概要
本作当時、映画館の入場者数がすでに全盛期の4分の1まで落ち込んでいた。子供達の興味も映画館での怪獣よりも妖怪やスポ根などを題材にしたテレビ番組へと向けられるようになり、怪獣ブームにも陰りが見えはじめていた。
そのため東宝は、本作を莫大な製作費を要する怪獣映画の最終作として制作された。要するに本作は、昭和シリーズの最終作になるはずだった。
だが、予想外の興行成績を記録したため、東宝の怪獣映画は継続される事となった。
当初『怪獣忠臣蔵』として企画されており、敵役のキラアク星人は吉良・悪の捩りが残った結果である。
登場怪獣の数は11体。昭和シリーズ映画では最も多く、2004年の『ゴジラ FINAL WARS』まではゴジラシリーズの中で最多だった。
もう1つ特筆するべきは20世紀末(劇中の新聞では1994年)という近未来を舞台としている事から、関連書籍によっては本作を『メカゴジラの逆襲』より後の時代を描いているという解釈もある(ただし『メカゴジラの逆襲』で本作のマンダが劇中人物のイメージシーンに登場する)。
更に、ニューヨークの国連ビル、モスクワのクレムリン宮殿、パリのエトワール凱旋門とゴジラシリーズでは初となる海外での本格的な破壊シーンがある。
ただし過去の東宝特撮では『世界大戦争』と『宇宙大戦争』で自由の女神とニューヨーク市街地、『宇宙大戦争』でゴールデンゲートブリッジ、『世界大戦争』でロンドン塔、エトワール凱旋門、クレムリンなどの破壊シーンがあり、戦争映画に目を向ければ『ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐』の真珠湾攻撃や『連合艦隊司令長官 山本五十六』のガダルカナル島砲撃なども挙げられる。
他社作品では東映の『第三次世界大戦 三十一時間の恐怖』でゴールデンゲートブリッジなどの破壊シーンがある。
尚、本作で特技監修を担当した円谷英二にとっては初代から彼と関わってきた本多猪四郎、伊福部昭、田中友幸、中島春雄(スーツアクター)と共に製作に関わったのと怪獣映画の製作に関わったのは事実上本作が最後である(『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』と『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ決戦!南海の大怪獣』には一切関わっておらず、スタッフの円谷に対する敬意として名義をクレジットに使用したものである)。
同時上映は『海底軍艦』(一部シーンをカット)と人形アニメ『海ひこ山ひこ』。ゴジラシリーズでは初の子供向けを意識した構成であり、本作のヒットが次回作以降の「東宝チャンピオンまつり」につながったとも言われている。
1972年に「東宝チャンピオンまつり」で全長74分に短縮した『ゴジラ電撃大作戦』が上映された。
あらすじ
時は、1994年。
国連科学委員会(U.N.S.C.)は硫黄島に宇宙港を建設して宇宙開発を行う一方で、世界の脅威だったゴジラを含む怪獣達を小笠原諸島の島(通称「怪獣ランド」)に集め、平和裏に管理・研究していた。
ところが、ある日突然怪獣ランドに謎のガスが充満し、その直後に怪獣達が世界中の主要都市に出現して暴れ始めた。
それは地球への移住を目論むキラアク星人の侵略作戦であった。怪獣ランドのスタッフと怪獣達を操って侵略を行うキラアク星人に対し、国連科学委員会のロケット・ムーンライトSY-3が立ち向かう。
登場怪獣
ご存じ怪獣の王。怪獣ランドで平和に暮らしていたが、キラアク星人に操られて脱走。
ニューヨークに現れて国連ビルを熱線で破壊、ラドン、マンダ、モスラとともに東京を蹂躙、富士山麓でアンギラスとともに防衛軍を一蹴し大暴れ。
キラアク星人のコントロールから解放され他怪獣と共に地球人のコントロールに従いキングギドラ戦で主力として大活躍、キラアク星人の基地に殴り込みをかけて地球侵略の野望を粉砕する。
キラアク星人に操られなかったので暴れるシーンは無し。
キングギドラの真ん中の首に熱線を食らわしてとどめを刺す。
今回は幼虫のみの登場で小美人もいない。今作では不覚にもキラアク星人に操られて北京や東京で暴れる。
ギドラ戦ではクモンガとともに糸を吐いて牽制するが、いつもより糸の量が少なめ。
ラドンを狙って放たれた引力光線のとばっちりを食らってふっとんだりもしている。
ゴロザウルスと仲が良いらしく、冒頭でもラストシーンでも一緒に登場している。
当時の撮影用模型が現存しており、現存する最古のモスラといわれている。
実はイルカを食べているらしい。
モスクワ、ウラル山脈、東京で暴れる他キラアク星人の円盤の護衛も務める。
ギドラ戦では羽ばたいて突風攻撃を仕掛けるも、引力光線を食らって空に逃走、決着がつくまで戻ってこなかった(ギドラとは過去に2回も戦ってるんだからもっとまじめに戦ってください)。その後名誉挽回を図ったかファイヤードラゴンに挑むが背中を焼かれてしまった。
富士山麓でゴジラとともに防衛軍を迎え撃つ。
ギドラ戦では真っ先に飛び込み、ひたすら右首に噛みついていた。空から落とされた挙句踏みつけをまともに食らってもなお戦い続ける根性を見せる。
このど根性で人気者となり、以来ゴジラの相棒役に抜擢された。
一番不遇。出番はほとんどなく、名前を呼ばれるシーンもなければ雄たけびを上げるシーンもない。
