概要
PCエンジンは日本電気ホームエレクトロニクス(NEC傘下)とハドソン(現コナミHD)が共同開発し1987年10月に発売された家庭用ゲーム機とその派生機。
コンパクトな本体サイズが特徴で任天堂のファミリーコンピュータ(ファミコン)の約半分。
ファミコンやセガマークⅢと同じ8ビットCPUのゲーム機なのにスーパーファミコンやメガドライブと同じ16ビットCPUのゲーム機と勘違いしてしまう程の圧倒的なグラフィックと高性能なサウンドも特徴である。
代表的なソフトはR-TYPE、天外魔境、イース(いずれもハドソンが発売)等。
※R-TYPE(左)天外魔境(中)イース(右) 天外魔境はPCエンジンのオリジナル作品。CD音楽にゲームパッドの接続口が一つのため、同時プレイにはマルチタップなどの分岐装置が別途必要(スーパー桃太郎電鉄などの交代制の場合は無くても可能)。この仕様はなんと最終モデルのPCエンジンDuo RXまで変わらなかった。
あまり知られていないが、PCエンジンはハドソン的には特に任天堂のゲーム機とは競合するよりも共栄・共存の道を視野に入れていたとされている。その為か、PCエンジンがあるのに任天堂のゲーム機にもソフトを出していた。
セーブ機能
パスワード方式とバックアップユニット方式。
他社との比較・傾向
国内販売台数は392万台。
スーパーファミコンが国内シェア独走1位であった頃大きく差を開いて2位のシェアに留まる。
CD-ROM²システムは192万台で、メガCDの普及台数40万台より大きく普及した。
大容量CD-ROMやマルチタップによる最大5人の多人数プレイ作品
参入しなかったカプコンやセガの業務用メジャー作品のライセンス移植作品が多く投入され
※ボンバーマン(左)の1画面対戦プレイとスーパー桃太郎電鉄(右)はPCエンジンで産声を上げた。
ワルキューレの伝説」 「超絶倫人ベラボーマン」 「スプラッターハウス」 「ワンダーモモ」 「ドルアーガの塔」。他「源平討魔伝」 「パックランド」 「ドラゴンスピリット」 「オーダイン」 「プロ野球ワールドスタジアム」 「ゼビウス」 「ギャラガ88」 「ワールドジョッキー」等当時のナムコの主要なタイトルはほぼPCエンジンに投入されている。
※ナムコから画像のキャラクタの登場作品「CD-ROM²システム
PCエンジンはコア構想と呼ばれる多くの周辺機器を接続できる拡張性の高さを想定した構想を掲げていた。その最たる目玉商品として1988年に満を持して登場したのがPCエンジン本体背面の拡張バスを使用したPCエンジン用CDドライブ「CD-ROM²システム」であり、初めて光ディスクを採用したゲーム機となる。
それは数字にして540メガバイト(=4320メガビット)という当時の業務用ゲームの平均容量が40メガとして100本(=4000メガビット)入れても余る代物であり、CD-DAによって内蔵音源以上の高音質BGMの演奏・フルボイスも可能になりNo・Ri・Koやビックリマン大事界、デジタルコミックのようなゲーム機の新しいスタイルも試みられた。
これによりPCエンジンは強力なアドバンテージを長期に渡り得ることとなった。今日までの家庭用ゲーム業界の歴史において「未来の先取り」という意味では比肩する事例の無いゲーム機である。
Huカードスロットを用いたシステムカードにより機能拡張が可能で、SRAM容量を増やしCD-G再生機能を追加したVer2.0、CDのオートチェンジ機能が使用可能となったVer2.1が登場している。
更にSRAM容量を増やしたSUPER CD-ROM²が登場し、SUPER CD-ROM²規格の本体を使用するかSRAM拡張を行うスーパーシステムカードを旧規格本体に使用することでSUPER CD-ROM²規格のゲームが遊べるようになった。
DRAMを増やす拡張カード「アーケードカード」も登場している(SUPER CD-ROM² SYSTEM用はDRAM拡張機能しかないが、旧型となるCD-ROM² SYSTEM用はスーパーシステムカードとしての機能も兼ねている)。
1991年には拡張バスを排除したPCエンジンとSUPER CD-ROM²の一体型ゲームマシン「PCエンジンDuo」がヒットし1993年普及モデル「PCエンジンDuo-R」の登場でシステムカードによるRAMの拡張こそ残ったものの、コア構想の大部分は事実上の終焉を迎える事となり、以降PCエンジンの市場はほぼCD-ROM²に移りプレイステーションやセガサターンの台頭するまでの10年弱の独自の市場を形成していくことになる。
余談ながら、システムのバージョンアップや音楽CDと同じようなトラック構成を利用してソフトに隠し要素を追加していたものもあった。
(旧バージョンのシステムで起動すると隠しゲーム等のおまけ要素が見れたり、CDプレイヤーで再生するとゲーム専用CDだという警告を兼ねたボイスドラマや声優のコメント集が聞けるソフトがあった)
PCエンジンGT
詳細はPCエンジンGTを参照。
その他PCエンジンの「コロンブスの卵」
モデルチェンジの先達
PCエンジンにはNEC自身の手で様々なモデルチェンジ、派生機種が投入されている。
現代でこそそれは任天堂やソニーでも当たり前となった手法だが
PCエンジン以前までは高額なゲーム系パソコンどまりの手法であり
- 皆が同じデザインのゲーム機を共有する事による共感が失われる
- 周辺機器の互換性や修理部品の確保が負担増になる
