概要
天才刀鍛冶四季崎記紀が生涯で作った1000本の「変体刀」。それらはいずれも凄まじい力を持ち、一本あるだけで戦況を左右してきたという。
その中でも特に完成度が高く、極めて特殊な機能を持っている十二本の刀が「完成形変体刀」と呼ばれる。
ただし刀と名称されているが、明らかに一般的な日本刀ではない物も含まれており(四季崎記紀曰く「日本で作った刀だから日本刀」らしい)、そもそも鎧、人形、石斧、果ては拳銃など刀ですらないものもある。
その性能やその形状はさながら芸術とも評され、一本で国が一つ買えるほどの価値を持つ。
完成形変体刀全てに、それぞれの特性を活かした「限定奥義」が存在する。
ただしその真価を発揮できるのは「刀に選ばれた者」のみであり、ただ刀を与えられただけの者には駆使する事が出来ない。
鑢七花ととがめが『銃』以外の十一本の刀を集めた後、家鳴将軍家御側人十一人衆の手に渡るが最終話で七花に全ての刀を破壊される(原作では賊刀・『鎧』のみ、本体に損傷は無いが、そもそも中からしか開けられない仕組みであったので、装着者死亡につき着脱不能=使用不能という形になっている。もっともアニメ版では完膚なきまで破壊されていたが……)
下を見ればわかるが、名称にはだいたい「金偏」が付いている。
刀一覧
- 絶刀・鉋(ゼットウ・カンナ)
「世界の何よりも固き、折れず曲がらぬ絶対の刀」
頑丈さに主眼を置いた直刀。
どんな扱い方をしようと永久に折れも曲がりも、刃こぼれ一つもせず永遠に切れ味を保ち続ける。
真庭蝙蝠曰く、「永久機関のような刀」、「象が踏んでも壊れない日本刀」。
これでも十二本の中では比較的普通の「刀」。
鞘のない片刃の直刀で斬るよりも突く方に向いている。
柄には梅の花模様があしらわれ、傘の柄のような鉤状の柄頭を持つ。
限定奥義は「報復絶刀」
絶刀の特性を活かした特攻技。上空から叩き斬る技と突き技の二種類が存在する。
- 斬刀・鈍(ザントウ・ナマクラ)
「ありとあらゆる存在を一刀両断にできる、鋭利な刀」
切れ味に主眼を置いた刀。
特殊な刀身によって物質の分子結合を破壊し、文字通りあらゆる物質を一刀両断することができる。
見た目自体は七花曰く「なんか普通」(映像媒体では真っすぐな刃紋にギザギザの折れ線が走るという少々異様な刀身を持つ)。
ちなみに「絶対に折れない刀」である『鉋』とぶつかり合った場合は、四季崎曰く「後に作られた方が完成度が高いから『鉋』の方が砕ける」とのこと。
また、性能に反して『鈍』という名前は四季崎なりの皮肉らしい。
限定奥義は「斬刀狩り」
刀を血で濡らすことで刀と鞘の摩擦係数を減らし、居合い斬りの速度を上昇させる技。
宇練金閣の編み出した居合術「零閃(ぜろせん)」と組み合わせる事で居合い斬りの連撃を繰り出せるようになる。
まさに「斬れば斬るほど速くなる」限定奥義。
本来は自分以外の血を用いて発動する奥義で、宇練金閣の一万人斬りはこの奥義によって成し遂げられたもの。
本編に登場した宇練銀閣は自分の血を用いて発動させた。
- 千刀・鎩(セントウ・ツルギ)
「いくらでも替えが利く、恐るべき消耗品としての刀」
数の多さに主眼を置いた刀。
「千本で一本」と称されていて、全く同じ形状で全く同じ性能の刀が千本存在する。
その実態は一本のオリジナルさえ残っていれば無限に生産が可能というもの。
刀としては十二本の中で一番「普通の名刀」。
限定奥義は「地形効果・千刀巡り」
あらかじめ千刀をあらゆる場所に仕掛け、自分に有利な陣地を作る奥義。
作った陣地に敵を誘い込む必要があり、当然その陣地から抜け出されると効果が無くなってしまう。
敦賀迷彩が学んでいた「千刀流」は自身の持つ物だけでなく、相手の持つ刀や戦場に落ちている刀など自身の周囲にある刀全てを利用する剣術であり、千刀・『鎩』の限定奥義とのシナジー効果が高かった。
- 薄刀・針(ハクトウ・ハリ)
「羽毛のように軽く、硝子細工のように脆い、美しき刀」
薄さと軽さに重点を置いた刀。
後ろが透けて見えるほどに薄く、羽毛のように軽く、非常に脆く、そしてそれゆえに儚く美しい。
変体刀の中で極めて扱いが難しく、剣筋をずらさずに完全な軌跡を描いて斬りつけなければそれだけで砕けてしまう。
