概要
Wizardryシナリオ#2。
原題は"Knight of Diamonds"。
前作#1をクリアしたキャラクターのデータを転送で引き継ぐことを想定しており、いわゆる拡張パックに近いタイトル。
序盤からかなり強力な敵(前作中盤~終盤に相当)が出現し、B1からB2に進むためには転移呪文(最高位階に属する)が必要など、新規に作成したキャラクターで挑む様には出来ていない。
このためFC版では#2の移植は一旦見送られ、次作#3こと『リルガミンの遺産』が『FC版ウィザードリィⅡ』として発売され、その後#2に大幅な調整を施したアレンジ版が『FC版ウィザードリィⅢ』として発売されたという経緯がある。
ちなみにFCでも、別売りの外部記憶装置であるターボファイルがあれば、キャラクターデータの転送は可能である。
さらにその後のPCエンジン版では、『#1・#2』と『#3・#4』がそれぞれ一枚のディスクに収録されているため、FC版のようなタイトルの入れ替わりは発生していない。
一方でSFC版とGBC版はFC版をベースとした移植であるため、アレンジ版の#2がⅢとして扱われている。
そんなわけで、日本国内においては単に『#2、#3』あるいは『Ⅱ、Ⅲ』と呼んだ場合、『ダイヤモンドの騎士』と『リルガミンの遺産』のどちらを指すかで混乱を招く(さらに『外伝Ⅱ』と『外伝Ⅲ』もある)ため、それぞれのサブタイトルから『KOD』『LOL』と表記するのが一般的。
プラットフォーム
日本語PC (1986年)
PCエンジン(『1&2』収録) (1993年)
プレイステーション / セガサターン / windows(『リルガミンサーガ』収録) (1998年)
スーパーファミコン(『ストーリーオブリルガミン』収録) (1999年)
ゲームボーイカラー(2001年)
ストーリー
城塞都市リルガミンは、古から大地の精霊ニルダの加護により、あらゆる外敵から守られていた。
だがこの精霊の加護は内なる敵に対しては効果を持たず、王位継承者たちはリルガミンで生を受けた魔人・ダバルプスにより皆殺しにされてしまう。王女マルグダと王子アラビクの姉弟だけを残して…。
冒険の末に伝説の「ダイヤモンドの騎士」の武具を手に入れた姉弟はリルガミンの僭主・ダバルプスに戦いを挑み、聖剣ハースニールの一撃がついにダバルプスを捉える。
だがダバルプスが今際の際に発した呪いの言葉によって王城が崩落、後に「ダバルプスの呪い穴」と呼ばれる地下迷宮が姿をあらわす。
そして精霊の加護の象徴たる神器ニルダの杖も失われてしまった…
かくてマルグダ王女はニルダの杖奪還のため、地下迷宮に挑む冒険者を募った。
これが『KOD』の始まりである。
ちなみに、杖はダバルプスの呪いによって失われたのではなく、「リルガミンの人間は恩寵を授かるに値せず」と判断した精霊ニルダ自身によって持ち去られたのであり、これを再び取り戻すには相応の資格を示さなければならない。
具体的には、迷宮の各階層に散らばった武具をそろえ、「ダイヤモンドの騎士」単身で迷宮最奥に向かうこと。
前史
上述の通り、プレイヤーキャラである冒険者たちが冒険に挑む段階では、リルガミン王家の姉弟が魔人ダバルプスに挑む物語はすでに終了している。
これを補完するサイドストーリーとして以下の作品がある。
二都説
リルガミン(Llylgamyn)という地名が設定されたのは#2が最初。
今日では「#1から#5までの物語はすべてリルガミンが舞台」であるとの解釈がさも公式設定のように扱われがちだが、一方で「#2、#3、#5の舞台はリルガミンで、#1と#4の舞台(トレボー城塞)は別の都市」であるとする解釈、いわゆる二都説も広く支持されてきた。
上述のごとく、ダバルプスが君臨していたリルガミン王城の地下には地下迷宮が現れ、一方でワードナの迷宮はトレボー城の真下に位置し、二つの迷宮が後世まで別々に存在しているという事実が、二都説の根拠の一つになっている。
とはいえ、僭主たるダバルプスがその権勢と正当性を内外に誇示するために、(トレボーの治世で城塞化した)王家代々の城館とは別の地に、新たな(より大規模な)王城を築かせたとしても不思議はない。
更に想像を働かせれば、そこには元々誰にも知られていない地下迷宮が存在しており、ダバルプスはその秘密を独占するために、入り口を隠すためのカムフラージュとして城館を築いたともとれる。
なんにせよ、「ギルガメッシュの酒場」「ボルタック商店」「カント寺院」といった市街の施設は#1から#5まで共通であり、狂王の試練場に挑んだ冒険者がそのままニルダの杖奪還に赴いているため、仮に複数の王朝(家系)とそれぞれの城が別個に存在したとしても、比較的近い地域にあるものと思われる。
ラスボスは?
