アトロシアス
あとろしあす
『デモニックフュージョン・アンリーシュ!』
『エンペラ星人!』『ダークルギエル!』
『ウルトラマンベリアル・アトロシアス!』
〈これから起こる事。それは…〉
〈想像を絶する恐怖と、絶望の物語が、始まろうとしていた〉
概要
ロイヤルメガマスターによって倒されたと思われていたウルトラマンベリアルが、宇宙に散らばっていたウルトラマンキングのエネルギーを伏井出ケイから強奪したストルム器官で反転吸収し、エンペラ星人とダークルギエルの怪獣カプセルで使用することで強化復活を果たしたベリアル最強の姿。
『ウルトラマンジード』第23話「ストルムの光」、第24話「キボウノカケラ」、第25話(最終話)「GEEDの証」に登場。
『ウルトラマンフュージョンファイト!』カプセルユーゴー第3弾で先行登場、カプセルも11月4日に先行発売された。
設定によると、ウルトラマンともベリアル融合獣とも異なる一種の究極生物らしい(変身メロディ自体はベリアル融合獣と同じ)。
キメラベロスと異なりベリアルの一形態である事を強調する為か、本人からも含め『ウルトラマンベリアル・アトロシアス』と名前を省略されずに呼称されることがほとんどである。
容姿
半獣型だったベリアルを完全な人型にしたようなスタイリッシュな印象だが、体色は赤と黒の派手なカラーリングであった通常時とは打って変わって、黒と銀のモノトーン調となり、目の色も黄色くなっている(変身完了時に一瞬だけ赤く染まる描写はあったが)。
げっそりと肉を削ぎ落したような姿と相まってまるで骸骨やミイラのような印象も与え、より禍々しく、悪の戦士としての貫禄が増したようにも見える。
外見のイメージ的には、カイザーダークネスをスリムにしたような感じだろうか。
戦闘能力
ただでさえ強力無比な存在であったベリアルが、過去のラスボス二人に加え、宇宙に散っているキングのエネルギーを吸収し更に強化された姿だけあり、その戦闘力は圧倒的かつ苛烈。
地球降臨時には通常時のベリアルをジードの横槍が入るまで圧倒していたゼロビヨンドですら終始劣勢を強いられ、最終的に敗北に追い込む程の力の差を見せつけた上、キメラベロスを倒したロイヤルメガマスターさえも敗北に追い込んだ。本人曰く、「カプセルのキングの力はちっぽけだ」とのこと。
またどちらも当時無敗だったゼロのツインギガブレイク、ジードのディフュージョンシャワー共に全くダメージになっていない。
また、その構えはジード・プリミティブとどこか似ているものがある。
なお、これほどまでの圧倒的な戦闘力を誇っているアトロシアスだが、劇中ではゼロの挑発に誘われる形で、強化が十分に完了していない状態で地球に降臨した上、最終的にカレラン分子分解酵素を撃ち込まれたことで体内に溜め込んでいたカレラン分子の一部を喪失したため、当初の想定よりも大幅に弱体化することとなってしまった。また、本人曰く「息子の力を吸収できていればより完璧だった」とのこと。
しかし、不完全な状態でもジードやゼロ、ウルトラの父といった三大ウルトラ戦士を圧倒するほどの戦闘力を見せていたというのだから恐ろしい話である。もし、これらのアクシデントが起こらず、完全な力を手に入れていたとしたら、それこそ現在とは比べ物にならないほどのウルトラシリーズ最大最悪の脅威になっていたであろうことは想像に難くない。
必殺技
アトロスバースト
所謂スペシウム光線系統の必殺技。溜める際のモーションはレッキングバーストと全く同じであるが、『フュージョンファイト』のカード説明によると威力はその数十倍にもなるらしい。
実際にこの光線をまともに受けたゼガンは一撃で爆砕されている。
デスシウムデストラクト
伸縮自在の両手の爪「アトロスヘルクロー」に闇のオーラを纏って敵を刺突したり切り裂く攻撃。
敵の細胞を破壊する効果がある。
劇中では宇宙船モードの星雲荘を撃墜した上、ゼロビヨンドを通常形態のゼロに戻し、最終的には差し違える形で変身を解除させるほどの大ダメージを与えた。
アトロスリッパー
アトロスロアー
ジード・プリミティブのレッキングリッパー、レッキングロアーによく似た技で、いずれもジードのものを遥かに凌駕する威力を誇っている。
このことから、プリミティブに使用できる技はアトロシアスにも(全て上位互換で)使えると思われる。
これ以外にも、通常形態と同様ギガバトルナイザーも使用することから、これを使って発動可能な技もすべて使用可能であると考えられる。劇中ではベリアルショットの強化版と思われる光弾を使用した。
劇中での活躍
融合元となるカプセル2つは第18話で登場。
ベリアルの敗北によって街中に飛び散ったカプセルの一部で、怪獣カプセルの中でも特に莫大なエネルギーが秘められていたことから存在を危険視したAIBによって回収され、施設内で厳重に保管されていた。