当初はラドンと共にギドラと戦う予定だったが着ぐるみの状態が悪く実現しなかった。
パリに現れたことになっている。天城山の地底にも現れたらしいがどちらも画面には登場しない。バランよりはマシといった程度の待遇。
当初は凱旋門を破壊するのはバラゴンの役割だったが、耳が干渉したらしく後述のゴロザウルスに交代した。某透明怪獣からの変身解除が間に合わなかったわけではないらしい。
またギドラとも戦う予定だったが実現しなかった。
ロンドンを襲撃したとされるが映像は無し。
その後ゴジラ、ラドン、モスラの東宝三大怪獣とともに東京を襲撃。浜松町で東京モノレールの線路に巻き付いて破壊する。
バラゴンに代わって凱旋門を破壊。
ギドラ戦ではゴジラ、アンギラスと並んで主戦力となる。ゴジラと見事な連携を見せ得意のカンガルーキックでギドラに決定打を与えた。
地中を高速移動して凱旋門を破壊したことにより、『空想科学読本』では最強の怪獣に認定された。
特に破壊シーンは無し。
ギドラ戦ではモスラとともに糸で攻撃。ギドラから一回も反撃されなかった。
キラアク星人が地球怪獣連合軍に対する切り札として呼び出した。
「地球の怪獣では歯が立ちません」とキラアク星人が豪語する通り、凄まじいパワーや引力光線で地球怪獣達を圧倒する。
引力光線一発でラドンとモスラを吹っ飛ばす、アンギラスに噛みつかれたまま飛びあがり、空から落とした挙句トゲだらけの背中もお構いなしに踏みつける、たとえゴジラでも単騎での突撃は軽く一蹴とさすがの強さを見せる。
だがそれも最初のうちだけで、次第に追い詰められていき、ゴロザウルスに背後から蹴られてとうとうダウン。そのあとは目を覆うような壮絶な猛攻撃を食らい、ついに死亡した。
単体では強力な存在であるが故に多勢に無勢で負けた悲惨な怪獣である…
今回の悪役。火星と木星の間の小惑星帯に住んでいる。
地球怪獣11匹とキングギドラ、さらにファイヤードラゴンまで戦力にしていたにもかかわらず地球人に敗北したところを見ると、相当な慢心があった模様。
実際、劇中でも終始穏やかな様子で(怪獣をバックにしての脅迫まがいではあるが)地球人に対し共存や降伏を呼び掛けていた。その態度から察するに、ゴジラに基地を攻撃される直前まで地球に勝てると思っていたようだ。
結局多くの侵略者同様、人類と地球怪獣の前に敗れ去る。
キラアク星人の円盤が炎を纏った戦闘形態。最初は「燃える怪獣」と誤認された。
キングギドラが倒された後に突如出現。ラドンをたやすく追い払い、ゴジラの熱線も平気、一撃で怪獣ランドの操縦装置を全滅させるなどかなりの高性能。
キラアク星人曰く2・3時間で東京を焼き払うことも可能。
キラアク星人の基地がゴジラにより壊滅した後、ムーンライトSY-3と最終決戦。空中戦の末に冷線ミサイルで倒された。
キラアク星人最後の切り札だったようだがさすがに投入するのが遅すぎた。
スタッフ
出演者
山辺克男 | 久保明 |
---|---|
真鍋杏子 | 小林夕岐子 |
白衣の美女(キラアク星人) | 愛京子 |
吉田博士 | 田崎潤 |
大谷博士 | 土屋嘉男 |
西川 | 佐原健二 |
黒岩信(コントロールセンター所員) | 黒部進 |
多田参謀少佐 | 伊藤久哉 |
杉山警備司令 | 田島義文 |
有馬(ムーンライトSY-3乗員) | 大前亘 |
岡田 | 当銀長太郎 |
藤田(ムーンライトSY-3乗員) | 西条康彦 |
谷(ムーンライトSY-3乗員) | 久野征四郎 |
伊勢徹男(コントロールセンター所員) | 伊吹徹 |
吉川(ムーンライトSY-3乗員) | 越後憲 |
工藤実(コントロールセンター所員) | 伊藤実 |
ゴジラ、統合防衛司令部将校 | 中島春雄 |
アンギラス、ゴロザウルス、病院の医師 | 関田裕 |
ラドン | 新垣輝雄 |
キングギドラ | 内海進 |
ミニラ | 小人のマーチャン |
福沢俊夫 | 池谷三郎 |
スチーブンソン博士 | アンドリュウ・ヒューズ |
岡田以外のムーンライトSY-3乗員4名の役名は資料によってバラツキがある。本記事では東宝公式サイト映画資料室の表記に準拠。
テレビ時代の到来で東宝撮影所も活気がなかったとの証言もあり、大部屋俳優の加藤茂雄は直前のシーンで防衛隊幹部役で出ていたのにすぐ次のシーンでテレビ局にいるというかなり極端な兼役が見られる。
余談
当初のプロットでは、キングコング・大ダコ・エビラ・カマキラス・マグマ・ガイラも登場する予定だったが、アンギラス・ミニラ・ゴロザウルスに変更されたらしい。アンギラスは後に似たようなことを経験したが、カマキラスはその時にも…。『FINALWARS』では名誉挽回したが。
本作のメインテーマは後に「怪獣総進撃マーチ」と呼ばれ、伊福部昭の「SF交響ファンタジー第1番」では「宇宙大戦争マーチ」と組み合わせる形でトリを飾っている。
本作のヒットで怪獣映画の存続には成功したが翌年の『オール怪獣大進撃』で田中友幸プロデューサーが「過去のフィルムをつないで特撮シーンを無しで」と企画したため、温厚だった本多猪四郎が激怒したという逸話が残っている。
関連タグ
ゴジラ FINAL WARS:一部ファンの間では“平成版 怪獣総進撃”扱いされている。
帰ってきたウルトラマン:第1話のサブタイトルが本作と同じで監督も同じ。