概要
早瀬マサトによる小説『S.I.C. HEROSAGA』のエピソードの一つ。1999年1月号から2002年1月号まで『月刊ホビージャパン』に連載された、HEROSAGAシリーズの最初の作品。
萬画版『人造人間キカイダー』に登場する3番目のキカイダー「00」を主役とした物語で、基本的に特撮番組『キカイダー01』の後日談として書かれているが設定は萬画版寄りにされている部分が多い。生まれたばかりで記憶が無い00が、新たなる敵バイオロイドを生み出す暗黒結社XASHと闘うというストーリー。
善悪を題材とした作品だけあって登場人物の所属が目まぐるしく移り変わり、SIC特有のスプラッタ・グロテスクな描写も多く、また戦闘シーンが紙面の大多数を占める。
また作中やムック本での説明文などで他の石ノ森ヒーロー作品との関わりが示唆されている。
あらすじ
服従回路を取り付けられ、ハカイダーの傀儡となったビジンダーは、裏切りの果てにキカイダーから良心回路を抉り取り、代わりに服従回路を取り付けた。次にキカイダーが目を覚ましたとき、彼はダークでも、ハカイダー部隊でも、世界大犯罪組織シャドウでもない4番目の悪の組織「XASH」の移動要塞アーマゲドンゴッドの内部に居た…。
時同じ頃、学界から身を引き牧師となっていた光明寺伝の前に、新たな生身の身体を受肉して蘇ったグリーンマンティスが現れる。しかし突如として雷鳴と共に光明寺が見たことも無い人造人間キカイダー00が出現し、グリーンマンティスを虐殺する…。
悪の赤に染まるキカイダー、正義の為に孤独に闘い続ける01、そして己の運命も生まれも知らぬ00。3人の人造人間の運命の糸が交わり、XASHとの戦いの幕が開く。
登場人物
キカイダー三兄弟
本作の主人公。雷鳴と共に教会に現れた謎の人造人間。三人のキカイダーの中で唯一、光明寺博士が一切設計にも制作にも関与していない。
追加武装の電磁ブレード・ファングには時空間を切り裂く力を有するが自身の「心」で制御できず、時を放浪することとなる。
主人公なのに出番が少なく、最後の方はあまりに酷すぎる宿命に叫んでばかりの可哀そうなヒーロー。
最初に作り出されたキカイダーでプロトタイプにしてキカイダーの兄。太陽電池で動く人造人間。特撮版のエピソードの後、機能停止していた際にキカイダーとビジンダーが服従回路を埋め込まれため、ただ一人でXASHと闘っていた。恐怖と悔悟という感情を知ってしまったため強い力への渇望を有し、萬画版準拠の荒っぽい性格になっている。また、本作では特撮版の「完全な良心回路を有する」という設定が取り消されており、良心回路ではなく一種のリミッター機構である「稲妻回路」を搭載している設定となっている。また萬画版同様左腕に仕込まれた機関銃「太陽のかけら」を隠し武器として持っている。
光明寺から強化改造を受け、ブラストエンド用の強化パーツである「01ブースター」を追加された。
2番目に製造されたキカイダー。不完全な良心回路を有する。
服従回路を植え付けられたため体の大部分が赤に染まったブラッドキカイダーとなり、電磁エンド用の増幅パーツである「電磁ジェネレーター」も装備として追加されていて、XASHに迎え入れられ01や00と相対する。光明寺博士の心肺停止、「黒猫」からもたらされたXASHの正体を知り一時休戦し、XASHを離反する。
その後、ブライダーにより完全な状態の良心回路を埋め込まれ全身が青一色かつ(ほぼ)左右対称形のパーフェクトキカイダーとなるが、完全なる「善の心(アシモフコードを完全順守する「機械」になってしまった)」を持ってしまったために脳が人間のハカイダーを倒すことができず、00のハカイダーへの攻撃を庇ってしまい、良心回路が破損し完全性を失った為か元の姿に戻った。
光明寺家
キカイダーを作った科学者。既に引退していたが、XASHにその身を狙われる。
キカイダー01同様設定が萬画版準拠の為、名前も「光明寺伝」になっている。
光明寺一郎
故人。イチロー及びジローのモデルになった光明寺家の長男でミツコやマサル(本作では名前のみ)の異母兄。
