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「この星を創り直す…」

「私の意思は…地球の意思だ…」

CV:朴璐美/スーツアクター:藤田洋平(完全体時)

概要

第40話でプリシャスの口からその存在が明らかになった、ドルイドン族リュウソウ族の創造主であるクイーン型モンスター。いわば地球の地母神的存在。

プリシャスは「ドルイドンの大いなる力」「ドルイドンのと呼称し、プリシャスを含むドルイドン族の幹部陣からは「エラス様」と呼ばれている。

赤紫色の血管の様な物に囲まれた、白と灰のチェス板模様のカプセルの様な出で立ちと言う、今までのドルイドンの中では極めて異質な姿を持つ。

見ようによっては心臓を思わせ、後に完全体へと姿を変化させるまではこの姿であった。

「ドルイドンの母」と呼ばれる通り、ドルイドンを生み出す能力を持ち、作中では短期間で次々と生み出している。

大昔のリュウソウ族との激闘の際、リュウソウカリバーの力によって封印されていたが、現代のリュウソウジャーやドルイドンに与するクレオンでさえも、その存在を知らなかった。

またプリシャスが独自に探していたり、ワイズルーがエラスの復活に驚いていた事から、リュウソウカリバーによる封印はドルイドン側も把握しきれていなかった様子。

リュウソウカリバーが安置されていた、始まりの神殿の真下に隠された神殿に封印されており、自身に結界を張っているので外部の者が直接手出しする事は出来ない。一度、カナロがエラスにダメージを与えようとするも、結界で弾かれてしまった。

その神殿はセトー騎士竜達の力でリュウソウカリバーの力を復活させる為に、かつてコウ達の住む村があった神殿に直結している。

しかし、この事は騎士竜の存在すら曖昧だったコウ達には伝わっておらず、現代のリュウソウ族で知るものはいなかった。

300年前のプリシャスとの戦いで、偶然エラスを見つけ調査を行い、更に復活を企むプリシャスの会話を盗み聞きしていたマスターブラックはプリシャスの思惑通りにエラスを復活させない為にプリシャスの側近のサデンに成り済まし、スパイとしてわざとドルイドン側へと付いていた。

この際に巻き込まないようにバンバを裏切ると言う演技を打ち、「エラスを守らなくては……」と意味深な言葉を残した事でバンバが他人を信用しない冷淡な性格に変わっていった遠因にもなっている。

長い年月を経て、リュウソウカリバーの力その物を取り込もうとし始めた為、強大な存在に変貌する事を危惧したセトーが、現代のリュウソウジャーに試練を課しリュウソウカリバーを抜かせようとする。やがて試練を突破したコウとカナロの手により、リュウソウカリバーを抜かれた事で力は完全には取り込めなかったが封印が解かれて急速に覚醒。

第43話でリュウソウカリバーによる負傷も完治して復活を遂げ、ガンジョージ等の新たなるドルイドンを生み出し始める。

また、第45話では地球その物に根を張って、地球のエネルギーを取り込んでいる事が判明し、倒したとしても、そのエネルギーを利用して再生する事が出来るらしい。

これが原因でマスターブラックもセトーも、エラスを倒す事は出来ないと断定していた。

エラス完全体

↑上記イラストの一番上にいるのが、エラス完全体。

第46話の終盤にてプリシャスを取り込み、完全な一つの生命体として進化した姿。

この姿に変貌して以降は取り込んだプリシャスの声を用いて言葉を話すのだが、そのおぞましい外見とは真逆に、目的達成を第一義にする機械染みた抑揚のない淡々とした口調となっている。

赤と黒のドルイドン族共通のチェス板模様が特徴の首が長い筋肉質な体型に、山羊頭蓋骨を被った呪術師の様な姿をしている。また常に巨大魔強化が掛かっている状態であり、最初から巨大な姿を持つ。

下半身のヒラヒラや両腕の鉤爪には取り込んだプリシャスの特徴が現れている。

戦闘能力として背中から黄色く光る無数の触手を生やしてムチの様に振るう他、掌から紫色の波動や巨大な火球を放つ事ができ、軽く波動を放っただけでも街を一瞬で荒野へと変えてしまう程の威力を持つ。

