韓国の妖怪

かんこくのようかい

韓国発祥の妖怪の総称である。

概要

韓国発祥の、独自の妖怪の総称。

韓国語では요괴と表記される。

近年、独自の都市伝説などは知られるようになってきたが、妖怪については日本と比べるとあまり研究や分類がされておらず、紹介もそれほどされていない。

中国文化や仏教の影響によるものも多いが、民話や仮面劇などによる独自の伝承も数多く存在している。

最もポピュラーでバリエーションも多いトッケビは、日本統治時代の教育の影響で日本の鬼のイメージが定着してしまい、本来の姿が分からなくなっているといわれている。

なおpixivでは韓国のユーザー으육이(ウユギ)氏のイラストにこのタグがつけられ、紹介されている。

一覧

クィシン（귀신/鬼神/幽霊）

コククジラという意味もある。

セタニ/テジュ/ミョンズ/ゴンジン（새타니/太主/太子耳/胎児鬼）：餓死もしくは天然痘で死んだ子供の幽霊で蠱毒として使役されることもある。
タルギャルクィシン（달걀귀신/玉子鬼神）：玉子に手足がついたようなお化け。のっぺらぼう。学校の怪談では下に顔があり個室トイレの下の隙間から覗いてくる。
チョクヨムグィ（적염귀/赤髥鬼）：墓を奪った者の元に報復に現れた赤い髭の幽霊。
ユン・ジョンオク（윤정옥/尹貞玉/阿娘傳說）：アランとも呼ばれる美しい女性であったが殺されてしまい幽霊となり、白い蝶に化身して犯人を示した。アリランの題材として有名。
ソンドル（손돌/孫石/孫乭）：王に疑われ処刑されたがそれでも忠誠を誓ったという男で、死後祀られ風神となった。祀られた地では強風をソンドル風と呼ぶ。
チャクチャククィシン（착착귀신/斲斲鬼神）：梅雨の夜に暴れるという幽霊。
ムルクィシン（물귀신/水鬼神/水鬼）：溺死した者の幽霊で人を溺死させる。
チョニョクィシン（처녀귀신/処女鬼神/孫閣氏）：結婚する前に亡くなった女幽霊。

コンコンクィシン（공공귀신）：廊下でコンコンと音を立てて髪の毛で歩く逆さ幽霊。
クムヒョンメ（금현매/琴絃魅）：革紐で船を縛り動けなくさせた女幽霊。
シンギウォンヨ（신기원요/伸妓寃妖）：見たものは死ぬというバラバラの身体で現れる女幽霊。見ても正気を失わなかった者に犯人捜しを頼む。

トッケビ（도깨비/独脚鬼/独甲鬼/鬼）

グスンデ（그슨대）：土着の神が凋落したものだという説もある暗闇と恐怖の妖怪で、普段は子供の姿をしているという。

アドクシニ（어둑시니）：グスンデに似ているが人を驚かすだけの妖怪。シニは神位のことで守護神と解釈されることもある。

グスンセ（그슨새）：グスンデと似た綴りの済州島の傘のお化け。憑りつかれた人を殺したりする。

ズオクシニ（두억시니/頭抑神/斗玉神）：夜叉に似ているといわれる存在で「頭を押さえつける鬼」といった意味を持つ。

ドゥドゥリ/ノック（두두리/豆豆乙/木霊/木神/牧神）
コグクィ（거구귀/巨体耳/巨口鬼）：大きな口を持つ鬼。
ギルダル（길달/吉達）：逃げるときに狐に変わったという鬼。

ヤクァングィ（야광귀/夜光鬼）：業ゆえに地獄に落ちて鬼になったものが逃亡しようとしたため、閻魔にすぐに見つかるように光るようにされてあの世の道案内をするようになった。

ジャンジュマリ（장자마리/長者匹）：江陵地方の海藻と穀物で身を包んだ鬼。
ユウイプファ（유엽화/遊獵火）：松明のような火の姿で人を取り囲んで脅かす鬼。
ゴグワンテミョン（고관대면/高冠大面）：高官吏の冠を擁く大きな顔を持つ鬼。
ジグィ（지귀/火鬼）
ナティ/ナチ（나티）：赤黒い熊（ヒグマ）のトッケビ。韓国には同名のヘビーメタルバンドも存在する。

