言及することなく、「例えウルトラマンでも、この地球上で暴力を振るう者とは戦わなければならん」と語っている。この件の考察は後述の項を参照。
あくまで姿をコピーしただけなので、スペシウム光線等の能力は使えない。(しかしにせメビウスに化けた個体はメビュームシュートを放つことができるため、光線技のコピーの可不可については個人差によるものかもしれない)
街を破壊し、ホシノ少年を宙吊りにして窮地に陥れたが、本物のウルトラマンが現れたことで格闘戦に突入、飛んで逃走しようとした隙にスペシウム光線をモロに喰らって悶絶し、正体が露見した。
看破論
にせウルトラマンを語る際に切っても切れない話題が「どうして劇中の登場人物は『偽物』だと見破る事が出来ないのか」という指摘である。
本物のウルトラマンが登場するまで正体がバレなかった理由について、「夜に出現したため昼間よりも全体像が把握できなかったから」という説や、「地上にいる人間の視点からでは差異の大きい顔の判別が難しかったから」との説が挙げられている。
実際、後の作品において、昼間に出現したニセウルトラマンメビウスはすぐに偽物だとバレている(正体を見破ったサコミズが、にせメビウスを観察しやすい状況だったこともあるだろう)。
また、巨影都市をプレイすると、如何に人間視点での判別に苦労するかが分かる。
これはまさしく「視聴者の観点だからこそ、彼を即座に偽物と判断できる」とも言える。
視聴者は、ウルトラマンの戦いを毎回安全な立場から見て、正しい外見を把握しているのに対し、作中のモブの一般人は怪獣の被害から避難するため、自分に手一杯の者が多いはずである。更に、怪獣は毎回同じ土地に現れる訳ではないため、ウルトラマンを実際に見た回数はそれほど多くない可能性もある(さらにウルトラマン自身には制限時間が存在する)。緊急時で観察する余裕も暇もない一般人が、ウルトラマンの正確な外見がわからなくて気付かないこと自体はあながち不自然ではない。こうした点は柳田理科雄氏も著書「空想科学読本」にて言及している。
それに加えて、毎回最大3分しか登場しないため、映像記録や鮮明な写真等もろくに残っていないだろう点にも留意してほしい。この回が本放送された当時はスマホどころか携帯という概念すらなく、テレビカメラも現在と比較して機動力が良いとは言えず、運良く(当時主流だったフィルム式の)カメラを携行していたとしても先に述べた「自分に手一杯」という状況から、誰もが気軽に記録を残せる状態ではないからだ。
むしろ「身長と大まかな体型、それに色使い」と何万光年も離れた異星人の主要な特徴に関してはほぼ正確に把握しているザラブ星人の情報収集能力を褒めるべきだろう。
それに比べれば「目つきが悪く爪先がカールしている」程度の違いは許容範囲かもしれない。
他に挙げられる理由があるとすれば、「そもそもウルトラマンは本物でさえ不明な点が多いから偽物だと気づけなかった」ことだろう。
突然宇宙から飛来し、なぜか人類を守ってくれている、地球人側から見たらありがたい存在だが、一方で人類を守る理由も含め、謎が多すぎる得体の知れない存在でもある。そんな謎だらけの存在であるウルトラマンが、偽物とすり替わったとしても、上記と違って顔が良く見える状況であっても突然ウルトラマン本人の顔が変貌したかのようにしか見えなかったかもしれない。しかもウルトラマンが偽物とすり替わったこと自体前例がなくこの時が初であったため、後にメビウスとすり替わった個体をサコミズが、(おそらくあらかじめに把握していたため)「本物よりも目つきが悪い」という特徴から即座に見抜ける可能性は低かったのかもしれない。
(メタな話、ウルトラマン本人も劇中でAタイプ、Bタイプ、Cタイプと顔が変わっている。この表情変化については小説『ウルトラマンF』でも言及された)
或いは「(本物どうこうの前に)普段目撃しているウルトラマンとは別のウルトラマンとして認識されていた」という可能性もあるだろう。
そもそも、当時の初代ウルトラマン自体が人類の前に初めて姿を見せたウルトラマンであった以上「本物か否か、本人か別人か」の判断が出来る材料が十分に無かったわけで、つまりは正誤判定が出来る状況ではなかった。
そんな状況下で、(にせウルトラマンの出現例が過去に無いと仮定して)仮に差異を認識できていたとしても、「なんかちょっと変わった?」という程度の印象を持つか、もしくは「別のウルトラマンが来たのかな?」と考えるのが自然といえば自然である。