そのパワーは操縦するリュウソウジャー抜きとは言え、キングキシリュウオーを圧倒する程高い。

しかし、真に恐るべきは「夢を見せる能力」。体から強烈な光を放つ事で、周囲の生き物を強制的に眠らせる事が可能。

そうして眠った人間は夢の中に作られた、「失敗も絶望も存在しない世界」に閉じ込められ、過去の記憶や願望を基に構築された「楽園」とでも言うべき世界に、半永久的に閉じ込められてしまう。

一応、外部からの干渉があれば目覚めない事も無いが、現実世界ではヤバソードが目覚めている者を粛清しに掛かる為、起こす事は決して簡単ではない。

エラスの真の目的はそうして眠らせた人間達を養分とし、それを使って地球を新しく創り直す事であった。

一見弱点無しに見える彼女だが、実は「今までは地球の一部であった為に不滅の存在であったが、明確な意志に目覚めた上に、プリシャスを取り込んで一つの生命体として地球から切り離された」事で、不滅の特性を失ってしまっている。

活躍

第43・44話

上記の通り、復活を遂げて新たなドルイドンを生み出し始め、第43話ではガンジョージ(ガンジョージⅡ)、第44話ではヤバソードを生み出す。

第45話

上記の通りにドルイドンを生み出していたが鎮静化しており、プリシャスもその事を懸念していた。

そして、自身が鎮座する神殿へ向かおうとするリュウソウジャーとそれを阻止しようとするプリシャス達の激闘の際に胎動して活発化。

すると、それに反応するかの様にヤバソードが暴走を始め、リュウソウジャーのみならずプリシャスら仲間のドルイドンにも襲い掛かる。

プリシャスはヤバソードの心臓を奪う事で、どうにかヤバソードを鎮静化させた。

ヤバソードの突然の行動へ強く疑問に感じたプリシャスだが、活発化し始めたエラスが関係していると思い立ち…。

第46話

一時本拠地に帰還したプリシャスの前で、再びヤバソードを暴走させる。すぐさまヤバソードをプリシャスが粛清するや、テレパシーで彼にリュウソウ族ドルイドン族もエラス自身によって生み出され、その双方が自身の意にそぐわない行動をしたので滅ぼそうとしている事を伝えた。

その真実と使命を知ったプリシャスは恐怖心を抱き、力尽くでリュウソウジャーらリュウソウ族を殲滅しようと余裕がない行動を取り始める。

その後、半狂乱になったプリシャスだったが、生きていたワイズルークレオンからの言葉に、プリシャスが和解しようとした時、クレオンとプリシャスを光の触手で攻撃。クレオンは貫通しただけで再生したが、プリシャスを取り込み完全体へと進化。

「この星を創り直す」と述べ、リュウソウジャーに攻撃するが……。

第47話

リュウソウジャー共々街中の人々を強制的に眠らせ、「失敗も絶望も無い世界」の夢へと意識を幽閉していた。コウ達が目を覚ました時には術が効かなかったキングキシリュウオーと交戦しており、その圧倒的な力であっと言う間に追い詰めてしまう。そして光の触手を伸ばして人々を取り込んで「この星を創り直す」と言うと、紫の衝撃波を放ち一瞬で街を更地に変えた挙句、攻撃してきたリュウソウピンクアスナクレオン、そして、2人を助けようとしたメルトを吸収。そして先に吸収した人々は触手の先端の丸い檻に包み込み、そのエネルギーで地球を創り直す為の人身御供にしようと目論む。

一方、吸収された3人はメルトがクレオンに生み出させたサタンマイナソーによって脱出し、6人は無事に合流を果たす(直後サタンマイナソーはエラスに瞬殺された)。同時にエラスは地球と分離して独自の生命体になった為、今なら倒せる存在に成り下がった事をメルトは見破る。

リュウソウチェンジして立ち向かおうとする6人に対し、エラスは一瞬の隙にとてつも無く巨大な火球を放ってリュウソウジャーを攻撃、さらには触手を伸ばして一方的に蹂躙、それでも尚立ち向かおうとするコウ達だったが、幸せな夢を見せられて迷いが生じていたカナロは戦う意味の有無を問い、「もし今、世界中の人が同じように幸せな夢を見ているとしたら、このまま眠り続けてる方が、皆幸せなんじゃないのか…!!」と訴え掛ける。

