「みほちゃんは僕が守る。絶対に……!たとえ相手が誰でも……何をしても……!」
概要
『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』の登場人物である雉野つよしのこと。
ドン8話「ろんげのとりこ」にて、みほちゃんのセコムと呼ぶに相応しい愛の重さおよび、それによって引き起こされた狂気に対して多くの視聴者を慄かせた。
当時、ドンブラ脳/ドンブラ中毒にすら慣れていない視聴者は、当初のイメージから今作の優しさ、潤滑油的存在と思われていたつよしの豹変っぷり、そしてその狂気極まるヤンデレぶり(詳しくは余談)に恐怖し、このセコム系タグが生まれた。
発端(ドン8話)
※以下、ドン8話「ろんげのとりこ」のネタバレ注意
妻を誘拐され、危害を加えられたと知った雉野つよしは、犯人の画家・榊/魔進鬼に対して怒り狂い、何時になく鬼気迫る勢いで変身、戦いに挑んだ。
ドンモモタロウ以下、他のドンブラザーズメンバーが合流しても尚も、つよしの怒りは収まる事なく、遂には魔進鬼を人間に戻すべく、必殺技を繰り出そうとしたタロウを妨害。魔進鬼を殺そうと戦いの場に乱入していたソノイをアシストする事で、『愛するみほを傷つけた咎人』とはいえど一般人を個人的な私情で、わざとこの世から消し去らせてしまうという暴挙に及んでしまった。
ドンブラザーズがヒトツ鬼を脳人に倒されないようにしていることからわかるように、つよしは脳人がヒトツ鬼を倒す=ヒトツ鬼の宿主が死亡するということを知っている。つまり、故意犯である。
これまでスーパー戦隊シリーズでは、戦隊から守られるべき筈の一般人が、個人的な私利私欲の為に敵の悪事の片棒を担いだり、戦隊サイドの人物を翻弄するといったケースが何度かあり、その度に戦隊側は当事者の悪意や身勝手さに憤ったり、相応な説教や制裁を与える事はあれど、『見限る形で、命を奪う事で報いを与える』といったケースにまで及んだ事例は皆無だった。
それ故に、流石に直接手を加えたわけではないにしても、有り体に言うと(ダークヒーローでもない)戦隊メンバーが一般人を見殺して、死に追いやった今回の事例は、スーパー戦隊シリーズにおいても前代未聞であり、如何に暴太郎戦隊ドンブラザーズという井上キャラを始めとした全力で視聴者を置いてけぼりにする作品だとしても、あまりにもショックの度合いが大き過ぎる大事件となった。
ドン9話以降
なんとつよしは何事も無かったかのように元のツッコミ担当に戻っている。みほさえ無事なら狂気は発動しないようだ。
しかしながら、ドン11話では原因不明の病状に苦しむ病人の前で、挨拶もそこそこに鬼頭はるかに対してみほの写真を見せつけて自慢してキモがられたり、ドン24話では「騙されてる」と侮辱された(と思い込んだ)事で憤慨する等、みほが関わると、色んな面で非常識だったり、面倒な言動・態度をみせるなど、普段とは逆に周囲を振り回す立場になる事もある。
※以下、ドン9話以降の物語の主幹に関わる重大なネタバレ注意!
