概要
「るろうに剣心」の第一幕から最序盤にかけて登場した、「るろ剣」本編に於ける記念すべき最初の悪党。
悪知恵が働く兄「比留間喜兵衛」と武闘派の弟「比留間伍兵衛」の兄弟である。
元々は第一幕を面白くするために悪役二人が必要になって作成した際、ページの纏りを良くするために二人が共謀する理由を「血のつながり」という分かりやすいものにした結果、二人が実の兄弟になった。そのせいか正直兄弟の割にはあまり似ていない。
「第一話の敵」と言ってしまえばそれだけのキャラだが、第一話で読者に主人公の強さや魅力、ひいては物語の面白さを伝えるための引き立て役としてその作品の最初の悪役も非常に重要な要素である。
比留間喜兵衛
身長:145cm
体重:60kg
生年月:1834年(天保5年)3月
年齢:45歳
趣味:悪企み
特技:金勘定
比留間兄弟の兄の方。1996年のアニメ版には未登場。
恵比寿顔の小柄な中年男で、一見好々爺を演じているが、実際は腹黒で悪企みを策謀している。
弟と違い合法的な範疇で遂行する事を望んでおり、狡猾かつ用意周到に策を練り、策も二重三重に張って事に臨むなど慎重さも見られる。
神谷道場の土地の価格に目をつけ様々な策謀を巡らしあと一歩のところまでいくが、緋村剣心の邪魔立てにより失敗する。
それまでは道場主・神谷薫の奉公人のような立場で彼女に優しく接しており、孤独に苛まれていた薫はそんな彼に気を許しつつあった。
しかしそれは完全な演技でしかなく、本性を見せてからは一転して「小娘」呼ばわりし忌々しげに接するようになり、薫の心の傷を抉った。
ただ初登場時点で剣心に対し「流浪人など人生の落伍者だから耳を貸すな」と薫に断言するなど本性をちらちら見せてはいる。
もっとも剣心に指摘されている通り、根は小心者。
その後もまだ神谷道場の土地を手に入れる事を諦めていない様で、剣心への逆恨みから相楽左之助をけしかけて彼を始末しようと再び道場を訪れた際には、再会した薫に向かって「この土地屋敷は必ず頂くぞ! 小娘!」と毒づいている(しかし当の薫本人は罵倒するわけでも目を背けるわけでもなく、悲しそうな表情を浮かべながら俯くという反応を見せており、本性を知った後も完全に憎み切れていない様子が窺える)。
CDブックでは原作より台詞ややりとりが幾つか増えており、弟の頭の悪さに辟易している事がうかがえる一面がある。
デザイン上のモチーフは若き日の花田虎上・貴乃花光司兄弟を描いた小畑健の『力人伝説』に登場した「土俵の鬼」こと初代若乃花幹士(当時は二子山親方、連載当時は日本相撲協会理事長)。
映像作品への出演自体は令和アニメ版が初となるが、旧作の方でのアニメオリジナルエピソードで剣心達が泊まった旅館の番頭の容姿は喜兵衛が元になっている。
比留間伍兵衛
身長:六尺五寸(約195cm)
体重:120kg
生年月:1842年(天保13年)1月
年齢:37歳
趣味:物真似
苦手な人物:兄
CV:小村哲生(旧アニメ版)/高木渉(新アニメ版)/笹岡繁蔵(CDブック版)
比留間兄弟の弟の方。1996年のアニメ版には兄が登場せず、伍兵衛がそちらの役回りも演じた。
神谷活心流と人斬り抜刀斎を騙り辻斬り騒動を起こした実行犯。薫の情報によると元々士族であった可能性がある。
隣町のゴロツキの溜まり場の剣術道場「鬼兵館」の頭目でもあり舎弟のゴロツキも抱えている。
身の丈六尺五寸の大男で更に長い髭も蓄えているため、見た目はぶっちゃけ『悪い関羽』にしか見えない。
作中では雑魚扱いされているが、それはあくまでも剣心や左之助といった規格外の強さを持った猛者と比較した場合の話であって、一般の警官ならば複数人が束になっても歯が立たず、第1話の時点で十人を超える死傷者を出している辺り、後のギャグキャラ化扱いで流されがちだがかなりの大罪人である。そう考えると後に登場する見掛け倒しの先生よりよっぽど殺人剣に精通してしまっている。
更には当時はまだ未熟だったとはいえ、師範代の薫を二度も真っ向から一蹴し、剣心にして「薫殿よりはるかに強い」と断言させる程度の強さは有している。道場襲撃のシーンでは仕込み杖で彼女の木刀を強引に叩き折って一撃入れただけなので、「剣術」で圧倒したというイメージは沸きにくいかも知れない。
