概要
千葉県銚子市内に路線を有する私鉄。正式名称は銚子電気鉄道。1923年開業。JR総武本線の終着駅・銚子駅から外川駅までを結び、銚子市内の市民の足として存在している。
かつて犬吠駅まで存在した銚子遊覧鉄道の跡を再利用し、外川駅まで延伸して現在の姿になる。総武本線が非電化の頃は総武本線から快速列車が乗り入れた事があったが、総武線側の気動車がキハ10系からキハ20系へと置き換えられてから無くなった。
長年経営難に苦しんでおり、副業としてたい焼きやぬれ煎餅、揚げもち、佃煮など食品の製造販売を行っている。今や本業の鉄道事業の赤字を副業の利益で補っている有様であり「銚子電鉄の本業は食品製造業」と揶揄されることも。実際、帝国データバンク(信用調査会社)の事業登録も「米菓製造」となっている。ただし本来の本業である鉄道事業があまりにも振るわないため副業でもカバーしきれていない。
事実上の本業となっているぬれ煎餅製造に関しては、犬吠駅と直販店舗を兼ねた銚子市内の工場にて製造・直売を行っており、前者では製造行程を見ることができる。
経営難
前身の銚子遊覧鉄道自体が赤字続きのうえ、第一次世界大戦での鉄くず価格上昇で廃線されて施設一式を鉄くずとして売られたという逸話があるほど厳しい経営続きである。
戦後は京成電鉄の子会社である千葉交通(バス会社)の子会社になったが、1990年に離脱し、内野屋工務店(建設会社)の子会社となる。これに合わせて「銚子ユネスコ構想」を立ち上げ、電車の塗装を赤と茶のレトロ調へ変更したり同工務店へ駅舎改築の発注が行われたりしたほか、当時の社長を模したゴリラのキャラクター「アル・カッポレ」が設定された。しかし内野屋工務店がリゾート開発の失敗とバブル崩壊の影響で倒産。更にその社長が銚子電鉄から多額の金を横領して逮捕される事態になる(車両から「アル・カッポレ」のマークが消去されたのも、これに由来する)。
2006年には経営悪化が限界に達し、車両整備の資金すら捻出できない事態に陥ってしまい、公式サイトを通じて「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです。」と異例の支援のお願いをするに至った。この資金調達のために考案・発売されたのが、後に同社の看板商品となるぬれ煎餅である。
本件は2ちゃんねるなどを通じて広がり、ぬれ煎餅には全国から注文が殺到。生産が追い付かないほど爆発的なヒットを記録した。こうして多くの支援を得て整備費用の捻出に成功し、鉄道事業を存続させた。
2011年に発生した東日本大震災以降の観光客の減少により、2013年2月頃、遂に自主再建を断念したと発表。年末には国・千葉県・銚子市からの公的資金注入を受ける事、運賃を値上げする事が発表され、当面の廃線の危機からは脱した。また、銚子電鉄線の駅名の愛称(ネーミングライツ)を募集し、広告宣伝を行っている。
2018年、ぬれ煎餅ブームが落ち着いたことから、新商品として「まずい棒」を発売。言うまでもなくうまい棒のパロディ商品である。
2024年には長良川鉄道と米菓大手の岩塚製菓との共同開発で、岐阜県産ユズを使用した「グミせんべい」もリリースされた。
経営は依然として厳しいものの、ぬれ煎餅の一件以降は「赤字私鉄の代表格」的な意味で有名になったため、それを逆手に取った自虐ネタによるグッズ展開を行っている。
- 2020年には(同名の原作小説を元に)映画『電車を止めるな!』を公開
- 2021年に『アイドルマスターSideM』とのコラボ企画を発表
- 2020~22年に鉄道系YouTuber・スーツ氏とのコラボ企画を展開
…など、話題に事欠かない。
主な保有車両
先述の経営難の時代には非冷房の旧型電車の吹き溜まりと化していたが、さすがに老朽化や保安基準の関係から2010年から車両の近代化を行った。
また、鉄道ファンにとっては、現存する狭軌最小の電気機関車であるデキ3で有名。現在でも車籍を有しており自走可能であるが、主にブレーキが保安基準に構造上適合できないため検査を通しておらず、本線は走らない。
安定的な運行を持続するために4編成を営業用に保有。2編成運用・2編成予備で回している。
