「私の代わりに、いつか必ず…『あの星に住む全ての人達』に、幸せになるチャンスを与えてあげて…」
「命の尊さ、命の素晴らしさ。この想いを永久に咲かせよう。『我が命の花よ、君よ花よ』」
……_______回収されたボイスレコーダーより。
ドリームキャストとは…
セガ・エンタープライゼスが日本で1998年11月27日に家庭用に向けて製造した最後の家庭用コンソール(据え置きゲーム機)。ロゴはオレンジの渦巻きであり、ファンの間でしばしば【@(アットマーク)】で表現される。
性能
本体
「サターンの10倍の性能」を目指して開発された。メインメモリは16MB、VRAMは8MB。CPUに日立製作所のSH-4、ビデオチップにNECのPowerVR2をそれぞれ搭載。ジオメトリエンジンや動画再生専用のエンジンは搭載しておらず、SH-4のFPUで処理する。
OS
独自のBIOSをROMにて保持している。OSにWindowsCE(カスタムバージョン)を採用したが、現在のゲーム機と違ってOSが常時立ち上がっているわけではなく、ゲーム起動時WindowsCEをGD-ROMから読み込む方式で、実際にOSを使うかどうかはソフトメーカー次第。Windows CEを利用したソフトの場合、起動時にWindowsロゴマークが表示される。
メディア
ヤマハと共同開発した専用のGD-ROM再生可能ディスクドライブ搭載。GD-ROMはマルチセッションの光学メディアで、内周にはISO規格のフォーマットを、外周部は独自規格の高密度フォーマットを用いており、ISO規格部分には非対応ハードウェア再生時の警告メッセージやPC等で読み取れるおまけデータ等を収納可能である。初期版においてはCD-ROM読み込み機能が存在した。詳細は後述。
コントローラ
コントローラには十字の形の方向キーをライバルであった任天堂のハード以外で初めて採用しているが、構造が任天堂の特許には抵触していないため問題とはなっていない。コントローラのアナログ入力部(トリガー、アナログスティック)は、一般的なアナログ入力に使われる可変抵抗器の代わりに非接触方式(磁石~センサ間の距離を感知するタイプ)を用いていた。ビジュアルメモリやぷるぷるパックなどは後部に取り付けするが、コントローラが重たくなってしまうのはご愛嬌。
ビジュアルメモリ
本体には内部記憶装置は搭載されていなかったため、この周辺機器にゲームの進行状況を記録していく。モノクロの液晶とボタンとスピーカーが付いており、それ自体が携帯型ゲーム機として機能する。しかし、PlayStation用メモリーカードと同じくフラッシュメモリなので電池は不要なはずだが、ビジュアルメモリ単体で使用しなくとも電池が必要。後に携帯型ゲーム機機能を削りセーブ機能に特化し、記憶容量を4倍化した「メモリーカード4X」が発売されている。
互換アーケード基板NAOMIとの連動が可能であったが、NEOGEOと異なり進行状況の共有ではなくカスタマイズしたキャラのアーケード版での使用といった程度が殆どであった模様。一つのコントローラにつき最大2つのビジュアルメモリが刺せるが、その他のツール等を使用するゲームではその限りではない。
ネットワーク機能
モデムを標準搭載しており、ドリームキャスト専用のインターネットプロバイダiSAO.netへの接続が無料だった。が、本機発売時にはまだパソコンのネット接続も十分に普及していなかった時代で、モデムでのダイヤルアップ接続は遅く通話料金も高く、23時~翌8時の「テレホタイム」の活用が事実上必須であった。2000年7月にLAN接続用のブロードバンドアダプタが発売されるものの、それまでに発売されたゲームはすべてダイヤルアップ接続前提になっており、当初は一つも対応したソフトがなかった。ドリームキャストでのネットゲームの浸透は同年末のファンタシースターオンラインの登場を待つことになる。
ブラウザ
「ドリームパスポート」と呼ばれるNetFront系の専用ブラウザが入っており、Eメールの送受信もできた。ソフトによってはインターネット接続を要するものがあったため、これらにも内蔵される形で搭載されていた。
中には「でじこのまいブラ」と呼ばれるデ・ジ・キャラットとコラボなどの他のメーカーとコラボレーションを行った単独ブラウザソフトとして発売されるものもあった。
互換基板
アーケード用システム基板として発表されたNAOMIはこのゲーム機と互換性があり、アーケードで売れた作品の移植を容易にする売りもあったほか、VMの項目でも挙げたNEOGEOに続いてセーブデータの家庭用ゲーム機とアーケード筐体での共用等を可能とした。なおこの基板は専用のドライブを追加することでGD-ROMの読み込みを可能としている。
ちなみに、他のセガハードシリーズである『ゼカサターンミニ』は発売されているが、残念ながら、2020年5月現時点ではドリームキャストのミニサイズの復活機は開発されていないようだ。
当時の状況
この項目では当時の状況に関して記述する。
コードネーム