だが、上述のドン11話のラストシーンにおいて、つよしが人としての道を外れても守りたいと想っているみほ自身が、人ならざる存在である可能性が出てきた。
そしてドン14話でみほが事故によって怪我をしたことで、つよしは再び犯人に強い憎悪を覚える。
しかし、その瞬間何かの影が浮かび上がっていた。
そのうえ、犯人は同じドンブラザーズの犬塚翼であった。
その翌回であるドン15話にて視聴者の予想と懸念が見事的中する形で、つよしは犯人への怒りと憎しみに捉われる形で、自らが討伐すべきヒトツ鬼・激走鬼に変貌し、道行く車という車を消去してまわるという暴挙を起し、仲間であるサルブラザーやオニシスターにも襲いかかってしまう。
幸い、この直後に新たに戦士となった桃谷ジロウや、タロウに倒される形でヒトツ鬼から開放されると、流石にこの時ばかりはつよしも自分が憎悪に駆られてとんでもない事をしてしまったと自覚し、タロウに対して号泣しながら謝罪し、翌回でははるかや猿原真一に対しても改めて謝罪していた。
ちなみに、幸か不幸か今回の騒動の根源となった『みほに怪我を負わせた人物』が自身の顔見知り(にして同じドンブラザーズメンバーである)の翼であった事を知る事はなかった。
その後は、一先ず度の過ぎた狂気に駆られる様な事態は起きていないものの、現時点でも
そして
- みほ、翼との自覚のない三角関係
とつよしが未だ知らずにいるも、知り得た時には修羅場不可避な超絶不穏な事実が控えている状態にあり、それらの事実が明らかになった時、つよしの内なる狂気がこれまで以上に酷く暴走するであろうと多くの視聴者から不安視されている状態にある。
そして、ドン30話でつよしはアノーニによってみほの正体が獣人であると知ってしまうも、つよし本人はその事実が信じられない様子だった。
加えて同話の終わりに倒れているみほを介抱しているつよしの姿を翼が目撃しており……
そして案の定ドン31話では修羅場になるようだ。
彼らは一体どうなるのだろうか……
……と思われたが蓋を開けてみると、ドン31話でつよしの修羅場の相手になったのは翼ではなく、訳あって翼の身代わりになった事で、イヌブラザーの変身者であるかと思われた全く関係ない一般人の乾龍二であった。その理由も「乾がみほを自分の別れた恋人“祥子”であると誤解して奪おうとした」もので、結局翼との三角関係自体は何も進展しなかった。
しかし、イヌブラザーの変身者と信じ込んでいた乾と揉めた際、「みほちゃんを奪おうとしている人とは、一緒に戦っていけません!」と奮然としながら宣言するつよしの姿は、この先本当に真実が明らかになった時、巻き起こる修羅場がより一層泥沼となろう事を示唆させるかのようでもあった……
そしてついにドン34話でつよしとみほと翼の三角関係に触れ……
愛すべき故の、非情な行動(ドン34話ネタバレ注意)
犬塚はみほが夏美であるという確信を得るため、雉野に「みほに料理を作ってほしい」とお願いをする。
出された料理がかつて自分が教えたものばかりだったことから、目の前の女性が夏美だと確信する犬塚。
犬塚の零した「などと申しており」という言葉を聞いたみほは突然夏美に戻り帰ろうとする犬塚の後を追いかけ抱きしめた。
みほが夏美であることや獣人の正体など何も知らないつよしは、追いかけた先で最愛の妻と大切な一番の友人が抱き合っている姿を目撃してしまう。
つよしに見られたことを知った犬塚は、弁明もせず夏美の手を引きつよしの前から逃走した。
翌日雉野は犬塚を呼び出し「みほちゃんを返してくれませんか」と訴えたが、すげなく断られてしまう。
「みほは夏美だ」「みほなんていない」とつよしからすれば意味のわからないことを捲し立てられ、「バカなことを言うな」と激昂するつよし。
