プロ野球パ・リーグにおける、リーグ優勝をかけた決戦を表す日付「10月2日」。
福岡ソフトバンクホークス(以下、ソフトバンク)とオリックス・バファローズ(以下、オリックス)の2チームによる、優勝決定を占うレギュラーシーズンのうちの1日となった。
2014年10月2日「ソフトバンクとオリックスの直接対決」
後半戦に入ってからはソフトバンクが驚異的な強さを見せ、首位を奪い返して8月に怒涛の9連勝でオリックスを突き放していた。しかし、徐々に選手の疲れが見え始めたのか8月後半から両チームともに失速。パ・リーグの優勝争いは壮絶な譲り合い状態になった。
9月25日、残り試合数の関係で2位のオリックスにリーグ優勝へのマジックナンバー(以下、マジック)「7」が点灯するという珍事が起きた。一方で1位のソフトバンクにマジックが点灯することはなく、9月30日の試合が終了した時点で両者の勝率はわずか1厘差。この状態のまま10月2日に両チームの最後の直接対決を迎えることになった。
10月2日はソフトバンクのレギュラーシーズン最終戦(福岡ヤフオク!ドーム)。ソフトバンクがリーグ優勝するには勝つしかない状況となり、引き分けか敗北であれば残り試合がまだ存在したオリックスに優勝の可能性が大きく見えてくる状況になっていた。
ソフトバンクの先発投手は大隣憲司、オリックスの先発投手はブランドン・ディクソン。
ソフトバンクは2回裏、細川亨の犠牲フライでソフトバンクが1点を先制。オリックスは7回表、大隣から代わった森唯斗よりツーアウト二塁から代打・原拓也が同点タイムリーヒットを放ち、その裏から馬原孝浩・佐藤達也・平野佳寿の継投で9回裏まで乗り切り、1-1から延長戦に突入した。
10回表、前の回から続投しており制球の乱れてきたデニス・サファテからツーアウト満塁の絶好機を作り、ウィリー・モー・ペーニャが打席に。その初球、高く打ち上げた打球はドームの天井に跳ね返ってファールゾーン内で遊撃手・今宮健太のミットへ収まり、グラウンドルールによってアウトとなった。森脇浩司監督はソフトバンクでのコーチ経験もあったためか抗議姿勢は示さず。
10回裏、登板したアレッサンドロ・マエストリはワンアウト満塁のピンチを背負い、打者に選手会長・松田宣浩を迎えたところで比嘉幹貴に交代した。松田は4球目に投じられた外角低めの球を左中間に打ち返し、タイムリーヒットで2-1となりソフトバンクがサヨナラ勝利。同時に3年ぶり16回目(1リーグ時代も含めると18回目)のリーグ優勝が決まった。
その後、オリックスは日本ハムとのクライマックスシリーズファーストステージ(京セラドーム大阪)に臨んだが、1勝2敗0分で敗退となり、ソフトバンクとのポストシーズンでの再戦は実現しなかった。
2022年10月2日「ソフトバンクとオリックスの優勝決定争い」
俄然有利な立場にあったのは、首位で既にマジックを点灯させていたソフトバンク。残り2試合となった9月30日の試合終了時点でマジックは「1」となっており、2年ぶり20回目(1リーグ時代も含めると22回目)のリーグ優勝に王手をかけていた。
9月30日試合終了時点でのパ・リーグの順位表
順位 | 球団 | 試合 | 勝利 | 敗北 | 引分 | 勝率 | ゲーム差 | 残り試合 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1位 | ソフトバンク | 141 | 76 | 63 | 2 | .547 | M1 | 2 |
2位 | オリックス | 142 | 75 | 65 | 2 | .536 | 1.5 | 1 |
3位 | 西武 | 141 | 71 | 67 | 3 | .514 | 3.0 | 2 |
4位 | 楽天 | 142 | 69 | 70 | 3 | .496 | 2.5 | 1 |
5位 | ロッテ | 142 | 68 | 73 | 1 | .482 | 2.0 | 1 |
6位 | 日本ハム | 142 | 58 | 81 | 3 | .417 | 9.0 | 1 |
ソフトバンクは残り2試合のうち、1試合でも勝つか引き分ければその時点で優勝。仮に2連敗してもマジック対象チームであるオリックスが最終戦で引き分け以下なら優勝という状況で、10月1日の対西武戦を迎える。
西武対ソフトバンク25回戦(ベルーナドーム)
