概要
いわゆる異世界転移ものの一つだが、「科学的に」のタイトル通り、亜人のみならず、『ファンタジー世界が実在するとしたらどんな構造をしているのか』を考察した、
「作者は自分より賢いキャラクターを描けない」を
「レベルを上げて物理で殴ればいい」で体現した作品。
アラクネやトレントなど、主にクリーチャーに主眼を置いて考察しており、『内骨格を持つ虫』や『電流を流す事でブレスを吐くドラゴン』。身体的特徴故に女尊男卑の文明を持つアラクネやそもそも結婚文化を持たないハーピィなど、空想生物学・空想文明学好きにはたまらない一冊となっている。
しかしリアルな考察の分、解体やセックスなどのエログロも容赦なく描かれているため注意が必要。
魔法が存在せず、さらには科学技術に謎の制約を課せられた世界観であり、主人公の持つ現代の科学知識をそのまま使って無双することはできない。
そのため、主人公含め人間や亜人種たちは基本的に強大なモンスターに対して無力に描かれている。
そのような過酷な世界の中で、主人公が知恵と工夫によって制約をかいくぐり、ユニークな機械や兵器を作り上げて戦うのが本作のもう一つの見どころとなっている。
登場人物
主人公
- 栗結大輔
主人公。生物学科の大学生でアラクネやケンタウロスなどのクリーチャー娘が大好き。織津江たちとクリ娘談議をしていた時、急に異世界に飛ばされる。その直後に出会ったネアの手引きでアラクネの里に迎え入れられ、そこで暮らすようになる。
ハーレムを作るという夢を中学生の頃から持ち続けており、事あるごとに「俺はクリ娘ハーレム王になる男だ!」と口にしている。学術的探究心も旺盛でなにかとクリ娘やモンスターの身体構造を調べたがり、一旦そのスイッチが入ると周りが見えなくなりがち。
生物学のみならず物理化学の知識も豊富で既存の武器を魔改造レベルに強化したり、水力を利用した工作機械を考案したりしている。
- 織津江大志
「織津江流古武術」という忍術のような武術を習得しており、現代人とは思えない鋭敏な感覚と戦闘能力を持っている。また、人の心を読むことにも長けているが対人(特に女性との)コミュニケーション能力は高いとはいえず、そのことが原因で人間関係のトラブルを起こし、王国を出奔。
王国出奔後は偶然助けたゴブリン達と暮らすようになり、未踏の地で新天地開拓に身を投じる。
アラクネ
- ネア
ヒロインの一人。ワンサイドアップがチャームポイント。
病気のラネアを救うためサシヨイ村から麦を盗み出し、追われていたところを転移してきた直後の大輔に救われる。お礼として身体構造を大輔に調べさせ、行き場のなかった大輔をアラクネの里に迎え入れた。後に大輔が異世界人だと知ったラネアの指示で彼のハーレムに加わる。以後、正妻扱い。
普段は礼儀正しく純真可憐な性格だが怒ると非常に怖く、大輔に危害を加える者には一切の容赦がない。
- アー
大輔が異世界人だと見抜き、その知識を使った新兵器や革新技術の提供を依頼した。その際、彼に「禁忌」についても伝えた。大輔が考案した武器や機械の製作も行っている。
後にラネアに唆された大輔と関係を持ち、ハーレムに加わる。
- ラネア
「火の呪い」と呼ばれる病気(風邪)に倒れていたが大輔の提案した治療方法で快復する。
一見柔和な性格だがその実かなりの策士で大輔を里に留めておくためにネアやアーを大輔のハーレムに差し出したほか、自身も色仕掛けで発破を掛けるなどしている。
- アネラ
ハーレムには加わらなかったが助けられたお礼として種付けさせている。
ハルピュイア
- ルピー
ヒロインの一人。語尾に「にゃ」を付ける特徴的な話し方をする。
アラクネの仕掛けた罠にかかるが大輔のハーレムに入ったことで捕食を免れる。アラクネから狩猟対象(しかも大好物のご馳走)として見られているため、常に大輔にくっついている。
飛行能力を活かした偵察を度々行なっており、重要な役割を果たすことがしばしばある。
レッドキャップ
- レキ
ヒロインの一人。ドレ族の「迎え送る巫女」と呼ばれる役職に就いている。産婦人科医と(間引きとしての)安楽死、宗教娼婦の役割を担い、宗教を管理する立場にある。
