錦山彰
にしきやまあきら
「俺はな…桐生…兄弟として お前にそんな死に方させられねえよ!!
極道には時効もねえ! お前も分かってるはずだ!!」
「決着をつけよう。俺たちの戦いに!」
東城会直系「錦山組」組長。主人公・桐生一馬とは幼馴染で、渡世の兄弟分。
桐生と同じ児童養護施設「ヒマワリ」の出身で、東城会の大幹部・風間新太郎に育てられた。
その為、桐生との付き合いは長く、彼との間には深い信頼関係が築かれており、極道の世界にも彼と一緒に足を踏み入れた。処世術に長け、交友関係の広いタイプだが、常に自分の一歩を先を行く桐生に対して多少のコンプレックスを感じている。
桐生からは「錦」、由美や麗奈からは「錦山君」と呼ばれている。
容姿
『0』の若衆時代は、ワンレングスのロン毛にワインレッドのスーツに黒地に金の模様が入ったチンピラシャツを着用している。
背中の緋鯉もこの時は桐生同様色のない筋彫りの状態であった。いつ色を入れたのかは不明。
『1』『極』では、白のスーツに黒のカッターシャツ、ワニ柄の靴といった装い。
髪型は凶変以前は『0』と同じワンレングスだが、凶変後はオールバックに変わっている。
また、『極』で初めてこの髪型にした際は自身が殺害した組員・松重の体から溢れ出した血をポマード代わりに髪を固めている。
ネクタイは凶変以前は着けていなかったが、凶変後は全てのボタンを留め、白いネクタイを着けている。
龍が如く0 誓いの場所
東城会直系堂島組若衆として、当時20歳の若かりし頃の錦山が登場。
要領がよく立ち回りに優れており、組織でのし上がるためにどうすべきかを常に考えている。また兄弟分である桐生にはそういった野心が薄いことを惜しく思っている。
戦闘では桐生のチンピラスタイルのような原始的な喧嘩スタイルで戦い、通常の攻撃の他に挑発からのカウンターやタックルからの双手刈などの特殊な攻撃も行う。
1988年12月に発生した「カラの一坪」を巡る抗争にて、土地の情報を握る立華鉄を堂島組に渡そうとしない桐生の命を若頭補佐の三幹部が狙った際は、阿波野大樹の脅しを振り切った桐生を車に乗せて郊外に逃走。そこで堂島組の裏切り者に対する冷酷なやり方を知っているためにせめて自分の手で桐生を殺そうとするが、結局は果たせず、「やっぱり俺は…お前と一緒じゃなきゃ駄目だ」と悲痛な心情を涙ながらに吐露する(後に発売された『極』で描かれた凶変するまでの過程を考えると、ある意味皮肉ではあるが、錦山という男の全てを物語る台詞と言える)。
逆に錦山を騒動に巻き込むまいとする桐生から兄弟の縁を切られ、山中に置き去りにされる事となる。
その後、堂島組構成員から桐生を殺すように強要された際は風間や桐生を裏切ることが出来ないという気持ちから堂島組と敵対することを決意し、桐生と行動を共にする。
終盤、カラの一坪の所有者であるマキムラマコトを探しに神室町にやってきた真島吾朗と一戦を交えた後はマコトが居なくなったことを伝える。
その後は最終決戦で桐生と共闘するが、後に堂島組を足止めするためにその場に残り、桐生に渋澤啓司を止めるように全てを託した。桐生と渋澤の決着後は尚も渋澤を殴り続け、怒りのあまり殺そうとする桐生を力ずくで制止し、彼を冷静に諭す。
事件後は桐生が堂島組に復帰したことを知って最初は驚愕し、先の騒動で敵意を買っている筈の堂島組に敢えて戻ろうとするかの疑問を投げかけるが、桐生からその理由と覚悟を聞いたことで安堵する。
本作での友として、兄弟分として桐生を思う彼の熱き人間性は、多くのプレイヤーやシリーズファンの心を動かし、『龍が如くONLINE』事前登録開始記念に行われた人気投票では郷田龍司に次ぐ7位(152420票)という好成績を残した。