環境警備隊の人間だが悪徳企業に殺され、それが父である伝がロボット開発を始める切っ掛けになった。
光明寺家の長女で現在は父の跡を継ぎ科学者となっている。00の装備である「電磁ブレード・ファング」を作っていたが完成直後カーマインスパイダーに父共々捕らえられ人質にされるが修理と強化を求めて探しに来ていた01の助けも有ってカーマインスパイダーは倒されそのまま01の修理と強化パーツである「01ブースター」を親子で製作する。
最終回である秘密が明かされた。
ちなみに既婚者になっている事(しかも既存の作品群と全くの無関係のオリジナルキャラとの結婚)に関して抗議の手紙がHJ社あてに殺到したらしい…。
海野博士
本作オリジナルキャラ。ミツコの夫で、ロボット工学系科学者。自分の力量がどうしても「義父」に及ばず、妻の愛もジローより劣っているのではないかというコンプレックスに苛まれて行方をくらます。
実は本作世界におけるキカイダー00の製作者ではある、あるのだが……。
XASH
冥王ハカイダー
既に倒されたと思いきや復活していた悪魔戦士。基本的な仕様は所謂「ギルハカイダー」準拠であるが脳には光明寺の物でもギルの物でもない第3の脳(しかも二人にかなり関係ある人物)が投入されていて、更に光明寺ハカイダー同様の血液交換タイムリミットが復活している。
ビジンダーを、そしてキカイダーをも手中に収め、XASHの実質的な首領として世界の掌握を目指す。
デザインは映画「人造人間ハカイダー」の雨宮慶太版ハカイダー寄りに改められている。
特撮版『01』で脳が破壊されて死んだかと思われていたが実は密かにハカイダーから取り出しており、巨大な水槽の中で何倍にも膨れ上がった脳として復活。XASHの真の首領であり、アーマゲドンゴッドの頭脳そのもの。脳が肥大化したことにより超能力を得た。
XASHの本部となった巨大な土偶型の移動要塞。かつてのジャイアントデビルの後継機。ギルの超能力で自在に動く。
ブライダー
本作オリジナルキャラ。XASHの参謀たる鎧武者型の怪人。その正体は…。
ハカイダーにより服従回路を埋め込まれXASHの走狗となる。01に迎撃された後、赤いカレンダーと白いスレンダーに分割された。
バイオロイド
嘗てのダークロボットを模した生体兵器。
遺伝子操作で生み出した人工生命体に機械を埋め込んで作り上げる改造生物である。その開発には新人類帝国からの技術提供があったと言うが詳細は不明。
グリーンマンティスやグレイサイボーグ、カーマインスパイダー等が存在する。しかしその中にはかつてハカイダーを葬った白骨ムササビは加えられていない筈だったが……。
バイオロイドとして復活した朱ムカデ、青ワニ、銀エビが改造手術を受けたハカイダーの近習(冥王本人は「影武者なんか卑怯臭いしカッコ悪い」と不機嫌であった)。ハカイダーが窮地に陥った際には彼を守る鎧「ガッタイダー」となり内部で修復を行う。
そのほかのキャラクター
黒い猫
狂言回しとしてたびたび登場する黒猫。その正体は冥王ハカイダーから分離したハカイダーの補助AI(悪魔回路相当パーツ)の化身。
『仮面ライダー』に登場するショッカーの科学者。光明寺博士の友人である。
バイクを駆る髑髏仮面と呼ばれる謎の存在。交通事故で死んだ若者の幽霊とも言われるが、実は改造人間で人間の自由と平和を守るために人知れず戦っていたらしく、異形の怪人と戦っていたなどといくつもの目撃情報が錯綜している。赤い仮面に青いバイクだったり銀の仮面に白いバイクだのディティールも時期ごとに変わっているのだがこれは骸骨仮面が複数いると言う説がある。当時の最新情報では、鏡の中にその姿を見たという。
『仮面ライダー』のおやっさん。光明寺博士と骸骨仮面を調べていた記者が昔訪れたことのあるスナックのマスター。
00が飛ばされた1000年後の未来で、核戦争により全人類が死滅した砂漠だけの地上でただ一人死ぬ方法を模索していた改造人間。かつての相棒の腕を銃として携えている。
00が飛ばされた世界で邂逅した本来の仕様で完成した00。全身に無数の銃火器を装備している。
製作者もおそらく本作の海野博士ではなく「飛ばされた世界の製作者」と思われる。