FC版以前のバージョンではラスボスに相当する敵はおらず、魔法生物と化した「KOD」の武具を倒していくことで回収し、最終的にはニルダの杖と交換することが目的である。
敵としての「KOD's」シリーズの能力等は移植に際して調整されていることもあるが、おおむね以下のような特性を持つ。
- マジックアーマー…B1某所に出現。鎧だけに硬い、頑丈、HP自動回復。
- マジックシールド…B2某所。体当たりでソード以上のダメージを与えてくる。
- マジックソード…B3某所。なぜか「友好的」なことがある。斬撃に一撃死の追加効果。
- マジックヘルム…B4某所。両系統の最高位呪文に冷気ブレスを使用。
- マジックガントレット…B5某所。籠手だけに二体で出現。両系統の最高位呪文を使用。
入手した武具としての「KOD's」シリーズ(伝説の鎧・伝説の盾・聖剣ハースニール(Hrathnir)・伝説の兜・伝説の籠手)も非常に強力で、数値的にも最強の性能、各種耐性、特定種族に対する防御・攻撃特効、回復呪文や攻撃呪文の無限使用、ハースニールは一撃死の追加効果、防具類は持ち歩いているだけでHP自動回復。
「KOD's」シリーズ以外の敵はすべてランダム出現の「ザコ」しかいない(シャレにならないくらい強いザコがウヨウヨしている訳だが)。
主だったところでは前作より引継ぎ登場のグレーターデーモン、フラック、マイルフィック、バンパイアロードに加え、
ジャイアントゾンビ(Giant Zombie)、エアージャイアント(Air Giant)、
サイデル(Sidelle)、
および
アークデーモン(Arch Demon)など。
ちなみにサッキュバス(Succubus)も#2が初登場。
FC版ではコボルドキングが固定出現の中ボスになっており、キーアイテムの交換イベントも追加されている。さらに#5から追加される新呪文の一部や、#4で登場する(召喚できる)モンスターが追加されている。
迷宮の特定地点で固定出現するデーモンロード(Demon Lord)もそのうちの一体で、ダバルプスとの直接の関係は不明だが、力量的にはラスボスと呼んでも差し支えない隠しボスである。
他にも#1からレーバーロード、LOLからミフネ、#4の召喚モンスターからライカーガス(Lycurgus)、ブラックドラゴン、ゴールドドラゴン、アイアンゴーレムと、これまた豪勢な顔ぶれが追加されている。
なおPCE版にはN*U*M*E*Rというオリジナルの魔物が固定出現するが、デーモンロードもビックリのすさまじい能力が設定されている。
ちなみに騒動の元凶であるダバルプスは姿を見せず、迷宮の一角で見つけることが出来る「役立たず ここに眠る」と刻まれた墓標がダバルプスが最期を迎えた場所と思われていたのだが…
GBC版エクストラダンジョン
GBC版では 20×20 で統一されていたフロアが 15×15 に縮小されている反面、追加シナリオ『呪いの元凶』の舞台となる完全新規のエクストラダンジョンが設けられている。
FC版でデーモンロードが待ち受けていたエリアは消失しており、代わってB7からB10までの新規フロアが出現。
#1やLOL、さらに#5に出現したモンスターに加え、B7ではアンデッドと化したダバルプス、B8ではリッチ、B9ではサッキュバスを引き連れた女悪魔フェーリス、そしてB10では晴れてラスボス待遇となったデーモンロードが固定出現する。
モンスターリスト
『モンスター(wizardry)』の記事も参照。
本作には、名称と外見は同じだが生息域や戦利品が異なるモンスターが複数存在し、ものによっては能力そのものも異なる完全な別物になっているが、このリストでは除外としている。
ディンク / メジャーダイミョウ / レベル7プリースト / チャンプサムライ / レベル7メイジ
レベル6シーフ / ワーライオン(ワータイガー) / オーガロード / コボルドキング(トロル) / ウェブスピナー(ライフスティーラー)
ファズボール / ワーアメーバ / ノーシーアム / キャリアー / ライノービートル
ナイトストーカー / ヒポポタマス(ワイバーン) / レベル8プリースト / レベル10ファイター / レベル8メイジ
レベル7シーフ / レベル8ニンジャ / アースジャイアント / レッサーデーモン / ヘルハウンド(キメラ)
ドゥームトード(イビルアイ) / ラビドラット(スコーピオン) / ワーパンサー(ワーボア) / ブレードベア(マンティコア) / オークロード(ファイアジャイアント)