また一見で剣心の飛天御剣流の本質を見抜いているなど、剣術の心得自体はしっかりと持ち合わせている。
…が、薫は後に巻町操との連携込みとはいえ十本刀である本条鎌足に真っ向から勝利してしまっているので、実は十本刀クラスの実力者なのではないかという説や、むしろ鎌足の強さを疑う様な説が出てきてしまっている。
肯定的に考えるなら、明神弥彦や左之助同様、薫が成長したと考えるべきだろう。
また、薫は鎌足の弁天独楽の始動を確認してから柄の下段・膝坐で弁天独楽を回避しつつ鎌足の膝を破壊しており、相性勝ちしたというのもある。
ただ、最序盤で左之助からは「何万回倒しても強さの証にはならない」と断言されており、人誅編では二重の極みも使えない左之助に一コマで倒されてるくらいなので、あのレベルに比べると色々とお察しではある。
なお、人斬り抜刀斎以外にもギャグ描写で斬左の物真似もしている。もちろん全く似ておらず、即座に素手の左之助にボコられた。
旧アニメ版では神谷道場の元門下生という設定になり、人を斬る事に喜びを感じ門下生を刀で襲撃するも、師範である薫の父に制裁されて右手の親指を潰された上で破門された。
その際、幼少の薫と目が合った復讐心の矛先を彼女に向ける事となった。
また策略担当の兄が設定ごと消え去った為か、ある程度頭も回るようになり、原作では兄がやっていた役回りも全て担っている。
残った左腕だけで我流の剣術を磨き10年越しの復讐を目論むなど、その執念は本編の強敵達にも迫るものがある。悪評により神谷道場の門下生たちが去った頃合いを見て、総仕上げとして薫を殺しにやって来るが剣心に敗北。今度は左手の指を潰されてしまった。
その後、左之助に剣心の始末を依頼するも失敗し、斬馬刀で膝を砕かれた挙句、剣心に一撃で敗北する。なお、左之助と剣心の勝負に割って入った時は左腕に手甲鉤を装着し、右手で拳銃を使用するスタイルを取っていた。
ちなみに左之助からの評価も「そこそこの使い手」に上がっており、完全にナメられていた原作と違いある程度シリアスな対応を受けていたが、令和版アニメでは原作通りのボロクソの評価になっている。
オリジナルエピソードでは弥彦を唆して逆刃刀を持ち出させ、暗殺者の鬼崎兄弟に剣心を襲撃させるという計画で復讐に出る。しかし逆刃刀を取り返した剣心に鬼崎兄弟を成敗され、自身は木刀を装った仕込み刀で弥彦を始末しようとしたが敗北する。
剣客引退後は、土地の転売で大儲けしたことが本人の口から語られている。
本編での動向
第一話から登場。
神谷道場の土地の略奪を目的として、弟の伍兵衛が神谷道場の流派"神谷活心流"と幕末の伝説『人斬り抜刀斎』の名を騙り辻斬り騒動を起こし、神谷道場を廃業寸前に追い込む。
兄の喜兵衛は行き倒れを装って薫に接近し、好々爺を演じ、住み込みの奉公人として傍に寄り添いつつ道場の閉館と土地の売却を唆していた。
しかし薫が道場を閉館させる気配が全く無かったことと伍兵衛の正体に感づいたことから、結局力づくで土地の略奪を図る事となる。
夜中に門弟たちと道場に押し入って薫を負傷させ土地を手放す誓約書に拇印を無理やり押させ成就寸前まで至るも、偶然薫と出会った流浪人にして本物の「人斬り抜刀斎」である緋村剣心の登場によって全てが頓挫。
人斬り抜刀斎を騙っていた伍兵衛も"本物"の前には手も足も出ず『龍槌閃』の一撃で完敗し、喜兵衛も恐怖で失禁・気絶した。
その後、二人揃ってふん縛られ、警察署の前に転がされて御用となったという。
それからしばらくして、どうやってかは不明だが刑務所を脱獄し、裏社会で名を馳せていた「喧嘩屋斬左」こと左之助に剣心の抹殺を依頼。
辻斬り騒動の顛末は彼の耳にも届いており、動機に関しては「みっともねぇ逆恨み」と一瞥されるが、剣心が伝説の「人斬り抜刀斎」であると告げられると歯応えのある喧嘩相手に飢えていた斬左は依頼を快諾した。