しかし、第22話で石刈アリエの協力を得た伏井出ケイによってカプセルを奪い取られてしまい、第23話でアリエに憑依していたベリアルが伏井出ケイから二つのカプセルと、ケイの体内のストルム器官を強奪したことにより、同話ラストでデモニックフュージョン・アンリーシュを果たし本編に登場した。
その後、第24話で地球に自身の巨大な幻影を投影させ、宇宙の各地に拡散したウルトラマンキングの力を吸収して究極の力を手に入れること、それが達成した暁には光の国への見せしめも兼ねて地球を再び破壊することを告げる(同時に、地球はキングの力が弱まった影響で徐々に不安定になり始め、地震や異常気象などの災害が世界各地で頻発する等大きな被害が発生するようになった)。
これを阻止すべく、AIBはカレラン分子分解酵素を打ち込んで弱体化させたうえで、ゼガンの力を使ってベリアルを異空間へと放逐する作戦を実行しようとする。
しかし、強化されたアトロシアスの戦闘力を前にゼロは苦戦を強いられ、分解酵素ガスを搭載した宇宙船モードの星雲荘も撃墜されてしまう(ゼロはベリアルを羽交い締めにして抑えたが、振りほどかれた)。
もはや万策尽きたかに思われたが、ここでジードが現れ、戦闘に突入。しかし、ロイヤルメガマスターのジードですらもアトロシアスには敵わず、プリミティブに戻されるまでに追い詰められ、さらに分解酵素ガスが入ったミサイルをゼロに撃ち込まれ、弱体化するもそれでもその力は圧倒的であり、反撃でゼロを変身解除に追い込む。
ここでジードの応援に駆け付けたウルトラの父にフォースフィールドへ閉じ込められるが、父もジードが体勢を立て直すまでベリアルを抑え込むのが精一杯だった。
フィールド消滅後、再度ジードとの戦闘となり、ジードとのレッキングバーストをゼガントビームとぶつかり合わせることで時空の裂け目を作り出したゼガンをアトロスバーストで撃破。その後もジードを圧倒するが、諦めないリクの想いとキングの力により5形態に分身したジードを前に形勢を逆転され、最後はプリミティブのレッキングバースト・ソリッドバーニングのストライクブースト・アクロスマッシャーのアトモスインパクト・マグニフィセントのビッグバスタウェイ・ロイヤルメガマスターのロイヤルエンドの合体光線「ジードプルーフ」を食らい、ギガバトルナイザーを破壊された上に元の姿に戻された。
ウルトラマンZ
第15話で、セレブロの作り出したベリアルメダルが、ゼロとジードのメダルに共鳴してパワーアップしたことで、アトロシアスのライズウルトラメダルとなった。
そのままデルタライズクローへのウルトラフュージョンに使われたが、一部とはいえあのベリアルの強化形態の力を宿しているだけあってか、そのパワーはあまりにも凄まじく、ハルキとゼットが2人がかりで力を合わせないとウルトラゼットライザーにセットできなかったほどだった。
最終回では、セレブロの確保していたベリアルメダルがヨウコの手に渡り、彼女が持っている段階でハルキの持つメダルと共鳴してアトロシアスへとパワーアップ。空中での変身アイテムタッチのシークエンスを経てデルタライズクローが復活した。
この際ヨウコはアトロシアスのメダルを片手で、足場もない状態でゼットライザーにセットしている。これをヨウコの怪力と見るか、ベリアルが誘導したと見るかは意見の分かれる所である。
ちなみに本作において「ジード」では不明だった飛行ポーズとぐんぐんカットが判明した(飛行ポーズはマグニフィセントのように両手を後ろに下げてのもの、ぐんぐんカットは両手を前に広げた状態で飛ぶ)。
イメージの投影のような簡易なものとはいえ、悪トラマンのぐんぐんカットはかなり貴重。
余談
「アトロシアス」は「極悪な」「残虐な」という意味。
さらにカプセルスキャン時の「デモニック」は「悪魔的な」「凶暴な」、「アンリーシュ」は「解放する」という意味を持つ。
直訳すると「悪魔を解放し、融合する」となり、正にこの形態に相応しい音声と言える。
初期案ではウルトラシリーズに縁深い小説家の作品名をオマージュした「ウルトラマンベリアル・アルファオメガ」という名前だった。だがこの名前は『ウルトラマンSTORY0』に登場するウルトラマン、フレアの技名とまったく同じである。採用されなかったのはそんな理由もあったのだろうか…。
監督の坂本浩一は異形のキメラベロスが先行して登場していることや、『ウルトラマンギンガS』のビクトルギエル、『ウルトラマンX』のグリーザ、『ウルトラマンオーブ』のマガタノオロチなどの最終回で異形だったり大きかったりする敵が続いたことから、ジードに近い姿でのウルトラマン同士の戦いを描くことを発想した。
エンペラ星人とダークルギエルはそれぞれ『ウルトラマンメビウス』と『ウルトラマンギンガ』のラスボスにして、強大な力を持つほか、「元々悪の勢力ではなかった、ある意味ウルトラマンのもう一つの形・可能性」「狂信的な部下を持つ」「過去にウルトラ戦士達を巻き込んだ大きな闘いを引き起こした」「エタルダミーになったことがあるほどの恐怖と絶望を振りまいた」という共通点を持つ。
