「蛹を破り、蝶は舞う。トランの殻を破った時、このトランザが…天に輝く!」(第37話)
「リボンを付けて返そう!貴様達から受けた屈辱をな!!」(同上)
データ
概要
次元戦団バイラムの幹部の一人で、物語後半から終盤における4幹部の筆頭格でもある。
かねてより敵味方双方から子供扱いされ、フラストレーションを溜め続けていたトランが、アリバズーカ戦にて失態を演じた際に受けた侮辱・嘲笑をきっかけに、それらに対して爆発した怒りを原動力として、青年へと急成長・パワーアップを遂げた姿。
急成長に伴い、髪は大胆に波立つ銀色、唇は紫色、そして一人称も「僕」から「俺」へとそれぞれ変化。また成長前の特徴的な要素の一つであったバイザーも排されている。時々人間に扮することもあり、その際は後述した性格ゆえか、なるべく目立つような服装を整えている。
この姿に至った経緯が経緯なだけに、当初よりジェットマンのみならず他の幹部達を見返し屈服させようと並々ならぬ執念を燃やしており、両者の前に姿を現した際には圧倒的な実力でこれを叩きのめし、歴然たる差を見せつけたのみならず、本来ジェットマンを倒した者が座るはずだった帝王の椅子に座して自ら「帝王」を称し、幹部達の筆頭格として君臨するに至った。
以降、ジェットマンとの戦いを「遊び」と嘯く姿勢こそ変わりはないものの、表次元侵略においてもそれまでのような愉快犯的な行動は鳴りを潜め、邪魔者であるジェットマンの打倒を最優先とした作戦を展開するようになる。
性格
端的に言ってしまえば、体が大きくなっただけの子供の一言に尽きる。
トランザへの急成長は、後述の様々な面での能力向上に繋がった一方、身体や能力の急成長に精神が追いついていないきらいもあるのか、子供っぽい自己顕示欲の強さや負けず嫌いさ、それに無責任さも折にふれて覗かせており、元来の尊大さや自己中心的な思考と相まって極めて歪な性格へと変貌を遂げている。
そうした歪な性格は、登場当初より前面に押し出されており、正体を明かすのに先立ってジェットマンの男性陣の前に現れては、各々の得意分野(※)での勝負を挑んでこれを打ち負かし、さらにレッドホークこと天堂竜とのデスマッチを妨害された際には、ギョライピラニアを仕向けて両者の抹殺を目論んだラディゲを散々にいたぶった上で、「俺の名を言ってみろ」の言と共に自らを「様」付けで呼ぶよう強要してもいる。これらの言行からはトランザの、自分が何でも一番にならないと気が済まない性質、そして徹底的に相手を屈服・従属させずにはいられないという姿勢が窺える。
また、それまで散々「子供」と見下された反動からか、成長後は難解な用語や詩的な言い回しを強調した言葉遣い、それに芝居かかった仰々しい仕草等、あたかも大人のインテリを気取った振る舞いが目立つようにもなった。もっともこうした振る舞いは、客観的に見れば明らかに取ってつけたかのような挙動でしかなく、却ってトランの頃よりも子供っぽくなったともいえる。実際、細かい所作にも成長前の名残がそこかしこに見受けられ、それらも前述した振る舞いが付け焼き刃以外の何物でもないことを強調する一因となっている。
そのような気質ゆえに、組織の長として部下を統率する「帝王」を称しているにも拘らず、他の幹部が提案した作戦や考えを一蹴し、自分一人で何でもやろうしたり、かと思えば他の幹部の作戦の成果を横取りし、そのくせ作戦が失敗した際には立案者に責任をなすりつけたりと、おおよそそれに見合った器とは言い難い立ち居振る舞いも目立つ。隕石ベムを巡っての一連の挙動は、正しく後者の代表的な一例と言えよう。
トランザの力に物を言わせた強権的な姿勢は、他の幹部達からの強烈なまでの反発を必然的に引き起こすことともなった。そもそもトランザが反故にした、「ジェットマンを倒した者が帝王の椅子に座る」というルール自体、成長前の彼が提案したものであることを鑑みれば、横紙破りも同然に帝王を僭称したトランザの暴挙等、他の幹部達には到底受け容れられるものではなかった。
幹部の中でも、特に反骨心の塊ともいうべきラディゲからは終始反抗的な姿勢を示されているが、それに対してトランザも徹底して力で彼をねじ伏せて服従させようと躍起になっており、こうした幹部達との険悪な関係はやがて自身の身の破滅、ひいてはバイラムという組織そのものの崩壊をも招くことになるのである。