その上、当たった時に相手が体の筋をずらすだけでも簡単に壊れてしまう。
その為扱う上ではほぼデメリットの塊だが、逆に言うとこれを破壊せずに扱えている時点で常軌を逸した技量を持つ実力者なのだということを示す(事実、アニメ版の次回予告で所有者の錆白兵はこれで鮫やら大地やらをスパスパ切り裂いていた)。
限定奥義は「薄刀開眼」
薄刀の特性を最大限に活かした必殺技。
いろいろ訳あって詳細は不明だが、本編で錆白兵と戦った七花は「脆いだけの刀にあんな利点があるとは思わなかった」と語っている。
- 賊刀・鎧(ゾクトウ・ヨロイ)
「守りに重きを置いた、巨大な防御力を有する、甲冑を模した刀」
防御力に重点を置いた刀。
文字通りの鎧で、部品の継ぎ目に刃が仕込まれていて、「日本刀を鍛えるようにして作られた鎧」とも呼ばれる。
見た目は西洋甲冑に近く、またとても(七花よりも)大きく、着用者にも相応の体格と質量が求められる。
一度着用すれば内側からしか開けることができず、所有者が鎧を着たまま死亡すれば永久に使用不能と化してしまう。
構造上、あらゆる衝撃を受け流すことができ、受け流された衝撃は脚部を経由し、地面に向かう。
この特性によって、足が地面についている間はあらゆる衝撃(鎧通しも含め)に対して無敵となる。
ただし、空中に浮かんでいる状態での鎧通し(=相手の防御を貫通する技)や、持ち上げて地面に叩きつけるなどの直接攻撃は有効。
また、上記の理由で本編では使用されなかったが、金属鎧である関係上、熱による攻撃も有効。
その他、中身は人間なので、水攻めも有効である。
限定奥義は「刀賊鴎」
鎧の防御力を武器として、全体重を乗せて相手を叩き潰す突進技。
他にも多数の突進技があるが、威力としてはこの技が最強である。
- 双刀・鎚(ソウトウ・カナヅチ)
「すさまじい質量のかたまりであり、持ち上げることさえ満足に敵わない刀」
重さに重点を置いた刀。
その重さは怪力無双の七花にも持ち上げられなかった程で、それゆえにその一振り一振りが凄まじい威力を誇る。
特性上、凍空一族にしか扱えない(主に狩りに使っていたらしい)が、運ぶだけならば「真庭忍法・足軽」の使い手がいれば行える。
「双刀」と呼ばれる通り、上下左右すら曖昧な石の刀で、それゆえにどの方向からでも攻撃できる。
限定奥義は「双刀之犬」
双刀の圧倒的な質量と上述した上下左右が曖昧な形状を活かしての物理攻撃。
- 悪刀・鐚(アクトウ・ビタ)
「所有者の死さえ許さず、無理矢理に人を生かし続ける凶悪な刀」
活性力に重点を置いた刀。
常に電気を帯びた苦無に似た小刀で、所有者の心臓に直接突き刺すことで人体を活性化させ、疲労も苦痛も死の恐怖すらも感じない屈強な肉体を持つ不死身の戦士として半永久的かつ強制的に動かし続ける。
限定奥義は「悪刀七味」
上述した方法で活性化した肉体の状態を指す。
鑢七実唯一の弱点である体力・持久力のなさを帳消しにする効果の為、七実との相性は非常に良かった。
- 微刀・釵(ビトウ・カンザシ)
「武器でありながら人である、恋する殺人人形とも言える刀」
「人間らしさ」に主眼をおいた刀。
全身に刃が仕込まれた自動人形で、所有者の日和号そのもの。
詳しくは日和号の項目参照。
限定奥義は「微風刀風」
ヘリコプターのように足を回転させることで空中に飛び、そこから強襲する技。
- 王刀・鋸(オウトウ・ノコギリ)
「人を正し、心を正す、精神的王道を歩ます、教導的な解毒の刀」
「毒気のなさ」に主眼を置いた刀。
「人を殺す刀」ではなく「人を生かす刀」として造られた刀。
見た目としては一切の穢れのない普通の木刀(敢えて特徴を挙げるのなら、新品にも使い込んだ物にも見える不思議な雰囲気だろうか)。
武器としても普通の木刀と変わりないが、毒気のなさを通り越して所有者の毒気まで抜いてしまうという特性を持つ。
限定奥義は「王刀楽土」
王刀によって毒気が抜け、精神的王道を進んでいる状態を指す。
分かり易く言えば、使用者から悪意や攻撃性、狂暴性を取り除き、清く正しい真人間に変えるということである。
さながら「活人剣」を極めるための限定奥義といえる。