投票期間中の中間発表では真島、桐生に次いで3位にまで追い上げ、峯義孝と激しい3位争いをしていた期間もあった。
龍が如く
1995年(当時27歳)の10月1日、自身や桐生と共に「ヒマワリ」で育った幼馴染で現在は神室町でホステスをやっていた澤村由美が、自身も所属する堂島組組長・堂島宗兵に誘拐された事を知り、彼女らの元まで駆け付け、そこで堂島と揉み合いになり、カッとなって彼を射殺してしまう。
そこに遅れて桐生が駆け付け、当時、錦山には難病を患った妹・優子がおり近日中に手術を控えていた為、桐生は錦山が捕まってはいけないと考え、錦山の「親殺し」の罪を被って警察に捕まる。
その後、錦山の妹は手術の甲斐もなく死亡し、由美は事件のショックで記憶喪失になった上、入院した病院から姿を消してしまう。
それから10年の間に、以前から桐生に抱いていたコンプレックスとそれらの悲劇が相まって錦山は豹変を遂げる。
2005年12月(当時37歳)、東城会の大幹部になっていた錦山は、東城会の金庫から100億円が消えていることを幹部会でリークし東城会を混乱させる。
そしてその騒動に乗じて東城会3代目組長・世良勝を暗殺。自分が4代目になるべく暗躍し、遂には育て親である風間の暗殺をも図り、10年ぶりに再会した桐生とは兄弟の縁を切り敵対することとなる。
その後、近江連合の協力を得て独立。どんな犠牲を払ってでも東城会の頂点に立とうと画策するが、桐生や同じく東城会のトップを狙う者達の手によって失敗。
終盤、由美と再会すべく桐生が現れたミレニアムタワーにて、緋鯉を背負う自分に対し、応龍を背負う桐生と上半身を脱いだ裸一貫の状態で、最後の死闘を繰り広げた末に敗北する。
鯉は龍門を昇る事でやがて龍になるとされているが、錦山は終ぞ龍にはなれなかったのである。
その後、100億円を奪い返しに来た騒動の黒幕・神宮京平から桐生達を守る為に、腹部に銃弾を受けながら彼をナイフで刺し、神宮から奪った拳銃で由美がセットした爆弾に発砲し、神宮と100億円を道連れに爆死した。
「こんな奴に 好きにさせて…… た… たまるかよ……」
「最後のケジメくらい…… 俺につけさせろや……」
戦闘では力を溜めての大振りのパンチやアッパー、出の早いキックなどを使ってくるほか、シャープな体型に似合わず桐生ですら持ち上げることのできない調度品を強引に振り回してくる。
龍が如く極
初代『龍が如く』のリメイク作品で、本作で追加されたストーリーで錦山が『0』の後から『1』本編前にかけて、どうして豹変したかが描かれる。
桐生が被ったことで「親殺し」の罪を逃れた後、風間やその右腕である柏木修の采配で、後に桐生の受け皿となる様、錦山組を持つ事を許されるが、元々ヤクザとしての経験は10年程の一若衆でしか無く、さしたる経歴がないこと等、同じ年数ながら舎弟頭補佐とまでなっていた桐生と比べると劣る点も多く、風間組から移籍した松重を始めとする周りの面々(桐生逮捕前に柏木が語っていた通り「桐生の存在で抑えられていた暴れたいだけのやつ」)からも見下され、組長でありながら組員達を統制しきれない状態となり、よりにもよって柏木の世話している組のシマにみかじめ料を取りに行くという重大な背信行為を行われてしまう(組員達の会話を聞くに「自分達はあくまで風間組からのヘルプ要員であり、親は風間、錦山ではない」という共通認識があった模様)。
