始まりも、超過激
解説
2021年12月22日全米公開、24日日本公開。当初は2019年公開予定だったが、COVID-19の影響で延期された。
『キングスマン』『キングスマン:ゴールデン・サークル』の前日譚。前2作の100年前を舞台に、独立スパイ組織「キングスマン」の誕生秘話を描く。
キングスマンの設立者は誰なのか、なぜ仕立て屋(テーラー)を装っているのか、なぜメンバーは円卓の騎士に準えたコードネームを持つのかなどと言った謎が明かされる。
過去2作と異なり、第一次世界大戦という史実を扱っており、要所で起こった歴史的な事件の裏でキングスマンとその敵が織りなす戦いがあったということになっている。
主演は『ハリー・ポッター』シリーズのヴォルデモート役で有名なレイフ・ファインズ。
監督は過去2作に引き続きマシュー・ヴォーン。
ストーリー
舞台は、第一次世界大戦が迫る1914年のイングランド。
英国の名門貴族オーランド・オックスフォード公は、妻のエミリーを亡くして以来、従軍を強く希望する息子のコンラッドを諌めながら、彼を立派な後継者として育てていた。
そんな中、オックスフォード親子は英国の陸軍元帥キッチナーの依頼を受け、オーストリア=ハンガリー帝国の皇位継承者フランツ・フェルディナント大公夫妻を護衛を担当する。しかし、セルビアのテロリストガヴリロ・プリンツィプの凶弾により夫妻は死亡、この「サラエボ事件」が引き金となり、遂に世界大戦が勃発する。
オックスフォード公はこれを受け、使用人たちの世界的ネットワークから国家に縛られない独自の諜報網を構築。それにより、プリンツィプの背後に潜む組織の存在に気づく。彼は、謎の人物“羊飼い”が率いる「闇の狂団」から放たれた刺客だったのだ。さらに、狂団の一員であるロシアの怪僧ラスプーチンが、ロシア皇帝のニコライ2世を意のまま操っていることを知り、オックスフォード親子は「闇の狂団」の野望を阻止し、世界大戦を終結させるため行動を開始する。
登場人物
☆…実在人物
オックスフォード家
- オーランド・オックスフォード
演:レイフ・ファインズ 吹き替え:小澤征悦
英国の名門貴族で、爵位は公爵。妻のエミリーを失った悲しみと従軍時代の悲惨さから平和主義を貫き、息子のコンラッドを大切に育て、従軍への希望に強く反対している。使用人たちの世界的ネットワークから独自に構築した諜報網を駆使し、「闇の狂団」との戦いに挑む。高い剣術の使い手で、仕込み杖を愛用している。
- コンラッド・オックスフォード
演:ハリス・ディキンソン 吹き替え:梶裕貴
オックスフォード公の息子。英国への愛国心と強い正義感から、第一次世界大戦への従軍を強く希望しており、父と度々衝突する。幼少期より「円卓の騎士」の影響を受けており、彼らなら戦争を終わらせられると信じていた。
- ポリー・ワトキンズ
演:ジェマ・アータートン 吹き替え:園崎未恵
オックスフォード家に仕える女執事にして、コンラッドの世話係。主人への強い発言力を持つ。狙撃のプロで、ナイフでの近術戦を「時代遅れ」としている。
- ショーラ
演:ジャイモン・フンスー 吹き替え:乃村健次
オックスフォード家に仕える執事。元アフリカの兵士で、マチェットを駆使した近術戦を得意とする戦闘のプロ。高所恐怖症。
オックスフォード家の関係者
- ハーバート・キッチナー☆
演:チャールズ・ダンス 吹き替え:仲野裕
英国陸軍元帥。今作ではオックスフォード公の盟友という設定。ロシアへ向かうために装甲巡洋艦ハンプシャーに乗船したが、“羊飼い”が発射した魚雷攻撃により死亡。
ちなみに史実では、ドイツ軍が仕掛けた機雷に触れて沈没している。
- マクシミリアン・モートン
演:マシュー・グドー 吹き替え:中村章吾
英国陸軍副官で、階級は大尉→少佐。キッチナーの側近で彼からの信頼も厚い。キッチナーとハンプシャーに同船しており、魚雷により死亡したと思われるが...?
