「はいよろこんで! 未来~!」
「僕の為に、毎日味噌汁を作れ!!」
スーツアクター:酒井和真
登場話数:バクアゲ20「イエスタデイ 椀ス モア」
データ
全高/193cm(ギャーソリン大暴走体/45.7m)
重量/257kg(ギャーソリン大暴走体/609.6t)
エンジン/定食屋のお椀
スピード/はいよろこんで最速
カスタム/オワンショルダー、ハシアンテナ
ナンバー/0101
ファーストラウンド(コース/市街地)
ファイナルラウンド(コース/ビル街)
概要
ハシリヤンが、定食屋のお椀に込められた燃えるワンモア魂をイグニッションし、地球に納車された苦魔獣。
懐石料理等で汁物を入れる際に使う、飾細工の施された漆塗りお椀からなる鎧を着込んだ様な外見で、朱色のお椀からなる頭部と胸鎧(よく見ると上部分にヤルカーが細工にあしらわれている)、蓋を複数重ねた形状の腕鎧と両肩上に掌サイズの朱塗りのお椀が配された肩鎧『オワンショルダー』、黒塗りのお椀による腹当に同じく黒塗りのお椀蓋(よく見るとハシリヤンマークの上半分が細工にあしらわれている)による腰鎧で構成される。
また、苦魔獣共通の燃える双眸は頭部のお椀の中身である熱い汁物からの湯気になっており、細工風のデザインに寄せられている事から京劇の仮面も連想させる。そして頭部左上よりは、後述するオワンドルの命令電波を受信する袋入り箸を模した『ハシアンテナ』が取り付けられている。
腰ベルトのバックルに付いているナンバープレートのナンバーは「0101」。
納車時点から、キャノンボーグによる魔改造が仕込まれた苦魔獣でもあり、クラクション部分にお椀が付いた形状のハンドル型コントローラー・『オワンドル』による遠隔操縦が可能。オワンドルを握った人物は燻っている未練や執着等の負の感情を増幅・暴走させられ、それをギャーソリンに変換しオワングルマーに回収される。
それと同時にオワングルマーと操縦者は思考や感覚的にリンクされ、操縦者はまるで自分の第二の身体の如くオワングルマーを操れるが、傍から見れば悪い方向に煽られた負の感情のまま暴れている怪物と大して変わらない。しかも操縦者は、自分の意志の元で動いてると勘違いしている事からそれなりにまともな立ち回りでオワングルマーを動かせるので、敵対者からすれば容易く倒せない厄介さも有する。
実の所、この苦魔獣の真の役割はキャノンボーグの試作した『個人から濃いギャーソリンを生成・入手するシステム』の実験体でしかなく、操縦者側が負の感情を爆発させるとオワンドルが生成したギャーソリンに耐えられず自壊、それに連動してハシアンテナが破損して制御を受け付けなくなり暴走する不安定さも抱える。
製造したキャノンボーグ及びハシリヤンにしてみれば、暴走の危険性は地球侵略の目的に対して寧ろ好都合の方が大きいが、オワングルマーの操縦者からすれば自分の身勝手な思念(欲望)を苦魔獣に捧げた挙句に制御を振り切られ暴れられる、正に『他人に自分のハンドルを握られる』のを体現した滑稽で哀れな事実が残るのみの結末になってしまう。
事実、この苦魔獣の操縦者に選ばれてしまった未来の元カレ・降野ノリオは「危なっかしい未来を胡散臭いブンブンジャーから取り戻す」と言う一見正義感に聞こえる願望をオワングルマーに込めて動かしていたが、次第に「未来を自分の思い通りにしたい」という感情の濁りが表出、結局それをハシリヤンの悪事に利用されていた実状を悟る事となった。
オワンショルダーよりお椀をワンダフルに投げつけ、捕獲した人物をお椀の中の温かい味噌汁に浸からせつつ閉じ込めて確保する能力を持つ(※なお中の味噌汁の温度は温泉位なのか、閉じ込められた対象は気持ちよくなりしばらく脱出したい気持ちが起こらなくなってしまう)。人物を閉じ込めたお椀は内部からの攻撃に強い上、味噌汁の湯気と外の空気による気圧差によって外から力づくで開けにくいという、あるあるな厄介さもある。
戦闘では曲面の多いお椀の鎧で敵の攻撃を弾きつつ、目からの光線等で反撃が可能だが、オワンショルダーでの捕獲能力が主で攻撃面は心許無い。しかしノリオよりギャーソリンとして取り込んだ感情により未来を取り戻そうと躍起になり、及びそれを妨害せんとするブンブンジャーへの敵意に燃えた事で、好戦的な姿勢を終始見せた。