グィテ（귀태）：鬼との間に生まれた子。「生まれてはいけない者」という侮蔑としての用法もある。

メグ（매구/妖狐）

千年生きた狐が化けるという妖狐。下記の「クミホ」と同一視されることもある。

クミホ（구미호/九尾狐）：中国由来の妖怪だが独自の伝承もある。

ノホジョン（노호정）：僧形に化ける狐。
ノクファホ（노구화호）：老婆に化ける狐。
サムクミホ（삼두구미/三頭九尾狐）：済州島に伝わる三つ頭の九尾狐。足を外して素早く飛ぶ。鉄、卵、東向きに生えた柳の枝に弱い。
ブルヨゥ（불여우/赤狐）：赤い毛の狐で五十～百年ほど生きてやっと女性に化ける力を持つようになったもの。百年を過ぎると白狐ペクヨゥに格が上がる。
フクヨゥ（흑여우/黑狐）：黒い毛の狐で霊獣とされる。
ペクヨゥ（백여우/白狐）：百年以上生きた狐が転ずるといわれる。白狐が現れるのは新しい王が生まれる兆しだといわれ権力者には恐れられた。
ユソンシン（유성신/劉成神）：唐からやってきた天狐で、退治することはできずに新羅へ追い出すことしかできなかった。
ヨウヌイ（여우누이/狐姉）：三人兄弟の姉の正体は狐であり家畜を殺すなど害を成す。日本の三枚のお札に似た構成の民話に登場する。

ホランイ（호랑이/虎）

サプンフクホ（사풍흑호/砂風黑虎）：砂嵐とともに現れる邪悪な黒虎。
ホランイチョニョ（호랑이 처녀/虎処女/金現感虎）：キム・ヒョン（金現）という男を愛した女性の正体である虎。
ユボカダクムガンサンホランイ（유복이와 금강산 호랑이）：金剛山に住む巨大な虎。父の敵を取るために修行した狩人ユボカダ（裕福）に体内から腹を裂かれ死んだ。
ペクフォーコンホ（백포건호/白布建昊/白布巾虎）：白い布を被った年老いた虎。姜邯賛の文を読んで馳せ参じ、命令に従って十匹ほどの虎の群れを連れて去って行った。
チャンサンボン（장산범/萇山虎）：白く長い毛に包まれた虎に似たUMA。近年では釜山で多く目撃されており、人の声真似して獲物をおびき寄せる悪霊と解釈されることもある。2017年に公開されたホラー映画（邦題：『模倣霊』）の題材となった。

イムギ/イモギ（이무기/大蛇/蛇神）

テソンササ（대선사사/大禪師蛇）：未亡人の悪夢に現れるという蛇。
コレンドンドンソンビ/シンソンビ/サーバービ（구렁덩덩 선비）：新郎の正体は蛇であった。
サンサベム（상사뱀）：人の強い思いが変じた蛇。
ムステマン（무수대망）：呪術師の庭の古木に住みついた大蛇で、引きはがそうとすると毒気を吐き雷を起こした。
ミョズサ（묘두사/猫頭蛇）：雨が降ると青い光を出して病を癒すため神として崇められていたが、バクマンホという男に射殺されてしまった。その後男の一族は運気が上がり出世した。
ジャンヅサ（장두사/獐頭蛇）：ソングという男の家の近くを通る奇妙な大蛇。穴を塞いでも出てきてしまう。
ホンリャンコブハダ（홍량거부/鴻梁巨桴）：柱のような巨大な蛇。腹の中に貴重な珠を持つので狙われ、罠で狩られるという。
キンニョンサグル（김녕사굴/金寧蛇窟）：大蛇が住み処女を生贄を捧げないと飢饉がおこるという洞窟。判官によって大蛇は退治されたが、呪術師が振り返らず逃げるように言ったのを判官は守れずに血の雨を浴び呪い殺された。

