《豼?襍ー謌ヲ髫》
「みほちゃん……みほちゃんを傷付けるなんて……許せない……!許セナイ、絶対ニィ!!」
「交~通安全!交通安全!交通安全!交通安全!交通安全〜ッ!!」
データ
身長/190cm
体重/223kg
スキン/フルアクセルサラリーマン
むかしむかし/つよしは芋羊羹を食べておなかを壊したことがあるそうな……
概要
フェズントコンサルタントの会社員・雉野つよしの「みほちゃんを傷つけられたことが許せない」という欲望……というか怒りによって誕生した、激走モデルのヒトツ鬼。
やや特殊な形なれど「戦隊のレギュラーメンバーが、私的なエゴで悪の一般怪人に堕ちた姿」という、前代未聞で邪道だらけの『ドンブラザーズ』を象徴する存在の一つ。
元ネタの名乗りよろしく、顕現した瞬間の「交通安全!」の台詞が1度間延びしている。
ベニツ鬼がラジアルタイヤとマフラーをプロテクター状に組み合わせた様なスキン・“フルアクセルサラリーマン”を身に纏った姿。両肩のタイヤは激走しているイメージとして、後部に伸びた三連マフラーと炎の意匠があしらわれ、全身にはバンパーガードが施されている。一方、頭部は3対6本のマフラーが側頭部に配され、額には赤ランプしかない三連シグナル型のヘッドランプをあしらっている他、左脇にサラリーマンの象徴である白いネクタイを鉢巻のように結び付け垂らしている。またその顔は口元のバンパーガードを強く噛み締めているようにも、つよしの心情を表した歯を食いしばった表情をしているように見える。
両肩のタイヤにより全体のシルエットはマッシブに見え、宿主のつよしやチェンジ後のキジブラザーとは正反対の屈強で威圧感ある外見となった。
変貌の際には「豼?襍ー謌ヲ髫」(激走戦隊)の文字化けと、激走戦隊カーレンジャーのクレストが浮かび上がる。
激走鬼の名の通りの足の速さが特徴。その点だけなら前回の高速鬼と似ているが、宿主の欲望と隠れた気質が肥大化・暴走した結果気性や攻撃性が大きく強まり、自身に対する妨害も勢いに任せてぶっちぎりながら欲望を叶えようと暴れ回る。
更に元となった欲望の影響で「交通違反するかもしれない“走る車”はこの世から消えれば良い」と言う短絡的思考に陥り、「交通安全!」と危険シグナルを口にしながらクラクション音と共に額のシグナルより放つフラッシュ「車マジックフラッシュ」で自動車やバイク等の車両を消去する能力を発現・行使。自身の目に付いた走行中の車両を片っ端から消去してしまう。
一方、宿主が直接変異したタイプのヒトツ鬼なので攻撃そのものは普通に通用するが、宿主がこれまでドンブラザーズの一員として戦い抜いた経験から戦闘技量は並以上にあり、それに加えて鬼険棒を水平に構え独楽の如く高速回転しつつ相手に斬り込む突撃技「激走斬り」で相手を蹴散らせる他、彼に情があるメンバーは本気で戦うことが難しいので、単体の実力はヒトツ鬼の中でも頭一つ抜けている。
活躍
前話の騒動の裏、バイクで逃亡していた翼と接触未遂を起こしたみほは負傷、一時入院する羽目になった。コレを知ったつよしは嘆き、すぐに交通事故への憤怒をどんどん募らせた事で激走鬼を顕現させてしまう。
その後は妻への憐憫とセットで生じる、つよしの交通事故への瞬間的な怒りと憎しみをトリガーに一時的な実体化を果たし、街中に出没しては通り魔的に車両を消していた様子。その内に転送されて来たサルブラザー・オニシスターと交戦、強まった攻撃性のまま激走斬りを浴びせて難無く地に倒れ伏せさせるも、ここで大きな石を携えたジロウが出現。彼の「スーパードラゴンボンバー」なる石投げを高速移動で悠々とかわし(外れた石はサルブラザーに直撃)、そのまま逃げおおせた。
「許せないっ……何故、みほちゃんがこんな目にっ!」
「ウアアッ!!交通安全~!!消エロッ、消エロッッ!!」
それからつよしは何とか元に戻り、数日経ってみほも退院。
だがまだ怪我が治り切らず包帯も取れないみほの姿に、つよしは痛ましさと共に交通事故への終わりなき怒りが募り、遂に感情のタガが外れて暴走。駆けつけた真一とはるかすらも仲間と認識できなくなり突発的に車を消しても収まらない欲望のまま地下駐車場で完全に変貌。人を超えた交通安全の鬼と化す。
真一「あっ雉野、見なかったか?こっちにヒトツ鬼が来た……」
つよし「……見たよ……交通安全~ッッ!!!」
真一「きっ、雉野!?」
はるか「なんで雉野が!?」