等のリスクも危惧されたと思われ、任天堂のゲームボーイも94年のゲームボーイブロスの登場まではかたくなに1種類のデザインのみで通されていた。
その通例を破ったのが89年のNECによるコアグラフィックス・シャトル・スーパーグラフィックスの3モデル投入であり、以降もGT・Duo・LTなどを意欲的に投入。
他社でもセガが追随するように少しずつ派生モデルを投入するようになり93年以降は顕著になっていく。
定価を下げた先達
定価変更も今でこそ任天堂やソニーで当たり前となっているが
PCエンジン以前は先に買ってくれた人に配慮して定価は下げてはいけないといった空気が強かった。
それはPCエンジンでもコアグラフィックスは旧モデルと同じ24,800円に設定されたり
DuoをCD-ROM²より高い59,800円としスーパーCD-ROM²はコストダウンを名目に翌年の発売に持ち越される予定だった事からも伺える(結局クリスマス商戦に合わせて47,800円で発売される)。
無能な働き者?「NECアベニュー」
NECアベニューは社名にNECを冠するNEC傘下のメーカーであったが、任天堂やセガといったファーストパーティのようなソフトの価格優遇は無くハドソンより割高であった。
何より、カプコンやセガ等を相手にライセンス移植の契約を取り付けるのばかり速くて
いざ発売となるとなかなか発売しないのでハドソンやナグザット等の優良な移植企業がライセンス移植をしたくてもできないという、PCエンジンを自縄自縛状態に陥らせていた負の側面が大だった。
ソフトリセット
PCエンジンには本体にリセットボタンが無い代わりに
RUNボタンを押しながらSELECTボタンを押すとリセットをかけることができる。
※「ストリートファイターⅡダッシュ」等の一部のソフトはソフトリセットがかからないようにされている
ソフトリセット操作と似た裏技が設定されていたゲームでは誤操作でリセットしてしまったり、対戦ゲームでは負けそうになったからとリセットするといった悲劇がたびたび起きていた模様。
特定条件でソフトリセットを行ったり、一定回数ソフトリセットを行うといった裏技が設定されていたゲームもあった。
PCエンジンミニ
ファミコンミニから始まった各社のミニ筐体の流れでコナミも6月12日に「PCエンジンミニ」をリリースする事を発表。三種類あり、日本市場向けは初代PCエンジンタイプの「PCエンジンミニ」、米国は「TurboGrafx-16mini」、ヨーロッパは「PC Engine CoreGrafx mini」としてリリースされる。
現在の諸権利
コナミがハドソンを吸収した際にPCエンジンの商標も持っている…のは半分正解。実はもう一社PCエンジンの商標を持っている。それはKDDI傘下のBIGLOBEである。これはNEC HEが解散した際に本体であるNECに吸収された後に同社のパソコン通信サービスの「PC-VAN」とインターネットプロバイダー事業の「mesh」との統合により誕生した事業で、後に分社化して「NECビッグローブ」になった際にPCエンジンの商標もコナミと共有される形で持っていたからである。
ちなみにBIGLOBEは投資家ファンドに譲渡された末にKDDIに買収されたが、現在はゲーム開発とは無縁である為に実質ハードならびにソフトの復刻リリースはコナミが担当となる。
海賊版の問題
当時はCD-Rが民間用に存在しない時代だったのでCD-ROMにコピー対策がなされていない。
ヤフオク!で出品されている「PCE-WORKS版」を名乗る商品は「PCE-WORKS版です」などといかにも公式ライセンスのように装っていてもそのような商品は存在せず、精巧な違法コピー品なので注意されたい。中には本来PCエンジンに出た事すらない勝手移植のものまであるという。
現在PCエンジンの諸権利を持つコナミに対して疑問を持った者が「この「PCE-WORKS版」に本当にライセンスを与えたのか?」とコナミ公式Twitterアカウントに問い合わせたところ、どうやらコナミも知らなかったようである。
関連動画
東京おもちゃショー
PCエンジンコアグラフィックスのCM(ドラえもんを起用)
PCエンジンDuoのCM(クリスタルケイを起用)
TurboGrafx-16のCM
TurboDuoのCM
代表的なソフト
発売年 | ソフトタイトル |
---|---|
1988年 | R-TYPE |
1989年 | スーパー桃太郎電鉄 イースI・II 天外魔境ZIRIA |
1990年 | スーパーダライアス ボンバーマン |
1991年 | スーパー桃太郎電鉄II |
1992年 | 天外魔境Ⅱ卍MARU スナッチャー |
1993年 | ストリートファイターⅡダッシュ 悪魔城ドラキュラ血の輪廻 天外魔境風雲カブキ伝 |
1994年 | ときめきメモリアル |
1995年 | リンダキューブ |
関連リンク
ハード、周辺機器
ゲーム機 据え置きゲーム機 マルチタップ HuCARD CD-ROM² SuperCD-ROM²
PCエンジンシャトル PCエンジンコアグラフィックス PCエンジンスーパーグラフィックス
ソフト
超兄貴 PC原人 マジカルチェイス 空想科学世界ガリバーボーイ にこにこぷん
関連メーカー
NHK : ハイビジョン技術の一つとして「Hi-10ボンバーマン」を展示していた。
関連国
ポーランド:修理に必要なギアを生産している国である