それに対するエラスの答えはこうだった。

「私が見せているのは、失敗も、絶望も無い世界。この星を守りたいのであれば、方法は一つ。リュウソウ族もドルイドンも人間も、幸せを感じながら眠り続けるべきなのだ」

確かに、誰しも失敗や絶望なんて物はしたくも味わいたくもない。そんな苦しみを味わわず、自分に都合の良い物だけに囲まれたまま、死するまでの間の時を過ごす――――人間だろうとリュウソウ族だろうと、これ以上の幸せは他に無いであろう。

だが、そんなエラスの言葉を真っ向から否定したのはアスナだった。

「それはあんたの都合でしょ……こっちはこっちの都合ってもんがあるんだよ!

あんたは幸せな夢見せてるつもりかもしんないけど、いくら夢の中で美味しいもん食べたって全然おなかは膨れないっつーの! あのさ、幸せな夢って言っても、そんなの結局は過去の記憶や願望にしか過ぎないんだよ!

でも私はいろんな人と出会ったり仲間と一緒に新しいことしたりしたいし……何よりさ、あんたが見せた夢に“私の仲間はいなかった”!!

この手の温もりだって夢の中じゃ本当には感じられないんだよ、カナロ!! 皆だってそうだよ!私はこれからも皆と一緒に笑い合いたい!」

アスナは言う。「幸せな夢など、所詮は過去の記憶や願望に過ぎない」と。

何よりエラスの見せた夢には自分の仲間など誰1人おらず、その温もりすら感じられない。だけど「自分は仲間達と笑い合って生きていたい」と…。

アスナの言葉を受け、仲間達は戦う決意を新たにする。失敗や過ち…その最たる物と言うべき争いの歴史は変えられない。だからこそ逃げずにそれと向き合い、その歴史の上に立って生きて行くのが自分達の使命だと。

それに対して「お前達は今まさに、同じ過ちを繰り返そうとしている」と否定の言葉を投げ掛けるエラスだったが、コウの言葉を受けてカナロは皆で紡ぎ合って繋いでいく未来を創る為に戦うのが自分達の戦う理由であり、それがリュウソウジャーの騎士道だと見出す。

そして改めて6人はリュウソウチェンジと共に、勢揃いした騎士竜達をバックにして高らかに名乗りを上げた。

「大人しく眠ったまま命を全うすれば良いものを…。消えろ。お前達は新しい世界に必要のない存在だ」

一方、エラス自身も姿勢を崩さないリュウソウジャーに失望して自分の創る新しい世界に必要のない異物と判断し、駆除しようと襲いかかる。

騎士とドルイドンの大母は、哀愁を帯びてこの世を去る(最終話)

フル武装で多方向から波状攻撃を仕掛けてくるナイトロボ達をその場から動かず圧倒、逆に波動を浴びせて合体解除へ追い込む。

リュウソウジャーと騎士竜は怯まず、エラスを包囲してソウルの力で拘束、かつて自身を封じた力にすぐに察しがつくも、そこにコウの手で騎士竜達が融合した、眩く虹色に輝く巨大なリュウソウカリバーが生成された。

レッド「みんなの想い…無駄にはしない」

そしてそのまま、胸に突き立てられ封印のエネルギーを流し込まれるが、エラス自身もリュウソウジャーの変身を解く程の凄まじい衝撃波を放って、封印から逃れようとする。

リュウソウジャーの変身が解けても、コウは全てを守る為にリュウソウカリバーを突き刺すが、その途中でリュウソウカリバー自体の力が弱まっていた事が原因で刀身が破損、封印が中途半端な所で途切れてしまう

それでも大きく弱体化したエラスは巨大魔強化が切れて等身大に縮小してしまい、コウを吹き飛ばして突き刺さったリュウソウカリバーの刀身を投げ捨て、怒りの表情を見せる。

「よくも、私を…。許さん…!」

だが、ソウルの源である騎士竜を失ったリュウソウジャーも変身能力を失っており、生身のコウが後ろを向いた一瞬の隙を見逃さなかったエラスは、コウの触手を突き立て生命エネルギー=魂を強奪して殺害、余りの衝撃に失意し悲しみに暮れるリュウソウジャー5人。

