「レトロ、それは古き良き昔……。レトロ、それは素晴らしき日々……。クフフフ! レトロトピアの力にひれ伏せレトロ!」
「ピンクの公衆電話! オート三輪! 町に漂う中華そばの香り~! これぞまさしくレトロだレトロ~!!」
データ
身長/194cm
体重/291kg
世界/レトロトピア
名物/ピンクの公衆電話、オート三輪、中華そばの香り
名産/トキヲモドソード、ナツカシールド
概要
トジテンドが人間界侵略の為に、レトロの世界「レトロトピア」を閉じ込めたレトロトジルギアをクダックに組み込んで、時代錯誤に誕生したワルド。
頭部は受信アンテナ付きのブラウン管テレビになっていて、アンテナの基部はダイヤル式有線電話を模した造形となっている。更にブラウン管の画面には漫画チックな双眸が付いていて、笑うと目が細くなったり弱気になると目尻が下がるので実に表情豊か。また、テレビ下のスピーカーはギザ歯状になっている。
一方、右腕には壁掛け振り子時計を模し内部機構の仕込まれている剣『トキヲモドソード』、左腕には五角形状のレコード台を象った小型シールド・音盤盾『ナツカシールド』を装着しており、総じて全体を見てみると騎士の恰好をした、レトロ家電の集合体の様な姿をしている。
レトロトピアの力を悪用する事で、頭部のアンテナから古臭いアニメエフェクトを伴う『レトロ電波』を発生させ、あらゆるものを時代の垣根を問わず昔懐かしいレトロなものに変化させる能力を行使する。
更にレトロパワーを解放すれば、“ピンクの公衆電話”や“ オート三輪”、“中華そばの香り”といったレトロなものが溢れた街並みへ街一つ丸ごと変えることもでき、大正から平成初期くらいまでを時代考証ガン無視でごちゃ混ぜにしたような、広義の「レトロ」な世界観が展開される。一方で戦争の爪痕や今より酷い公害や不況など昔の暗い要素は徹底して廃されており、あくまで一種のテーマパークであることが窺える。
レトロ電波の効果はツーカイザー(ゴールドツイカー一家)の使うアイテムや装備も例外では無く、ゾックスはギアダリンガーが舵輪を模した一昔前の木製のおもちゃに変化してチェンジ出来なくなり、拠点であるクロコダイオーもただの帆船へと変わって遠くの海岸線へ墜落、あっと言う間に戦力外となってしまった。
その一方で、ゼンカイジャーの使うギアトリンガーは世界改変に対する防護処理をされていたのか、レトロ電波の影響を受けずにいつも通り使えていた(※同一の技術を基に作られた、正規開発品と海賊品の違いと言う事なのだろうか)。
最も、世界がレトロ化しても一般キカイノイドは愚か、人間の方も若年層は見慣れない世界が目新しく好意的と捉え、実際にレトロな時代を過ごしてきた熟年層は懐かしさを感じる者が大半を占めているので、あっさりと怪しまず順応しているが、侵略手段としての真価はレトロ電波のチューニングを上げる事で発揮される。
それは、電波を浴びた人達の意識を過去へと向けさせ、「あの頃は良かった…」と昔の楽しかった思い出に浸れさせる事で思考を停滞させ、そのまま文明ごと人類を全滅させると言う中々にえげつない物で、かつてゴミワルドが実行した精神汚染攻撃の第二弾とも取れる侵略方法である(※世界中に溢れたゴミの後処理を考えなければならないゴミワルドと違って、こちらはそうしたリスクが無い)。
極めて凶悪な能力だが、その特性上過去にいい思い出の無い人物はすぐに正気を取り戻してしまうと言う弱点が後に発覚している。
戦闘能力自体は大した事が無いが、敵の攻撃でダメージを貰っても地面に突き刺したトキヲモドソードの内部機構を動かす事で、時間を巻き戻してダメージを無かった事にする反則技を使える。
実はバラシタラやイジルデの手で生み出されたのでは無く、トジルギアとゼンカイジャー・ツーカイザーの力を再確認する実験の為にゲゲが無断で生み出したワルド。ボッコワウスに溺愛される彼が作った為に、事実上お咎めは無かった他、功を焦った上司から余計な命令や干渉を受けたのが遠因で敗北・作戦失敗する事の多かったこれまでのワルドに対し、誕生後は半ば放任の扱いで動向を見守られた。