なお、本名は初期制作段階のプロモーションでのみ使用され、作中での呼称はない。また、ファミリーネームよりロキシー・モートンとの関係が示唆されるが、詳細は不明。
- アーチー・リード
演:アーロン・テイラー=ジョンソン 吹き替え:櫻井孝宏
英国陸軍ブラックウォッチ連隊に所属する下級伍長。コンラッドと知り合い、帰国命令が出された彼の依頼で成り代わることになるが...。
- フェリックス・ユスポフ☆
演:アーロン・ヴォドヴォス 吹き替え:シュウペイ(ぺこぱ)
ロシア宮殿にいるコンラッドの従兄弟。ラスプーチンを警戒するようコンラッドに手紙を送るが、これがきっかけでキッチナーとモートンはロシアへ向かうこととなる。
なお、史実ではラスプーチンの暗殺を実行した人物である。
世界大戦の主要人物
以下の3名は、ヴィクトリア女王の孫にして従兄弟同士である点から、トム・ホランダーが1人3役を演じている。吹き替えは上田燿司。
- ジョージ5世☆
イギリス王(キング)。オックスフォード公やキッチナーと親交がある。思慮深く平和思いの性格で、サラエボ事件を受け従兄弟たちに戦争を起こさないよう手紙を送るが、結局世界大戦勃発は止められなかった。
- ヴィルヘルム2世☆
ドイツ皇帝(カイザー)。幼少期より自分勝手の性格で、ジョージ5世からの手紙も「戦争にルールはない」と突っぱね、イギリスとロシア双方に戦争を仕掛ける。左半身に障害を持つ。
- ニコライ2世☆
ロシア皇帝(ツァー)。ヴィルヘルム2世を嫌っており、ジョージ5世からの手紙を無視してロシアに戦争を仕掛ける。しかし、ラスプーチンの儀式を目の当たりにして依頼、彼に心酔し戦争の実権を握らせる。
- ウィッドロウ・ウィルソン☆
演:イアン・ケリー
アメリカ合衆国大統領。ドイツ軍の陰謀を受け戦争への参戦を求められるが、マタ・ハリのハニートラップにかかり、それを撮影したフィルムをネタに参戦しないよう脅迫される。
- アメリカ合衆国大使
演:スタンリー・トゥッチ 吹き替え:井上和彦
駐英の米国大使で、本名不明。大統領がマタの脅迫を受けていることを受け、彼女との仲介役となる。
モデルは恐らく、ウィルソン大統領に任命された特命全権大使ウォルター・ハインズ・ペイジ。
闇の狂団
謎の人物“羊飼い”が率いる秘密結社。世界に混乱をもたらすため、イギリス、ドイツ、ロシアを反目させ、世界大戦を引き起こす。リフトでしか行けない断崖絶壁の岩山の頂上にアジトを構えている。構成員は実在の人物が元になっており、自決用の青酸カリが仕込まれた動物の絵柄入りの指輪をはめている。
- “羊飼い”
正体不明の黒幕。スコットランド人で、かつてイギリスの君主制による祖国への抑圧で全てを奪われた過去を持ち、イギリス王と貴族に激しい憎悪を抱いている。戦争の暁には、ロシアを大戦から引き離し、ドイツ軍の総戦力をもってイギリスを壊滅させることを目論む。相当な癇癪持ち。ちなみに「羊」飼いと呼ばれているが、アジトで飼っているのはカマリロ・ヤギである。
- グリゴリー・ラスプーチン☆
演:リス・エヴァンス 吹き替え:山路和弘
怪僧。ニコライ2世に取り入り、宗教とアヘンによる奇妙な儀式で信頼を得て、戦争の実権を握る。青酸カリを毎朝少量摂取し耐性を作る、謎の言語で相手を催眠状態にする、剣で刺されても致命傷にならないなど、人智を超えた能力を持つ。戦闘能力も作中随一で、ロシアンダンスによる華麗かつ軽快な格闘術を繰り出す。好物は甘いもの。“羊飼い”から皮肉られるほどの相当な絶倫。
- マタ・ハリ☆
演:ヴァレリー・ハフナー 吹き替え:森なな子
女スパイにして高級娼婦。ウッドロウ・ウィルソンへハニートラップ仕掛け、それをネタに戦争に参戦しないよう脅迫する。
- ガヴリロ・プリンツィプ☆
演:ジョエル・バズマン 吹き替え:松陰寺太勇(ぺこぱ)
セルビアのテロリスト。羊飼いの命でフランツ・フィルディナント大公夫妻を暗殺する。
- エリック・ヤン・ハヌッセン☆
演:ダニエル・ブリュール 吹き替え:内田夕夜
ドイツの偽預言者。ヴィルヘルム2世の顧問となり、戦争を仕掛けるよう煽る。
- ウラジーミル・レーニン☆
演:アウグスト・ディール 吹き替え:佐久間元輝
ロシアの革命家。後のソビエト連邦の初代指導者。
- アルフレッド・ル・デュポン
演:トッド・ボイス 吹き替え:豊田茂
アメリカの実業家。
モデルは恐らく、化学メーカー「デュポン」の会長。世界大戦では火薬や爆弾を供給して莫大な利益を得、「死の商人」と呼ばれたという。
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以下、ネタバレ注意!!!
