概要
特撮番組『ウルトラマンネクサス』に登場するハズだったキャラクター。
『ULTRA N PROJECT』を締めくくる真のラスボスだったと予想される存在なのだが、ファンの間では「とにかく映像作品で出番を貰えない」悲しい存在として知られる。
『ウルトラマンネクサス』本編のラスボス・ダークザギが、映画『ULTRAMAN』の悪役・ビースト・ザ・ワンを取り込み、黒き肉体を持つ怪獣型ウルトラマンへと進化したような姿を持つ。ダークザギと異なる特徴としては眼が青く、口に牙、手に鋭い爪、背中にはザ・ワンを思わせる翼状の突起物を有すること、更に首元にはダークファウストとダークメフィストの顔面が配置されていることが挙げられる。また、全身には血管を思わせる赤いラインが走り、胸にはエナジーコアらしき模様があるが、その中心部分は抉れたように窪んでおり、見た者に不気味かつ禍々しい印象を与える。
設定資料集などではファウスト、メフィストに続く第3の暗黒巨人としてデザインされたことが明かされているが、番組の放送短縮に伴って『ウルトラマンネクサス』後半のシナリオが大幅に変更された為、劇中に登場する事は出来なかった。おまけに没シナリオの詳細は明かされておらず、公式媒体に記載されたルシフェルの情報はデザイン案と数行程度の文章だけなので、その実態は謎に包まれている。
しかしながら、初期の構想ではダークザギの正体が西条凪の変身した姿(ウルトラマンネクサスが闇堕ちした姿、あるいは人造ウルトラマン的存在)だったこと、石堀光彦の正体はダークザギではなくダークルシフェルだったことがDVD-BOX封入特典ブックレットに記載されている為、『ウルトラマンネクサス』のラスボスは本来、ダークルシフェルだったことだけは確かである。凪の回想シーンで、山岡一=石掘光彦と思われる人物の背中からザ・ワンのような突起物が生えるシーンがあるが、それも本来はルシフェルの登場を示唆する伏線だったと思われる。
また、その存在について、ヒーローピクトリアルVel.2のデザインページでは「立ち位置はザギというよりもイズマエルに近い」と語られている。これは「ラスボス前の前座であった」という意味ではなく、「スペースビーストの集大成」という意味合いであると思われる。
どのような形で登場する予定だったかは分からないものの、映画『ULTRAMAN』と『ネクサス』本編がつながっていること、『ULTRA N PROJECT』主要キャラクターの中では唯一「青い目」を持っていることや、書籍『ULTRAMAN STYLE』における『ネクサス』シリーズ構成作家・長谷川圭一インタビュー記事内の「赤い光と青い光は本来一つのもので、長きにわたり追い求めたり戦い続けてきたという神話的なイメージで考えていた」という旨の発言から考察すると、石堀の正体はビースト・ザ・ワンで、彼の暗躍により心を闇に染められた凪がダークザギに変身。更にザギの持つ闇の力をザ・ワンが奪い取った姿こそがダークルシフェルと考えると収まりがいい
(石堀=山岡一が憑依された時期はザ・ワン襲来前なので、時系列に矛盾があるようにも思えるが、彼が憑依されたのは「ザギの情報を含むビースト因子」だったという設定がある為、この因子はザ・ワンが先遣隊として放ったものだったとも考えられる)。
そもそも雑誌展開と映像作品をつなぐ要素はダークザギ関連しかなく、そのザギの設定にも途中で変更が加えられた形跡があるので、ザギが急遽ラスボスに抜擢されたのは、登場キャラクターを減らすことで予算やスケジュールを節約しようとした為とも考えられる。
いずれにせよ『ウルトラマンネクサス』の放送期間短縮に伴いその存在は幻と化し、本編の最終話はダークザギと、孤門一輝が変身したウルトラマンネクサスの究極最終形態ウルトラマンノアの対決という形で締めくくられてしまった。
デザインと後の作品への影響
制作当時、ダークルシフェルのデザイン構想はかなり難航したようで「当初は人間(ウルトラマン)型だったが、後に怪獣形態に変更された」という裏話が明かされている(現在はTwitterアカウント消失により閲覧不能)。
