「お前の望みを言え。どんな望みも叶えてやる。お前が払う代償はたった一つ。それは…」
解説
未来から2007年にやって来た人類の精神体が、接触した人間のイメージ=記憶により怪人としての肉体を得た姿。人間態を持たない為、ほとんどのイマジンの声は声優が演じている。
名前の由来は「イマジネーション」+「魔人」であるため、英語表記は「imagine」ではなく「imagin」。
平成ライダーシリーズの怪人としては珍しく、人間の惨殺(あるいは結果的な大量殺戮)などを目的にはしていない。
本作の怪人枠だが、一部のイマジンは様々な理由で目的を放棄するなどして、ライダーの味方をすることもある。それらがタロスズやデネブといった面々である。
最初は光球の姿で飛び回り、「契約者」として選んだ人物に憑依して、その人物の持つ童話や物語等のイメージを元に、怪人としての姿形を作る(ただし、現状はいずれも番外編などの派生作品でしか登場していないが『S.I.C HERO SAGA』におけるネガタロスがショッカー首領に憑依して岩石大首領イマジンになるパターンや『しん王』における一般主婦の三段腹が極度に誇張されたイメージから生まれた三段腹イマジンなど場合によっては物語に代わる契約者の何かしらのイメージからでも実体化できる模様)。
そしてその人間の前に上のイラストのような上半身と下半身が逆転した砂時計を思わせる姿で現れ、その人間の望みを聞き入れる事で契約を交わし、実体を得て現実世界で活動を始める。
逆に未契約状態だと体は実体のない砂状なので、イマジン側はロクに物理的な干渉ができず、自転車に轢かれる・人間が通り抜ける等の外部からの接触で簡単に崩壊してしまうが、すぐに復元される。
契約者の願いを聞き入れ実体化した後は、その願いを自分なりに解釈して叶える事で、その人間の記憶の中にある「現在のその人間像を作った最も強い時間」に契約者の体を真っ二つに割くように開きタイムスリップ(ちゃんとタイムスリップ後は元に戻る。契約者はその瞬間を覚えていないようだが、トータスイマジンの契約者の様子を見る限り負傷した状態でされるとそこそこ痛いようだ)。そこで過去を都合の良いように改竄し、現在や未来を変えることを最大の目的とする。
…と言っても、基本的には破壊活動しかやらないが。
望みの叶え方も先述の通り元は人間であるためか、この手の「何でも願いを叶える的存在」には珍しく無から物を出せる超常能力が存在せず、イマジンの都合の良いように勝手な歪んだ解釈をされて叶えられる。
例えばあなたがイマジンと出会って契約を迫られ、「pixivのデイリーランキングで1位常連になるくらい絵が上手くなりたい!」と言えば、そのイマジンはあなたより人気のあるユーザーの両腕を片っ端からへし折って回る。
劇中でも「死ぬほどの金が欲しい」と言った契約者に対し銀行や現金輸送車等から強奪する形で埋もれ死ぬほどの量の札束を部屋いっぱいに渡したり、「恋人との記憶を綺麗さっぱり忘れたい」という願いには記憶に関連する曲を流す物や人を消し去るなど、面倒を嫌うのもあってか短絡的かつ物理的に暴力的な手段で解決しようとする者が殆ど。
イマジンと契約するということはそういうことであり、キンタロスやフータロスのように親身になってくれるタイプは滅多にいない。
願いを叶えるのは過去を強く思い出させるのが目的であり、願いが叶っていない状態でも契約者が過去を強く思い出しさえすれば強引に契約完了に持っていけるが、逆にちゃんと願いを叶えても契約者が過去を強く思い出さないとゲートが開かず過去へのタイムスリップは困難になる。
契約者への暴力・恐喝で解決する問題でもない為、その場合思い出すのを待つか、思い出すアプローチを探して試みるしかない。
そして、実体化前及び契約中のイマジンの存在は契約者の記憶に依存するため、戦闘等でダメージを負っても契約者の記憶をもとに何度でも再生できるが、契約者が死ぬと消滅してしまう。
その為、殆どは凶暴で人間を見下しているものの、契約者に対して命に係わるような暴行は行わず、一応は我慢して「協力者」としての体裁を維持している。
また、赤ちゃんと契約して誕生した(とされていた)ジークは、赤ん坊が幼すぎたためすぐに忘れ去られ消滅しかけた(しかしその実、イメージを作り上げたのは赤ん坊の母親であり、消滅間際良太郎がその点に気づいたことで難を逃れている)。