これはアガリを横から掠め取るも同然であり、「舐めている」も同然の行いであるため、普通ならエンコ、それどころか状況を考えれば東京湾モノである、幸い早期発覚により組長である風間にことが知れる前に錦山が柏木に頭を下げた為「今回だけは」と言う形でなんとかなったが、許されたと言うより柏木の言った通り「子分の躾もできないグズの指などなんの価値もない」という呆れによるモノと無かったことにするのが容易であっただけであり、挙げ句の果てには、「桐生ならこんな事には…」と吐き捨てられてしまう。
それ以降も事ある毎に桐生と比較されて彼に対する罪悪感や劣等感が大きくなっていく。
さらに妹の主治医・日吉公信が裏切り、必死でかき集めた3000万円を松重への借金の返済に当て失踪。妹は代わりの医者が見つけられず病死。
嶋野太からの唆し(「本当に錦山を育てたいのなら癖の強い者ではなく、新入り等の能力は低くても扱いやすい者を集めるはず」「風間は桐生に組を持たせたいための地盤固めをさせているだけ」等)によって抱いた風間への猜疑心、舎弟であるはずの松重の暴走、由美の失踪などによる負の連鎖に押し潰されていき、遂に妹の位牌の前で全てに絶望して切腹しようとするが、その場に現れた松重のまたもや桐生と比較した嘲笑の一言に激怒して彼を殺害してしまう。
「1人殺すも2人殺すも同じじゃねぇか…そうだ……そうだよ……とっくに道は決まっていたんだ…堂島を殺し、桐生を見捨てたあの時から……」
「やってやるよ…俺は必ず東城会の頂点に立ってやる…そのためなら……何人だろうがぶっ殺してやる……!」
これをきっかけに、自分自身を含めて誰も信じられない重度の人間不信に陥ると同時に上記のセリフを吐き、東城会の頂点に立つという野望のみを心の支えとするようになった。
そのためなら手段を選ばず、何人だろうと誰であろうと殺すことを厭わない程の冷酷な性格へと変貌してしまう。
この追加シナリオは、台本を読んだ担当声優の中谷氏がしばらくキツイと思うほど重たいものだった。
戦闘面は格闘スタイルが『0』の喧嘩スタイルに加え、柏木のような空手を使用した我流+空手のスタイルに変化。
一方で『1』の椅子で殴りかかるなどの一部の攻撃は使わなくなった。
QTEでは桐生と激しい拳の応酬を繰り広げながら共に過ごした時代や事件以後離れ離れになっていた0時代やそこからの10年間の回想が流れる粋な演出が追加。
最後の殴り合いの際にフラッシュバックする
錦山「桐生…行こうぜ!」
桐生「ああ…」
という『0』の共闘時の台詞は涙モノ。
龍が如くONLINE
キャラクターストーリーは「『0』(1988)」、「『0』から『1』の間」、「『1』(決戦)」の三種類に分かれている。
1988では麗奈との出会いが語られており、阿波野がセレナのある区間の権利者に脅しをかけて買い取ろうとして、風間をスパイするなど売りかけるという後に繋がる危うい一面もあった。
『0』から『1』の間では、堂島組長を殺害してお咎めなしなど納得の行かない堂島組構成員からの襲撃を受けて奮闘する話となっている。
錦山彰(決戦)では、『極』で彼から臓器ブローカーへの紹介料として三千万を騙し取った挙句、妹を見殺しにして逃げた主治医・日吉公信への復讐が描かれている。日吉を見つけた後は逃亡の手助けをするも最終的には彼の全身を生きたまま臓器売買のブローカーに三千万で売り渡している。
これは錦山の個人的な復讐でもあったが、同時に「優子のような犠牲者を出したくない」という想いもあった模様。
また、イベント『掛け違えたボタン』のストーリーでは、最終決戦前(本編最終章)での錦山からの視点が描かれている。
自分が次期4代目だと嘯き、暴徒を焚き付けて桐生へと差し向けたものの彼らを一蹴してミレニアムタワーへと向かったことを聞いて、やはりだめかと悟る。