そしてついに、あらかじめ通報しておいた警察に犬塚を逮捕させてしまう。
「俺は無実だ」と言う犬塚に対して雉野は
「有罪ですよ」
と不気味な勝ち誇った笑みで答えたのであった。
みほを失ったつよし(ドン35話以降ネタバレ注意)
ドン35話冒頭では、情緒が不安定になっているつよしは他のメンバーに八つ当たりをしてしまう。その後、偶然見つけた夏美に「一緒に帰ろう」と話しかけるも「誰ですか?」と取り合ってもらえず、しつこく迫った結果つよしも警察に捉えられる。そしてあろう事か、留置場で翼と相部屋になってしまう。
その際、翼への憎しみや懐疑心に囚われていた事で被害妄想を拗れさせ、取っ組み合いに発展。
超獣鬼との戦闘でも機嫌は直っていなかった。
ドン36話では警察から釈放されたつよしであったが、みほは依然として戻ってきていなかった。焦り、そして苛立ちを抱えたまま職場復帰するも、仕事中もみほの写真を見ながら「みほちゃんみほちゃんみほちゃんみほちゃん……」と取り憑かれたかのように呟き続ける。『5830億円』というあり得ない数字の見積もりミスを出すなど、仕事もまともに手がつかない有様で、いつものように叱りつけてきた上司の山田に対して頭を鷲掴みながら「うるさぁぁいッ!僕は今忙しいんだ!大体なんだ計算ミスくらい!?たまには自分でやったらどうなんだぁぁッ!?」と恫喝し返すといういつもならありえない程に反抗的な態度を向ける。その気迫に、流石の山田も思わず敬語を使ってしまう程恐縮しており、同僚達をも困惑させていた。
募る焦燥に押し潰されそうになっているつよしを他所に、つよしが「みほ」と呼ぶ夏美(をコピーした鶴獣人)の関係性に疑問を抱いたタロウは、彼女に接触して直接真偽を確かめようとする。
すると、彼女の口から返ってきたのは意味深な答えだった。
「みほは、夏美の“夢”だ……」
その言葉が意味するものとは一体……?
ドン37話では、前触れもなく機嫌を取り戻し、いつもの穏やかな性格に戻っていた。
つよし曰く「みほちゃんが帰ってきた」との事だったが、前回の当人の様子からしてみほの人格に戻った様子はなく、また本話においても劇中にみほが登場する場面が見られなかった(キャストクレジットに名前もなかった)事から、つよしの発言に対し早々に違和感を覚える視聴者も少なからずいたが……
強烈にキャラの濃い新たな敵の登場というインパクトで上記の違和感も忘れられかけていた37話のラスト。
戦いを終えて、帰宅したつよしは電気もつけずに、愛する“みほ”の下に向かって駆け寄りながら、いつものように甘く優しい口ぶりで話しかける。
「ただいま~、みほちゃ~ん♪遅くなっちゃってゴメンねぇ。今日もさぁ色々あって疲れちゃったよ~。寂しかった?アハハッ!僕もだよぉ~♪一人にさせてゴメンねぇ~」
……が、彼が嬉々と話しかける先にあったのはみほの姿ではなく、一体の小さな人形だった……
※イラストは某アニメ風のタッチで中和しています。
みほがいなくなった現実を受け入れられないあまり、つよしはとうとう人形をみほと思い込んで接するという違う意味で「超恐い」状態に陥っていた……
その後、38話のラストで本当にみほが戻ってきた事で、一先ず心の平穏を取り戻したつよしであったが、一番重要な問題である『みほが獣人であること』は未だに信じていない。
また、35話から37話でみせた一連の情緒不安定さや、みほを失う事で生じる心の均衡が崩れた際の奇行から、その真実を思い知らされた時、再び視聴者を恐怖に陥れる程の“狂気”が爆発すると大いに恐れられていたのだが……
つよし、翼に決闘を挑む(ドン44話ネタバレ注意)
35~37話での一件もあってか、つよしのみほに対する度が過ぎる束縛や独占欲は日に日に顕著なものとなり、とうとうみほを若干辟易させるまでになっていた。