「諦めろ。リュウソウ族も、ドルイドンも、人間も始末して全てを終わらせる。そしてまた、始めるのだ…」

リュウソウジャーにそう言い放つと、全てを創り直すべくこの場を立ち去ろうとするが、その様と態度に激昂。そして、絶対に諦めたりしないと強い覚悟を固めた残りの5人がリュウソウカリバーの柄に残ったソウルで最後のリュウソウチェンジを行う。

自身を倒すべく向かってくるのを振り払おうとする中で、エラスは自身が取り込んだコウの魂と対話する。

地球を荒らし傷付ける事で自らの存在を誇示しようとするリュウソウ族とドルイドン族、それを放っておけばまた同じ愚行を犯す。それを彼等を生んだ者として見過ごせず、両者を滅ぼす決意をしたとエラスは語る。

「お前達は、愚かだ……!」

これへ対し、コウは前話で見出した使命を改めて、エラスと戦う仲間達の声と重ねつつエラスに向けて語る。

コウ「俺たちは愚かかもしれない…でも…」

メルト「俺たちは、愚かだから学ぶんだ」

アスナ「1人じゃダメでも……皆となら乗り越えられる」

トワ「俺はみんなと会って、仲間の素晴らしさに気付けた」

コウ「失敗する事もあるだろうけど…」

バンバ「仲間が居れば、何度でも立ち上がれる」

カナロ「今までの歴史を無かった事にするのは、ただの逃げだ」

リュウソウジャー「俺達は……逃げない。絶対に!」

リュウソウジャー達の言葉を聞いてもそれを一蹴し、今尚、この世界を一から創り直すのに邪魔になるリュウソウジャーに牙を剥け続ける。

「私の創る新たな歴史に、お前達は存在しない……! 私はもう……過ちは犯さない!」

だが、コウがリュウソウカリバーを突き立てた胸の傷に気付いたリュウソウジャー5人は、そこへリュウソウケンモサブレードを突き立ててエラスに致命傷を与える。

そして、エラスと対話するコウから、

コウ「エラス。お前はずっと一人で生きてきたんだな…。笑ったことは?」

「何…?」

コウ「泣いたことは?」

コウが投げかけた、その質問にエラスは答える事は出来なかった。

コウ「俺達は、お前みたいに永遠には生きられない。

だから、笑ったり、泣いたりして必死に生きていく。

失敗しても立ち上がって、最後に笑顔でいられる様に、

未来を目指して、生きていくんだ。

そして…未来に笑顔を、繋いでいく」

「“繋いでいく”…」

コウ「そう、繋ぐんだ。命を。笑顔を」

この結末とコウとの対話で、自身がこの地球に不要な存在だと悟ったエラスは自らが滅ぶのを受け入れ、静かに崩れ去って行った。

「自ら生み出したお前達に倒されるという事は……私も、もはや……この星に必要ないという事か……」

直後、エラスが取り込んでいたリュウソウル(前話で取り込んだメルトが落とした物)の力であの世の淵にあったコウの魂をリュウソウジャーは救出。エラスの器になっていたプリシャスも生きており、クレオンの生まれた星へ行く事を決めたワイズルーとクレオンに連れられ地球を去った。

かくして、大母が去ったこの世で、その子供達は各々の道を見付け生きて行く事を選んだのだった。

自らが生み出した存在を消さんと暴挙に走ったエラスだったが、そこに私心や優越等の感情は無く、ただひたすらに地球を守る存在を求める意思のみがあった。

そして、『大母=創造主』であるが故に、同格の理解者が全く存在しない環境に居ると言う、一種の孤独感も漂わせていた。

コウと対話する際のエラスは終始哀愁を纏っており、持論を語る際も『怒り』では無く『諦観』を感じさせられたが、そうした自身をリュウソウジャーが心身両面から乗り越えた結果になったからこそ、ようやくこの世への執着を手放して滅ぶ事を選べたのかもしれない。

余談

エラスが元から完全な存在である為か、あるいはゲームでいうならばラスボスの立ち位置であるからか経験値は特に設定されていない。

完全体の声はプリシャスと同じ朴璐美氏が担当。

「ドルイドンの母」の異名通り、声からして性別が女性である事が判明した為、『救急戦隊ゴーゴーファイブ』の大魔女グランディーヌ以来の女首領かつ女性のラスボスとなった(但し、完全体のおぞましく無性別な姿から、この様な存在の可能性もあるが)。

