銀河帝国軍艦艇とは、田中芳樹のSF小説「銀河英雄伝説」及びそれを原作とするアニメ版・ゲーム版等において登場する、銀河帝国軍所属の艦艇。及びそれらを描いたイラストにつけられるpixiv内におけるタグ。
艦隊を構成する一般的な空母、標準型戦艦、巡航艦、駆逐艦、を中心に大量生産される艦艇がある一方で、同盟軍と同じく個性あふれる旗艦が幾種も登場する。ただし、固有旗艦なれど同系艦で纏められていたのが、ラインハルト・フォン・ローエングラムがブリュンヒルトを手に入れて以降も様々な派生艦や試作艦といった個性のある旗艦が登場している。
フリードリヒⅣ世時代では、ヴィルヘルミナ級大型戦艦が旗艦としての特性を有しており、なんら外見的な特徴がないものの、旗艦としての機能並びに攻撃力と堅牢な防御力を有しているため、性能としては信頼されていたと考えられる。
また大貴族出身者の軍人達の中には、自分好みの仕様に仕上げる事もある模様。とはいえ劇中でそれについて言及された事は無い。メディア本においてオットー・フォン・ブラウンシュバイクが保有する固有戦艦『ベルリン』は、貴族特有の贅沢な内装(生活面において)をしているという。反面、戦闘機能は二の次だと言う設定もあったようである。
その後ブリュンヒルトが試作型戦艦として建造され、ラインハルトに与えれたのを始めとして、幾種もの試作型戦艦が登場する。それをフィードバックした旗艦が続々と誕生していった。バルバロッサ、トリスタン、ベイオウルフ、ガルガファルムル、サラマンドル(火竜)、ケーニヒス・ティーゲル(王虎)、パーツィバルなど、全て個性あふれる旗艦である。
外見
自由惑星同盟軍艦艇が、ライフル銃に似たものであるとすれば、帝国軍の艦艇は拳銃を模した様なものと言えよう。主力である戦艦は、同盟軍と同様に艦首に主砲を集中配備し、艦尾両舷と下部に機関ブロックを計3つ備え付けている。巡航艦は4つの機関部を設けている。
なお補助艦艇である駆逐艦、小型艦艇であるミサイル艦、揚陸艇、等は、艦首側が肥大化し、艦体側はスマートになるというアンバランスなタイプであり、肥大化した艦首側にミサイルポッドを集中搭載するなど思い切った設計をしている(なお、このミサイルポッドは取り外し可能な模様)。
Die Neue These
2018年より放映されているアニメシリーズ『銀河英雄伝説 Die Neue These』ではデザインが一新されており、3DCGによる曲線を多用した複雑なフォルムが実現。
デジタルグッズメーカー「Gugenka」からは、フィギュアビューワー「HoloModels」で鑑賞可能なブリュンヒルトを始めとして、帝国軍の標準戦艦・巡洋艦・駆逐艦が販売されている。
能力
戦闘能力
自由惑星同盟軍の思想は、手数によって圧倒すると言う手法を多用していると思われる(主砲口径の小ささ、砲門数の多さから推測)。変わって帝国軍の戦艦は、主砲数が6門と少ないものの、1門辺りの破壊力にあっては同盟軍を上回っており、相対的な攻撃力では拮抗するのではないかと考えられる。巡航艦クラスも6門に抑えられている。
これは機関部が同盟軍側に比べて3つもあるために、より多くのエネルギーを確保可能であるからではないかと考えられる。
これは戦艦のみならず、艦隊の大半を占める巡行艦にもその傾向があり、艦載機数も同盟軍のそれの倍で、その体躯も倍近い差があり、艦隊戦における戦力として差は小さくとも、『奪還者』「グランドカナル事件」のような数隻程度の局地戦においては比較的優っている様子が描写されている。
その一方、駆逐艦に関しては上述の通り、巡航艦をさらに小型化・艦載機を省いて廉価にしたといった様相の同盟軍に対し、主力の補助や支援用として偏った戦闘能力を有している。それでも旧式を除いた一般的な駆逐艦はワルキューレの艦載能力を持つなど、純粋な戦闘能力に関しては同盟軍と比べて妥協しない傾向がみられる。
電子戦能力
大気圏からの出撃・突入が前提の帝国軍艦艇では、同盟軍のそれと比べてアンテナやその他精密機器を艦外に設置するのが難しいため、電子戦能力は決定的に劣る、と言われている。
もっとも、この辺りの設定は原作小説が執筆された当時、ミリオタ界でも一般的とは言えない軍事知識のため、OVAでも明確に描写されたり反映されたということはない。
特に物語の設定上、『技術が発達しようが対抗手段が随時生み出されるため、原始的な行為が使われ続ける』という状況が多発(一例を挙げれば、『白銀の谷』においては高価な最新装甲車や電子装置でも対抗手段のせいで使えずに伝書鳩などが使われる有様、と皮肉られている)しているため、帝国と同盟軍双方で先行する偵察艦や連絡艇などを多用することが多い。
航行能力