大輔に引き取られた生き残りたちのリーダーで大輔を「人間の体を借りて降臨した精霊」に仕立て上げて一族の結束と大輔への忠誠を保たせている。
- ヒバリ・レイ
自分たちのいたドレ族が壊滅した理由が宗教にあると考え、真実を知るために大輔が本当に精霊なのかどうかを質問する。
マーフォーク
- カナ
ヒロインの一人。里長の娘でクールな合理主義者。里を救うためイルカに嫁入りさせられる悲劇のヒロインと周りには思われているが実はイルカを嫌ってはいなかった。
大輔が異世界人だと見抜き、ハーレムに加わることと引き換えに知識と技術の提供を求めた。大輔よりも頭が良く、色恋沙汰よりも損得勘定や革新技術に興味があるようである。
- メイ
価値観が現代人に近く、大輔のハーレム王発言にドン引きしていた。
- オジサン
- サーバ
- イルカ
また、孫のような歳の女性を多数娶ってハーレムを作っており、メイやサーバには嫌われていた。
ケンタウロス
- タウラ
ヒロインの一人。結婚前に世界を見て回りたいという思いから一人旅をしている。
マーフォークの里で大輔に接触し、故郷の草原に侵入したミノタウロスへの対処を依頼する。その後も大輔達と行動を共にしており、ケンタウロスの文化や価値観を伝えた。
本作のもう一つのテーマである「人間社会の常識検証」を色濃く体現するキャラクターである。
ゴブリン
- ジャー
ミドリ族の長。山中で一族がモンスターに襲われていた時に織津江に救われ、彼を仲間として迎え入れる。望まれれば織津江に族長の座を譲る気でいる。
- リン・コリン・フーリン
- ワカクサ
長身で目つきが悪いのがコンプレックスなようで、織津江に親近感を持たれている。
オーク
- ピグ・タブ・トン
3人組のリドミ族の戦士。リドミ族がミドリ族に降ることを不服として織津江に戦いを挑むが返り討ちにされ、服従を約束させられる。
ヴァンパイア
- パイア・ヴァン・ヘルシング
ヴァンパイアの女性。偶然見かけた大輔に目を付け、寝込みを襲って吸血&逆レイプを仕掛けた上、催眠術を掛けて自分のペットとして連れ去ろうとする。しかし、大輔に催眠術は通用せず、さらにネアが駆けつけたことで失敗する。
ヴァンパイアの種族特性や社会を大輔に語っていたがいつの間にか愚痴になっていた。
人間
- サシヨイ村の村長
序盤でネアを追っていたが止めに入った大輔と取引し、盗んだ麦の十倍の食糧を持ってくることを条件にネアを見逃した。後日、食糧を届けに来た大輔にレッドキャップなどの敵性亜人の事を話している。
その後、レッドキャップへの報復攻撃を指揮し、降伏してきたレキ達生き残りを射殺しようとするが大輔に止められる。大輔との再びの取引の結果、彼女らを大輔に渡すことと引き換えに彼から洗濯機や織機などの革新技術を提供される。
- マークス
- リーン・ケン・ジーンフォース
レッドキャップの生き残りを村長達が射殺しようとした時も彼女らを庇い、憎しみを断ち切ることを叫ぶが村長からはその姿勢を無責任だと一蹴される。
- オサマ8世
- ピエーロ
織津江を自身の若い頃にそっくりと評しているが、「魔王」になり得るとして恐れてもいる。
- メイヤ
実は諜報メイド部隊を率いるプロのスパイであり、暗殺者。表向きは織津江によく仕えていたが内心では見下しており、彼が王国を出奔する決定打を与えてしまった。
その後、織津江を連れ戻すために死の山脈へと向かうが……
- オルワ
織津江を連れ戻すためにメイヤと共に死の山脈へ向かう。
- パーラ
メイヤに従って死の山脈へと向かうが……
- ノーブレス
脱走を試みるが失敗し、織津江に明確な殺意を向けられたことで「捻じ曲げ」と呼ばれるストックホルム症候群のような状態になり、ゴブリンの社会に適応する。以後は仲間扱いされるようになる。
- オブリージュ
檻の中で織津江との対話により、ノーブレスより先にゴブリンの社会に適応し、仲間扱いされるようになる。
- ユミ
活動拠点であるシガヒの街がケンタウロスの草原に近く、道案内を買って出る。
その他
- パピ