球団/回 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 得点 | 安打 | 失策 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ソフトバンク | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 7 | 0 | |
西武 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2X | 3 | 6 | 0 |
勝利投手:本田圭佑(西武、45試合4勝2敗0S)
敗戦投手:藤井皓哉(ソフトバンク、55試合5勝1敗3S)
セーブ:なし
本塁打:柳田悠岐23号ソロ(ソフトバンク、9回表に西武の増田逹至から)、山川穂高41号2ラン(西武、11回裏にソフトバンクの藤井皓哉から)
試合が動いたのは4回裏。一死から西武が千賀を攻めて源田壮亮、森友哉の連打と山川穂高の四球で一死満塁のチャンスを作ると、続く栗山巧が適時打を放ち、1点を先制する。その後は互いにゼロ行進のまま9回表に突入し、西武はクローザーの増田達至が満を持して登板。このまま西武が逃げ切り勝利すると思われたところで、柳田悠岐が一死走者なしから起死回生のソロ本塁打を放ち、同点に追いついた。試合は延長戦に突入し、11回裏にソフトバンクは中継ぎとしてシーズンを通して好投していた藤井皓哉を登板させるが、一死から森に右前打で出塁されると、続く山川に2ラン本塁打を打たれ、痛恨のサヨナラ負けを喫する。試合終了後の挨拶で、山川にサヨナラ本塁打を許したソフトバンクのバッテリー(投手の藤井と捕手の海野隆司)は悔し涙を流していた。
この日はオリックスの試合が無かったため、ソフトバンクのマジックは「1」のまま変わらず。パ・リーグの優勝争いはレギュラーシーズン最終日となる10月2日に持ち越しとなった。
10月1日試合終了時点でのパ・リーグの順位表
順位 | 球団 | 試合 | 勝利 | 敗北 | 引分 | 勝率 | ゲーム差 | 残り試合 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1位 | ソフトバンク | 142 | 76 | 64 | 2 | .543 | M1 | 1 |
2位 | オリックス | 142 | 75 | 65 | 2 | .536 | 1.0 | 1 |
3位 | 西武 | 142 | 72 | 67 | 3 | .518 | 2.5 | 1 |
4位 | 楽天 | 142 | 69 | 70 | 3 | .496 | 3.0 | 1 |
5位 | ロッテ | 142 | 68 | 73 | 1 | .482 | 2.0 | 1 |
6位 | 日本ハム | 142 | 58 | 81 | 3 | .417 | 9.0 | 1 |
ソフトバンクとオリックスの最終戦での試合結果次第で、最終成績は以下のようになる。
ソフトバンク
- 勝利の場合:77勝64敗2分(勝率.546)
- 引き分けの場合:76勝64敗3分(勝率.543)
- 敗北の場合:76勝65敗2分(勝率.539)
オリックス
- 勝利の場合:76勝65敗2分(勝率.539)
- 引き分けの場合:75勝65敗3分(勝率.536)
- 敗北の場合:75勝66敗2分(勝率.532)
最終戦で「オリックスが楽天に勝利」かつ「ソフトバンクがロッテに敗北」の条件を満たした場合に限り、ソフトバンクとオリックスの勝敗と引き分けの数および勝率が完全一致で並んだ状態で全日程が終了し、後述のリーグ規定に基づきオリックスの優勝となる。
それ以外のパターンでは、いずれもオリックスが勝率でソフトバンクを上回ることができないため、ソフトバンクの優勝となる。
楽天対オリックス25回戦(楽天生命パーク宮城)
球団/回 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 得点 | 安打 | 失策 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
オリックス | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 2 | 5 | 9 | 0 | |||
楽天 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 7 | 0 |
