CV:宮野真守
概要
『映画HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア』に登場する敵キャラクター。
『HUGっと!プリキュア』のキュアエール以外の歴代プリキュアたち54人の想い出を奪い、彼女らをベビープリキュアに変えてしまった張本人。
一人称は「私」と「ボク」だがより素に近いのは後者な様子。
最初は「ヨコセ……ヨコセ……」程度しか喋らなかったがプリキュアの記憶を介して言葉を覚えていっている節があり、HUGっと!プリキュアとの遭遇時には流暢に喋っていた。
他人の記憶を使い煽るような言動をしたり自分が持つ想い出に自信を見せ想い出を奪うことに喜ぶ一方、否定されると激昂し感情的になる。
てるてる坊主のような容姿が特徴で、瞳はカメラのしぼりのようになっており、これを絞り込むことで瞳を細めたり、閉じたりすることが出来る。
撮影機能が存在するデバイスのレンズもしくはディスプレイに自らの姿を「写り込ませる」ことでそのデバイスに潜り込む事が出来、対象はカメラのレンズや画面のみならず、ミライパッドの画面まで対象となる。
能力
飛び回りながら両手での格闘やフィンガースナップをすることで爆発を引き起こす能力を持つ。
中でも特徴的なのは手のような部分や口から青い光線を発射する能力。
物理的なダメージがある他、当たった人は赤ちゃんになって想い出を奪われてしまう(あたってもダメージで済んだシーンもあるので打ち分けていると思われる)。想い出はステンドグラスのパネルへと変化し、ベビープリキュアとは別にプリキュア自身もミデンの中に取り込まれる。
そしてこれがプリキュアの場合は想い出を奪ったプリキュアたちの技をコピーする特殊能力を持っている。
口癖や口調も引き継いでしまう(キュアハッピーの口癖「ウルトラハッピー」、『Go!プリンセスプリキュア』の決め台詞「お覚悟はよろしくて?」、キュアブラックの口癖「ぶっちゃけありえない」等)。ただ、彼自身は別にそれをわずらわしく思っている描写はなく、むしろ後述の事情からこちらの方が主目的と言え、ひとりでいる時もこの特性を生かし、様々なキャラになりきって一人芝居のように喋っている。
この際には各プリキュアの髪と服の色をそれぞれ反映したカラーリングに変化する。
キュアブラックとキュアホワイト、キュアミラクルとキュアマジカルのように二人分を載せることも可能でこの際は外見は半々になり合体技も使用可能。また、ブラックとホワイト状態では喋ってもいる(メタ的に言えばブラックとミラクルは単独での決め技や浄化技がないからと思われる)。
また、キュアラブリーのフォームチェンジであるチェリーフラメンコのカラーリングにもなっており他のプリキュアの別の変身、俗に言うフォームチェンジにも対応している可能性がある。
いわゆるピンクチームに連なる主役キュアの口調や技を多用したが、前述の合体技やルミナス、ホワイト、エトワール、マシェリ、アムールの姿を取ったこと、シャイニールミナスの技を使用したことから少なくとも想い出を奪ったプリキュアの単体の決め技や二人での合体技には特に制限はないと思われる。
青い光線を使用せずに布で覆うようにして直接プリキュアを取り込む力も見せたが、こちらはベビープリキュアとミデンの中に分離されるのではなくそのまま取り込むためかミデンの中でもわずかに行動ができる様子。
なお、ミデンも知らなかったが戻してあげられるほどの想い出があればミラクル♡メモリーズライトによって想い出を取り返すことができる。
後述の理由からエールの戦意喪失はあるが結果的に本作に登場したプリキュア全員を無力化したという点では単体では屈指の強さであると言える。
終盤ではプリキュア以外からも想い出を奪いステンドグラスの城を生み出した。
ミデンと瓜二つな容姿を持つ、一回り小さい黒い分身体を無数に生み出す事も出来るが、この分身が倒される程にミデン自身の体力も減少してしまう上に分身一体一体の性能はそれほどでもないので使いどころを選ぶ能力である。
宮本監督によると、作中で放たれた分身の数は250万体ということ。これは単なる設定ではなく実際にCG映像で使われたオブジェクトの数である。
正体と目的
彼の正体は『MIDEN F-Mk2』という古びたカメラに宿った存在。いわゆるところの付喪神のようなものである(ちなみにほまれはカメラのお化けと称した)。
MIDEN Fは時代がデジタルカメラが主流になっていくなかであえてハイエンドのフィルムカメラとして企画されたものだったが、発売とほぼ同時期に製造元の会社が倒産してしまった。その為、市場に出回ったのはごく僅からしく、多くの在庫が日の目を見ることなく処分されたと思われる。
ちなみにコアなファンの間では幻の名機として有名らしい。
実際、さあやが彼が宿っていたとされるMIDEN Fを開けるとフィルムが入っておらず、カメラとしての職務を全うする事はなかったのだと思われる。
それから、ずっと何もないカメラの中で過ごし続けた彼は何かのきっかけで外の世界を知り、そこで人々がありふれた日常の中でデジタルカメラやスマートフォンで”キラキラの思い出”を記録しなおかつSNSでシェアしている現実に直面する。
ミデンは同じカメラなのに、【役割を果たすことを許されなかった自分】に劣等感を苛むようになるのだが、フィルムが入っていないカメラのミデンでは【キラキラの思い出を記録すること】は足掻いてもできない。