一方、最初から他人の感情を込めながら操縦される事を考慮してか、オワングルマーの大元の人格は中身が無いお椀の如く希薄な物の様子(※戦闘経験が無いだろう操縦者をサポートする為、AI程度の思考判断能力は備えられている物と思われる)。
また、操縦命令を受信する度に「はいよろこんで!」と了承の言葉を叫ぶので遠隔操縦を敵に悟られ易い、実験体故の能力仕様の作りが甘い点も見受けられる。また遠隔操縦が利点なのに操縦者のノリオが戦闘を直接観察出来る比較的近い距離に潜んでいたが、これは『自分の復讐が果たされるのを目の前で見たい』というノリオの我儘があったからかもしれない。
本編での動向
かつて未来救出を届け屋に依頼するも、彼女もブンブンジャーになると決意し自身の元から反れて行った一件で、『流されやすい彼女はブンブンジャーに唆された』と怒りと悲しみで食事も喉を通らない降野ノリオ(作中の年月が現実と同じと仮定した場合、4ヶ月も引きずっていたことになるため相当ショックだった模様)。
今夜も定食屋でショックで放心し、店員から気をつかわれて味噌汁をサービスで追加してもらっていた。
だがこの店員はハシリヤン一味のデコトラーデ。彼の因縁の相手はハシリヤン達もよく知るブンブンジャーだと聞いて確認したキャノンボーグは、「奪われたら、奪い返せばいいだけです! わたくしめが、手伝ってさしあげましょう!」と言いつつ厨房から出て来ると味噌汁のお椀にイグニッションし(※いつもの装填役であるイターシャを動かさなかったので、このイグニッションキーは予め改造を仕込んでいた物だったのだろうか)、「お椀~!オ・ワ・ン!」と言いながら誕生。
そしてキャノンボーグがノリオにオワンドルを渡し、未来を奪い返す事に血走らせる彼の手足となって暴れる尖兵として納車されてしまう。
ノリオ「未来、今行くからね…! (※オワンドルを操作)…行くぞ!」
「オ~!ワン!」
翌日、市街地に現れて「どこだ、ブンブンジャー!未来を出せ〜!」と叫んで暴れて、ブンブンジャーはすぐさま駆けつけるも未来を求めて暴れ回る姿に困惑。
すぐにノリオの操作で未来を名指しで呼び、それへ相手が頭を傾げる隙に左肩のオワンショルダーの中に(どっかで見た様な構図で)未来/ブンピンクを閉じ込めてしまう。そして手元に戻ったお椀へ「ずう~っと一緒にいよう…」と語り掛けつつ左肩に戻し、仲間を救出しようと攻撃を始めた残りのブンブンジャーを全滅させろとの命令を受け、鎧で銃撃を弾きつつ呼び出したネジレッタと共に乱戦へ突入。
しかし何かに気づいた大也/ブンレッドは離脱、残された3人がピンクを救出しようと連携を決め一度はお椀を奪われるも、外気との気圧差でお椀の蓋はガッツリハマってしまい力づくでの開封ができず、そうしてもたついた間で反撃し奪い返す。
「(※転がったお椀を拾い)おお~っ、未来、ごめんねぇ…」
ブルー「温かい味噌汁と外の空気、内外の気圧差で蓋が開かなくなっている!」
ブラック「ええっ、……旅館のご飯でよく見る…!?」
その裏で、戦場からちょっと離れた所に潜んでいたノリオは先斗に見つかり、彼に撃たれそうになっていた。だがそこに大也も到着し一時ノリオへの攻撃を中止させる。オワングルマーが度々「はいよろこんで!!」と叫んでいた事から、誰かが操作している事に勘づき探っていたのだった。
ノリオ「ミラは僕と一緒にニューヨークへ行くはずだったんだ! なのにお前が! 未来にブンブンジャーなんて無理に決まっている!!」
大也「他人のハンドルを握ろうとすれば、自分のハンドルが疎かになるぞ!」
ノリオ「……うるさい…! うるさいうるさいうるさい! ミラを返せッ!!」
大也が説得しようとした際に生じた言い争いで、殴り掛かるも大也に羽交い絞めへされたノリオだったが、そこでオワンドルを無暗に振り回した衝撃でオワングルマーの操縦が狂い、ピンク=未来が意識を取り戻しお椀の中で大暴れ。
それに引っ張られオワングルマーが困惑する様を見て、「僕は君に戻って来てほしいだけなのに……、どうして逆らうんだよッ!!」とノリオは認めず怒り、ギャーソリンが大量生成。その結果高濃度のギャーソリンに耐えきれずオワンドルとハシアンテナが破損、オワングルマーは暴走してしまう。