そんな中、みほの正体を知っている翼は、ソノニから唆された「獣人を倒せば、コピーされた元の人間は帰ってくる」という誤った情報を信じ、彼女からの焚きつけられる形でみほに戦いを挑み、ニンジャークソードで斬りつけて深手を負わせてしまう。
それを知ったつよしは、当然ながら怒り狂い、翼を呼び出すと決闘を申し込む。
改めてみほが獣人であると言い続ける翼に聞く耳を持たず、怒りと憎しみに駆られ半狂乱となりながらキジブラザーにチェンジ。
しかも、この時点ではつよしは翼がイヌブラザーであることを知らず、一般人(と信じ込んでいる)相手に変身するというスーパー戦隊シリーズのある種のタブーの一つを犯していた。
翼もイヌブラザーにチェンジし、ここで初めてお互いに同じ戦隊の仲間同士であった事を知るつよし(と翼)。だったがその事に驚く余裕もなく、死闘を繰り広げたつよしは、激闘の末に変身解除された翼に向かってドンブラスターの銃口を向けてトドメを刺そうとする(これもシリーズではタブーのひとつである)が、そこへ割って入り翼を庇おうとしたソノニを誤射してしまう。
その直後にヒトツ鬼が現れた事もあり、一先ず翼との決闘はなし崩し的に休戦となり、ドンブラザーズとして協力しヒトツ鬼と戦ったが……
三度目のヒトツ鬼。そして遂に……(ドン45話ネタバレ注意)
前話の戦いを経て、ようやく翼が仲間である事を認識して彼を歓迎するドンブラザーズのメンバー。そんな中でつよしだけは、みほの一件を理由に翼を断固拒絶する。
さらに、前話の一件がきっかけで、またもみほがいなくなったと嘆くつよしだったが(翼を除く)メンバーで唯一、みほの正体を知っているタロウも「あれはみほではない」と翼に同調した事から「皆大嫌いだぁぁぁッ!!」と他の仲間達をも突き放すなど、せっかく全メンバーが集結したドンブラザーズに早くも不協和音を齎してしまった。
その後、みほを捜索する為に自作のチラシ(そのチラシの内容はみほの写真が大半を占め、肝心の自分の連絡先が書いてないという狂気じみた上に本末転倒な代物)や立て看板を文字通り街中に所狭しと貼りまくっていたが、その過程でみほに帰ってきてほしい気持ちが暴走したつよしは三度、ヒトツ鬼へと変貌してしまう。
しかも、此度は「自分がいなければドンオニタイジンになれない」とわかった上でヒトツ鬼ングになるなど、半ば確信犯的な行動をとっており、最早ヒトツ鬼になって暴走する事自体に躊躇いがないような振る舞いを見せる。
そして、愛に狂い、暴れ続けた果てにつよしを待ち受けていたのは、ソノシ率いる新たな脳人達による非情な攻撃による消去であった……
かつて私情を理由にヒトツ鬼となった一般人を見殺す形で脳人に消去させた自分が『ヒトツ鬼として脳人に消去される』という文字通りの因果応報といえる事態に陥ってしまった。しかし、かつて脳人として一般人を消去していたソノイが許しの輪を回したことで、つよしは榊を含む今まで消去されていた人々と共に現実世界に戻ってくることができた。
しかしその一方で獣人であるみほは猫獣人に襲われて川の中に倒れ、川に映った満月に沈むように消えていったのだった……
みほ=夏美をコピーした鶴獣人の生死は不明。しかし、もし生きていたとしてもタロウが『獣人は森から出ることを禁ずる』と宣言しており、一緒に暮らすことは不可能と思われる。また、翼は夏美を取り戻しており、これによって獣人であるみほは不可殺ではなくなっている。
このことから現時点ではつよしにとっては絶望的な展開であるのだが……
そして残り僅かとなったドンブラザーズのストーリーの中で、一話毎に二転三転と状況が激震しているが、彼とその周りを取り巻く者達は皆、どんなエンドへと向かっていくのか……?