ぶっちゃけた話、完全に本物そっくりの偽者が登場した場合、視聴者どころか製作スタッフまで混乱する事態になるため、見分けがつくように本物とは多少の差異を出す必要があった。
本放送時には、次回予告(音声のみ現存)の時点で、ザラブ星人がウルトラマンに化けることが明かされていた。
着ぐるみは本物のAタイプスーツを改造したもので、マスクのみ新たに製作された(本物は本編第14話からBタイプに変更されている)。スーツは撮影後ゾフィー隊長に改造された。
たのしい幼稚園 1971年3月号に掲載された漫画「ウルトラマン」ザラブせいじんのまき(作画:福元一義)では、まっかなにせものウルトラマンとして本物とは赤白逆に着色されたにせウルトラマンが描かれた。
以降の作品
こちらはZAPクルーの目の前で変身したことや、怪獣オタクのオキがいたためすぐに正体がばれてしまい(ヒュウガは指摘される前に一瞬だけ引っ掛かっていたが)、レイのゴモラと対決するも敗北。
登場や構えのポーズを間違える、ゴモラにチョップして痛がる、スペシウム光線の構えを取ってゴモラを怯えさせるも結局放つことができない、真剣白刃取りに失敗してゴモラの尻尾が頭に直撃する、仕舞いには捕らわれて姿を借りられたハルナから「もっと上手く化けろ!」と突っ込まれながら彼女が乗る小型宇宙船「ドラゴンスピーダー」から撃たれるなど、コミカルな描写が目立った。それ以前に原典にはなかった青野武氏による掛け声も爆笑もの。
ちなみにアーケードゲーム版ではやたら高性能になっており、フェイクではあるがウルトラ水流やスペシウム光線が使える(しかしながら、にせウルトラマンが光線を放つのはこれが初めてではなく、テレビマガジンで連載されていた『ウルトラ戦士列伝』にて突き出した両腕から光線を放っている)。
- 『ウルトラ銀河伝説』
ザラブ星人がウルトラマンベリアルが捕えられている宇宙牢獄に侵入する際にこの姿を取った。看守のウルトラ戦士たちは最初こそ初代ウルトラマン本人かと思って敬礼したが、ギガバトルナイザーを持っていた事を不審がり偽者だと気付く。しかしそのギガバトルナイザーの力を前に強行突破を許してしまった。
星間連合の一員として登場したザラブ星人が化けたにせゾフィーは、最初こそ本物そっくり(よく見たら目元が濃く、悪者っぽい)だったが、エースとタロウに追い詰められ逆上するとこのにせウルトラマンのように目のつり上がった姿になった。意外と集中力の要る技なのかも知れない。
- 『ウルトラ忍法帖』
第9話に登場した。眼の周りに模様があり、忍び装束が朧党の物になっている。アントラーを攻撃するウルトラセブンの前に現れるが、その正体は本物のマン(悪そうな目もメイクによる物)。正月に冗談で500円しかお年玉をくれなかった将軍に腹を立てて朧党に寝返った。闘いを拒むセブンを刀や手裏剣、放屁連発で痛めつけるが、流石にブチ切れたセブンのワイドショット、アイスラッガー乱れ切り、カプセル怪獣トリプル攻撃、エメリウム光線連射で逆に自分がやられてしまう。首領からはお年玉を4袋貰っていたが、中身が首領のプロマイドだったために首領も八つ裂き光輪乱れ撃ちで倒す。その後反省した将軍とも仲直りするが、将軍がお年玉を落としてしまい「これが本当のお年玉」とふざけたために将軍もボコボコにする。
のちにナイス率いる「ウル忍2軍」のメンバーとして本物の(?)にせウルトラマンが登場。親切を信条とする好人物だが忍者としての強さはからっきし。
いずれも朧党の忍獣挫羅武(ざらぶ)とは無関係である。
本物のマンを冷蔵庫に閉じ込めてウルトラマンキングの300万歳の誕生パーティーに出席し、キングに媚びを売って遺産相続人の座を狙う。結局本物が会場に現れたことで目論見は阻止され、洗礼光線によりザラブ星人の正体がバレた後はあっさり去っていったが、遺産を巡るゴタゴタでウルトラ戦士たちの仲は険悪なものとなってしまった。
この作品では一貫して「にせウルトラマン」としか呼ばれていない。
ザラブ星人がレギュラーとして登場するものの変身能力を使う事は滅多になく、にせウルトラマンの登場は2回のみ。1回はブラックキングへの仕返しにザラブが変身しあらん限りの光線を浴びせると脅して戦意を喪失した隙に叩きのめすが、本物が人助けでいつまでもお使いから帰らなかったため母から折檻を受ける羽目になる。
2回目はヨイトマカ星に迷い込み怪獣退治に意気込む科特隊から罠の位置を聞き出した。