2016年から2024年にかけては2編成運用・1編成予備で回していた。その最中の2022年には2001Fの検査入場中、2002Fが故障し減便を余儀なくされ、京王電鉄・京王重機整備・伊予鉄道の支援で修理と運行再開にこぎ着けた(伊予鉄が修理部品をまだ保管しており、それを用いて京王電鉄が派遣した京王重機整備の担当者の手で修理された)というエピソードがある。
現行車両
2010年〜。元伊予鉄道800系(旧京王2010系)。当鉄道は直流600V電化、かつ車両限界が狭小のため、改造工事を最小限に抑えられる車両は限られていた。当初は京王3000系の改造車を2両編成4本投入する予定だったが、改造費や車幅の問題から却下され、その代わりとして本形式が導入された。2両編成2本が入線したが、2001Fは22000形と入れ替わりに廃車になった。
2016年〜。元伊予鉄道700系(旧京王5000系)。銚電入線時に遊覧客車「澪つくし号」をイメージした3色のカラーリングに塗装された。2両編成1本を投入。
2024年〜。元南海2200系。状態の悪い2001Fの後釜として選定されたのが始まり。2200系に改造される前、22000系時代における竣工時の番号である「22005F」「22007F」で車藉登録され、2編成を投入することで以前の4編成体制に戻した。
個別記事参照。
過去の車両(主なもののみ)
- デハ300形
1951年〜2008年。元国鉄110形で、さらに元を辿ると鶴見線の前身にあたる鶴見臨港鉄道の買収国電であった。静岡鉄道モハ20号の解体以降は最後の鶴見臨港鉄道出身の電車であったが、2008年に廃車され翌年に解体されたことで、この世から消滅してしまった。晩年は架線点検車として事業用に用いられていた。
- デハ700形
1978年〜2010年。元近江鉄道50形で、本形式の導入でハフ1形客車が淘汰され、すべての旅客列車が電車による運用となった。入線に際し、両運転台化などの改造が西武所沢工場にて行われた。当鉄道では唯一2両編成を組成した際に総括制御(1両の車両の運転装置で複数車両を一括して制御すること)が可能であった。701号は1000形との衝突事故からの復旧時に尾灯の形状が変更されたほか、ワンマン化改造や新京成電鉄の発生品といわれる扉へ交換された。702号は2007年に青系の旧塗装へ復刻されている。2010年に引退後は2両ともにポッポの丘で静態保存されている。
- デハ800形
1985年〜2010年。元伊予鉄道100形。車体も16m級と比較的大きいことから、当鉄道の顔として長年に亘って活躍した。ぬれ煎餅などのパッケージに描かれているのも本形式である。廃車後は外川駅構内で静態保存されている。
- デハ1000形
1994年〜2016年。元営団地下鉄2000形。単行運転を前提としたため、入線に際し両運転台化・パンタグラフ搭載・台車交換などの改造を京王重機整備にて行った。2両とも除籍となったのち、1001号車は松戸市で保存され、1002号車のみが「事業用」として仲ノ町車庫に待機していたが、後者は2024年に笠上黒生駅で解体された。実はここへ行くはずだった車両が、キャンセルされた分の注文流れである。
- ユ101号
1985年〜2007年。国鉄ワム80000形を改造したトロッコ車両。「澪つくし」の愛称があった。300形や800形、1000形などに連結されて使用されたが、1000形と連結した際は空気管を引き通すことが出来ず、貫通ブレーキが使用できないという安全性の問題などから、2006年で運用を終了し、翌年に除籍された。2024年現在も笠上黒生駅構内に放置されている。
駅一覧
駅名 | 愛称(ネーミングライツ) | 備考 |
---|---|---|
銚子駅 | 絶対にあきらめない 銚子 | JR総武本線・成田線乗り換え |
仲ノ町駅 | パールショップともえ 仲ノ町 | |
観音駅 | 金太郎ホーム 観音 | |
本銚子駅 | 上り調子 本調子 京葉東和薬品 本銚子 | |
笠上黒生駅 | 髪毛(かみのけ)黒生 | |
西海鹿島駅 | 見えないことで、未来を切り拓く︎アシザワ・ファインテック株式会社︎ 西海鹿島 | |
海鹿島駅 | 足腰元気☆緩衝法 海鹿島 | 千葉県及び関東地方の最東端に位置する駅 |
君ヶ浜駅 | ロズウェル 君ヶ浜 | |
犬吠駅 | 最高だぜ!銚子!アイドルマスター SideM 犬吠 | |
外川駅 | ありがとう 外川 |