古い車両を大切に末長く使いましょう
ふるいしゃりょうをげんかいなんかむししてこきつかいたおしましょう
タイトルそのままのとおり、古い車両を大切に末永く使う計画。
概要
初出はニコニコ動画にある迷列車で行こうシリーズの『通勤電車103系 新たなる伝説【迷列車列伝#08】』という動画。「既存の資源を有効活用すべく、旧型車両に延命工事を施してさらなる活躍の場を与えよう」、つまり「既存車両を補修しながら長く使おう」という意味・計画を表す鉄道ファン用語。
一例
※「更新車」の記事でも延命工事の一例が紹介されている。
この計画の発動例
JRグループ
- 103系・201系
- 113系・115系
- 211系
- JR東日本で2024年になってから発動。「当面使用に伴う延命工事」として屋根上の補修およびベンチレーターの撤去などが施行される。なお、お隣のJR東海では2024年度に引退予定。
- 485系
- JR東日本で発動。東北地方を中心に活躍した3000番台は新車のような大規模なリニューアルが施された他、種車が分からないほど見違えるジョイフルトレインが多数作られた。そのジョイフルトレインが2023年に全廃されて形式消滅。
- 381系
- キハ40系
- EF65、DD51、DE10などの国鉄型機関車
- JR東海を除く各社で発動。現在の旅客鉄道においては機関車そのものの需要が極端に低く、工事やイベント列車のためだけに新造する必要がないため、国鉄時代の旧型機関車を補修しながら長く使っている。JR貨物でも、少数ながら国鉄型機関車が今なお活躍している。
- 現在は車齢40年を超えるのが当たり前となっており、20年足らずでの廃車が珍しくなかった国鉄時代とは比べ物にならないくらい長寿命化している。
東急電鉄
- 東急7000系列(引退済み)
- 比較的車両置き換えのスピードが早いとされる東急だが、1962年から製造されたこの7000系列は例外的に長期的運用が成された。そればかりではなく、VVVF化された車両の他、一部を置き換える際に社長直々に「一両たりとも解体させるな」と指令が下ったらしく、多くの地方私鉄に譲渡され東急から離れても解体されなかった。
- この状況が崩れたのが2000年、譲渡先の秩父鉄道では18m車体で小さい同車に不足感を抱き、他社から譲渡された20m車の導入により廃車されてしまった。更に20年以上経った現在では、グループの上田交通はじめ幾つかの会社で同車の1000系の譲渡で玉突きで置き換えられ、東急本体からも2018年に引退した。
- ただし今でも多くの譲渡先で活躍が続いている他、大井川鐵道や養老鉄道など近年になって新たに譲渡先となった所もある。
大井川鐵道
- 全車両
- 東急・南海・近鉄の他、かつては京阪や西武、小田急など多種多様な会社から中古車をとっかえひっかえ導入してはボロボロになるまで使い倒すことで有名な会社。ただしあんまり大切にしているとは言えないのかもしれない。また近年は財政状況のためか、近江鉄道と並び廃車体を購入してから実際に走らせるまで非常に長い時間がかかることで有名。ちなみに元東急車は十和田観光電鉄(廃線)からの再譲渡車である。
- 電車のみならず蒸気機関車や電気機関車、客車も他所から中古で導入している。特に旧型客車は戦前から活躍しているものや、戦後すぐに国鉄幹線の特急用に投入されたものの成れ果てが存在する。蒸気機関車は主に観光用だが、たまにピンチヒッターで入換作業を行うなど実用的な運用をされたりもする。
- 千頭から先の山岳区間を走行する井川線用車両はその全てが生え抜きだが、中には前身の中部電力専用鉄道時代から70年に渡って使い続けている車両も存在する。
養老鉄道
- 歴代全ての車両
- 元々近鉄から分離した会社であり、分離時点で殆どが近鉄の他路線からかき集められた古参車で占められていた。養老線に属した時点で車齢30年以上という老朽車を更に数十年使い倒すという有様で、口さがない鉄道ファンからは路線名をもじって「近鉄の養老院」などと揶揄されたこともある。最古参は60年前に製造された元南大阪線6800系の606編成。