これによって、変にプレッシャーや横槍を入れられなかったからか、「~レトロ」と言いながら自然な感覚で人間界侵略に臨み、自らの力で誕生した奇怪なレトロの世界を満喫しつつ、裏方より人々を無力化する任務を粛々と実行していた。
活躍
ゲゲの手で誕生後、人間界へと向かったのと同時にレトロドジルギアの力を展開。レトロ溢れる情景になった町を闊歩する最中、ゾックス/ツーカイザーにいきなり上空より攻撃され交戦、更に異変へ反応して出動して来たゼンカイジャーにも見付かって袋叩きに遭うも、「まだ倒される、ぐはっ……! 倒されるわけにはいかんレトロ!」と言いつつ近距離でレトロ電波を直撃させる事で、ゼンカイジャー及びツーカイザーの装いをレトロ化し変身解除させる。ちなみにレトロ化した姿は、
の通り。
しかもこれで、ツーカイザー及びゴールドツイカー一家は自分達のツールが実質ハリボテ化して瞬く間に無力化、おまけに帆船と化して飛行能力を失い墜落するクロコダイオーを追って、ゾックスはその場より急いで戦線離脱。そしてその一部始終をゼンカイジャーが唖然と見ていた隙に姿を晦ました。
「いや~はっは! レトロな世界を楽しんでるようレトロ。今の内に、レトロパワーのレベルを上げるレトロ!」
そして暫くの間、人々がレトロ世界に順応した裏で密かに自身も満喫しつつ、人々が油断し切ったタイミングでレトロ電波の出力を強化、街並みだけでなく風景までもアナログテレビのようなセピア色に変化する程レトロ化を進行させ、人々を誤った懐古主義に浸らせて無力化させ始める。ゼンカイジャーやゴールドツイカー一家の面々もその毒牙にかかり無力化させた。
だが、この内キカイノイドの面々の脳裏に浮かんだのはトジテンドからの弾圧と迫害、或いはまともな生活を送れなかった忌まわしい過去だった。
ジュラン〈あの頃は良かったぜ……。あの頃は……。あの頃……あの頃……どの頃?〉
ジュラン「違えわ、違えわ! “良かったあの頃”なんて無かったわ、俺たち!!」
ガオーン「僕は今が、パラダァァァイス!!」
マジーヌ「自分も、あの頃の自分には戻りたくない!」
ブルーン「私も、これからもっともっとたくさんの事を知るのが楽しみなんです!」
こうしてジュラン・ガオーン・マジーヌ・ブルーンを含めたキカイノイド達は逆に洗脳攻撃を振り切って発奮。
ジュラン「変な能力で介人とヤツデの良いとこ曇らせやがって!! レトロワルドの野郎、マジ許さねえ!!」
ガオーン「ギッタギタにしてやる~!!」
完全に過去のノスタルジックな記憶へ囚われた介人やヤツデ達を助けるべく、近くの公衆電話から連絡して来たセッちゃんの情報を元に、ジュラン達4人はレトロワルドが潜む地点へ急行する。
そしてこの展開を知る余地も無いレトロワルドは、「この調子でこの世界を、骨抜きにしてやるレトロ~♪」と余裕をこいて車夫のクダックに引かせた人力車で移動していたが、ジュランの撃ったギアトリンガーの一発でクダックが怯んだ拍子で地面に転ばされ、そのままゼンカイジュラン・ゼンカイガオーン・ゼンカイマジーヌ・ゼンカイブルーンの名乗りを聞かされる。
これへ「思い出に浸っていれば、スクラップにされずに済んだものを!」と毒付きつつ、逃げてしまった車夫クダックの代わりに「全員集合」と呼び寄せたクダック部隊を嗾けるも、4人は各々の戦い方でこれを一蹴。その勢いのまま4人の集中攻撃によって吹っ飛ばされたレトロワルドはボロボロの姿になるが、直後にトキヲモドソードの力で時間を攻撃直前へ遡行、ダメージを無かった事にして「フフ〜ン♪ やはりあの頃が最高レトロ〜♪」と勝ち誇る。
しかし、虐げられて暗い気持ちでいた過去より『今』を生きようとする4人のゼンカイジャーは、タイムレンジャーギアを使用して時間を修正した事で、時間遡行を相殺。
ジュラン「俺らは"『今』を生きる未来びと"なんで、よろしこ」
これでなかった事にしたダメージが戻ってへばり、「一体どうなってるレトロ~!?」と自身に起こった出来事へ混乱している内にゼンカイフィニッシュバスターが直撃、コマネチのポーズを決めつつ爆散・敗北。
