概要
はじめに
連絡通路 | 非常口(前面非貫通車扱い) |
---|---|
先頭車の前面に設けられることがある『貫通扉』には、「通常の営業運転中に、乗客が前後の車両を行き来できる構造の『連絡通路』」と「停電や列車事故などの非常事態において、乗客や乗務員を線路上に緊急避難させることを目的とした『非常口』」に大別される。当記事において『前面貫通型』とは「連絡通路の機能をもつもの」だけに限定し、「非常口」を設けた車両については前面に貫通扉そのものが装備されていない『前面非貫通型』と同じものとして扱う。
解説
鉄道ファンや鉄オタなどと称される「鉄道愛好家」界隈のうち、おもに日本語話者の間で使われる俗語。「車両と車両を繋ぎ合わせる」という意味の『連結』に、「変わった形や状態」という意味の『変態』が修飾語としてかかることで、『変わった車両同士のつなげ方』という意味を成している合成語。四字熟語になってはいるが、ことわざや慣用句、故事成語を起源としたものではない。
さて、ユーザーによって解釈に多少の差異はあるが、車両を2両以上連結して運転される列車においておおよそ下記のような形態をしていると、通称ないし蔑称として「変態連結」と呼ばれる。ある運転や入れ換えなどでそれ限りの一時的・ごく短期的なものから、運用終了まで長期的にその状態で運転されるものも含む。
グループ | 作例 | 概略 |
---|---|---|
A | (メイン画像) | 旅客列車において、「先頭車の運転台側」に『先頭車の運転台のない側』が向き合って、ないし『中間車』が連結される。および、その状態で営業運転を行う。 |
B | 違う車両形式(車両型式)や、車両の設計に互換性がない車両同士で連結される。変態編成とも。 | |
C | N/A | 車両の貫通扉がある側に、貫通扉のない車両や貫通扉のない側が連結される。特にその状態で営業運転を行う。 |
いずれにせよ2編成以上を併合した列車同様、防犯上の事由から立ち入り禁止である乗務員室の容積がそのまま編成のデッドスペースになるために、編成中間に入った先頭車の数が多いほど接客サービスや輸送力が低下するデメリットがある。
前面貫通型と前面非貫通型の連結や、連結しあう車両同士で貫通路・貫通扉の互換性がない場合、貫通型側の車両の貫通扉を施錠したり障害物を配置して乗客が通れないように閉鎖する措置が取られる。乗客や荷物が連結面に転落すると脱線事故などといった列車事故を起こす可能性が高いから。
BやCについては定義が特殊かつ複雑で、下記のいずれかに当てはまる場合は変態連結ないし変態編成とはみなされないことが多い。
- 旅客列車が甲種回送や故障車救援などで機関車や牽引車、他の旅客列車に牽引ないし推進運転してもらう場合
- 客車や貨車、動力をもたない事業用車が機関車に牽引ないし推進されて運転する場合。
- 相互に協調運転できる車両同士での「異形式連結」が日常茶飯事な路線や車両。日本国有鉄道の気動車や、JR北海道の「731系+キハ201系」、関東鉄道竜ヶ崎線の「キハ532形」+「キハ2000形」などが該当
日本国有鉄道およびそれを承継したJR各社で、日本国有鉄道が設計した一般形気動車で非常によく見られた。通勤型と近郊型と急行型からなる「一般型」気動車は特急型を除いて互換性を持たせていたために、1両単位で柔軟に編成が組めることが大きな要因で、この場合は車両の定期検査の際も1両単位で行われていた。ただし近年は電車や気動車問わず固定編成や両運転台車として新造されることが増え、変態連結は減少傾向にある。
阪急電鉄の3300系や、南海電気鉄道の6300系、京阪電気鉄道の2600系のように、「変態連結」によって編成中間に挟まれた先頭車の制御盤や乗務員室そのものを撤去した上で乗務員扉は固定してしまい、元の車体構造を留めながらも中間車へ用途変更された『運転台撤去による中間車化』という事例も存在する。
電車・気動車において車掌の乗務位置を柔軟にする目的で行われる事例もある。たとえば身延線の115系や一般型気動車では、無人駅の多い線区において不正乗車防止の為に実施している車内での改札や集札業務をより確実に遂行することを目的として、任意の乗務員室からドア扱いが行えるよう鍵差し込み式の車掌スイッチを装備し、駅の出口最寄りの乗務員室あるいは改札中の車両の乗務員室からドア扱いを実施、集札や車内改札に取り組む事ができるように工夫されている。
営業運転以外では車両工場や車両基地などへ回送するために本線を走行する列車や、操車場内の車両入れ換えなどで一時的に変態連結状態になることもある。例えば廃車回送され解体線の中で解体を待つ廃車体は解体スケジュールに合わせて繋げることが普通である。博物館などに展示する車両の回送をする場合、単純に言えば1つの列車にできるだけ多くの車両を繋げて一度に輸送するほうが輸送コストを圧縮でき他の列車への影響も小さくできるため、変態連結を通り越して全く異なる車種が混在することも多い。
pixivへ投稿されたイラストの作例
「変態連結」タグを付けた作品は2023年4月24日時点で15枚あり、JR東海やJR四国の特急型気動車が大半を占めている。国鉄型気動車の例もある。
電車にも変態連結事例はあるがイラストとしては殆どない。最近まで名古屋市交通局3000形が存在したが廃車が進んだ今は描かれる可能性も低いだろう…と思うが、2024年登場予定の京成3200形がどうにも先頭車と中間車との連結を前提としている模様らしいのでこの先どうなるかは不明確である。
「変態連結」タグの付いた小説が3作品あるが、いずれも性行為の揶揄として使われている。
関連タグ
変態連結が登場する作品
電車でGOシリーズ:現実世界のダイヤグラムを再現しているため、道中に変態連結している列車もしっかり登場する。
A列車で行こう8:719系を奇数両編成にすると変態連結になる。
A列車で行こう9:2~4両編成の7000系や奇数両のキハ58系、3両編成のキハ185系など、一部の列車の「変態連結」が再現されている。