(※ 竜に対しては武道、凱にはナンパ(厳密にはゴルフ)、そして雷太とは大食いで勝負しており、ご丁寧にも相手やシチュエーションに応じて服装を変えるほどの念の入れようであった)
能力
超能力を行使し、直接的な戦闘は滅多に行わなかったトランに対し、トランザとなってからは身体能力そのものが飛躍的に向上したのもあり、超能力を行使せずともずば抜けた戦闘能力を発揮できるようになった。実際、前述の通り初登場の際にはジェットマンと他の幹部達を相手に、1対8という圧倒的な数の劣勢を難なく覆して圧倒。その後の竜とのデスマッチにおいても、後述の剣技を見切られながらなお優勢を崩さぬ等、歴然たる実力の差を見せつけている。
超能力で服装を変えるのは勿論のこと、前述の凱とのナンパ対決に挑む前にはゴルフグラブを出現させて用意するという物質創造(もしくはアポート)能力まで披露している。
中でも、フルーレ状の魔剣「ボルトランザ」を駆使した剣術の腕前は群を抜いており、分身術で敵を幻惑しつつ斬撃を見舞う剣技は、レッドホークも一度は完敗を余儀なくされたほどの凄まじい威力を叩き出している。
無論、身体能力だけでなく「メタルトランサー」を駆使した超能力も例外なく大幅に強化されており、従前からのサイコキネシスや瞬間移動等に加え、武器やグリナム兵を自在に呼び出したり、異空間を生み出したりとその能力行使も幅広いものとなった。
戦闘能力以外では、兵器開発の技術に秀でた一面が強調されており、テストロボット・G2を経て人間の生命力を動力源とする巨大な魔神ロボ「ベロニカ」を独力で建造してみせた他、ジェットマンへの切り札として標的をオブジェに変える「バイオガン」を開発しており、いずれもジェットマンを絶体絶命の窮地に追い込む働きを見せている。
落ち行く「流れ星」
※ より具体的な経緯については「帝王トランザの栄光」の記事も参照
物語終盤、なおも反抗的な姿勢を崩さぬラディゲをバイラムより放逐せしめると、自らの帝王としての地位を確固たるものとし、さらにはジェットマンとの「お遊び」にケリを付けるべく、バイオガンを持ち出して彼等の各個撃破に及んだ。
その結果、後は竜一人を始末すればジェットマンに完全勝利するところまで至ったのだが・・・その圧倒的優位は放逐したはずのラディゲが、ジェットマンに加勢するという予想外の形で脆くも崩れ去ってしまう。戦いの中でメタルトランサーも破壊され、仕留めたはずの他のジェットマンも救い出されるという絶望的な状況が重なった末、トランザはファイヤーバズーカの直撃を食らい、追い詰めたはずのジェットマンに完敗するという屈辱を味わわされた。
それでもなお生き延びていたトランザであったがしかし、這々の体で逃げ延びようとする彼にはラディゲからの、残忍にして皮肉めいた報復が待ち受けていた。こうして命までは取られなかったとはいえ、ジェットマンとラディゲによって心身ともに消えることのない傷を負わされたトランザは、帝王から一転して廃人も同然な身の上へと成り下がり、そのまま人知れず物語の表舞台から姿を消していったのである・・・。
前述した気質に起因した、全くの自業自得な末路ではあるものの、退場回に至ってなお地位・実力共に絶頂の真っ只中にありながら、ラストのわずか2、3分でそれを一挙に呆気なく覆された末の凄惨極まる退場劇は、視聴者にトラウマといっても過言でないほどのインパクトを与え、放送から30年余りが経過した今なお本作にまつわる語り種の一つとなっている。
後日談
TVシリーズ終了後に発表された、(非公式ではあるものの)本作の後日談を描いた漫画『鳥人戦隊ジェットマン 時を駆けて』では、トランザのその後についても描かれている。
同作では、バイラム再興を目論むラディゲの霊に取り憑かれ、廃人と化してなお依代として利用されるという死体蹴りも同然な憂き目に遭うが、それでも折に触れてその行動を阻み、ジェットマンがラディゲを打倒するきっかけを生むなど、数年越しに逆襲を果たす格好となった。
備考