しかもこの時点でのドンブラザーズはタロウが不在、キビ・ポイントの反動ではるかは歩く力を、真一はアイデンティティたる俳句を詠む力を失い事実上の戦闘不能、翼は夏美の捜索を最優先と、マトモに戦えるメンバーが不在と最悪の状況であった。無理を押して迎撃に現れたサルブラザーとオニシスターを一方的に押していたが、直後に現れたジロウの手元に龍虎之戟が出現。それを用いてアバターチェンジしたドンドラゴクウへ向かって行くも、槍術とカンフーを合わせたドラゴクウの反撃を一方的に浴びたので不利を悟り、相手の攻撃が止んだ隙を突いて逃走する。
ソノイ「ドンブラザーズの者達よ。一度だけ、チャンスをやろう。タロウは今異空間に眠っている。迎えに行け。その為には私にヒトツ鬼を斬らせることだ」
その後、現状を喫茶どんぶらで話していた3人だったが、そこへソノイが「自分がヒトツ鬼を斬れば、タロウの送られた異空間に入って彼を連れ出せる」と取引を持ち掛ける。
「ウオオォォ!消エロォォ!!オ前モ消エロォォ!!!」
一方、妨害も無くなり欲望のまま激走を続けていた激走鬼だったが、そこでドンブラザーズとの取引を交わしたソノイと出くわし様に斬り捨てられ、そのまま脳人に消去された人々が隔離される亜空間に転送。そしてその瞬間に物陰から飛び出したドラゴクウはつよしの身体に触り、共に亜空間へ突入する。
そこで自我を取り戻し目覚めたつよしは、自分の消去に便乗して亜空間に潜入して来たドラゴクウの指示でキジブラザーにチェンジ、タロウの帰還に一役買う。
そして現実世界へ復帰……したのは良かったが、そこは不運にも廃車置き場。場所が悪すぎたのかつよしは悶え苦しみ、再度激走鬼に変貌してしまう。
直後に同時変身を遂げたドンモモタロウとドラゴクウとの戦闘になり、曲がりなりにもドンブラザーズのメンバーが変異しただけにそこそこの戦闘力を見せるが、相手の気迫を込めた波状攻撃に押された挙句、しかもそこが先述の通り「廃車の列」と動きが大きく制限される場所だった為攻撃を避けられず吹っ飛ばされる。
起死回生の激走斬りもドラゴクウが龍虎之戟を構えて止められ、そのまま足元を掬い上げられて転倒した所に、トドメの「桃代無敵・アバター乱舞」と「ライトニングドラゴンフラッシュ」を同時に喰らって砕け散り、元のつよしに戻ると共にヒトツ鬼ングにはならずにカーレンジャーギアをドロップ。そしてタロウに拾われたことでアバタロウギアへと変化した(同時に消された車両達も復活したと思われる)。
ヒトツ鬼から解放された直後、つよしは「桃井さぁ〜〜ん!ごめぇぇぇ~ん!」と泣きながら激走鬼になっていた間のことをタロウに謝罪している。
またキビ・ポイントの使用で不調に陥った真一とはるかは元の力を取り戻し、物陰に隠れていたソノイも「今度は正々堂々とした勝負を挑める」とタロウが帰ってきたことに安堵した表情を浮かべていた。
雉野つよし(ドン15話)
ここまで具に説明した通り、危ない内面の暴走によりヒトツ鬼の宿主となってしまったドンブラザーズの一員・キジブラザー。
以前彼は、内面の衝動に突き動かされるまま脳人にヒトツ鬼が消去されるのを見過ごした前科があった(但し、実際に直接「何かを実行した」訳では無い)のだが、その彼がヒトツ鬼となって脳人に消去される羽目に遭ったのはある意味因果応報な展開と言えよう。しかもこの時消去したのは同じくソノイである。
……しかしその先で、彼は脳人に消去された人間が亜空間に隔離されている事実を知り、同じくそこに送られていたタロウをジロウと共に助け出して一緒に帰還するという経験を得ることに。また、そこでキジブラザーにチェンジしてジロウ/ドラゴクウの手助けもする、ヒーローらしい行動も残している。
余談
歴代でも敵に洗脳されて闇堕ちしたり逆に怪人だった者がヒーローに転身したりするパターンは何度かあったが、逆に「ヒーローが自分の意思で怪人に変わる」展開はスーパー戦隊シリーズでは初である。そのためか一般怪人にしては珍しくPixivに投稿されているイラストがやけに多い。ここまで多いのはサモーン・シャケキスタンチンくらいである。
モデルとして使われた戦隊は激走戦隊カーレンジャー。
宿主になったつよしはサラリーマンで、愛する人が交通事故に遭って怪我を負ったことによるシリアス満載な経緯で鬼化をしていたが、これはカーレンジャーは全員会社員であり、尚且つ、激走戦隊カーレンジャー自体がギャグ要素満載の「戦う交通安全」であることへの対比と考えられる。