酉澤安施による怪獣形態のデザインは放送当時の関連書籍でも公開されていたが、先述の通り丸山浩によるダークウルトラマン型のデザインが考案されており、『丸山浩特撮デザインワークス』にてようやくデザイン画が公表された。シルエットだけ先行登場する予定もあったらしく、X字の翼を持つAタイプ、鳥のような翼を持つBタイプ、阿修羅のような三面を持つCタイプのシルエット案が用意されている。ただ、丸山氏自身はフリークス然としたCタイプを好んでおらず、Aタイプを基にダークメフィストのスーツを流用・改造したデザインを採用したかった模様。他にもエナジーコア型の仮面を装備したタイプやオウム貝をイメージした形状の頭部を持つタイプ、ザギを洗練したイメージの身体と二本角を持つタイプなど、多数のラフスケッチが残されている。
DVD-BOXブックレットでは「最終形態」という言葉も使われており、最終話でネクサスが順を追いノアへと進化していったように、ルシフェルも形態を変えていく構想があった可能性が示唆されている。先述のAタイプ~Cタイプのデザインがこの形態変化に相当するのかもしれないが、詳細は不明である。
また、ダークメフィスト流用案で描かれていた角の形状イメージはハンターナイトツルギ=ウルトラマンヒカリに使われ、また、怪獣型ウルトラマンというデザインや発想はアークベリアルとして、改めて日の目を見ている。
加えて『ウルトラマンギンガ』に登場したダークルギエルのデザインもルシフェルの流用ではないかと考察されていたが、デザインを担当した後藤正行氏はTwitter上で完全否定している。ただ、『ギンガ』Blu-rayBOXのブックレットに「キャラクターイメージにダークルシフェルの要素も取り入れられている」という一文があり、『ギンガ』のシリーズ構成は『ネクサス』と同じ長谷川圭一氏である為、設定自体は流用されている可能性が高い。
小説『再臨 -ドリームス-』での活躍?
結局、映像作品上には登場出来なかったダークルシフェルだが、ウルトラマンネクサスDVD-BOX封入特典ブックレットに掲載された本編後日談のプロット『再臨-ドリームス-』にて、僅かながら活躍が描かれている。
その正体はかつてM.P(メモリーポリス)に所属していたという黒服の男。
スペースビーストの存在が明らかにされた後、人々はその存在に向き合い恐怖を克服することでビースト発生を抑止していたのだが、中には恐怖心に勝てない者たちもいた。その男は廃棄される予定だったメモレイサーを非合法に使用し、恐怖に屈した人々の記憶を消去していたが、彼の目的は収集した恐怖を蓄えて闇の巨人を復活させる事だった。
そして男は孤門と凪の前に現れ、「ザギをも超える闇のエネルギーを得た」と言い放つと、メモレイサーから溢れ出る闇の波動を吸収し、ダークルシフェルへと変身。「貴様一人で俺を倒すことは不可能だ!」と孤門を嘲笑いながら、再び世界を闇に染め上げようとした。
しかし、孤門は一人ではなかった。エボルトラスターを手にした彼は「光は絆だ。その輝きは消えることはない」と言い放ち、傍らに立つ凪と手を握り合うと、再びウルトラマンノアに変身。ルシフェルの前に立ちはだかった……!
続きが気になるが、プロットはノアが登場した時点で終わっており、その結末は明らかになっていない。
ただ、後のいくつかの作品でノア=ネクサスが別の世界に赴いていることが確認されており、彼が危機に陥った地球を放置して別の次元世界へ旅立ったとは考えづらいことから、激戦の末にノアやナイトレイダーによって倒されたのかもしれない(別世界故に時系列が前後している可能性もあるが)。
また、この小説はあくまでプロットとして発表されたものなので正式な後日談ではなく、正史ではダークルシフェルは現れなかったという可能性も大である。
結局のところダークルシフェルに変身した黒服の男の正体は謎のままである。
M.Pに所属していた男(かつデュナミストであり、明確な死が描かれていない人物)といえば三沢広之が思い浮かぶが、作中では「男」とのみ表記されており、彼と面識があるはずの孤門や凪が全く反応を示していないので、別人と考えるのが自然である。元M.Pチーフの首藤沙耶にも正体が掴めなかったようなので、元M.Pという経歴自体が嘘だったのかもしれない。
映画『ウルトラマンサーガ』没案での活躍?