演者の広瀬は、スーパー戦隊シリーズへは本作で5度目、かつレギュラーとしては3度目の出演であるが、起用については本作以前にも度々協働の機会のあった、メインライターの井上敏樹からのリクエストによるものであり、トランが急成長する展開もまた、見せ場を意図して当初から決めていたものであるという。
デザインは野口竜が担当。当初の想定通りのヘアスタイルとはならなかったトランとは対照的に、トランザに関してはそのウェーブの掛かった特徴的なヘアスタイルがデザイン画稿に忠実に再現されており、また身体の意匠についてもトランの纏っていたマントのそれを踏襲しつつ、それを立体的にアレンジすることでトランから成長した存在であるという点が強調されている。
ボルトランザやバイオガンといった武器類については、企画者104の河野成浩がデザインを手掛けており、このうち前者についてはトラン用の笛をそのまま握り手に転用できるよう考慮したものとなっている。
関連タグ
自己中 ナルシスト ブラック上司 みんなのトラウマ 吐き気を催す邪悪 俺の名を言ってみろ
誕生!帝王トランザ、帝王トランザの栄光:前者はトランザの初登場回兼黄金期、後者はトランザの末路を描いた回である。
関連・類似キャラクター
スーパー戦隊シリーズ
一条総司令:トランザと同じく本作の登場人物の一人。バイラム側の独裁的なブラック上司がトランザであるならば、こちらはジェットマン側のそれに相当し、心身共に痛めつけられて再起不能となる末路を辿った点でも共通項が見られる
カイザーブルドント 龍皇子サラマンデス マンマルバ、黎明の使徒リジュエル:いずれもスーパー戦隊シリーズの他作品に登場する、子供から急成長を遂げた幹部達
ドグラニオ・ヤーブン:『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』の登場人物の一人。戦隊側に敗北した後人間界の施設に幽閉され、死ぬよりも辛く苦しい報いを受けながら退場していったという共通項を持つ
ガチレウス:『騎士竜戦隊リュウソウジャー』の登場人物の一人。部下に対して超強権的に接するブラック上司であり、その姿勢への因果応報といえる形で悲惨な末路を迎えるなど、複数の共通項を有している
その他特撮・アニメ作品
黒岩省吾/暗黒騎士ガウザー:『超光戦士シャンゼリオン』の登場人物の一人。井上キャラらしいキザでプライドの高さの目立つ人物造形や、「皇帝」にまで上り詰めながらも予想外の形で転落を迎えるなど、やはり複数の共通項を備えている
佐野満/仮面ライダーインペラー、草加雅人/仮面ライダーカイザ:いずれも平成仮面ライダーシリーズの登場人物達で、退場回を井上が手がけ、トランザのそれに負けず劣らずのトラウマじみた末路を迎えたという共通項を持つ
プロイスト:『ガイキングLODの登場人物の一人。両性具有らしく親から歪んだ教育を受けたばかりに、トランザと同様の利己的で救いのない独裁者へと成長しており、自身に反抗的な仲間を「俺の名を言ってみろ」という台詞と共に服従させたり、自業自得の末路を迎えるなど様々な共通項が見られる
シド/仮面ライダーシグルド:『仮面ライダー鎧武』の登場人物の一人。大人を気取り誇示しながらも、実際の言動の本質は子供そのものというてんで共通項を有する。またトランザには及ばないながらも、こちらも特撮の歴史に残るトラウマものな退場劇が語り種となっている
ロック:『Go!プリンセスプリキュア』の登場人物の一人。「元々は少年の姿だったが、一気に青年の姿に成長した」「体は大人だが、心は子供じみている」「仲間は利用するだけの存在と見なす」「下克上を企んでいる」等々さしづめプリキュア版のトランザともいうべき存在である。他方で作中で転落を迎えながらも、その後に辿った顛末については明らかな相違が見受けられる
ヒュドラム:『ウルトラマントリガー』の登場人物の一人。トランザ同様、チームのリーダー格を出し抜いて自身がリーダーになろうとしたが、自身に恨みを持つ人物に惨敗した直後にそのリーダー格から逆襲されるという、因果応報の末路を迎えた
アリス・ハーディー:『13日の金曜日』シリーズの登場人物の一人。演者の提案によって悲惨な末路を迎えたという共通項を有する一方、こちらは現在ならば確実に警察沙汰になる事態に巻き込まれていたことに起因するという点で相違している