「ドルイドンの母」と言う異名に関しては、恐らくドルイドンの由来=ドルイドが主に信奉するのが、ダナン神族(女神ダヌの一族)だからではないかと推測される。

ファンの間ではデザイン面から邪神イリスルーゴサイトに似ているとよく言われるそうである。

名前について

名前は由来は恐らく単純に「偉い」、或いはエリスを捩った物か、前述の「偉い」にヘラ「ゴッデス(goddess、女神の意味)」の組み合わせと思われる。(恐竜にはエラスモサウルスがいる。)

また、地球と繋がっている事から「earth」、心臓の様な見た目から「heart」の片方、あるいは両方のアナグラム「erath」ではないかと言う説もある。

ボスキャラとして

上述の通り、ドルイドン族のボスにしてリュウソウ族の始祖たる彼女(?)であるが、リュウソウ族とドルイドン族がそろって、「自分の意に反した為に滅ぼす」と言うのは、『「子供は親の命令だけを聞け」と主張する毒親の暴論』にしか過ぎず、そう言う意味では無慈悲な神その物と言えるだろう。

但し、リュウソウ族とドルイドンを創り出したことは失敗と認めており、造物主として地球に害なす物を作ってしまった責任をとろうとしているだけともとれる。

どちらもエラスが滅ぼす事を決断したタイミングでは、敵視されても仕方ない程の暴走をしていたのは確かであり、そう言う意味では一方的と言うよりは、どっちもどっちと言う見方も出来てしまう。

しかし、その後の紆余曲折を経てリュウソウ族は、当初エラスが求めた使命に自分達の意思で目覚めており、それを考慮せずリュウソウ族の駆逐を現在も求め続け、真実を知って恭順したプリシャスも手に掛けたのは、やはり一方的と言わざるを得ないかも知れない(但し、プリシャスに関しては、ヤバソードの件で害意を向けてしまった為、「そんな奴が今になって忠誠を誓っても……」と言うのは否めない)。

また、近年になって『被造物は創造者や、基礎となった存在の長短を必ず備えてしまう』とされ、これをリュウソウ族とドルイドン族にも当てはめた場合、結局はエラス自身に問題があると言わざるを得ない。

上記の通り、リュウソウ族が使命に目覚めた=変化したにもかかわらずそれを認めず、あまつさえエラスが産み出していない、人間や他の生物を滅ぼしてまで地球を創り直すのは、自らが産み出し駆逐せんとする、ドルイドンと何ら変わりない行動を取っている(※やり直しの一環として植物を生やしたりしており、発言からすると現在生きている個人は殺すが、人間と言う種族自体は改めて生み直す事が可能なのかも知れない。殺される側としてはたまったものではないが、創造主の視点からすれば「種族が存在すればそれでよい」と言う判断は十分にありうる)。

但し、一方でエラスの行動は常に『地球を守る』一点に終始しており、最期の瞬間まであくまでも『地球の意志』に殉じると言うものであった事は、ボスキャラとしては珍しい。

そもそも、コウやその仲間達との対話の中で、自分よりも自分の生み出した存在の方が優れていると認めるのは、「自分が全能の存在ではない=神ではない」と言う事を認めているに等しい。

実際、ドルイドンからは神の如く崇められながらも、エラス自身は自らを「神」と称した事は一度もない。あくまでも、自分は『地球の意志』を代弁していると言う立ち位置である。

そう言う意味では、『万物の神』と言うよりも、『神に近い天使』と言うべきなのかもしれない。

また、スーパー戦隊のボスキャラとしては珍しく、戦隊勢力に対して悪意や敵意がなかったと言うのも特殊な所である。

近年、特に平成後期のスーパー戦隊は、『人類や地球の生き物を弄び、苦しめるだけ苦しめて殺す』と言う、残虐非道なボスキャラが多く、人類の滅ぼし方もその理念に準じたものが多い。

そんな中、『滅ぼすべき人類を幸せな夢の中に閉じ込めて、苦痛を味わわせずに殺す』と言う、慈悲のある滅ぼし方を選んだところは、自身の被造物に対する最後の愛情とも見える。

また、『自身の創造した人間によって殺される事になりながらも、その死を潔く受け入れる神』と言う構図は、スーパー戦隊のみならず、神話を含めたあらゆる創作物の中でも珍しいものである。

