概要
2030年、謎の音声電波の受信を皮切りに次々と出現した、既存の生物学では説明のつかない特性を備えた巨大生命体の総称。
地下深くに存在するという『特異点』を経由し「向こう側」から出現した赤潮や血霧を思わせる赤い粒子「紅塵(もといアーキタイプ)」で満たされた環境内で自然発生した全く新しい生物群であり、紅塵の持つ高次元的特性によって、より高次元の実体から投影された虚像のような現象とも推測されている(例えるならば『絵の中の風景』(2次元)に我々『人間』(3次元)が掌や拳を作って影絵を映し出しているのに似た現象と思われる)。
その生態もまた紅塵をベースとした進化を遂げており、
- 影絵の形を自由に変えられるように全ての個体が己のDNAを書き換えて形質を激変させる能力を持ち、進化そのものを自らコントロールすることができる(この際、紅塵の時空をねじ曲げる作用によって進化の過程自体を省略している)、
- 紅塵を経由して生存に必要なエネルギーを得るため、基本的に捕食は不要、更に多量の紅塵を吸収すると超巨大に成長する(一方で、進化の過程で捕食によるエネルギー摂取を行えるようになることで紅塵の依存から脱却する怪獣も存在する)、
- 上記の短期間での自己進化のほか、未来予知や急速な組織の再生、空間に歪みを生じるなど、既存の生物とは全く異なる生態システムを保有している、
- 更に『特異点』同様に別種別個体の怪獣同士もまた超次元的に繋がっており、記憶の引き継ぎや共有がされている(とはいえ怪獣同士は『特異点』の力を巡って互いに競合し合う弱肉強食の関係性にある)
……等々、まさに別次元の生物群である。
紅塵もまた怪獣の棲息環境そのものであるとともに、それを広げていく素材でもあり、切っても切れない関係にある。
さらに不気味な事に、まずは群れで活動する比較的弱い個体が、次にそれを喰らう上位の捕食者が、というふうに、全体として生態系ごとこの世界に侵攻してきているかのような挙動を示している。
(逆に言ってしまえば紅塵が喪失、無力化されると怪獣もまた死滅することにも繋がっており、高位次元を介して紅塵に指向性を与えるO.Dを用いれば怪獣の完全な根絶すら可能となる)
また、逃尾市の「古史羅ノ図」など各地の伝承や神話との関連性も窺えるが、それが過去にも何度か出現したものか、または未来を予知したものかは不明(少なくとも2030年より前にも特異点から怪獣が出現していた模様)。
デザインに関しては、各怪獣の作画がCGであることから「着ぐるみでは不可能な骨格でありつつも、生物学的に無理のない巨大生物」、「絶対に意思疎通が出来ないと思わせる造形」というコンセプトが志向され、そのうえでモチーフ元からの再デザイン(原点回帰)や、歴代東宝怪獣のオマージュが取り入れられている。
怪獣一覧
最強怪獣ゴジラ
全ての異変の元凶と目される怪獣。
存在自体が紅塵もとい怪獣の発生源たる生きた『特異点』であり、常時体表から膨大な量の紅塵を発生させている。各形態がもはや別種と言えるほど異なる容姿をしており、学名もまた「Godzilla sp.(種小名未特定)」でまとめられている。
日本のミサキオクに伝わる古い伝承では『古史羅』と記されている。
ゴジラアクアティリス
第0形態。イージス艦をも凌ぐ巨体と太古の海生爬虫類に似た赤い体が特徴。太平洋からマンダの群れを追うように日本近海に現れた。
ゴジラアンフィビア
第1形態。アクアティリスが東京に上陸すると同時に進化し、頭部に細長い棘が生えた爬虫類か両生類に似た姿となった。
口からマイナス20度の可燃性ガスを吐き、引火すると周囲一帯を吹き飛ばす熱膨張を生む。
ゴジラテレストリス
第2形態。アンフィビアが蛹を経由して進化した大型肉食獣脚類に酷似した姿。地味な褐色だったアンファビアとは打って変わって、体色は派手な青色になった。
攻撃を予期した対象箇所の硬化、組織の急速な再生等が可能であり、組織を急成長させて赤い触手を発生させて攻撃を相殺するリアクティブアーマーにすることもできる。
ゴジラウルティマ
第3形態にして最終形態。紅塵の発生源である『特異点』としてさらなる成長を遂げた姿。
成長しきったところで、「さらなる存在」へ至る可能性があるが、その時に引き起こされるものは不明。
かつて戦前の日本の房総半島に別の個体が出現したとされるが、戦後の混乱とともに忘れられ、その骨は当時の軍の管理施設の地下に隠されていた。