所有者の汽口慚愧はこの特性によって、純粋で周囲が引くほどの超真面目な真人間へと成長した。
- 誠刀・銓(セイトウ・ハカリ)
「人間の姿勢を天秤にかけるように、人によって受け取り方さえ違う曖昧な刀」
「誠実さ」に主眼を置いた刀。
刀身の無い鞘と柄だけの刀で、人を斬るのではなく己を斬る刀。
すなわちその持ち方や意思の強さによって、持ち主の価値を「測る」刀である。
所有者の彼我木輪廻がこれを四季崎から直々に受け取り、「面倒だから」という理由でこれを地中深くに埋めたところ、そこに城が建ってしまったという逸話がある。
また、被我木は戦国時代にこの誠刀の特性を使っていくつもの争いを静めてきたといわれている。
限定奥義は「誠刀防衛」
自分の全ての能力を防御と回避に割り振る。
正確には誠刀を扱わなくても使える技で、誠刀自体は特性上、武器としては役に立たない為、所有者の彼我木輪廻が「相手の力量を見極める」誠刀の特性に準えて名付けただけの技である。
- 毒刀・鍍(ドクトウ・メッキ)
「所有すると人が斬りたくなる、刀の毒がもっとも強く内包された刀」
「毒気の強さ」に主眼を置いた刀。
「持つと人を斬りたくなる」という変体刀の「刀の毒」を最も深く刻み込んだ黒く禍々しい刀。
周囲の草花も枯らし、振るうだけで大地も吹き飛ぶほどの禍々しい瘴気を纏う。
持ち主はそのおぞましい毒気によって殺人衝動にとらわれ理性を失い殺人鬼と化すが、物体の情報を読み取る能力を持った真庭鳳凰がそれを持った時は、それに加えて四季崎の残留思念らしきものにとりつかれ、四季崎の人格そのものとして毒刀を使いこなしている。
映像媒体では「羽虫のような茨のような模様をあしらった歪んだ拵が付いた黒い刀」として描かれる。
限定奥義は「猛毒刀与」
上述した毒気が毒刀の使用者に付与されて狂暴化した状態で、正確には技でもなんでもない。
常人が扱うと理性を失い発狂するだけである。
- 炎刀・銃(エントウ・ジュウ)
所有者・左右田右衛門左衛門。
「遠距離からの連続精密攻撃を可能にした、飛び道具としての刀」
「連射性と速射性と精密性」に主眼を置いた刀。
六発装填のリボルバー式拳銃と九発装填のオートマチック拳銃の二丁拳銃からなる「刀」。
結局のところ刀に求められる「殺傷力」を極めた結果、刀の形を失ってしまった刀。
元々銃弾の補充を必要としないのかそれとも、瞬時もしくは自動的に装填しているのかは不明だが、弾切れを起こすことなく連射が可能。
アニメ版では近接戦闘用の機能も確認できる。
限定奥義は「断罪炎刀」
左右田右衛門左衛門の必殺技「不忍法不生不殺」と炎刀を組み合わせて放つ大技。
この技本来の名称である「相生忍法生殺し」でもなく「不忍法不生不殺」でもなく、かつての友である真庭鳳凰が借用していた際の名称である「忍法断罪円」を捩った名称にしている。
アニメ版では、炎刀の火力を使った高速近接連続攻撃として描写された。
その他
- 透刀・『鉄』(トウトウ・テツ)
物語シリーズとのコラボ作品に登場した変体刀の一つで、作中では否定姫が所持している。
「透過」に主眼を置いた刀。
その名の通りあらゆる物体を通過する特性を持ち、壁や鎧等の障害をすり抜けて狙った対象だけを斬ることができる。
羽川翼はこれを「所謂レーザー技術を応用したもの」と推測している。
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その正体
※ネタバレを含みますので注意
1000本の変体刀は全て、四季崎記紀がその予知能力で垣間見た未来のテクノロジー(科学、医学、心理学など)を現代技術で再現したものであり、オカルト的な物ではない。
最終的な目的は完成形変体刀を超える「完了形変体刀」の作成であり、その集大成が「刀を持たず、人の肉体を一本の刀にする血刀(血統)」、虚刀『鑢』(キョトウ・ヤスリ)。すなわち虚刀流そのもの。
そしてその過程で生まれた失敗作が、「この世のすべてを刀として扱う」全刀流こと全刀『錆』(ゼントウ・サビ)である。
前述の通り完成形変体刀十二本は最終巻にて虚刀として完成した七花にすべて破壊され、その他の四季崎記紀の刀も塩水につけられ錆びて使い物にならなくなり事実上、四季崎記紀はこの世からなくなった。