機関部の数が多い分、同盟軍よりも出力は高いと考えるのが妥当である。そのため外見的に見れば帝国軍の戦闘艦の方がより強力に思えるが、機関部が多ければよいと言う問題ではない。機関部が多ければその分の燃料消費が増えてしまうと考えるのが妥当である。
ただし、帝国軍艦艇の利点は、その出力のある機関部のおかげで、大気圏内を行き来する事が可能な点にある。同盟軍の様にシャトルを使わずとも、戦艦や巡航艦がそのまま降下してくるのであるから、その威圧感は大きなものであると想像できる。が、フェザーン商人であるマリネスク氏からすれば、戦闘艦の大気圏直接離脱と突入は、大気汚染問題になるとして、あまりいい目では見ていない。
機動能力
機関部が多いからと言って、柔軟な機動力を発揮できるわけではない。同盟軍の場合は、艦尾に機動調節の為のテールフィンを取り付ける事で、より高度な艦隊運動を可能としている。こうしたソフトフェアの面では、研究を続けた同盟軍の方が一日の長があると言えよう。
しかし、帝国軍にもウォルフガング・ミッターマイヤーを筆頭として、機動戦術に長けた指揮官も多いので、決して帝国軍艦艇が機動面で圧倒的不利にあるわけではない。
建造工程
同盟軍が常に量産性やメンテナンス性を重視した生産的設計に対し、帝国軍は機能性を重視した設計であると思われる。上記したように大気圏内における航行能力を求められる他、標準型戦艦でありながらも、正規艦隊旗艦として運用が可能であるなど、内面設備が充実していることから、手間はかかっているのでは居ないかと考えても不思議ではない。
また、旗艦級であっても既存艦艇とあまり逸脱していない(あの特徴的な外見のトリグラフですら既存機関を使いまわすなど、構成ブロック単位では既存艦艇に倣っている)同盟軍と比べ、『ブリュンヒルト』を筆頭に他の艦艇と比べるとかなり異なり、かつ多種多様な最新鋭艦が存在しているため、それらの建造工程もまたかなり複雑だと予想される。
艦艇一覧
艦名は原作・石黒版/DNT版
旗艦級戦艦(及び艦隊司令官)
ローエングラム元帥府→ローエングラム朝
ブリュンヒルト(ラインハルト・フォン・ローエングラム元帥→皇帝、帝国軍総旗艦)
バルバロッサ(ジークフリード・キルヒアイス上級大将)
ベイオ・ウルフ(人狼)(ウォルフガング・ミッターマイヤー元帥)
アースグリム(アーダルベルト・フォン・ファーレンハイト上級大将)
ヴィーザル(エルンスト・フォン・アイゼナッハ上級大将)
ガルガ・ファルムル(ヘルムート・レンネンカンプ上級大将)
ケーニヒス・ティーゲル(王虎)(フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト上級大将)
クヴァシル/ガンダルヴァ(エルネスト・メックリンガー上級大将)
サラマンドル(火竜)(ワーレン上級大将)
スキールニル/ヘルズブレイズ(コルネリアス・ルッツ上級大将)
パーツィバル(ナイトハルト・ミュラー上級大将)
リューベック(ナイトハルト・ミュラー(リップシュタット戦役~バーミリオン会戦時代))
フォルセティ(ウルリッヒ・ケスラー上級大将)
フォンケル(カール・ロベルト・シュタインメッツ上級大将)
ヨーツンヘイム/ガルフピッゲン(カール・グスタフ・ケンプ大将)
ゴールデンバウム朝
ヴィルヘルミナ(グレゴール・フォン・ミュッケンベルガー元帥→フレーゲル男爵)
オストファーレン(リヒャルト・フォン・グリンメルスハウゼン大将)
オストマルク(ウィルヘルム・フォン・リッテンハイム3世侯爵)
グルヴェイグ/ヴァナヘイム(ハンス・ディートリッヒ・フォン・ゼークト大将)
ネルトリンゲン/ミネルヴァ(ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ上級大将)
ベルリン/アルヴィース(オットー・フォン・ブラウンシュバイク公爵)
標準型戦艦
グレンデル(ウォルフガング・ミッターマイヤー(准将→少将時代))
グングニル)(ディートリッヒ・ザウケン中将)
ダルムシュタット/ヘイムダル(アーダルベルト・フォン・ファーレンハイト(アスターテ会戦、リップシュタット戦役時代))
タンホイザー(ラインハルト・フォン・ミューゼル(少将時代、第6次イゼルローン攻防戦、第3次ティアマト会戦時代))
テオドリクス(イザーク・フェルナンド・フォン・トゥルナイゼン中将)
モルオルト(オスカー・フォン・ロイエンタール(准将→少将時代))
高速型戦艦
シュワルツティーゲル(フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト(大佐時代)
テューリンゲン(ジークフリード・キルヒアイス(カストロプ公征討作戦時))
標準巡航艦
ヘーシュリッヒ・エンチェン(ラインハルト・フォン・ミューゼル(中佐時代))
駆逐艦
エルムラントⅡ(ラインハルト・フォン・ミューゼル(少佐時代))