また、額に3色全てが赤の信号機なのは、行き過ぎた正義感を持っていた時代のシグナルマンを思わせる。因みにシグナルマンは宇宙警察の駐在員にして妻子持ちと、他キャラクターと比べて特につよしに近い物だったりする。
カーレンジャーと雉野は大雑把に言えば会社員とヒーローの二足のわらじを履いている共通点があるが、「薄給ぶりに嘆きながらも(中には退職を考えた者すらいる)、夢の車を完成させる為に頑張る」カーレンジャーに対し、「キビ・ポイントで昇給した経験もあるものも確固たる夢を持てず、代わりに愛する妻の夢を応援している」激走鬼(つよし)と対比になっている。
……まぁ40話でその妻の夢さえも潰しかねない事をしでかしたのは内緒である。
頭部の信号機はシグナルマン(とフラッシュの元ネタはシグナルマン専用ロボのサイレンダー)で黒いボディはVRVマスター、これに加えて頭部に巻いてあるネクタイはSSパマーンのスカーフ(ネクタイの代替品としても用いられる)、肩に生えたラジアルタイヤやマフラーはカーレンジャーの敵である宇宙暴走族ボーゾックの暴走車「バリッカー」、つよしが過去に芋羊羹を食べてお腹を壊したことがある等、元ネタ要素がふんだんに含まれているのが特徴。しかしつよしの内面も含め、元ネタとは違い陽気な悪人とは到底いえない剣呑な風貌でもある。
また、頭部に結ばれたネクタイにより酔っ払いのサラリーマンあるいは飲酒運転するドライバーにも見えるが、「ヒトツ鬼になった人間は暴走した欲望に溺れ自我を失っている」の暗喩とも見れる。
さらに余談だがカーレンジャーには飛行する武器はあるものの、乗って飛行するようなメカ(航空戦力)は存在しない。
また、カーレンジャーにはボーゾック一の縁結び・EEムスビノフが登場する回があったりする。
激走鬼ングにならなかったのは、ソノイに斬られた後に復活したとしても巨大戦力がマトモに使えない状況(一応ドンゼンカイオーは使用出来る)やドンドラゴクウの初登場補正と言う、大人の事情が絡んでいる為とも思われる。
一応玩具のドンオニタイジンはキジブラザーロボタロウがいなくても人型になれる。
また、その内彼が敵に回る可能性はずっと前から示唆されていたが、つよしが「鳥人(キジブラザー)」である事と嫁絡みのエピソードが多い事から「ヒトツ鬼化するなら寧ろ鳥人鬼とかじゃないのか」とする声も少なくなかった(尚、予想された鳥人鬼はドン17話に登場している)。
愛する妻に対して起こった被害を切っ掛けとしてヒーローらしからぬ行動をとってしまったつよしだが、ドンドラゴクウに言われるがままとは言え、自分の意思でタロウを救出した姿は正しく「ほんとのヒーロー」に違いない。
また今回の件で、「脳人に消去された人々は生きている」のが仄めかされた為、廻り回って魔進鬼(の宿主になった榊)も救済されるかもしれず、一縷の望みも出て来ている。
後にボディは、ドン19話に登場する炎神鬼の物にリペイントされた。
『カーレンジャー』で志乃原菜摘/イエローレーサーを演じた本橋由香女史は後に『ドンブラザーズ』でソノナを演じることとなった。
pixivでは激走鬼ングがオリジナル怪人として投稿されている。
関連タグ
高速鬼、魔進鬼:同じく車スーパー戦隊モデルのヒトツ鬼。なお、魔進鬼はモチーフが同じ、ベースがベニツ鬼、ヒトツ鬼ングにならずに倒されたなど激走鬼との共通点も少なくない。
忍風鬼:同じくモチーフの戦隊の技を使えるヒトツ鬼。こちらは劇場版登場のヒトツ鬼。
侍鬼:先代サルブラザーがヒトツ鬼化したある意味「ヒーローが自分の意思で怪人に変わる」展開の先代と呼べる存在。
また、素体がベニツ鬼、オリジナル戦隊と似た技を使う(ただし激走鬼はロボモチーフに対してこちらはレッド専用武器がモデル)、ヒトツ鬼ングにならず倒されたパターンも酷似している。
天装鬼:突発的にドンブラザーズとなった人がヒトツ鬼化した「ヒーローが自分の意思で怪人に変わる」展開の後継者と呼べる存在でこちらもベニツ鬼素体。
大鬼:同じくフェズントコンサルタント関係者を宿主としたヒトツ鬼。
暴走戦隊ゾクレンジャー:元ネタにおける悪の戦隊。
ジェラシット:11年前のカーレンジャーのレジェンド回で登場する戦隊怪人。こちらも女幹部に対する恋心を持っている。
タイヤ仮面、タイヤジコラー、タイヤオルグ、タイヤロイド:歴代タイヤモチーフの戦隊怪人。