勝利投手:宇田川優希(オリックス、19試合2勝1敗0S)
敗戦投手:田中将大(楽天、25試合9勝12敗0S)
セーブ:阿部翔太(オリックス、44試合1勝0敗3S)
本塁打:なし
4回裏、楽天は先頭打者の島内宏明のヒット、辰己涼介の内野安打、炭谷銀仁朗の四球で無死満塁のチャンスを作り、田嶋をマウンドから引きずり下ろすと、代わって登板した比嘉幹貴からクリス・ギッテンスが適時2塁打を放ち2点を先制する。それでもオリックスは比嘉から代わって登板した宇田川優希が茂木栄五郎をファーストライナーに打ち取る。田中和基が四球を選び一死満塁としたものの、小深田大翔をショートフライ、渡邊佳明をピッチャーゴロで切り抜ける。
すると5回表、オリックスは先頭打者の頓宮裕真、紅林弘太郎が連続ヒットを放つ。来田涼斗の代打・山足達也が田中将大の暴投で走者が進塁した後に四球を選び、今度はオリックスが無死満塁のチャンスを作る。ここで伏見寅威・福田周平が連続適時打を放ち、3点を奪って逆転に成功した。さらに9回表には1死後、紅林の内野安打、杉本裕太郎の2塁打で一死二・三塁とし、伏見がこの日2本目となる適時打を放ち2点を追加。リードを3点に広げた。
宇田川は5回裏にも回跨ぎで続投し、二死一・三塁のピンチを迎えるが、ギッテンスをセカンドフライに打ち取り、追加点を許さず。その後は3投手(6回裏・7回裏を山崎颯一郎、8回裏をジェイコブ・ワゲスパック、9回裏を阿部翔太)による継投で無失点に抑えて逃げ切り、オリックスが勝利した。
ロッテ対ソフトバンク25回戦(ZOZOマリンスタジアム)
球団/回 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 得点 | 安打 | 失策 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ソフトバンク | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 3 | 8 | 1 | |||
ロッテ | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 2 | 0 | X | 5 | 8 | 1 |
勝利投手:岩下大輝(ロッテ、14試合1勝0敗0S)
敗戦投手:泉圭輔(ソフトバンク、30試合0勝2敗0S)
セーブ:ロベルト・オスナ(ロッテ、29試合4勝1敗10S)
本塁打:三森大貴9号ソロ(ソフトバンク、1回表にロッテの小島和哉から)、柳田悠岐24号ソロ(ソフトバンク、4回表にロッテの小島和哉から)、山口航輝16号3ラン(ロッテ、6回裏にソフトバンクの泉圭輔から)
ソフトバンクは1回表、三森大貴が先頭打者本塁打を放ち先制すると、4回表には柳田のソロ本塁打でリードを2点に広げる。板東は当初の予定通り5回まで無失点で抑え、2点のリードを後続へ託す事に。
しかし、代わって6回裏に登板した泉圭輔が一死から安田尚憲の2塁打、井上晴哉への四球で一・二塁のピンチを迎えると、山口航輝に3ラン本塁打を打たれて逆転を許す。泉は悔しさのあまり降板後に号泣した。
さらにソフトバンクは7回裏から甲斐野央が登板するが、先頭打者の松川虎生に8球粘られて四球、髙部瑛斗の送りバントを挟んで藤原恭大にも四球を与えて一死一・二塁のピンチを招くと、中村奨吾に適時2塁打を打たれて1失点。この間に藤原が三塁をオーバーランする走塁ミスでタッチアウトとなり、二死二塁となったところでソフトバンクは投手を甲斐野から嘉弥真新也に交代するが、次打者の安田にも適時2塁打を打たれてさらに1失点し、点差を3点に広げられてしまう。
それでもソフトバンクは8回表、二死から牧原大成が茶谷健太のエラーで出塁すると、この回の先頭から登板した小野郁から柳田が適時2塁打を放ち1点を返す。ソフトバンクはなおもアルフレド・デスパイネの空振り三振(暴投による振り逃げ)、デスパイネの代走・野村勇の盗塁、中村晃の四球で二死満塁と一打同点のチャンスを作ったが、ジュリスベル・グラシアルがショートゴロに倒れて無得点。9回表にはロベルト・オスナの前に三者凡退に抑えられて敗戦となった。
全日程(143試合)終了時のパ・リーグ順位表