本質
一部視聴者からはヤンデレ雉呼ばわりされているが、正確にはヤンデレというより、愛する妻に「どれだけ小さかろうと危害が加わるならどんな手段を用いても徹底的に防衛、危害を排除する」という過剰な防衛本能の暴走が正しい。
更につよしが顕現させたヒトツ鬼の触媒になった欲望を深掘りすると、「妻(に仮託した自分のアイデンティティー)が傷付けられて損なわれる事への怒りと恐怖」、「太陽に例えられる妻への大きな愛……から滲み出る妻への傾倒と執着」であるのが推測され、結局その欲望(感情)の原点がつよしの根本的な難点である、“「自分に長所なんて無い」(と思い込んだ)凡人”であることへ行き着く。
要は根付いてしまったネガティブな自己評価を変えるため、他人に尽くして優しさを極める方法を採ったが、低過ぎる自己評価のせいで上手く行かなければ自分を必要以上になじり、成功しても「まだ合格点へ至ってない」と辛辣な評価を自分に下し否定するなど、結局ネガティブな自己評価を変えるどころかより従ってしまい縛られる悪循環の思考パターンが形成されてしまっている様子。実際つよしの初主役回となったドン6話では、この思考パターンがつぶさに描写されている。
また前々から、自分への興味が薄い、あるいは嫌悪の対象となっているのを読まれていたつよしだったが、その面が燻っているせいで妻への深い愛が自分の嫌いな面への当て付けになっている節もあった。
ある意味、何をやっても自分で自分を裁く状態に持って行ってしまう悪癖が出来てしまっているつよしは、潜在的に自分自身への敵意を持っているのが想像に難くなく、会社の上司である山田部長の嫌味を拡大解釈して自分を裁いていると認識する傾向からもそれが覗える。そしてこの面がある故にみほへの愛を深めても、その結果を自分の嫌いな面へ見せ付け見下している側面も出来てしまっているらしく、そこから優越感を感じられる環境を脅かす存在へは激しい怒りと憎悪を向ける側面へも派生している。
この面の化身が激走鬼といえる一方、つよしに実質見殺しにされた魔進鬼はつよしが優越感に浸れる環境を奪いに来た『つよしが嫌う自分』を仮託されていたとも読める。
非常にややこしい心理状態だが、結局は自分の周りにある人や物を総動員してつよしは自分の短所を裁き苦しめているのであり、目に見える実害が無い様に見えて自分で自分の長所を見付けて成長させるチャンスを尽く潰し、身近な他者への認知も歪み続けている状態だった。しかも自己欺瞞している上に他者への敵意と害意が殆ど無い為、誰かにこの歪みを咎められて改善する事も困難になっており、いつかは取り返しの付かない最悪の状態を招く悪縁へ繋がりかねない。
翼との邂逅を切っ掛けに、妻が自分の元より消えた事実に耐え切れず心が壊れてしまったつよしは、奇しくも逃げるのに必死でそれ以外の事を知る機会を断ち切った翼に似た状態へと陥り始めた。一見元の穏やかな姿に戻っただけのため、ドンブラザーズにも自分の現状を正確に伝えられておらず、自分の心の異常を察知し得るのが敵意を向けた翼くらいしかいないという状態に。おまけに翼も重要な事を知ったり教える機会を逃す間の悪さを拗らせ引き摺っており、総じて両者とも誰かに助けてもらう事が絶望的に無理な孤立無縁の袋小路に陥ってしまっている。
そしてソノニの嘘を信じてしまった翼が妻を攻撃した事で、際限無く大きくなり続けたすれ違い故の不発弾はついに破裂。イヌブラザーの正体である翼は勿論、彼を歓迎したドンブラザーズに対しても激怒して飛び出し、その果てに自らの消滅と言う結果へ至る。
その後は脳人三人衆とドンブラザーズの間に出来ていた縁によって消滅から復活した事、自分の犯していた罪も取り返しが付いていた事からつよし本人は五体満足で戻って来れるも、肝心のみほは他者の運命を歪めていた自分の行いへの応報だったのか、誰も知らない所で命を落としつよしの前へ二度と帰らない結末を迎えた。
御伽噺の終わり、つよしが見る『夢の続き』(ドン49~最終話)