電波怪獣ラドン
翼竜に酷似した全長5mの飛翔怪獣。
赤や青など極彩色の体色でトサカが一本で尻尾が長いプテラノドンかズンガリプテルスに似た外見をしている。体組織から放射性物質のラドンが検出されたため、いつしかそれが名前として認知されるようになった。
発電器官のような組織を持ち、鳴き声とともに電波を放ったり、電波を放つものに強く反応するところから「電波怪獣」とも呼ばれる。
当初はまだ環境に適応できず数時間で活動限界を起こして突然死を起こしていたが、その後より生物として安定した形態へと進化した。
ラドン成体(第2形態)
生物として安定し洗練された姿へと自己進化したラドン。
トサカが二本で赤い体色のケツァルコアトルス似の姿をしており、上記の個体はおろか歴代の中でも最も小柄だが大量に出現し、海から大規模な群れとなって紅塵からなる赤い飛行機雲を形成しながら世界中を飛来した。さらに後には成体が巨大化したようなドス黒い超大型個体が確認されている。
ミサキオクの伝承では『羅甸天狗』と記されている。
未来予知怪獣アンギラス
全身棘まみれの鎧竜に似た四足歩行型怪獣。
こちらもラドン同様あまり大きくなく、体長は約6m程度。
まだ幼体らしく好奇心旺盛な性格で、姿をくらました後に一回り巨大化した状態で再び姿を現す。前後で歩行形態が異なる独特な四肢を持ち、背中の装甲は尻尾の根元で燕の尾羽根のように二股に分かれている。
最大の武器は「直接未来を視ている」かの如き常識を超えた反応速度とそれによる跳弾能力。そのため「跳弾怪獣」や「未来予知怪獣」といった別名が付けられた。
原典同様肉食性で、ラドンの死骸をさらって食い散らかしていた。
マンモス級の蛇マンダ
房総半島沖などに出現した、エビやムカデのような甲殻を持つ海蛇に似た巨大な海棲怪獣。名前の由来は「マンモス級の蛇」の略称。全長210m。
クジラのように複数個体が群れを成して泳ぎ、河川を遡上する様子が確認されている。
今までの作品と比べても神性のカケラもないグロテスクでどこか実際に存在しそうな深海生物めいた姿をしている。
インドにいるらしい怪獣サルンガ
インド北方ウパラの研究所の地下から出現した今作オリジナルの怪獣。
凶悪な顔つきと一本角に長い耳、背中に並ぶ鱗、そして額の青い弓のような模様が特徴的。全長21m。
猿のように長い四肢を持ち、極めて高い運動能力を有する。紅塵を発生、コントロールする能力も有し、「シヴァ」と呼ばれる特異点の奪還を狙って現れたと推測されている。
現地では額の模様から神話の弓に由来して「シャランガ」と呼ばれている。
再生怪獣クモンガ
ドリル状の腕をもったクモのような姿の怪獣。学名「クモンガ・サイトーデス」。
全長2.8mほどで、群生している。生命力が異常に高く、真っ二つになっても生きているばかりか零れ落ちた体液が青白いボディと巨大な眼をもったスライムのようになったのち、元の姿やより強力な姿へと再生するところから「再生怪獣」とも呼ばれる。
捕食能力を獲得して紅塵への依存から脱却しつつあり、人間も積極的に獲物として襲いかかる。
カマンガ
再生時に変態し、カマキリのような鋭い巨大な鎌を備えたクモンガ。学名「クモンガ・ファルシペス」。
ハネンガ
再生時に背中に金色のトンボのような2対の翅を生やしたクモンガ。学名「クモンガ・アラートゥス」。
ゼンブンガ
クモンガ、カマンガ、ハネンガの3種全ての特徴を備えたクモンガの最強形態。学名「クモンガ・ウルティマ」。
モスラ
ゴジラにより壊滅し紅塵に染まった東京の空を舞っていた金色の鱗粉を放つ色違いのヤママユガらしき生物。
大きさは一般的な蛾より少し大きい程度であり、歴代最小。他の怪獣たち同様に特異点から出現したかは不明。
紅塵に包まれた東京にはモスラ以外にも「紅塵を吸収して成長し、地盤と時空を歪ませる赤い蔦状の植物=ブロブ/グレイグー」や「ゴジラウルティマの体表に群生していた中型の昆虫怪獣」など、ゴジラを中心に紅塵由来の未知の生物が新たな生態系を築いていることが確認されている。
また劇中で語られた葦原道幸が発見、研究していた「紅塵を含んだ新種のクラゲのような生物」もまたこの世のものではない存在(=怪獣)であるという。
怪獣界
