特急「いなほ」
1969年10月1日の国鉄ダイヤ改正で上野駅~秋田駅間を高崎線・上越線・信越本線・羽越本線を経由する気動車特急(キハ80系使用)として運行されたのが始まり。当初の目的は、特急「とき」「つばさ」の補完であった。
1972年の羽越本線全線電化で使用車両が485系電車に置き換えられ、同時に青森駅発着の列車も設定された。また、電化によって上野駅~秋田駅の所要時間は約7時間30分に短縮され、「「つばさ」で行くより速くなりました」と広告された(「つばさ」の所要時間は約7時間50分)。以降は特急「たざわ」が運転開始するまでは首都圏~秋田のメインルートでもあった。
1982年の上越新幹線開業以降は、1往復を除き新潟~秋田・青森間の運行に短縮され、新潟駅で同新幹線に接続する列車となった。
この際、残された上野駅発着の1往復は「鳥海」(3代目)と名を変え、新幹線が上野駅に延伸される1985年まで運転された。また、「鳥海」の廃止と同時に酒田駅発着の列車も誕生している。
2001年の特急「白鳥」廃止後、上記の区間においてその任を引き継ぎ、また特急「雷鳥」の新潟駅発着列車廃止に伴い、青森駅発着の「いなほ」がJR在来線で最長の定期昼行特急列車(458.8km)となった。
しかし、2010年の東北新幹線全線開業に伴うダイヤ改正で秋田駅~青森駅間が「つがる」に分離され、その座を特急「しなの(大阪~長野)」に譲った(その後2016年のダイヤ改正で「しなの」は全て名古屋発着になり、現在の最長昼行列車は「にちりんシーガイア」(博多~ 宮崎空港:営業キロ:411.5km)になっている)。
かつては秋田まで行く列車がメインだったが、1997年の秋田新幹線開業後は酒田以南のいわゆる庄内地方での利用が主となり、それ以降は新潟~酒田間の運行が4往復、新潟~秋田間が3往復の設定となっていた。
新潟駅の在来線高架化事業の進捗により、2018年のダイヤ改正で上越新幹線との同一ホーム対面乗り換えが実現。ホーム上での乗り換え改札はあるものの、これまでの新幹線から在来線へのホーム移動が無くなり、乗り換え時の移動負担が大幅に改善された。
2022年のダイヤ改正では新型コロナウイルスの影響で秋田行の1往復が酒田止まり(厳密には酒田⇔秋田の臨時化)に変更されたため、現在は酒田行5往復と秋田行2往復の計7往復となっている。
使用車両
現在
E653系
2013年9月28日、常磐線(フレッシュひたち運用)から撤退したE653系(基本編成)が1000番台に改造の上、転用された。7両編成で運行される。
ローカル線感あふれる塗装はさておいてグリーン車が超豪華なことで有名。
2022年のダイヤ改正では新潟~酒田間の1往復のみ4両編成の1100番台(しらゆき編成)に変更された。
過去の使用車両
485系
485系の1000番台がかれこれ40年以上使用されていた。20世紀末には3000番台も仲間入り。「上沼垂色(かみぬったり)」と呼ばれる塗色である。たまに国鉄色の1000番台も走っていた。
停車駅
新潟 - 豊栄 - 新発田 - 中条 - 坂町 - 村上 - 府屋 - あつみ温泉 - 鶴岡 - 余目 - 酒田 - 遊佐 - 象潟 - 仁賀保 - 羽後本荘 - 秋田
その他
2005年に秋田発新潟行きの上り特急「いなほ14号」が強風にあおられ脱線・転覆する事故が発生した(JR羽越本線脱線事故)。
これは同年に発生したJR西日本のJR福知山線脱線事故や1991年の信楽高原鐵道列車衝突事故と同様の重大鉄道事故となり、以後の強風対策や基準の見直しに繋がった。
しかしながら日本海沿岸を走行するという特性上、改善が行われた現在においても冬季を中心に強風や雪害などにより運行に大きな影響を受けやすい状況があるといわれる。
2021年や2022年に東北地方で地震、2022年と2023年夏に秋田県で集中豪雨が発生し、その度に東北新幹線や秋田新幹線が不通になったため、上越新幹線+「いなほ」による代替輸送が行われた。
定期で秋田まで行く列車は減ってしまったが、何らかの要因で秋田新幹線が不通になった際は、この列車が秋田まで行く代替手段として活躍するのである。
関連タグ
つばさ:当列車と同じく上野~秋田間を結ぶ特急列車。
あけぼの/鳥海(JR東日本):前者は奥羽線、後者(4代目)は羽越線の寝台特急。後者は元・上野「いなほ」の運行区間を青森駅まで拡大して1990年に運行を開始したが、のちに初代「あけぼの」が山形新幹線開業にともない廃止されたため、「鳥海」を改め2代目「あけぼの」とした。
上越新幹線 とき:新潟駅で接続する新幹線。在来線高架化により、2018年のダイヤ改正で対面乗り換えが実現。
羽越新幹線:「いなほ」と同じルートを通る新幹線の基本計画路線。