キャノンボーグ「一人の地球人から、より濃いギャーソリンを集められればと思いましたが……。はぁ…どうやら失敗の様です…」
先斗「ピンクちゃんのハンドルを握ろうとして、ハシリヤンにハンドルを握られた気分はどうだ?」
ノリオ「……」
この状態ではもはや見境はつかずノリオにまで攻撃してしまうが、咄嗟にブンブンコントローラーのバリアで先斗が防御した事でかろうじて無事。
そして、この騒動に始末をつけるべく先斗はブンバイオレットにチェンジして参戦。彼の猛攻でお椀が弾き飛ばされ、気圧差で開かない時の対処方を知るブンブルーが難無く開封した事でピンクも救出。
これまで閉じ込められた恨みとばかりに「あんの苦魔獣、お仕置きしてやる!!」と怒ったピンクはバイオレットも巻き込みつつ猛反撃。そのアグレッシブさに驚き知ろうとしていなかった自分を猛省したノリオと、この一度握ったハンドルを決して離さない気概こそが自慢の運転屋だと、未来を称賛する大也の会話を他所に、ピンクはオワングルマーを一方的に圧倒し「お椀持つ手は~、右~、左~、上~、下~!? お~わ~んんん~~ッ!!?」と動作不能させるまでに追い詰めた。
直後、その後ろからビュンビュンアロードライブでトドメと行くバイオレットだったが、譲らないとばかりにピンクもブンブンツイストドライブで必殺技を仕掛けて動きを牽制、先を競うが如く攻撃を叩き込まれ、頑丈な鎧が意味を成さない脳天に直撃し敗北。
奇しくもピンクからはハンドル型の武器によるハンドル操作で地面にいい様に転ばされ、さらにバイオレットも加わりコントローラーの機能を持った武器で仕留められるという大変皮肉な格好で敗北を喫したのだった。
ピンク「ワンモアお仕置き、いっくよーっ!」
「「「「オーライ!」」」」
オレンジ「…お椀(わん)だけにねぇ」
ブラック「なるほど!」
直後、ヤルカーのハイウェイ光線でギャーソリン大暴走態化、「おお~っ、おわ~ん!」と叫んでビル街に復活。撃退に出撃したブンブンジャーロボビルダー、ビュンビュンマッハーロボの攻撃もお椀の鎧で弾きつつ、「こいつで、ご馳走様だ~っ!」とオワンショルダーを発動、2体をお椀に閉じ込めてしまおうとする。
だが「二度も入って、た~ま~る~か~っ!!」と息巻くピンクの操縦でビルダーが上からきた蓋を喰い止め、押し返し浮かした隙にマッハーロボが蓋を撃って破壊。そのままビルダーがお椀を壊して技を破るのへ怯むも、ノリオの未練を反映して記事冒頭の2番目の台詞を言いながら両手でお椀を投げてワンチャン勝利を試みたが、「絶対お断りッ!」と返されつつバクアゲハンマーにお椀を叩き落されてしまう。
最期はビルダーのハンマーで起こされた衝撃波で吹き飛んだ所を、マッハーロボのビュンビュンフィニッシュに撃ち貫かれ、更に追撃のバクアゲハンマー・ブンブンクラッシュで叩き伏せられて「オー、ワ〜ン…ワ〜〜ン……!」と泣きつつ爆散。哀れにワンワン泣きながらフィニッシュした。
その最後は苦魔獣という器を得て暴れ回った、ノリオの未来への未練と独り善がり等の負の感情が、自分のハンドルを握り走り続ける未来らブンブンジャーに退治された光景でもあった。
ピンク「ワンモア、大勝利ーー! よっしゃーー!!」
そして事が終わった後、自分に対してのケジメなのかノリオは未来に顔を見せず、大也に見送られながら一人空港からニューヨークへと旅立つのだった。
そしてそんな彼が乗っているかもしれない飛行機が飛ぶ下で、昔から“人の為に請けた仕事は何があっても完遂する”のを貫いていた未来は今日もバイトに勤しむのであった。
余談
- プレートのナンバーは「お椀」を2回繰り返した語呂合わせ( 0(お)・1(わん))。
- お椀をモチーフにした戦隊怪人はオワングルマーが初で、食器モチーフで一括りにするなら、『特命戦隊ゴーバスターズ』のフォークロイド以来。
- CVの鶴岡氏は、TVシリーズでは『獣電戦隊キョウリュウジャー』の怒りの戦騎ドゴルド以来、11年ぶりのスーパー戦隊シリーズ出演で、Vシネマでは同じく『帰ってきた獣電戦隊キョウリュウジャー 100 YEARS AFTER』の卑屈の戦騎スネルド以来10年ぶりの出演。
- また、鶴岡氏は車好きでもあり、収録には愛車で来たとの事。