その後発売された円城搭監修の小説版によれば、海底に存在する特異点から発生した紅塵が、深海に残留していた既存の生命の遺伝情報と発現機構を読み取り相互作用する事により怪獣が発生する。
ラドン・マンダ・アンギラスらが既存の翼竜や恐竜に外見が類似しているのは従来の地球の生物に影響を受けたためであり、彼らは特異点から発生した紅塵を「手弁当」のように体内に貯蔵し、空・海・陸に移動してから死亡する事により死体が紅塵へと分解され、連鎖的に紅塵を世界中に拡散していく。ラドンおよびアンギラスは海中形態があり、進化の早回し方式で空中や陸上での活動に特化した形態へと変態する。
怪獣の占領地となった地域では「虫型怪獣」が発生、人間を含む通常の物質を捕食する事により紅塵への依存から脱却し、分裂・産卵・繁殖によって勢力圏を拡大させ、死亡後虫型怪獣も紅塵へと分解される事により、自分たちの生態系の土台となる(クモンガが虫型なのは浜辺を歩いていた蜘蛛のDNAを利用したため)。
最終的には紅塵の渦に没した東京異界のように自立移動する植物型怪獣「ブロブ/グレイグー」が発生し、土壌や建築物などを全て分子レベルからアーキタイプベースに組み替えてしまう。
ゴジラSPの怪獣は「手弁当型」→「虫型」→「完全アーキタイプ系」と順に既存の生態系を組み替え、動物界・鉱物界・植物界を再構成し、怪獣界と呼ぶべき世界に地球を塗り替えていく過程と言える。
余談
偶然か否か、ジェットジャガーを含む出演怪獣には『昭和ゴジラに登場した怪獣』という共通点が存在する(オリジナル怪獣であるサルンガにおいても、オマージュにガバラとバラゴンの要素が含まれている)。
また、エンディングに描かれていた歴代東宝怪獣たちも最終的にそのほとんどがオマージュも含めて登場したことになった(キングシーサーはマンダの声として出ていたほか、最後の最後には……)。
その後の高橋監督のインタビューによると、葦原が研究していたクラゲ型の生物は初期案の名残であり、その生物が若返りを繰り返していく何十年~何百年ごとに刺激が与えられると突然変異を起こして巨大化し、ゴジラへと進化を遂げていく案だったようであり、この時に水中にドゴラも登場させようとも考えていたという。
タイトルの「シンギュラポイント」とは「特異点」の事。ブラックホールと関わりが深い用語で、ブラックホール第3惑星出身の「あの怪獣」らしき存在も顔見せ程度に登場した。
監督の円城搭監修の小説版では、怪獣達側の視点も描かれており、ゴジラを含めた怪獣達の出現や生態、「目的」といった内情などアニメ本編では描かれなかった内容が記載されている。
また、小説版エピローグやオーディオコメンタリーにてアニメ本編終了後の後日談として逃尾市にて「翼のような鰭を持った三つ首の怪魚」が発見されたらしいことが語られた。
関連タグ
リドサウルス:(恐竜100万年のネタと一緒に紹介され、どちらもレイ・ハリーハウゼンと因縁のある作品である)
ゴジラ・アース:GODZILLAに登場する怪獣。二万年の時をかけ地球の生態系を自身の細胞を元にする生物群に置き換えた点が、自ら「紅塵」を発し自らの生存環境を作り上げる本作の怪獣と共通している。
特にウルティマに至っては、終盤において彼の周囲に植物(と思われる生物)が増殖するなどアースに酷似した現象が起こっている。
KAIJU:パシフィック・リムに登場する地球外巨大生命体。体内に流れる「KAIJUブルー」と呼ばれる体液で周囲の環境を汚染し作り変える点が「紅塵」と似ている。
怪獣墓場:ウルトラシリーズに存在する高次元的あるいは超次元的な性質を持つと思しき空間。初代ウルトラマンにおいてここから出現したシーボーズにはゴジラのものに似た背びれが着いていた。ここには倒された怪獣の魂が眠るとされる。(≒3次元空間で怪獣を撃退しても怪獣の本質、本体には影響を与えられないという本作の状況と符合する点がある)。
また本作で保管されていた「骨」の形状は過去作のゴジラの骨よりもむしろシーボーズ寄り(眼窩の形状など)。
ザラガス:出現時に赤い煙を伴うほか受けたダメージから復帰する際にも同様の赤い煙を発生させていた。外部からの刺激で、生物の範疇を超えた体質・体機能の変化を起こす等、やはり本作の怪獣を思わせる点がある。
有害超獣:Toy(e)氏によるイラストシリーズ。霧状の因子が周囲の物質を吸収し超獣が生まれる点が今作の怪獣と酷似している。