ファイアードラゴンの子供。親なしのままアラクネの里に迷い込み、大輔に飼われることになる。大輔やルピーに懐いており、滅多に離れることはない。
子供ではあるが火炎放射は可能でその威力は丸太の柵を軽く焼き落とし、キャタピラーを数体まとめて焼き殺せるほど。
登場種族
多くの亜人種が登場するがほとんどは人間から分かれていったものである。種族同士の仲が悪い場合もあり、友好性亜人や敵性亜人などの区別が存在する。
- 人間
亜人種たちとの間に多かれ少なかれ思想的に相容れない断絶が存在しており、「人間病」なる概念が語られているほか、一部の敵性亜人種からは「麻薬漬けの病気猿」と呼ばれて忌避されている。
- 異世界人
既存のそれを遥かに凌駕する知恵や技を持つとされており、あらゆる共同体で重宝されるが、国家間の戦争の火種になりかねない危険物としての側面も持つ。
- アラクネ
女尊男卑社会で、男性は妻もしくは母親の所有物であるが保護対象ともされており、優しく扱われる。子育て期間中を除き女性が狩りや力仕事を担っている。
- ハルピュイア
結婚の概念が存在しない乱婚文化であり、ハーレムに入ることに抵抗がない。また、翼が重くなるという理由から私物も持たない。
アラクネからは鳥だと思われており、狩猟対象である。
- レッドキャップ
人間を殺害し、その血で帽子を赤く染める文化を持っているがこれは宗教上の理由によるもの。レキのいたドレ族はサシヨイ村の住民を殺害したことで報復攻撃を受け、十数名を残し全滅している。
- マーフォーク
- ケンタウロス
- ゴブリン
- オーク
- ヴァンパイア
女性の人権保護と社会進出を追求した結果、非常に窮屈で生きづらい社会になってしまっている。
禁忌
科学技術に対する謎の制約。火薬・電気・蒸気機関・内燃機関が禁じられており、これらに相当するものを作った場合、モンスターの大群に襲われて城塞都市でも滅ぼされる。そのため、動力源は全て人力や家畜、水力などの自然由来のエネルギーである。
登場モンスター
- ワイバーン
飛行型のドラゴン。大輔が異世界に来た時最初に目撃したモンスター。地上を走り、加速することで風のない場所でも飛び立つことができる。
- スライム
噛まれると蓮コラのような小さな傷が無数に付くため、トラウマになりやすい。
- トレント
植物に擬態した動物であるが、既存のどのグループにも分類できない未知の生物。
大輔は「クトゥルフの生物に遭遇した気分だ」と称した。
- リビングデッド
その正体は「肉虫」と呼ばれる小さな生き物が死体の筋肉部分に大量に入り込み、筋肉の役割を代替したもの。スライムと違い、骨は作れないため、死体の骨を使って重量を支えている。
- レッサーデーモン
アーからは母親の仇として敵視されている。
- ジャイアントスコーピオン
- ファイアードラゴン
成体が吐く炎は現代の火炎放射器並みの飛距離50メートルに達する。
明確に姿を表したのは今の所パピくらいだが、ファンタジー最強の座は『この世界』においても変わらず、子竜の時点でアラクネが恐れ『重戦車』と呼ばれるキャタピラーが思わず逃走するほどの脅威である。
- クラーケン
ただでさえ強力な上に知能が人間並みに高く、討伐に向かってきた人間の艦隊を返り討ちにできるほど。
巨影との戦いの果てで見えた光景は、『この世界』の底知れなさを思い知らされる。
半魚人のようなモンスター。えら呼吸であり、魚から進化したと思われる。クラーケンの餌でありながらクラーケンを崇めている。
- コカトリス
- ゴーレム
その正体は草でできた鎧に土を付けたものを纏った大型の類人猿だと思われるが詳細は不明。
- ミノタウロス
- キャタピラー
ドラゴンを恐れており、パピを見ただけで逃げたほど。
- レッサーリザードマン
余談
本作において、生物オタクな大輔はモンスター娘をクリーチャー娘。略して『クリ娘』と読んでいるが、これはモンスターが『空想の生物』に対するニュアンスなのに対し、クリーチャーが『実在するかもしれない生き物』に近い意味合いを持つことに由来すると思われる。
作者であるKAKERU氏のこだわりが窺える。
外部リンク