これを以って街のレトロ化は解け、介人やヤツデ達も誤った懐古主義から解放。世界に『今』が戻って来た。
しかし、残ったレトロトジルギアを「レトロな世界、俺にも遊ばせろ~!」と言いながら後詰めで現れたクダイテストが踏みつけ、ダイレトロワルドが誕生したのだった。
結局、このワルドの敗因は本人自身に無く、彼を生み出したトジテンドの庶民へ対する横暴と圧政がジュラン達に強いトラウマと苦痛を刻み付け、それが今回の精神攻撃により強烈な義憤へと変わってしまった事が大きかった。前述の様に上層部からの干渉は無かった物の、代わりに組織自体の悪政が巡り回って発生した結果に足を引っ張られたのは、壮絶なまでに皮肉な話であろう。
余談
これまで物を古くさせる能力を持つ戦隊怪人は複数いたが、ストレートに「レトロ」と言う嗜好・思想をモチーフに使った戦隊怪人はこのレトロワルドが初。
声を演じる北沢氏はスーパー戦隊シリーズの出演は初であり、『仮面ライダーゴースト』の電気眼魔以来5年ぶりの特撮出演となる。
彼の能力で再現されたレトロな街並みは、OPテロップの撮影協力の項目から茨城県にある施設「ワープステーション江戸」で撮影して表現したと思われる。
ちなみに2020年に一般公開は終了しているものの、撮影用施設としては現在(2021年)も運営している。
また、2021年5月に西武園ゆうえんちが昭和レトロをイメージしたテーマパークにリニューアルオープンしたばかりである為、この怪人が登場したのはある意味タイムリーと言えるであろう。
テレビ朝日公式サイトの紹介ページでは、表記ミスなのか本来の「名物」と「名産」の表記が逆になっている。
因みに、作品の垣根を超えてしまうが、『仮面ライダーゼロワン』のアズと手を組んだら最強だった可能性がある。上記の誤った懐古主義に浸らせればアークを増殖させることも雑作もない。
関連タグ
仮面ライダーオーディン、仮面ライダークロノス:時を戻す能力を持つダークライダー。但し、こちらは能力の仕組みとやり方が壮大。
ジクウマンモス:『鳥人戦隊ジェットマン』の怪人で、こちらは主人公達をモチーフとなった古代生物が生きていたとされる時代に飛ばした。
キリンレンジャー:こちらは短い間の時間を戻す技を持つ戦隊イエローで、能力の運用法は最も近いと考えられる。
バラペテン:『超力戦隊オーレンジャー』の怪人で、こちらも大人の精神を学生時代の若い頃に戻す事で、現実逃避させると言う似た作戦を展開した。
シロウネリ:物を古い物に変える能力を持ち、後述のビンボーガミと似た能力を使う。
ビンボーガミ(カクレンジャー):形は違えど戦隊側のアイテムや装備を劣化させた繋がりの戦隊怪人。
電話仮面、テレビ仮面:おそらくレトロワルドの頭部デザインの元にされたと思われるレトロ家電モチーフの戦隊怪人。
タイマーのバクトフージER:『天装戦隊ゴセイジャー』に登場する、時間を巻き戻す能力を持つ敵キャラ繋がり。なお彼の武器の名前は“重鋲磨肝怒槍”(じゅうびょうまきもどそう)
礼紋茉莉花:昭和文化を愛好しレトロな台詞を多用する17年前の戦隊ヒロイン。ちょうどYouTubeでデカレンジャーが配信中という事もあり、彼女を思い出した人も多い。
半田健人:レトロ趣味で知られるかつてのニチアサの主演俳優。この回のレトロ化した介人の髪型が似ていたせいもあって、ゲスト出演した訳でもないのにその名前がトレンド入りする珍事があった。
クォーツァー:懐古主義者の極致のような集団。「あの頃はよかった」から「現代を滅ぼしやり直す」というぶっ飛びすぎた過激派。一部の特撮ファンの間で平成のキーワードが飛び交う事態に(またかよ)。
ケン:街をレトロ化させ、人々を思い出に没頭させて支配しようとする点が似ている。
怪奇大作戦セカンドファイル:街がレトロ化する話がある。
ぺこぱ:『時を戻そう』と言う持ちギャグがある芸人でおそらくこれが『トキヲモドソード』の由来と考えられる。ちなみに前作でもぺこぱを意識したネタが度々見られた。