その苦悩がミデンに力を与えたのだろうか。ミデンは他人の思い出そのものを奪う力を得るようになった。恐ろしい力だが「想い出を記録・保存し複製して共有する」というカメラの本来の役割から考えると劣化でしかない、ある意味「みじめな」ものである。
だがこの力を手に入れたミデンはそれに魅入られ、世界中でもっともキラキラした存在の思い出をコレクションすることにした。つまり、プリキュアの記憶である。
そうして本作の物語が始まったのだ。
結末
彼に取り込まれ、他の皆が出た後もずっとミデンの中に残り続けたエールは外に出たプリキュアがエールの意思を汲み取り戦う中説得を続ける。
その中でミデンが見られるのを嫌がることに謝りながらも、彼の生まれた場所へと踏み込むことに……。
ミデンが生まれ、過ごしてきた部屋は暗く延々と冷たい雨が降り続けている部屋であった。
生まれてからずっとこの部屋で過ごしており、悲しみや孤独以外の事を知らなかった。
彼の名前であるミデンの本当の意味は「彼自身が何もない。零である」という意味であり、てるてる坊主のような姿をしているのは【いつか(彼の心の)雨(悲しみ)が晴れますように】という願いを体現した姿なのだと思われる(劇中でも、てるてる坊主という描写にこだわっており、この考察を助長している)。
想い出を求めて暴走したミデンは、はなの必死の説得や「一緒にキラキラの想い出をつくろう」という言葉によって救われ、プリキュア達全員に見守られながら静かに消えていったのであった。
はなが暗い過去が原因で暴走してしまったミデンを救う事が出来たのは、きっと彼女もまた辛い過去を経験した事があったからなのだろう……。
そういう意味ではミデンを救えたのは唯一、はなだけだったのかも知れない。
そして、彼の宿るMIDEN Fはさあやの手によって新品同様の輝きを取り戻すとはなの元にカメラとしてやってきたのであった。当然、新品のフィルムも入れられて。
これからはきっと本来のカメラとしてはな達と共にずっと求め続けた沢山のキラキラな想い出を自分のフィルムに収めていく事が出来るだろう。
余談
名前の由来
名前であるミデンはギリシャ語で『零』(ゼロ)という意味があり、彼の能力で『想い出をなくす』もしくは『想い出を奪い去ってゼロにする』といった事からこのような名前になったと思われる。
演者について
演じる宮野真守氏は本作品でプリキュアシリーズ初参加。
「女の子だって暴れたい」というテーマを体現した初代作を視聴して衝撃を受け、いつかこのシリーズに妖精役で関わってみたいと思い続けていたようだが、自分に近しい声優仲間たちが続々とプリキュアシリーズに起用される中で自分はオファーがずっとこなくてやきもきしていた状態だったらしい(実際、宮野氏は多くのプリキュア声優との主人公とヒロインという関係での共演歴が多い)。今回の抜擢は念願叶ってのものだということ。
ミデンは恐ろしい敵キャラだが同時に徹底して明るく陽気でユーモアを感じさせる存在でもある。その複雑な属性を見事汲み取って、映画館の子供達に「怖くて面白い」という矛盾した感情をトラウマのように植えつける狂気じみた演技は必聴である。
前述の名前の由来となった「ゼロ」だが、宮野氏はこの単語に縁があるようで、ゼロの名を持つキャラクターを演じている経験を持っており、ゼロがつくタイトルの作品にも出演している。
またニチアサキッズタイム関連の出演歴としては、獣電戦隊キョウリュウジャーの獰猛の戦騎D及び、彼が変身するデスリュウジャーがあり、こちらも劇場版のボスキャラクターにしてヒーローの紛い物ともいえる存在である。さらに言えば彼は最初に誕生したナンバリングが0番の巨大戦力を操っており、本人も敵側の幹部としては最初に誕生した存在であるなど、コイツも「ゼロ」に関するキャラクターだったりする。
類似キャラ
どことなく新劇場版のコイツに似たような姿をしており、顔のみならばコイツにも酷似している。(後者はCVが同じ宮野真守であり、他人をコピーする能力を持っているという共通点がある)
関連タグ
ドクター・トラウム … 本編36・37話にてプリキュアオールスターズの戦いを引き起こした悪役。劇中プリキュアの赤ちゃん化を目論んだのもあり、ミデンの誕生に関係している説もあった。(ちなみに実際は全くの無関係で赤ちゃん化にも失敗している。ただ、メタ的に言えば「本当にプリキュアが赤ちゃんになるとどうなるんだろう」とTVの前の子供たちに思わせる映画の遠回しな宣伝の意図はあったとは思われる)
ユニ … 中の人が同じレコードレーベル繋がり。この時点でプリキュアシリーズに出演していなかった為、彼は同レーベル所属のソロアーティストから通算で(ニコを演じた林原めぐみを含めて)6人目に当たる。
バテテモーダ、品田拓海 … 同じくこの時点では出演していなかった中の人達が同じレコードレーベル繋がりの男性キャラ。この内、品田拓海は所属している男性声優担当としては初めて敵キャラ以外のメインキャラであり2022年現在、キングスーパーライブ2018出演声優で未だにプリキュアに出演していないのは蒼井翔太だけになった。
トイマジン…ある意味ではミデンと同じ、使い捨てられた付喪神の化身。こちらもミデン同様に改心して救済されている。
クラリネット(プリキュア)…付喪神系のプリキュア映画のラスボスの先輩。相田マナ/キュアハートの大切な思い出の存在を利用した為、彼女の逆鱗に触れ倒される。
リフレイン(プリキュア)…付喪神系のプリキュア映画のラスボス後輩。少子化で取り壊し寸前の小学校の時計塔に宿っている。