- そんな養老線の現状を打破すべく置き換え車両として選定されたのは何と導入時点で車齢52~55年の東急7700系。VVVF化されている他、ステンレス製で長持ちするという理由からであった(なお、置き換え対象の600系の方が一部若いものも存在する)。ちなみにこれは一時的な繋ぎかと思いきや今後30年程度は使用を見込むそうである。
- なお、元々発足時から中古車両だらけの路線であり、初代養老鉄道(現在の会社とは法人が異なり、養老線を創設した企業)は中古客車をかき集めて創業した。揖斐川電気と合併した後に唯一新造車を導入したが、この車両は養老線で50年近く使い倒されるなど、正に古い車両を末永く大切にを実践し続ける会社といえる。
阪堺電気軌道
- モ161形
- 軌道線用車両としては日本最古。1928年登場。通常の営業運転を行う車両としては日本最古の存在であり(※一部解釈によっては後述する広電582号の方が古いという説がある、上述した箱根登山車はじめ幾つかの車両は車体載せ換えのためここではカウントしない)、一度も所属路線を変えていない旅客電車としても琴電1000形・3000形引退後は最古の存在となる。
- モ501形、モ351形
- 上記161形には劣るが、こちらも製造から60年以上が経って今なお殆どが現役。モ501形のカルダン駆動は、その当時に製造された路面電車としては希少な生き残り(殆どの車両は路線廃線と運命を共にする・整備面から既存車と同じ吊り掛け駆動に変更・早期廃車の何れか)。一部部品の代替製造が困難なため3Dプリンターを使って複製品を作っている。
能勢電鉄
- 全車両
- 阪急の子会社であるために戦後はほぼ全て阪急からの譲渡車で占められている。だがその阪急の車両置き換えペースが近年極めて鈍っており、そのために中古車を供出先の能勢電の車両置き換えも停滞した。最古参車の車齢は60年を越える。
- 2014年に阪急から譲渡された5100系はその時点で車齢39~43年の高齢車両である。その後上記5100系より7~15年ほど若い7200系に譲渡元を変更、多少は車齢が若返った。
広島電鉄
- 650形
- 570形
- 神戸市電からの移入車。582号1両のみが現役だが、製造は1924年という驚異的な古さ。ただし車体外板の総張替えや扉構造の変更など、骨格を除いての大規模な車体更新により1960年頃新造の扱いである。この点で阪堺のモ161とどっちが本当に古いのかで争われることがある(後述する長崎電軌168号は通常営業を行わない)。
- その他
- 上記570形以外にも広電には多くの他社(福岡、北九州、京都、大阪、神戸)からの中古車が導入されており、「動く電車の博物館」と呼ばれた時期もある。その後多くの車両が新型に置き換えられて引退したものの、近年まで生き残った車両は各型式1両ずつ動態保存され今も走っている。例外的に元京都市電の1900形のみは使い勝手の良さから譲渡された15両全車が現役である。イベント走行に限られるが海外製の200形(元ハノーバー市電KSW型、1928年製)なども存在する。
- また、自社発注車でも150形(1925年製、1952年車体載せ替え)、350形(1958年製)、3100形(1961年製)など超長期間に渡る運用車が存在する。
長崎電気軌道
- 160形168号
- 1911年製の動態保存車。現役稼働年数は100年を超えており、車籍を持つ動態車としては日本最古の木造ボギー車。安全基準に厳しい木造車の上ワンマン運転に対応していないため通常営業は行わず、路面電車の日や会社の創立記念日など年に3日ほど特別に運用される。
- その他
- 稼働年数が60年を越える車両がゴロゴロいる。一部の車両は70年を越えて通常営業に要される。他社からの中古車もいくつかあったが、現役のものは元熊本市電車の600形のみ。また、超低床車導入までは2000形(軽快電車)を除き吊掛け駆動の旧型車のみが導入されていた。なお、これらの古豪を差し置いて2000形は制御装置などメンテナンスの複雑さから早期(※)引退を余儀なくされている(※早期と言っても30年以上活躍している)。
その他中小私鉄
イギリス
余談
この話、何も鉄道業界に限った話ではない。
航空分野では中古機を買いあさる時価総額全米1位の航空会社が存在し、軍事分野に関しては百年現役フラグのたった8発機や本当に百年目に到達しそうな傑作などがある。