映画本編ではハイパーゼットン、及びバット星人がラスボスとして登場しているが、実は初期プロットではダークルシファーという、ベリアルの闇を取り込んだ巨人がラスボスになる予定だった模様で、名前の由来はダークルシフェルの可能性がある。(ゼロに倒されたベリアルの闇により誕生した存在なので、ネクサスに登場が検討されていたダークルシフェルや、後日談プロットに登場したダークルシフェルとは別の存在だと思われる)
ご存知の通り、初期プロットは没になってしまったものの、例のごとく初回限定生産のメモリアルBOXには没プロットの内容が掲載されており、その活躍の一部が描かれている。
映画冒頭、ダークルシファーはその強大な闇の力でウルトラマンキングを殺害。
更にキングの死によって全宇宙のバランスが崩壊、宇宙に歪みが生じ、パラレルワールドへ繋がる亀裂を発生させるという事態を引き起こしてしまう。
更に映画終盤で姿を現したルシファーは、サイドスペースの地球への無差別攻撃を敢行。それを庇ったカオスヘッダー0の命を奪う。
そして怒りに燃えるコスモスとジャスティスが合体したウルトラマンレジェンド、ウルトラ兄弟が合体したメビウスインフィニティー、ウルトラマンダイナとウルトラマンゼロが合体したウルトラマンサーガとの最終決戦を繰り広げる……というものだった模様。
仮に実現していたならば、ウルトラシリーズでも別格の存在として扱われるチートラマン4人と元ラスボスを相手にする予定だったことになり、シリーズ屈指の強大な敵として設定されていたことが窺える。
が、『ウルトラマン公式アーカイブ ゼロVSベリアル10周年記念読本』によればこのプロットは1日で書き上げたものだとされており、その後すぐに登場するキャラクターの整理が行われたようなので流石にキングを殺害したり、チートラマン3人相手の戦いを繰り広げる展開はパワーバランス的な無理があったようである。まあ最終的にはゼットンというキャラクターの知名度には勝てない(脚本の長谷川圭一氏は最強クラスの怪獣として認識しており、ヘタな扱いはできなかったと語っている)ということでダークルシファー登場そのものが没になってしまったのだが……
なお、「キングの死」とそれに伴う「宇宙の歪みの発生」といった要素の一部は、後に『ウルトラマンジード』で部分的にではあるが実現している(ただし、さすがにキングは死亡せず、宇宙と一体化して消息不明になるという形に落ち着いた)。一応、正史ではないものの「キングの死」という事態だけならジード放送よりずっと前に描かれたことがある。
余談
名前の由来は神々に反逆を企て、地獄へと落とされたとされる堕天使ルシファー、あるいはより著名な存在としてのサタン。
つまりダークファウストがゲーテの戯曲『ファウスト』に登場するファウスト博士(使い魔)、ダークメフィストが同じ戯曲に登場するメフィストフェレス(悪魔)と連なっている事からも分かるように、使い走りである悪魔を超える魔王のポジションであったことがうかがえる。
三つの首を持つ点やその漆黒の姿は、ダンテの『神曲』に出てきたサタンを彷彿とさせ、その名前も「闇に堕ちたルシファー」=サタンという詩的な名称になっている。上記の通りザ・ワンの最終系であると考えた場合、ザ・ワンの最終形態が「ベルゼブア」という名前であった点も見過ごせない点だろう。
また、シリーズ構成の長谷川圭一はULTRA N PROJECTに『デビルマン』のイメージを取り入れたかったと発言しており、同作のTV版ラスボス「魔王ゼノン」も阿修羅のような三つの首を持っていることから関連性が窺える。
関連タグ
ダークファウスト ダークメフィスト ダークメフィスト・ツヴァイ ダークザギ
レイバトス:ダークルシフェルと同様にULTRA N PROJECT没企画のラスボスとして作られたが、設定変更により映像作品登場を果たしたキャラクター。