そしてこれらの共通点はベリアル自身にも全て当てはまっている。
その一方で、エンペラ星人とダークルギエルの組み合わせは、遥か過去からの存在と遥か未来の世界の存在という意味では、対になっているともいえる。
エンペラ星人は(直接の面識こそないが)、ベリアルが悪の道に染まる遠因を作った存在でもあり、その鎧をベリアルが纏った事もある。
ウルトラマンゼロビヨンドの事を「ひよっこ共の力」と言っていたベリアルだが、ダークルギエルはそのひよっこのうちの一人の半身と呼べる存在である。
ちなみにエンペラ星人もダークルギエルもスーツは残っている可能性が高い(後の『ウルトラギャラクシーファイト』シリーズにて両者とも登場している)にも関わらず、変身シーンではキメラベロス同様カプセルに描かれたイラストがベリアルに吸収される演出がとられている。
さらに、スキャンはダークルギエルカプセルから行ったにも関わらず、音声は最初に絵が現れたエンペラ星人の方が先に鳴っている(どちらが正しいのかは不明)。
地味に『ジード』劇中に登場する融合で宇宙人が使われている唯一の存在である。
『ジード』最終回の3年前の同じ日の12月23日には偶然にもダークルギエルが登場する『ギンガS』最終回が放送されていた。更にその7年前は『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』の公開日であった。
また、ベリアルはレイオニクスである関係上、レイブラッド星人の遺伝子を受け継いでおり、実質的にウルトラヒーローたちの宿敵の首魁が3体も合体している事になる(それも宇宙中に遺伝子をばら撒いて怪獣使いを量産したり、太陽を黒点で埋め尽くしたり、生物の時間を止めたりとシャレにならない能力の持ち主ばかりである)。ベリアル自身もウルトラヒーロー達の宿敵ポジションであるために正に究極生命体であるといえよう。え?ジュダやヤプールはどうしたかって?知らんな。
最終話の雨の特撮シーンは『ウルトラマンメビウス』第32話以来11年ぶりであり、平成ウルトラマンシリーズでは2度目で、ウルトラの父とゼロとベリアルにとって雨の特撮シーンは初めてであるが、平成ウルトラマンシリーズでの雨の特撮は、『メビウス』第32話と本編最終回のみである(『ウルトラマンギンガ劇場スペシャル1』のギンガとダークザギとの空中戦にもあるが、あちらはCG。また、『ウルトラゼロファイト』第二部でも光を失ったゼロが闇の中で雨に打たれるシーンがある)。また、最終回でウルトラ戦士が濡れて戦うシーンは『ウルトラマンティガ』最終回以来20年ぶりである。
ジードの初期デザイン案を反映しており、ベリアルの特徴である前傾姿勢を廃し、ウルトラマンに近いスタイリッシュなデザインとすることが意図され、造形では、骸骨状のディテールはパーツの貼り合わせにより立体的に作られている
最終話での夜景での対決は、第1話のジードとスカルゴモラの対決時を踏襲している。
この形態のネタ的な呼び方として「ベリアル新しいやつ」というものがある。
元ネタはウルトラゼットライザーでアトロシアスのメダルを読み込んだ際の「Belial Atrocious」という流暢な発音に対する空耳。『Z』のニコニコ動画配信における視聴者コメントが切欠で広まったものと思われる。
実際、ベリアル本人は『ジード』以降(アーリースタイルの並行同位体という特例を除いて)再登場していないので、アトロシアスはベリアル最新の形態であると言える。
またこれに伴い、通常のベリアルは「ベリアル古いやつ」とコメントされてしまうこともある。
関連項目
マガタノオロチ…前作のラスボス
ダークザギ…同じくTVシリーズのラスボスを務めた悪トラマン。しかし彼はウルトラマンを模した存在であり、本物のウルトラマンだった存在がラスボスを務めるのはベリアルが最初である(劇場版を含めるとカミーラが最初だが)。ちなみにアトロシアスのフュージョン元であるダークルギエルに手駒として操られたことがある、ルギエルの元ネタがザギを上回る闇の存在のダークルシフェルであるなど、直接フュージョンしてないが何かと縁が深かったりする。
サンダーブレスター…前作『ウルトラマンオーブ』の主役ヒーロー、ウルトラマンオーブがベリアルの力によってフュージョンアップした姿。『ウルトラマンジード』最終話でアトロシアスが折れた橋を持ち上げジードに叩き付ける凶器攻撃を披露し、奇しくも本家に当たるはずのベリアルがサンダーブレスターの凶器攻撃を逆輸入することとなった。
初代ウルトラマン…外伝作であるAnotherGenesisに出てくる彼は最終的にベリアルと似た姿に変貌するが、挿絵で見せたその姿はカラーリングも含めアトロシアスに酷似している。