概要
立ち往生とは文字通り立ったまま往生(死ぬ)することである。
この言葉の由来は武蔵坊弁慶が主君源義経を守るために奮戦し、矢を全身に受けながらも立ったまま死んだという話からである。この話は創作であると考えられているが、『平家物語』などによって広く伝えられて日本中で知名度が高い。
同様の死を遂げた実在の人物としては、三国志の典韋などが挙げられる。ただしこちらも立ったまま死んでいたと書かれているのは後世に書かれた「三国志演義」であり、正史では多数の敵と戦い壮絶な最後を遂げたとは書かれているものの、立ち往生だったとは記されていない
本来、死体というものは時間経過に連れATP(アデノシン三リン酸)の不足に伴い全身の筋肉がこわばり、ちょっとやそっと力を加えても動かなくなる。これを死後硬直というが、この死後硬直にかかる時間は死の直前の健康状態によって左右される。
特に激しい運動をしていた場合は、ATPが急激に不足し、その瞬間に猛烈なダメージを受けて短時間で絶命に至ると死後硬直の速度が極端に早くなる。
故に、立ったまま矢や銃弾を浴びることでそのままの体勢で命を落とす「立ち往生」(往生は成仏の類義語)は科学的にないわけではない。漫画や映画などにおいても、不退転の決意と壮絶な死を表す表現として多用される。
立ち往生を遂げた者達(※ネタバレ注意)
- 武蔵坊弁慶(元祖立ち往生。上述の通り実在したかは賛否あり)
- 杉本五郎(旧日本軍軍人。日中戦争で致命傷を負った際、皇居がある方角に敬礼したまま息絶えたとされる)
- ダンシングブレーヴ(実在した競走馬。1999年8月2日に立ったまま死んだ)
- 継国縁壱(鬼滅の刃)
- 闘兵衛(銀牙伝説WEED)
- ウォーズマン(キン肉マン 7人の悪魔超人編)
- 北野太一(空のキャンバス)
- アグニ(黒執事)
- クー・フーリン(ケルト神話 ※腹を貫かれて尚、自らを石柱に縛り付けて戦った)
- 姉畑支遁(ゴールデンカムイ)※二つの意味で「たったまま」死亡
- 番場蛮(漫画版『侍ジャイアンツ』)
- 典韋(三国志演義)
- 斉藤始(さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち)
- 牡牛座のアルデバラン(聖闘士星矢)
- 獣王グノン(ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章)
- 真柄直隆(信長の忍び)
- 室賀豹馬(バジリスク〜甲賀忍法帖〜)
- 蛮頭大虎(花の慶次)
- 山本元柳斎重國(BLEACH)
- ライガとフウガ、トキ、ラオウ、カイオウ、黒王号(北斗の拳)
- テリークロスの母(トリコ)
- 三ノ輪銀(鷲尾須美は勇者である)
- エドワード・ニューゲート(ONE PIECE)
- 工藤清志(ヒューマンバグ大学)
- 古代甲冑魚怪人ビルゲニア(仮面ライダーBLACKSUN)
- ノチウサニ(ウタリア戦記 閃光のアーシュラ)
- トールズ(ヴィンランド・サガ)
- 王騎、尭雲(キングダム ※いずれも馬上で直立のまま息絶える)
- 五条悟(呪術廻戦)
- ロラン(魔弾の王と戦姫)
- 孔雀(666〜サタン〜)
転じて
交通渋滞や悪天候などで、引くも進むも不可能になるケースも「立ち往生」と呼ぶことが有る。よく(奇しくも弁慶が命を落とした)雪国などで起こる現象である。そして、これらの状況では常に乗り物の存在が欠かせない(後述)。
車の「立ち往生」
車がエンジンが動いているにもかかわらずその場で走れない状態を指す。ニュースなどでは、主に大雪で渋滞が出来て何キロにも渡って車の列が続く光景や、東京に雪が降った時に車を後ろから押している人達の様子が冬の風物詩になっている。他にも、JAFの密着取材や警察24時で故障した車が出てくるのもしばしそれに当てはまる。
主に車はタイヤが地面に接した時に生じる摩擦で走っているようなもので、何らかの原因で地面との摩擦がなくなると走れなくなる。こうなると自力で何とかするか金を忍んでロードサービスのお世話になるという、車を持っている人なら是が非でも避けたい状況である。そんなわけで、映画・ドラマ・アニメなどの映像作品では希にこの様子が出てくる場面がある。
万が一、動かない場合はタイヤに板や布を噛ませて摩擦を作ることが基本中の基本である。車内の床にある靴置き用マットをタイヤに敷くのも効果がある。それが無かった場合はその辺に落ちている枯れ枝や石なんかも使おう。稀に前や後ろから人力で押す場合があるが、車は基本最低でも1トンもあるため成功する場面は限られる。
そして、その状態の車と女性を組ませたシチュエーションがしばし映像化されて話題になる(後述)。
主な場所
基本的に車が立ち往生しやすい場所である。
- 不整地 主に年がら年中で車が動かなくなる場所。具体的には未舗装の道路や駐車場が雨でドロドロになることで車が自由に走行できなくなる。なお、海外では一部の国の車道が財政難や発展途上によって、このような状況になる。
- 山道 主に舗装されていない場所は危険。雨や雪の日は避けることが望ましい。獣道みたいな場所は1台がやっと通れるような幅しかないので脱輪しやすい。更に除雪が行き届いていない場所は最初から通れない。
- 砂地 海岸で車の乗り入れが出来る場所である。主に砂がさらさらした場所は危険。一部では砂浜でも走れるように整備されているが、大概は車が入っていくと自重で埋まってしまい掘り起こす羽目になる。
- 草地 晴れている日は問題ないのだが、水はけが悪いとそのまま自走できなくなる。水はけが良くても濡れているだけで滑る。
- 坂道 冬場になると凍結してしまい、路上に砂をまかないとまともに走れない。都会などは冬になれば大概はこうなる。
- 縁石がある道路 主に道路と歩道を区切る小さくて細長い区切り用の石。乗り上げるとカメになってタイヤが地面につかなくなる。
- 踏切 かまぼこ型という中央が盛り上がってる場所が危険。車高が低い車はそのまま自走できなくなる。海外では、主にアメリカでトラックが踏切で貨物列車と衝突する原因にもなる。
- 校庭 主に学校行事で保護者が車を停める場所だが、雨の日になると地面が軟化して移動に支障を来すため、お知らせの際には雨の日は校庭が使えないという告知をしている程である。
- 砂漠 前述の砂地同様にさらさらした砂なので大概の車は走行できなくなる。ちなみに四駆でも同じ状態になるのでタチが悪い。自走できないならまだしも自重でひっくり返るというヤバイ状況も起きる。
女性の立ち往生への拘りを映像化
主に、女性が車を運転していて何らかの原因で車が走行出来なくなり、あれこれやっても成功せず、なんだかんだで抜け出せたという一連の様子を映像にしてしまうというシリーズが多い。主な理由としては下半身をモジモジさせて足でアクセルやブレーキを踏みながらの動作が色っぽいかららしい。故に海外では専用のサイトがあり、YouTubeではそのシチュエーションをシリーズ化して投稿する一般人もいる。また、専用サイトは各場面にエロスの要素を注ぎ込んでおりほぼ18禁と言っても差し支えない。
関連項目
名探偵コナン:7巻収録の『小五郎の同窓会殺人事件』で弁慶の立ち往生のメカニズムが紹介されている。犯人もそれを利用したトリックを使った。