概要
独裁者相手の革命戦争と宇宙戦争をモチーフに描いた作品であり、スリルとサスペンスに満ちた展開になっている。
タイトルおよび物語は世界中で大ヒットを飛ばした『STARWARS』をモチーフにしており、そこに『ガリヴァー旅行記』の小人の国・リリパットを混ぜて独自性を出している。
物語の始まりが特撮映画から始まっていることもあって、OPには様々な映画のパロディが織り込まれている。たとえば、スターウォーズのロボットが出演している。また、映画版では「いるだけ」になりがちな骨川スネ夫にスポットを当てた作品でもあり、アメトーークでネタにされたこともある。
あらすじ
それを見たのび太はドラえもんとしずかちゃんを誘い、人形劇アニメを作ろうとする。
しかし、いつもの裏山での撮影中に小さなロケットのようなものを見つけ、その夜にのび太の部屋にパピと名乗る小人が現れる。彼はあのロケットに乗ってやってきた宇宙人だった。
しずかちゃんにも紹介され、パピはスモールライトで小さくなって人形の家でともに遊んだりした。
一方、骨川家の庭で映画を撮影していたスネ夫たちの前に、クジラそっくりのメカが空から飛来し、セットをレーザー砲で滅茶苦茶に破壊してしまう。
ドラえもんの仕業だと考えたスネ夫はジャイアンと共に野比家に殴り込むが、そこに現れたパピが驚愕の真実を告げる。
パピはピリカ星の大統領で、クジラ型メカはパピに敵対するギルモア政権の宇宙船だったのだ。ギルモアは側近のドラコルル長官と組んでクーデターを起こし、本来の指導者であるパピを抹殺しようとしていたのだった。
クジラ型宇宙船で地球に辿り着いたドラコルルは無人偵察機を大量に放ってパピを探しだそうとし、彼がしずかの家に潜伏していると突き止めると彼女の家に侵入。ドラコルルはたまたま小さくなって牛乳風呂を堪能していたしずかちゃんを人質として捕まえ、さらにスモールライトも持ち去ってパピを引き渡すようにドラえもんたちに告げ、パピはしずかを救うため自ら出頭し、連れ去られてしまう。
スモールライトを失って元の大きさに戻れなくなったドラえもんたちはパピを救い出すために、パピの愛犬ロコロコとともに小さいまま宇宙船に乗り込み、ピリカ星へと向かうのだった。
世界観・用語
- ピリカ星
宇宙の片隅にある星。
土星のような環が惑星の周りにある。
住民の身長は5㎝ほどしかなく、顔は人間に似ているが手の指は一本もない。
英才教育が進んでおり、年齢よりも実力重視の社会で10歳のパピでも大統領になれるらしい。ピリカ星人の寿命は不明だが。
ちなみにピリカとはアイヌ語が由来。「美しい、可愛い」という意味だが、作品が執筆された1983年当時は多くの書物でピリカ=「小さい」と誤訳されていた。
- PCIA
ギルモアが設立した情報組織。
レジスタンスを根絶やしにするために活動を続ける。
この組織含めギルモアの総軍勢は二十万人とされる。
レギュラーキャラクター
- ドラえもん
パピと友達になる。
- のび太
パピと友達になる。
- しずか
お風呂に入っているときに誘拐されてしまう。それでパピが連れていかれた責任を感じており珍しく旅先で入浴を求める描写がない。
- ジャイアン
ピリカ星に行く。
- スネ夫
この作品ではきちんとした出番がある。
また、一行が別行動時は「ドラえもん・のび太・しずか」・「ジャイアン・スネ夫」の組み合わせが多いが本作は「ドラえもん・のび太・ジャイアン」・「しずか・スネ夫」という珍しい状況があった。
ゲストキャラクター
パピ一派
ピリカ星の大統領。
年齢は地球人ののび太たちと変わらないらしい。
冷静で礼儀正しく、心優しく責任感も強い。映画のキャラクターとしては異例ののび太の両親に素性を明かした上で置いてもらった人物でもある(通常のび太達一行以外の世間は事件の兆候すら気づくことがないまま物語を終えることも少なくない)。
パピの飼っている犬で、耳をパタパタさせて空を飛ぶことができる。パピに本星で自由同盟の準備が整ったことを受けて迎えに地球にやってきたが接触前に捕われてしまったので救出の協力を持ちかけたドラえもん達と本星へと向かう
終盤で処刑されそうなパピを救ったのはこの悪癖でもある。
ピリカ星ではネズミのことを「ネコ」と呼ぶと彼は言っていたが、真偽は不明。
後にのび太のワンニャン時空伝にもそれっぽいアトラクションが登場。
- ゲンブ(CV:金井大)
元治安大臣で、パピとともに反政府組織・自由同盟を指揮している。
ギルモア一派
クーデターを起こし、ピリカ星を乗っ取った独裁者。
徹底した監視社会と恐怖政治でピリカ星を支配し、自ら皇帝になろうとしている。
とても用心深く猜疑心も強く、癇癪持ち。
自分の不人気も自覚しており、側近ですら信用していない。
ギルモアの副官で特殊警察PCIAの長官。ドラえもん史上最も知に優れた悪役。残忍かつ狡猾な性格で、常に思慮深く冷静。
基本的に体力馬鹿の集まりであるドラえもん映画の悪役の中でも、ここまで裏の裏を読む敵キャラは存在しないと断言できる。
というか、スモールライトの構造的欠陥を知ってさえいれば間違いなくドラえもんは本作で終わっていた。戦闘能力で行けば下の下の下だが、今なお最強の悪役と推すファンも多い。
ギルモアに対する忠誠心も陰口を叩くなどあまりいいとは言えず、ギルモアにとっても互いの地位と能力を利用しているような描写が見受けられた。パピに一度でも約束を守った覚えがないやつと評されており本人もそれを認めている。
- 作者曰く「ドラえもん映画で一番の策略家であり倒す手を考えるのに苦労した」とのこと。
ドラコルルとギルモアのモデル
原作・映画公開当時の1985年は、独裁者、秘密警察で国民を粛清する、など、当時日本での独裁者の典型であるアドルフ・ヒトラーとハインリヒ・ヒムラーだと言われていた。
しかし、“国民全般に支持があるわけではなく、軍の将軍だったが軍事クーデターによって政権を奪取”(ヒトラーは当時のドイツ国民に割と支持されていた)、“首都のあちこちに掲げられた将軍の肖像”、“身長がそれほど高くなく固太り”(ヒトラーの身長は当時のドイツ男性の平均くらいだった)、“腹に一物あって、面従腹背している秘密警察長官”など、ヒトラー像とはかけ離れている……
っていうか、これむしろヨシフ・スターリンとラヴレンチー・ベリヤやんけ。
ただ、スターリンの政権奪取から死去までの悪行の数々は、長年東側の最高機密として鉄のカーテンの向こう側に隠されており、一部はナチスになすりつけられていた(カティンの森虐殺事件など)。
それが公開されるのは1985年3月にソ連最高指導者となったミハイル・ゴルバチョフ体制下で明らかされたものであり、本作を藤子・F・不二雄氏が執筆した時点で氏がそれらのスキャンダルを知り得たのか、真相は氏の逝去によって永遠に謎となった。
別の説として、日本の創作におけるステレオタイプな独裁者を避けようと、東西冷戦当時の南米諸国や第三世界によくあった軍事独裁政権の軍人大統領たちをモデルにしたのではないかともいわれる(スターリンは軍人として栄達したわけではなく、党活動や反政府闘争でのし上がった人物である)。