ラスプーチンとの戦い
オックスフォード公、コンラッド、ポリー、ショーラの4名は、グレゴリー・ラスプーチンを暗殺するため、ロシア宮殿に潜入。激闘の末、ポリーの銃撃を受けたラスプーチンは死亡。これに激昂した“羊飼い”は、ロシアを戦争から引き離すために、ロシアの革命家であるウラジーミル・レーニンを送りこむ。結果、ロシア革命が発生しニコライ一家は皇帝の全権を破棄、ロシアは戦争から撤退する。
コンラッドの死
ラスプーチン暗殺後、コンラッドはオックスフォード公の反対を振り切り、英国軍へ入隊。過酷な訓練の末、中尉にまで昇格するが、アメリカ参戦が濃厚になったことを受け上官に帰国命令を出される。しかし、コンラッドはブラックウォッチ連隊所属のアーチー・リードと入れ替わることで、最前線への従軍に成功する。前線で勇敢に活躍するコンラッドだが、アーチーと入れ替わったことで彼を知る英国軍上官から、ドイツ軍のスパイと誤解され射殺されてしまう。
「闇の狂団」との決戦
最愛の息子の訃報を受け、オックスフォード公は悲しみに暮れ酒浸りの日々を送っていたが、ポリーの説得を受け立ち直る。諜報網を駆使した結果、アメリカ合衆国大使から、ウッドロウ・ウィルソン大統領がマタ・ハリのハニートラップによる淫行フィルムをネタに戦争へ参戦しないよう脅迫を受けていることを知る。オックスフォード公はアメリカ大使館を訪れた際にマタを退けたが、その時彼女がプリンツィプの首に巻かれたのと同じカシミアを身につけていたことで、その産地から「闇の狂団」の本拠地を暴く。
“羊飼い”の正体と戦争終結
フィルムを手に入れるため、オックスフォード公、ポリー、ショーラの3名は、断崖絶壁のアジトへ乗り込む。オックスフォード公たちは黒幕の“羊飼い”と対峙するが、その正体はなんとモートンだった。祖国スコットランドを支配する憎きイギリスの壊滅を目論むモートンは、「キッチナーの側近」という隠れ蓑に世界各地に刺客を送り込むことで、世界大戦を勃発させたのだった(ハンプシャー沈没の際も密かに下船し、自ら魚雷を発射しキッチナーを殺害した)。オックスフォード公との激戦の末、モートンは断崖絶壁から転落死する。フィルムを取り戻したことで大統領は参戦を決意、遂に第一次世界大戦は終結する。
独立スパイ機関「キングスマン」の設立
オックスフォード公は息子を失った経験から「後世の若者を戦争などで悲惨な目に遭わせたくない」という意志と「資力のある組織により平和を維持し人命を守る」ことを目的に、ロンドン・サヴィル・ロウ11番地にある仕立て屋「キングスマン」を本拠地とした、国家権力から独立したスパイ機関の設立を宣言。こうして、オックスフォード公=“アーサー”、ポリー=“ガラハッド”、アーチー=“ランスロット”、アメリカ合衆国大使=“ベディヴィア”、ジョージ5世=“パーシヴァル”、そしてショーラ=“マーリン”の6名を創立メンバーに、独立スパイ組織「キングスマン・エージェンシー」が誕生するのだった。
終わらない戦い
しかし、生き残りである偽預言者ハヌッセンは新たな“羊飼い”となり、「闇の狂団」の活動を継続。革命家レーニンによる「左」に対抗する「右」の存在として、とある若者をメンバーとして連れてくる。その若者はこう名乗った。
「アドルフ・ヒトラー」と
そう、キングスマンの戦いはまだ終わらないのだ...。