- 『ULTRAMAN』
メフィラス星人・メフィスト大使の命令で、ウルトラマンスーツ姿の進次郎に擬態、エイダシク星人の化けたver7(諸星)、名称不明の星人が擬態したプロトスーツ(ハヤタ)と共に暴れる。礼儀をわきまえない態度だったとはいえ無抵抗の一般の男性を殴り飛ばして殺害、あまつさえ街の女性を人質にとったりと、本家さながらの卑劣さを見せつける。
『ウルトラマンSTORY0』での個体の最初のあたりと同様、本物そっくりの姿に擬態しているが、交戦した北斗や獅子兄弟たち、そしてTVでそれを見ていた遠藤刑事からは最初から見抜かれた。
一方、「なぜ当たり前に守ってもらえると思った?」と、守ってもらう立場にただ甘んじているだけの地球人の痛いところを突くなど、偽物ながら尤もらしいことを地球人たちに指摘している。
- 『大怪獣バトル』
「よくここまで頑張ってくれた。もうそのバトルナイザーは私が預かろう。」
「大丈夫だ!その件は諸々大丈夫になったので大丈夫だ!さ、このウルトラマンに渡しなさい。」
正体不明のエネルギー体を追って惑星ハマーにワープした主人公らの前に現れ、主人公達のネオバトルナイザーを預ける様要求。
しかしカネゴンが「いくらウルトラマンでもいっぱいお金くれなきゃ渡さない!」とズレた駄々をこね始めてしまう。
最初は寛大な態度で接していたが、とうとう痺れを切らし
「つべこべ言わずに…渡せっつってんだよォーーッ!!」
とキレてしまう。
カネゴンもすっかり怯えて泣き出してしまい、主人公達にも敗北。
ザラブとしての正体がバレ、自身のバトルナイザーが覚醒に至らない為主人公達のバトルナイザーを奪おうとした事実が露呈してしまう。
- ゲーム『巨影都市』
突如都市部に出現し、ウルトラマンと交戦する。何気ににせウルトラマンの状態で指先からエネルギーバルカンを発射している。
ザラブ星人をモチーフにした外星人第2号ザラブが登場する。予告編でその存在が明らかになり、燃える基地をバックにゆっくり振り向くウルトラマンが一瞬映ったことからにせウルトラマンも出番があるのか心配しているor出番を予想するファンもいたが、その期待通りしっかり出ていた。しかも、擬態性能がこれまでの作品に登場した個体以上に向上しているのか、胸の黒いラインや鋭く反り返ったつま先などの特徴も無く、目つきがやや六角形に角張っている以外は本物そっくりに擬態することが可能となっている。
また、戦闘シーンにおいては、チョップの一件(後述)までもがしっかりと再現されている。
『シン・ウルトラファイト』では目つきの鋭さ以外にも、敢えて昭和TVの画質を再現した影響からなのか、体のラインがオレンジがかっている。
原典のように形状の差異ではなく、体表のラインを変えるものなどが検討されたが、目の形状のみを変えることとなり、成田亨のイラストにあった六角形の眼のウルトラマンをイメージソースとしている。体表ラインは同作品のウルトラマンと同様の赤いものが採用された
余談
『ウルトラマン』本編での格闘中に、本物がにせウルトラマンの頭にチョップを叩き込んだ直後に痛そうに左腕を振り払っている描写が存在するが、これは演技ではなく素で痛がっている。
ウルトラマンを演じた古谷敏氏曰く、「思いっきりチョップをしたところ、それがたまたま頭部に直撃してしまい、あまりの激痛に思わず上述のリアクションをとってしまった」とのこと。
ちなみに当時だと画質が悪くて見えづらかったのだが、Blu-rayなどのリマスターで鮮明になったため、この時古谷氏のチョップがにせウルトラマンの左目に直撃し、破片まで飛び散っているのが見えやすくなっている。にせウルトラマンの目がガラスのドームで造形されていたのであれば、それをチョップで叩き割る痛みは想像に難くない。
上述した通り、『シン・ウルトラマン』でもこの名(迷?)場面が再現されているのだが、なんと飛び散る破れた破片までもが忠実に再現されている。
なお、ウルトラマンの打撃を受けると一瞬擬態が解けザラブの姿が露わになっている。
人相の悪い偽物ヒーローキャラの草分け的存在であり、ウルトラシリーズに限らず後の作品の偽物キャラに与えた影響は大きく、ちょくちょくネタにされがちなキャラだが、カルチャー的にも何気に重要な存在とも考えられる。
関連タグ
にせウルトラマンの系譜
ウルトラマンジード - 似てはいるがこちらは正義の戦士である。ただし、誕生の経緯はどちらかといえばにせウルトラマン寄りだったりする。