前後のストーリー
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せんせいのむれ | 今回 | ぼろたろうとロボタロウ |
本作のBPOの不祥事入り
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今回 | おりがみのうた |
概要
スーパー戦隊第46作目『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』ドン8話。2022年4月24日放送。
今作屈指の常識人と思われたつよしが、シリーズにおいても前代未聞の行動に出てしまう。序盤のセリフが盛大なブーメラン
あらすじ
「喫茶どんぶら」ではロン毛の客が鬼頭はるかをモデルに絵を描いている。はるかは注意するが……
犬塚翼は男にからまれているソノニを助ける。人間の恋愛感情に興味を持つソノニは翼に愛の言葉を求めるが、翼は大切な女性がいると言う。雉野つよしは街で夏美の面影を追う翼の姿を見かけて声をかける。妻のみほを愛するつよしは、翼の夏美への想いに共感。みほの手料理を振舞おうと、翼を自宅に誘う。
主なドンブラ中毒
- 指名手配されてるのに白昼堂々ナンパ男を撃退する翼。しかもナンパされてたのはソノニ。翼は相手の顔をどこかで見た覚えがあるが思い出せない。ちなみに戦場で会ってるのに互いの素性を知らずに普通に話すシチュエーションは、ドンブラザーズの伝統芸能としてここでも発揮される。
- このソノニをナンパする男を演じた相馬理氏は2年後の爆上戦隊ブンブンジャーで振騎玄蕃/ブンオレンジ役で出演する事となった。
- 同様に別の場所で、互いに宿敵同士とも知らずに交流を深めるタロウとソノイ。
- 「オレは人は殴らない」と豪語したタロウ。しかしそれ以前にもブラザーやシスターを殴っているのだが……(一応本人曰く「特訓」らしい)
- ヒトツ鬼に取り憑かれたロン毛の画家・榊。みほをモデルとして拉致監禁するも、散髪した髪で拘束される。
- どうにか脱出してきたみほと合流したつよし。みほを追ってきた榊を見て「よくも、みほちゃんを怖がらせたな!」とブチ切れ、榊が変身した魔進鬼に対し、鬼気迫る勢いで変身しながら戦いを挑む。その怒りは凄まじく、魔進鬼の援護に現れたアノーニ達に暴言を投げかける程だった。
- 魔進鬼を人間に戻そうとするタロウが必殺技を放とうとしたところ、つよしはわざと彼にぶつかって妨害。その隙に魔進鬼(榊)はソノイに消去されてしまった。
- 直接手をかけたわけではなく、被害者の榊も決して無辜の人間ではなかったものの、有り体には『ソノイを利用する形で、みほに危害を加えた一般人を殺した』も同然の行い。
- つよしはその後、自らがヒーローとしてあるまじきタブーをしでかした事実について微塵も後悔や罪悪感を抱く素振りを見せず、みほに対して笑顔でオムライスを振る舞う。そして心の中で「みほちゃんは僕が守る。絶対に……! たとえ相手が誰でも……何をしても……!」と狂気的な決意を固める。優しい人ほど怒らせてはいけないとは正にこのことか……。
- そんな彼の心の闇を暗示する様に、風で靡いて陽の光を遮ったカーテンをバックに、つよしの優しい笑顔が不穏さを感じさせる歪な笑顔に変わる。この先のストーリーに大きな暗雲が待ち受けているかのような、異質なラストシーンでドン8話は終幕した。
- ……様々な面で衝撃的な幕切れからの、斜め上に濃い次回予告。
終盤の展開について
それまでも、従来のスーパー戦隊シリーズの枠に囚われない、独自のスタイルや脚本の井上敏樹氏の特色が色濃く反映された濃いキャラクターで、良くも悪くも話題を呼んでいた本作であるが、そんな中、ドンブラザーズのメンバーでは常識人枠と信じ込まれていたつよしが、ある意味メンバーの中で最も危険な思考を抱いている実態が発覚した本エピソードは、視聴者へ激しい衝撃や恐怖を与えるに至った。
特に、今回のヒトツ鬼・魔進鬼に変貌したみほを拐った画家・榊を救おうとしたドンモモタロウをわざと妨害し、その隙にソノイに消去させてしまった行為は、直接ではないものの(立場上は)被害者である榊を意図的に死に追いやってしまったも同然の行為である。それでいて、それについて「みほちゃんを襲う様なやつはこの世にいてはダメなんだ」と罪悪感は疎か、少しの後悔もなく、いけしゃあしゃあと日常に戻っていた。