順位 | 球団 | 試合 | 勝利 | 敗北 | 引分 | 勝率 | ゲーム差 | 残り試合 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1位 | オリックス | 143 | 76 | 65 | 2 | .539 | 優勝 | 0 |
2位 | ソフトバンク | 143 | 76 | 65 | 2 | .539 | 0.0 | 0 |
3位 | 西武 | 143 | 72 | 68 | 3 | .514 | 3.5 | 0 |
4位 | 楽天 | 143 | 69 | 71 | 3 | .493 | 3.0 | 0 |
5位 | ロッテ | 143 | 69 | 73 | 1 | .486 | 1.0 | 0 |
6位 | 日本ハム | 143 | 59 | 81 | 3 | .421 | 9.0 | 0 |
最終戦でオリックスが楽天に勝ち、なおかつソフトバンクがロッテに敗れたため、オリックスとソフトバンクの最終成績が76勝65敗2分(勝率.539)と引き分けも含めて全く同じ成績で並んだ。
パ・リーグの規定では、レギュラーシーズン全試合を通しての勝率(2022年:143試合)の順位を決定するが、全日程終了時に複数の球団が全く同じ勝率で並んだ場合、以下の(1)〜(3)に基づいて順位を決定する。
(1)同勝率の当該球団間の対戦時の勝率が高い順番
(2)パ・リーグ参加球団(2022年:6球団・125試合)の対戦成績における勝率が高い順番
(3)前年度の順位が高い順番
今回のケースでは(1)が決め手となる。すなわち、オリックスとソフトバンクの直接対決(25試合)での成績である。この年はオリックスが15勝10敗0分とソフトバンクに対して勝ち越していたため、オリックスが逆転で優勝となった。なお、(2)はセ・パ交流戦(セ・リーグの球団との対戦)を除外したパ・リーグの球団相手のみの対戦成績のことである。
……この結果、オリックスは「2014年のリベンジ」「8年前の忘れ物の取り返し」に成功。一方ソフトバンクは「レギュラーシーズン最終日に首位陥落」「マジック『1』からのV逸」という、滅多にないケースで逸男を味わう羽目に。ソフトバンクのチームメイトやファン達は試合終了後お通夜状態になっていた。
- オリックスはこの前年(2021年)に25年ぶり13回目のリーグ優勝を果たしており、この年も優勝したことで2年連続14回目のリーグ優勝となったが、2年連続でマジックが一度も点灯せずにリーグ連覇を達成するのは史上初となる出来事だった。
- そもそも2022年は優勝したオリックスがレギュラーシーズン中に首位に立っていた期間が3月25日(開幕戦の対西武戦(ベルーナドーム)で勝利)、9月10日(対ソフトバンク戦(京セラドーム大阪)に勝利して単独首位に浮上も翌日敗れて首位陥落)、10月2日(前述の最終戦)とわずか「3日」しかなかった。このため、2008年・読売ジャイアンツと2019年・埼玉西武ライオンズの「11日」を大幅に更新して史上最短を記録している。
- この日の試合で敗れた楽天は負け越しフィニッシュが確定。勝てば5割フィニッシュだった。なお楽天は5月10日地点で最大18あった貯金がなくなり最終的には借金2の4位フィニッシュとなった。最大貯金18からのV逸どころかCS逸、負け越しフィニッシュは史上初。このため楽天のチームメイトやファン達もお通夜状態になっていた。
- なお、2022年にはMLBのナショナルリーグ東地区でニューヨーク・メッツがアトランタ・ブレーブスにシーズン最終戦で同率首位(全162試合で101勝61敗0分、勝率.623)で並ばれ、直接対決での成績(ブレーブスがメッツに10勝9敗で勝ち越し)で地区優勝を逃している。
この年のポストシーズンでは、ソフトバンクは西武とのクライマックスシリーズファーストステージを2勝で突破しファイナルステージに進出してオリックス戦に臨んだが、最終的にオリックスが4勝1敗0分(1勝のアドバンテージを含む)で制し、2年連続の日本シリーズ進出を決めた。そして、2年連続で同じ顔合わせとなった東京ヤクルトスワローズとの日本シリーズでは、4勝2敗1分(0勝2敗1分から4連勝)で勝利し、26年ぶり5回目(オリックス・バファローズとしては初)の日本一を達成。
関連項目
- 1988年10.19、1989年10.12
- 福岡ソフトバンクホークス、オリックス・バファローズ
- 10.8決戦:1994年の決戦。ただし、こちらはセ・リーグで、対戦相手は読売ジャイアンツと中日ドラゴンズ。