みほにまつわる事実にショックを受けてから紆余曲折、現状を受け入れ深く意気消沈し、これまで居た場所より離れようとするつよしだったが、そんな彼を気に掛けてくれる人らはいつの間にか妻以外にも出来ていた。
いや正しくは、最初からつよしの強みは優しさであって、それに気付いている人も当たり前の事であるから感謝をしないだけで元から何人もいた。その事実をつよし当人の低過ぎる自己評価が覆い隠していただけ、つまりは自分で自分を信じられず他人の評価に存在を依存していたのが、つよしの心理的な問題点の核心だったのだ。
鶴の獣人はその点を利用し、自分の性質を満たす為につよしと事実上の共同幻想もとい御伽噺、『夢』を紡ぎ続けていたと言えよう。
しかしそんな『夢』とは別口で、つよしはドンブラザーズの一員として戦う自分にいつしか誇りを持てる様になり、それによって自分が自分を信じられているのを実感するに至る。
そして全てが終わり、みほが消えた現実を受け入れたのを境として自分を見返した事で、「自分自身の誇りの為にドンブラザーズであり続ける」答えを見出し、他人の評価に存在を依存する問題点を克服するに至った。物語初期と比較して、ほんの些細な変化を遠回りの道のりを経て起こしたものの、その変化はつよしと彼が感じる世界を確実に一変させる物で、彼が一人の人間として心理的に自立した事を示していた。
その後、御伽噺の舞台であったマンションの一室を退出したつよしだったが、そんな彼へ翼と別れた夏美が「“夢の続き”を見ませんか?」と語り掛ける。
この思わぬ形で生まれた新たな縁へつよしがどう答えるかは解からないが、自分と周りを正しく見つめる事が出来る様になった彼が同じ過ちを繰り返す可能性は低く、逆に御伽噺を超えたより素晴らしい現実の未来に繋がるかもしれない。そんな希望も匂わせた結末を持って、お供の雉(ヒーロー)になった優しい人の物語はハッピーエンドで閉幕したのだった。
余談
雑誌「暴太郎戦隊ドンブラザーズとあそぼう!」では、つよしは
「ふだんはおだやかで、おくさんをあいしているやさしいだんなさんだよ。」と紹介されているが、このタグが生まれた経緯を知っている視聴者からすると、彼の本質を余す事なく伝えている洒落にならない文章だと気づく。
根本的な本質も踏まえて見返すと、正確には凡人と井上キャラの境界を行ったり来たりしている状態なのが、つよしというキャラクターの一番の特徴と言えるだろう。
そもそも、自分の短所やトラウマ等の受け入れ難い面への敵意は人間誰でも抱く物であり、それを解消出来る人もいるなら拗らせる人だっている。そして、自分の受け入れ難い面との付き合い方を見失い、その反動として自分の外にある何かへ偏執的になる人物の創造・表現に卓越、結果そうした人物への深い理解度も有したのが井上敏樹と言う脚本家である。
こうした井上キャラの濃さに怪物を見る様な認識を持つ視聴者も数多いが、そうした反応に対して万人が井上御大の描いたキャラクターの様な存在に成り得る可能性を持っているとのメッセージを込めて造られたのが、つよしとも言えるかもしれない。
関連タグ
みんなのトラウマ ヤベー奴 確信犯 極端 過保護 ヒステリー
自己嫌悪(が募って生じた自分への敵意や攻撃性が周りに投影された):本質
無敵の人:つよしは「失うものがない」と紹介されていたが、失うものがない人の究極がこれに当たる。
結城凱:同じく井上敏樹が手掛けた鳥モチーフのスーパー戦隊シリーズのメンバーで、つよし同様に当初はヒーローとしての矜持よりも、愛する人を優先していた。
草加雅人、登太牙:別作品の仮面ライダーシリーズではあるが、愛する人達に対する愛情表現が重すぎる上に歪んでいる井上キャラ達。因みにつよしは愛する人と仲間の一人が愛する人が同一の顔であるのに対し、彼ら2人の愛する人達はそれぞれ中の人が同一である。また前者とはマジキチスマイルという点も共通してしまった。