ゴーゴン / レベル11ビショップ / レベル12ファイター / レベル10メイジ / シーフ
マスターニンジャ / マーフィーズゴースト / ウィルオーウィスプ / ブリーブ / スクライル
ヘルマスター(サッキュバス) / ジャイアントワスプ / ジャイアントバイパー / エアジャイアント / ファイアドラゴン
ハイプリースト / ハイウィザード / マスターシーフ / ハタモト / ヴァンパイア
グレーターデーモン / ジャイアントゾンビ / ドラゴンゾンビ / スモッグビースト / ホーネットスワーム
ジャイアントクラブ / ブロッブ / アークデーモン / ハイマスター / フラック
アークメイジ / マイルフィック / ヴァンパイアロード / サイデル / ジャイアントバット
ワーバット / ヴァンパイアバット / コンストリクター / コロゥシブスライム(アシッドスライム) / フォーミングモールド
マジックソード / マジックヘルム / マジックシールド / マジックガントレット / マジックアーマー
FC版Ⅲ
バブリースライム / オーク / コボルド / アンデッドコボルド / ディンク
ヒポポタマス / マジシャン / はかいそう / クリーピングコイン / ハイウェイマン
マンアットアームズ / ゾンビ / マミー / ウィッチ / ニンジャ
ラビットラット / ワーパンサー / ファズボール / ボーパルバニー / プリーステス
ドラゴンフライ / ドゥームトード / スモッグビースト / バンシー / ボーリングビートル
ソードマン / ブレードベア / ワーライオン / セラフ / マスターニンジャ
キャリアー / ライノゥビートル / ワーアメーバ / ノーシーアムスワーム / ソーサリス
メデューサリザード / ヘルハウンド / スコーピオン / イビルアイ / マンティコア
ウェブスピナー / コンストリクター / レッサーデーモン / スクライル / ヘルマスター
オークロード / ジャイアントバット / ワーバット / バンパイアバット / コロゥシブスライム
フォーミングモールド / マーフィーズゴースト / サッキュバス / ワスプスワーム / ジャイアントバイパー
ハイマスター / ハイプリースト / アークメージ / ポイゾンジャイアント / バンパイア
ウィルオーウィスプ / グレーターデーモン / エアージャイアント / ジャイアントゾンビ / ホーネットスワーム
ジャイアントクラブ / ブロッブ / アイアンゴーレム / ブラックドラゴン / ゴールドドラゴン
フラック / サイデル / レーバーロード / ミフネ / アークデーモン
マイルフィック / バンパイアロード / ライカーガス / デーモンロード / コボルドキング
マジックソード / マジックヘルメット / マジックシールド / マジックガーントレット / マジックアーマー
GBC版Ⅲ(FC版Ⅲに追加)
ダバルプス / スケルトン / アンデッドウォーリアー / ガーゴイル / デーモンインプ
グール / アイスファントム / ガスト / スライニンフ / メイン
デーモンドッグ / ライオンオブヘル / ワイト / スモークデーモン / カルキドリ
アンホーリーテラー / レイス / ハリコン / デルフズミニオン / ナイトメア
スペクター / ダムド / イフリート / ピットフィーンド / インキュバス
ソウルトラッパー / フェイトスピナー / グレーターデビル / デルフ / カッパーデーモン
カコデーモン / ネザーデーモン / アークデビル / ダークロード / リッチ
フェーリス
余談
後年、『アスタリスク』に鎧・盾・剣・兜・籠手が一体となったマジックアーマーというモンスターが出現するが、見た目は本家#2の「KOD's」シリーズそっくりなものの一撃死以外にこれといった能力はない。
みさくらなんこつ氏が主宰する同人サークル名も今作の聖剣と同じ「ハースニール」だが綴りが異なる(HARTHNIR)。
なお、Hrathnirは英語的には「ラスニール(あるいはラスニアー)」、北欧風だと「フラスニール」ぐらいの発音になり(一部の小説や書籍ではそう記載されている物もある)、「ハースニール」というのはあくまでWizardry的な読み方と言える。