もっとも喜兵衛からすれば斬左とて幕末最強と言われた剣心に勝てるとは思っておらず、本命は二人の闘いの直後、気を緩めた瞬間に物陰から外国人居住地で仕入れた自らの拳銃で仕留める、という算段であった。
しかし剣心にあっさり斬左の依頼主が自分達であることを看破され、物陰に隠れていたことも剣心と斬左にはバレバレであったため2人の静かな恫喝を受けて表舞台に引きずり出される。
更には斬左に拳銃の存在もあっさり看破され、自らの喧嘩に横やりを入れられぬよう拳銃も素手で壊されてしまう。
そして闘いは案の定剣心が斬左を圧倒していたが、斬左が口にした赤報隊の名を聞いて驚いた剣心の一瞬の隙をつき、喜兵衛が隠し持っていた二丁目の拳銃を発砲。
討ち取ったと思ったが、剣心は弾道を見切り鍔で銃弾の直撃を阻止(しかしこの一撃で鍔は破損し、二度は防げない)。
次は薫と弥彦に銃口を向けて脅し、伍兵衛も二人が逃げれないよう両脚の骨を折ろうとするものの、そこに喧嘩の邪魔を絶対に許さない斬左がぶん投げた斬馬刀が伍兵衛の目の前をかすめ、鼻の上を大出血。
喜兵衛も剣心から「つくづく救えぬ男だ」と言われてしまい、それでも更に隠し持っていた三丁目の拳銃を出そうとしたものの、剣心の『土龍閃』の直撃を受け敗北。
しかも「気絶しない程度」に威力を抑えられ、生き地獄の如く激痛にのたうちまわっていた。
その後特にこれと言った活躍も言及も無く、物語からフェードアウトしていった…
…と、思ったが終盤になってまさかの再登場。どうやらその後二人で信州に逃亡したらしい。
信州に逃げ果せた後は、養蚕業の利権に目をつけ宿場の養蚕業の独占を狙う地元のMッパゲこと、ヤクザの不動沢(元力士)の用心棒となっていた。
自分の力量を見せるために意気揚々と登場したものの、そこにいたのは斬左こと左之助。
阿鼻叫喚する二人であったが、左之助と読者はすっかり忘れていたため、四年半ぶり(作中の時間軸では半年程度しか経っていないが、連載期間としては四年半経っている為、ある種のメタ発言となっている)の顔合わせと勘違いされてしまう。
それでも斬馬刀を持っていない斬左など恐るるに足らず、「今こそ鼻の傷の恨みを晴らす時!!」と勇み刀を抜くものの、やられる瞬間すら省略され左之助にボコボコにされる。
もうこの頃になるとメタ発言もするようになり完全にギャグキャラになり下がっている。
当初はMッパゲの宿場独占の邪魔者である東谷上下ェ門の討伐にぶつけようと考えられていたが、左之助との喧嘩を見たMッパゲから戦力外扱いにされてしまう。
それでも名誉挽回のために喜兵衛の矢文で上下ェ門を仕留めようとするものの当然の如く失敗。
最後はそのMッパゲの後ろ盾である叔父・谷十三郎の護衛をしていたようが、こちらも戦闘場面を完全省略され兄弟揃って左之助にフルボッコにされてしまう。
「「結局最後までこんな役…」」
余談
作者としてはこの二人の顔はメリハリが効いているため非常に描きやすく(二人のカットも2分あれば描けるとのこと)、時間が無い時には愛おしさすら感じていたほどらしい。
そのこともあってか、「今『剣心』を描くんだったらこういう風に」というテーマで、様々な登場人物をセルフリファインして完全版カバー下に描かれた「再筆版」でも全く描きなおされなかった。
作者の和月氏曰く
「コイツらのデザインは既に無敵の完成形。全く以て変え様が無い。素晴らしい」
とのこと。
コミックスの製作裏話で「再登場することはないでしょう(笑)」とコメントしていたにもかかわらずその後2回も登場したあたり、よほど描きやすかったのだろう。
また、実写版、キネマ版と言った原作本編以外での登場は現状無かったりする。
その一方で、「十勇士陰謀編」ではアニメ版設定の伍兵衛がサブイベントで登場したり、「再閃」では河原ステージの背景で兄弟そろっていたりと何気にゲーム作品での出演には恵まれている。
関連タグ
武田観柳:同作品の悪役で、序盤で剣心達に懲らしめられて物語からフェードアウトしたかと思いきや、忘れた頃に再登場したという共通点を持つ。
ただし最後までかませ犬だった比留間兄弟とは異なり、こちらは剣心の手を借りずにガトリングガンで強敵相手に大金星を上げるという大活躍を成し遂げている。