どの神話においてもそうだが、基本的には神という存在は自分に対して反逆する者、自分の意にそぐわない者は徹底的な排除を加えるものであり、それは同格の神であっても同じである。

ましてやそれが自身の被造物である人間相手の場合ともなれば、人間に倒されるその瞬間まで、あるいは人間に倒されても尚危害を加えるのが神と崇められる存在の殆どであり、エラスに近い神話を持つのは日本神話に出てくるスサノオ大国主くらいのものである。

彼らですら人間に殺されたわけではなく、また、彼らを超えたのが別の神であることを考慮すると、エラスの様な考えを持つ神は、神話においては絶無と言っていい。

ある意味では、エラス以上に寛容でかつ、慈悲深い神は存在しないと言っても過言ではないのだ。

そんなエラスにとって最大の欠点とは、エラス自身が孤独であったところにあるのだろう。

エラス自身は、何度も繰り返す様に純粋に『地球の意志』を守る事に全力を尽くしていただけである。

その使命の達成の為にリュウソウ族を生み出したものの、リュウソウ族はエラスの意に反して、同族での殺し合いや地球の破壊を始め、そんなリュウソウ族を滅ぼす為に産み出したドルイドンも、本来の使命を忘れ支配・蹂躙に悦を見出だすと言う、エラスの意志とは真逆の行動を取り始めた(だが、リュウソウ族とドルイドンが共に暴走したのは、「地球を守る事のみ考えなければならない自らの状態を、エラスが無意識の内にストレスや不満に感じ、それを発散させたい現れ」のように見える他、『守る為には守る側に闘争心と武力が、守る行為を行うにはが必要だが、闘争心と武力があっても敵が居ない為に、それらを持て余した故に暴走してしまった』可能性もある)。

エラスは『完璧な存在』であるが故に、そんなエラスの苦悩を分かち合える存在はなく、「間違えた人間でもやり直せる」と言う簡単な事実に気付けなかった。

『完璧な存在』であるがゆえに、『完璧以上の存在』になることができず、リュウソウ族やドルイドン族よりも大きく道を踏み外し、そんな自身の本当の過ちを最後の最後になって気付かせたのは、自身が見限ったはずのリュウソウ族であったと言うのは、何の因果であったのか。

尚、長いスーパー戦隊シリーズの中でもトドメの一撃に、レッドが参加する事なく倒された珍しいラスボスである(とは言え、事前にコウがエラスの胸部に傷痕を付ける、コウとの問答が決定打になったのも事実であり、見方によってはコウが2つの意味で先制を打ち、残る5人がそれに続いたとも言える)。

デザイン

第46話の予告ではクレオンが取り込まれた様な描写があったが、実際に取り込まれたのは、エラスを自分の道具として利用していたプリシャスの方だった

上記の様に、完全体のデザインにもプリシャスの要素が反映されており、デザインを担当した久正人氏によると、以下の通りらしい。

  • プリシャスの身体がバナナの皮のようにめくれ、『その間からエラスが出てきていると言うイメージ』でデザインされている。
  • 山羊の頭蓋骨のような顔部分も、『プリシャスの顔のチェス板模様が抜けたイメージ』。

また、上半身に8方向にある放射状に広がる赤い枠でチェスクイーン駒の動きを表現している。これを持って晴れて、ドルイドン族に全てのチェス駒等級が揃う事となった。

ちなみに事実上ドルイドンの頂点にして最強の存在という位置付けでありながらエラスはキングよりも重要度が低いはずのクイーン級と言う事になっているが、実際のゲームにおいてキング駒は全方向に1マスしか動けないのに対して、クイーン駒は全方向に好きなだけ動ける(将棋において飛車と角が複合したもの)等、むしろ駒としてはクイーンが一番強いとされている。

加えて、「地球から生える」という設定が「上から垂れ下がる」形で表現され、赤いコアの周りにチェス板模様があるのはドルイドンのバックルのモチーフの元になっているという裏設定。

そして完全体の頭部に植物の根のようなものが造形され、久氏の作品で最終回にテリジノサウルスをモチーフに使っていることから、エラスにもその意匠が組み込まれ、両腕が鋭く長い爪でデザインされた。

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