当然、これらの行動や思考は、永らく続くスーパー戦隊シリーズにおいても、(ダークヒーロー等の例外を除けば)前代未聞のヒーローにあるまじき禁忌行為である。加えて同エピソード内において本作における“敵役”である筈のソノイが、下心無く(タロウと共に)人助けをする正邪逆転した場面が挿入されていた描写も併せて、改めてドンブラザーズが異例の「ヒーローとしての信用を置くに値しない」「構成メンバー全員が問題人物」な戦隊として設定されている事実を視聴者に印象付けた。
結果として、愛故にヒーローとしての道に外れた行為に及んでしまったつよしであるが、井上氏が脚本を担当した特撮作品において、そうした『ヒーローとしてのあり方』を頭から否定した素行や邪道な行為に走ったヒーロー達は、それぞれ最終的にハッピーエンドを迎えた例がないジンクスがあり、今話のラストシーンを観た視聴者からは「これはもしやフラグでは……?」「嫌な予感しかしないんだけど……」等と、彼の今後はもちろん、その結末に関して不安視する声も少なくない。
ただし、つよしには(一応)消滅させた榊を復活させる手段がある為、後に自らの過ちを悔いてやり直す事態は可能である……と信じたい。
一方、愛妻のみほ(及び夏美)に関しては、つよしと翼が互いに想い人を称賛・惚気合うだけと、予告と裏腹にそこまで触れられていなかった。しかし、今話で発覚したつよしの狂気的な愛情を知った視聴者からは「今後、翼は警察やアノーニよりも、つよしを警戒すべき」「2人が真実を知った時、どんな展開になるのかホント怖い……」「ニチアサでniceboatな展開とかマジで勘弁してくれ!」等と今後の展開への尋常でない不安を含めた、様々な感想が多数上がった。井上氏の盟友的存在である村上幸平氏も、放送後にTwitterにおいて『ラストの雉野さんに鳥肌。怖い!怖いよ!井上敏樹! ゾクゾクするよ!井上さん!最高!!』と畏怖と畏敬を込めた感想を上げていた。
ドン5話において、はるかの暴走を目の当たりにしたつよしは「モンスターより人間の方が、生々しくて怖い…」と評していたが、そう思っているからこそ悪人に容赦がないとも取れる。しかし、皮肉にもそんな人間の『生々しくて怖い』一面を、比喩したつよし自身がその身をもって体現・証明する形となってしまった。そればかりか、つよしの歪んだ決意は後に内に秘めた「何か」を呼び覚ましてしまうこととなる……
そして、この衝撃の話が放送されてから約半年後、みほとの幸せな生活を守らんと、再びその内に秘めた狂気を爆発させてしまい……
関連タグ
ヤンデレ みんなのトラウマ トラウマ回 お茶の間の良い子号泣シリーズ
なつみミーツミー:エンディングから感じられた不穏な伏線が現実となり、つよしの内に秘めた狂気が再び爆発したドン34話。
イとニとザとシ:完全に壊れてしまったつよしが今度は別の意味で怖い様相を晒しながら幕を下ろしたドン37話。
カカむらガガむら:ある意味では今話でつよしが犯した暴挙の、報いともいえる事態が起きたドン45話。
帝王トランザの栄光:井上敏樹が脚本を手掛けたスーパー戦隊シリーズ史に残る前代未聞の事例が起きたトラウマ回。度を越した悪事や邪道を働いた者には相応の報いを与える事で有名な井上氏の事からして、つよしもこのエピソードにおけるある人物のような結末を迎えるのではないかと懸念する視聴者も少なくなかった(幸いにもそれは避けられた)。
八太三郎:ある意味榊のIFとも呼べる戦隊のゲストキャラ。奇しくも榊が変貌した魔進鬼はキラメイジャーモチーフであり、(ある意味天罰だが)彼と榊が逆の結末を迎えたことは因縁めいたものを感じる。
正義はあっても正解というものは無いのだ:同日に放送された30分前の作品の第32話にて、主要人物の科学者が発言した台詞。このエピソードはこの台詞を最悪な形で体現したといえる。
逃げ出すよりも進むことを:事情は異なるが主人公が人を殺害するという同期のコンパチヒーロー屈指のトラウマエピソード。