ヨン/リョン（용/龍）

カンチョリ/ガンチョル（강철이/強鉄）：火や高熱を放ち旱魃を引き起こしたり、雹の嵐で草木を枯らせる鋼の鱗をもつ火竜、もしくは大蛇であるといわれる。韓国では有名なモンスターの一体で、近年では多くの創作物でモンスターとして採用されている。

キョンガンチョクリョン（경강적룡/京江赤龍）：海神に祈りを捧げないと航海の妨げになるという赤龍。
ヨウンノ（영노）：仮面劇に登場する狒々のような獣とされることもあるが、この名を持つ大蛇も伝わる。手足のない竜のような姿で悪い両班（役人）を食べて天に上ると伝わる民衆の味方。
ファンヨン（황룡/黄龍）：雷を伴い現れる龍。仏教の守護者や富や勝利の象徴とされる。
フクヨン（흑룡/黒龍）：井戸などを通じ地下から現れる龍。雨を降らせる力を持つ。
ペクヨン（백룡/白龍）：白虎と同様の象徴を持つという龍。韓国の王の祖であるという説もある。
ケヨン（계룡/鷄龍）：鶏の頭を持つ大蛇。人を体内で育て左肋骨から生む。生まれたものは美しく徳があるが口は嘴で、澄んだ水で育てると普通の口になる。

ゴイン（거인/巨人）

ヨハイプスゴイン（요하입수거인）：腰の下が水につかった巨人という意味で、30mほどの大きさであると伝わる。
チハクッサンテ（지하국대적/地下国大敵）：地底国に住む九つの頭を持つ巨人、もしくは盗賊で英雄によって退治される。
ペクトゥサンヤチャ（백두산야차/白頭山夜叉）：白頭山に住む巨大な妖怪。
デイン（대인/大人）：60mほどの大きさの人食い巨人。
チャンイン（장인/長人）：17mほどの大きさの新羅の東の島に住む巨人、
ウワウル（우와 을）：黄海道妙香山と江原道太白に住む30mほどの大きさの巨人。

クェムル/グエムル（괴물/怪物）

単に怪物という意味。同名の怪獣映画も制作された。

プルガサリ（불가사리/不可殺）：ヒトデという意味もある。

グムヒョルオ（금혈어/金血魚）：鱗と鰭が刃であるクジラの天敵であるという怪魚。群れで腹の中から切り刻み殺すという。
タンチュオ（탄주어/呑舟魚）：舟を飲み込むほど大きな魚。
サビハテオ（사비하대어/泗沘河大魚）：サビ河に住む巨大な魚で、死体が上がるのは凶兆であるといわれた。
キョンオモクヤユクァン（경어목야유광/鯨魚目夜有光）：目から光を放つクジラのような獣。目はくり抜くと灯りになる。
テヨンチャ（대영차/大盈車）：角がある魚で大きな荷車一杯になるほど大きい。
チャンペクチョク（장백척/長百尺）：淡水域に住む人の10～20倍ほどの長さの魚。猛毒を持ち食べたものは死んでしまう。
ガンギル（강길/羌吉/火竜）：風雨に乗ってつくしを思わせる姿で飛び回り一帯を荒廃させてしまう。一説によると流星のことであるという。
プルケ（불개/火犬）：韓国の在来犬のような赤犬。真っ暗だった神話の時代、王に命じられ太陽と月を盗みに行って喰いついたが失敗し、日食と月食を起こすようになったと伝わる。
イスヤクオ（이수약우/異獸若牛/象）：牛に似た大きく奇妙な獣で毛が無く鼻が長い。
ダトバルクェムル（닷발괴물）：嘴と尾がそれぞれ5足（7.5m）もあるという怪鳥。母親を殺しすり替わっていたが逆襲される。カモノハシやワニのような姿とされることもある。
ヲ（을/鳦）：江原道太白山に住み猛獣を食べる毛むくじゃらの妖怪。雄しかおらず人の営みを見ることで卵を生じさせる。これが現れるとき戦が起こるといい、文禄の役前にも目撃されたという。
ユクトクイ（육덕위/育徳位/肉德威）：人が乗れるほどの大きさの猛禽の王。虎を見つけると目を突いて喰らう。
ホムンチョ（호문조/虎紋鳥）：全羅南道紅島に住むという虎柄の羽根を持つ巨大な人食い鳥。