しかし、仲が良かった頃を思い返してながらも、全ては過ぎたことと自嘲しつつ自分もミレニアムタワーへと赴く。
全力を尽くして桐生に敗れた後、神宮が由美たちを撃ったことを聞くと仕方ないなと思いながら最後の力を振り絞り神宮へとナイフを突き立て、「最後のケジメ」をつけるため、袂を別った兄弟に別れを告げた。
(最期くらい…おめえにいいトコみせねえとなぁ)………あばよ。兄弟。
『1』では桐生の幼馴染という情報ぐらいしかエピソードが無く、桐生への敵対演出も影で部下を仕向けるなど間接的であり、イマイチ東城会直系組長になった程成長した要素が見えない。
作中の中ボスである嶋野や真島吾朗、劉家龍の方が悪役としての印象が大きいのも一因といえる。
また、バトル面も真島や自身の部下である荒瀬和人が強敵のため弱く感じてしまうので、直前に戦う神宮の方がまだ厄介な敵である。
しかしリメイク版の『極』では、錦山に関するイベントシーンが大幅に増えた(だが、バトルシステムが当時とは大幅に違うこともあり、初代より弱体化した)こと、『0』の存在で錦山個人の掘り下げがなされたことにより、ラスボスとしての印象が改善された。
錦山がたった10年以内に直系組織の組長にまで上りつめた背後には、関西最大勢力の極道組織である近江連合や大物政治家の神宮を味方につけていたという経緯がある。
野望のためになりふり構わなかったとはいえ、組を持った時には弱冠27だった若者がたった10年という期間で多くの組員と重要な役目をその身に背負えるほど成長したことから見て、錦山には元々野望を成し得る力があったのではないだろうかと考えるファンもいる。
また、そうした野心を糧に振るった辣腕で強引に規模を拡大したためか、錦山組の組員は若頭の新藤浩二や荒瀬を始め、後の作品に登場する神田強や長谷部など、野心を隠さない者や好戦的な無法者が多い武闘派な組となってしまったが、そんな組員たちをしっかりとまとめ上げていたのも彼の手腕が窺える。
二代目組長である新藤は、彼に惚れて極道の世界に足を踏み入れたと語っているなど、組員たちからの人望があったのも確か。
『ONLINE』でも彼の「力こそ全て」とも言うべき実力主義は、血気盛んな一部の層から支持されていたことが語られている。
そう考えると、もしも錦山組が桐生の受け皿としてではなく錦山自身の実力を以て立ち上げた組だったら、あるいはより実績を積ませた上で組を持たせていたら、物語の展開はガラリと変わっていたのかもしれない(少なくとも桐生の出所まで10年の期間があったのにも拘わらず、早々に受け皿のために錦山組を立ち上げてしまったのは、事を急ぎ過ぎた感は否めない)。
- 錦山の声を務める中谷氏は『ONLINE』や『7』の新主人公「春日一番」の声も担当しており、中の人だけを見ると桐生から錦山に主人公をバトンタッチした様にも見える。
- ちなみに春日の背中に彫ってある刺青は、錦の緋鯉や桐生の応龍の中間「龍魚」である。(龍を背負うには「相応の格」が必要である為、鯉が龍になる途中の龍魚を入れていると語っている。将来的には龍魚を龍と同様「相応の格」が必要な絵柄にするという密かな野望を持っている)
- 『0』の第六章にて桐生に乗ってきた車を明け渡して山中に置き去りにされた件は、ファンの間では錦山・置き去り事件とも、ニシキ・山置き去り事件とも、果てには置き去りの極みとも呼ばれる。また、そこから時系列上の次の場面となる第十章冒頭では桐生は神室町を徒歩で移動しており、第十四章で錦山と再会して以降も彼らの話題に上がらなかったため、その車がどうなったかは不明。
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