また、人間態を持たない代わり、別の生命体に「憑依」することが可能で、憑依された者は目や髪型、イマジンによっては服装が変化し声もイマジンの物に変わる。
しかし、作中の登場人物からは容姿に全く言及が入らず、憑依も言動でしか認識されないため、ファンの間では「外見や声の変化は視聴者に向けた演出で、実際は憑依前と変わっていない(ように見える)」という説が主流。
憑依できるのは人間に限らず犬などの動物や、アームズモンスター三人衆といった人外、挙げ句にはディエンドが召喚したコピー体の仮面ライダーなどにも憑りつけるが人間以外は「憑きごこち」が悪く、ちょっとしたはずみで直ぐに抜けてしまう模様。
また、憑依された者はイマジンの能力を一部だけ使えるようで、モモタロスやバットイマジンの場合は怪力、カメレオンイマジンの場合は口から火炎を吐ける体質になっていた。
実体化したイマジンの中には、スネールイマジンやモールイマジンなど複数個体で群れを作る存在や、アントホッパーイマジンのように人格がそれぞれ分裂した肉体を持つタイプもおり、この点も生物としての人間とはややズレている。
しかし『仮面ライダー電王』自体がキーパーソンのヒロインを演じた出演女優降板による大幅なシナリオ改変を余儀なくされた為か、イマジン達がどうやって生まれ、彼らの元いた未来はどのようなものなのか、などの出自は殆ど明かされず、劇中の様々な謎が解明されずに放置された不明点の多い存在である。
良太郎や侑斗も、身内が敵の標的であった為に否応なく戦いへ巻きこまれただけで、「イマジンを生み出す要因自体を探りだして解決する」という行動は終始取らなかった。
また、どのイマジンも元の肉体や元いた世界についての執着が全く無いらしく、それらについて言及した例は一切無い。
上述した通り人間の末路である事に変わりない為、その本質は誰からも忘れ去られて人としての姿を保てなくなった者が、過去人のイメージを骨子に擬似的に肉体を得た姿だと推測される。
人からも忘れ去られ繋がらなくなった歴史上の存在と言えど、彼らも一応は時間の一部である為、精神体は時間の堆積したものである“時の砂”で出来ている。
「過去」や「未来」に執着しなければ生きていけない哀れな存在だが、漢字で書くと「今人」とも表記できてしまうのが皮肉なところである。
良太郎や侑斗が属する「時の列車」以外にも、時間の運行の管理維持を目的とした「時間警察」なる組織もあるが、互いの関係は悪く後日談まで存在すら語られなかった。
そちらではライダーシステムの一環として製作し人工イマジンなども開発されたが、色々あって第1号となるイブ以降その技術は凍結された模様。
主なイマジン達
ライダーの味方として登場するイマジン
敵として登場するイマジン
人工イマジン
余談
劇中および客演作品では、度々主要人物がイマジンに憑依されている。『電王』放映から10年以上経った現在では、後続の主要人物がイマジンに憑依されるのが『電王』客演のお約束と言っても過言ではない。
だがその設定上、憑かれたキャラクターの役者はイマジンになりきった演技をしなくてはならない(いわば一人複数役を要求されるようなもの)ため、実に役者の演技力が試される。
そのため、当時17→18歳の新人でありながら野上良太郎役として7つもの憑依体(タロスズ、デネブ、ジーク、ゴーストイマジン)を演じきった、佐藤健の演技力を評価する声は多い。
佐藤自身も後年になって、「演じ分けができるのは『電王』の経験があったから」と答えている。
なお、デザインを担当した韮沢氏は、前年の仮面ライダーカブトでもワームを担当し、2年連続「ライダー」に関わっている(仮面ライダー剣のアンデッドを加えれば3度目となる)。イマジンの設定を意識してか、デザインは過去2作品の怪人よりはダークかつグロテスクさは控えめとなっている。
関連タグ
ハエマツ:同じような手段で人の願いを強行的に叶えようとする怪人。
ロンダーズファミリー:同じく時空を超えた敵組織で、メインライターが小林靖子という共通点がある。
タイムジャッカー:新たな魔王を生み出すために過去へ赴き、その時代の人間と契約してアナザーライダーを生み出す未来人の集団。見方を変えれば彼らもまたイマジンの様な存在で、作中でも実際に電王たちが幾度も介入した。
歴史修正主義者:同じく時間改変が目的。