セガサターンがプレイステーションはおろか、海外ではNINTENDO64にすら劣勢を強いられていたため、セガの社運を賭けて開発された。(サターンも国内では96年までPSと、97年以降も64とは五分だったが、高コストが仇となって逆ザヤを解消できず、赤字に悩まされていた)
コードネームとされるKATANAは刀( かたな )ではなく、関西弁の「勝たな」から来ている。それまでのセガハードと異なり、太陽系惑星からは取られていない。
なぜ「刀(かたな)」から取らなかったのだろうか。
……と言われていたが、実際は「勝たな」ではなく「刀」から取られていた。
開発当時、セガにはもう一つの次世代ハード「ブラックベルト(黒帯)」という試作機が存在し、その黒帯を「斬って勝つ」という意味合いを込めて、「KATANA」というコードネームが与えられていた。
広告戦略
その自信を裏付けるかのごとく発売前には大規模な広告戦略を展開。その中でも湯川専務シリーズは……
「セガなんてだっせーよな!プレステのほうがおもしろいよな!」
などといった自虐ネタ的な内容が大きな話題を呼んだ。こうした広告戦略が功を奏してドリームキャストの知名度は大幅に上昇し、「売りに出せば売れる」とまで言われた状態であった。
ローンチタイトルに『バーチャファイター3tb』、1ヵ月後には『セガラリー2』、前世代機のセガサターンでは発売しなかったセガの看板タイトル『ソニックシリーズ』の新作『ソニックアドベンチャー』等と言ったキラータイトルを発売させるなどの戦略を取っていた。
致命的なミス
しかし、開発の遅延や量産体制時の問題などにより部品の供給や生産が間に合わないという致命的なミスを犯してしまい、初回出荷量の大幅削減や予約キャンペーンの中止などが相次ぎ、「売りたくても、売りに出せない」状態となり、『準備運動をしたにもかかわらず、50メートル走の出足で足元のバナナの皮に気づかずに足を滑らせて転倒する』ような状況になったのだった。湯川専務も常務に降格となってしまった。
中古販売
また当時、独占禁止法抵触の疑いがかけられていたSONYのプレイステーションの販売方法である「中古販売の禁止や定価販売を前提とした小売店の囲い込み」を模倣したこともあり、セガまでもが独占禁止法違反の疑いがかけられてしまい、この事件に対して「卸子会社の業務を本社に丸投げしてペーパー会社化する」という脱法スレスレの行為で処理したことから大きな批判を呼び、セガの信頼は太陽に挑んだイカロスのごとく瞬く間に地に堕ちていった。
ソフトウェア
セガからは『スペースチャンネル5』、『シーマン』、『シェンムー』などといった意欲作が次々とリリースされたが、立ち上がりでつまずいたことにより、サードパーティによるキラータイトルに恵まれなかった。泣きっ面にハチとばかりに、プレイステーションの上位互換機であったプレイステーション2(PS2)の発売もあってさらに苦戦を強いられた。実のところ、PS2が発売された2000年はドラクエ7やFF9といったビッグタイトルがPSで発売されており、PS2初期の需要を支えたのはPSの互換とDVD再生機能だったといえる。末期はドリームキャストで独占販売とされていたソフトが完全版としてPS2に移植されるケースも多く見られた。
結果
ドリームキャストの失敗により大幅な赤字を計上したセガは2001年1月31日、ドリームキャストの生産中止とセガのハード事業からの撤退を発表、18年間にわたるセガハードの歴史がここに幕を閉じた。一方で、本業であったアーケードではドリームキャストの設計をベースにしたNAOMIがその後も長く使われた。なお、国内の最後のソフトであるマイルストーンのカラスの発売日は2007年1月29日。これは撤退後に発売された任天堂のゲームキューブよりも遅く、ゲーム機としての素養を証明した。
同人
2012年、海外では同人ソフトという扱いで新作が発売された。なぜ同人ソフトを家庭用コンソールで動かせるかというと、ウィキペディア(外部リンク)によると、「初期型のドリームキャストの"見るCD"機能を利用して自作ソフトやゲームエミュレーターを動作させる試みが存在した。」とのこと。具体的には「ハードウェアをハックして本体からROMデータ等を吸いだし、解析や試行錯誤等を経て実機で動かせるCD-ROMや、エミュレータ等を作成」という、ゲームキューブのこの種の展開などと同様の力業を用いたらしい。よい子はマネしないように……とは言ってみたが、一般人には無理だこれ。
MIL-CD
初期モデルではMIL-CD対応と書かれているが、これは「見るCD」機能と呼ばれる画像・動画入りのCD-ROMの読み込みを可能にする機能である。ドリームキャスト用の見るCDは結局発売されず、むしろこの機能がセキュリティホールとなってしまった。ドリームキャストのゲームソフトを何らかの手段で読み取れればCD-Rに書き込んで起動できたり、また会社ゲーム機のエミュレータ等非公認のソフトウェアなどを動作させることができたのである。後に上記行為の防止のためCD読み込み機能は取り除かれている。
早すぎたオンライン対応
本機の目玉機能だったインターネット接続機能だが、先走りすぎた感は否めない。1999年にセガがリリースした『あつまれ!ぐるぐる温泉』はアバターを作成してネットで対戦したり、チャットで他のユーザーと交流して友達を作るという現在では当たり前の機能をゲームに盛り込んだ意欲作だったが、当時の家庭用ゲーム機プレーヤーに受け入れられたとは言い難い。結局、2000年12月に発売された『ファンタシースターオンライン』(PSO)まで成功したオンラインゲームは出なかった。
PSOのヒットは家庭用ゲーム機へのオンラインゲーム浸透の礎にはなったが、セガは時代の先を行きすぎたというのが妥当な評価であろう。
セガ・ハード・ガールズ
正義感にあふれる素直な性格。
人との繋がりを大切にし、誰とでも仲良くなれる。
感情が顔に出やすく表情がころころ変わるため、イジられやすい。
無自覚だが貧乏が板についており、周囲に同情されることも。
(※『セガ・ハード・ガールズ』公式サイト内紹介文より抜粋)
おもなドリームキャスト用ソフトウェア一覧
(アルファベット順→五十音順)
- Canvas~セピア色のモチーフ~
- ever17
- karous
- MARVELvsCAPCOM
- SNOW
- あつまれ!ぐるぐる温泉
- 斑鳩(STG)
- エターナルアルカディア
- 北へ。
- 君が望む永遠
- クライマックスランダース
- グランディアⅡ
- こみっくパーティー
- サクラ大戦3
- さくらももこ劇場 コジコジ
- ジェットセットラジオ
- シェンムーシリーズ
- スーパーロボット大戦α
- 聖霊機ライブレード
- セガガガ
- ソウルキャリバー
- ソニックアドベンチャー
- ソニックアドベンチャー2
- ソニックシャッフル
- 月は東に日は西に~Operation Sanctuary~
- ディノクライシス
- でじこのまいブラ(ブラウザとして)
- トリガーハートエグゼリカ
- パワーストーン
- ファンタシースターオンライン
- 風来のシレン外伝 女剣士アスカ見参!
- ぷよぷよフィーバー
- ブラックマトリクス
- 魔剣X
- みずいろ
- ラジルギ
ソフトウェアの一部にはハード生産終了以降に発売された大きなお友達向けのゲームと同じタイトルが存在するが、これは家庭用ゲームに移植する過程で「競合するPS2とマルチプラットフォームで販売していた」ことに起因する。既に生産終了したハードでもあったことから規制も緩く、「ちょっとしたお色気要素」が削除されずに残っている事も多かった。
3DSで蘇るドリームキャスト
2015年3月18日には、ニンテンドー3DSのテーマシリーズ「セガハードシリーズ」で、ドリームキャストのテーマが税込み200円にてSG-1000と共に発売された。上画面はソニックアドベンチャー風のデザイン、下画面はドリームキャストの本体メニュー画面をイメージしたデザインであり、スリープ復帰音は実際にドリームキャストから収録した音(ビジュアルメモリの電池切れ警告音・GDドライブのシーク音)となっており、あまりの完成度の高さやこだわりにファンからも驚きは隠せない様子で、従来の斜め上を行くセガに脱帽するファンも多いとか。現在は海外で配信されたバージョンが日本でも配信され、それは上画面のデザインがやや異なるのと、メニューBGMがドリームパスポートからPSOのものに変更になっている。メニューBGMに関してはPSOの経験者には懐かしさで好評だったようだ。
NEW3DS
ちなみにNew3DSのホワイトでこのドリームキャストのテーマを設定すると、まるでドリームキャストを携帯型にしたような感じになり、キー配置や色がドリームキャストのコントローラのと特に似ている為、違和感が少ない。ただし、New3DSのABXYボタンの色はスーパーファミコンを意識している為ドリームキャストコントローラのものとは色の配置は異なる。
非公式パロディ
- 東方Projectの西行寺幽々子が使用するスペルカードに死符「ギャストリドリーム」があり、発音が似ている。また幽々子自身が亡霊をモチーフとしたため天冠を身に着けているのだが、そこに渦巻きが描かれていて@と表現されることがある。この2点から、二者に関連性を(ネタとして)説くことがある。
- 新次元ゲイムネプテューヌVⅡで、天王星うずめ/オレンジハートと呼ばれるドリームキャストをモチーフにしていると思われるキャラが登場。彼女のネクタイには渦巻きがあり、さらにはプラネテューヌがセガハードモチーフ(没となった据え置き機であるネプチューンやプルート、携帯機のゲームギア)と思われているので関連性が高い。
- ドリームキャス子 - フリーダムにハード及び会社のことを記述した主として一ページ漫画。
外部リンク
Wikipediaの同項目には、ここでは語りつくせないほどの「聞くも涙・語るも涙」の歴史がつれづれと記されている。
セガ・ハード・ガールズ公式サイトでのドリームキャスト 紹介(このキャラが電神として、電撃文庫FIGHTING CLIMAXに登場している)
関連タグ
坂本龍一(起動時のジングルを手がけた)
STG(DC最後のソフト争いはなぜかこのジャンルで起きた)
秋元康(湯川専務シリーズをプロデュースした)