「じゃあ…見ててください………俺の…変身」
『聖なる泉枯れ果てし時 凄まじき戦士雷の如く出で 太陽は闇に葬られん』
曖昧さ回避
- 『仮面ライダークウガ』に登場する仮面ライダークウガの形態の一つ。本項で解説。
- 『仮面ライダー剣』に登場するキャラクター。⇒鯛焼き名人アルティメットフォーム
- 『キングダム ハーツⅢ』に登場するフォームチェンジの一つ。
概要
五代雄介がン・ダグバ・ゼバを倒すために変身したクウガの最終形態。劇中では「凄まじき戦士」と呼ばれる。
ダグバとは対極の存在であり、能力などは全くの互角。故にダグバに唯一対抗出来る形態でもある。ダグバからも「僕と同じ姿」「究極の力を持つ者」と称される。
アマダムから張り巡らされた神経組織に全身を侵食された姿であり、このフォームになるとグロンギと同様に戦うためだけの生物兵器になってしまうとされている。
そのため、これになりかねない兆候を感知した時、ベルトにはその場面を黒き戦士でフラッシュバックさせ警告するプログラムが、そしてゴウラムには、クウガがこの形態になったとき、砂に還るようにセーフティプログラムが組み込まれていた小説版に登場するプロトアークルには警告機能がついていないうえ、好戦的になる副次作用も相まってこの形態に一直線の危険性が存在する。
EPISODE 35にて、未確認生命体第42号に対する怒りで我を忘れた五代にアマダムが警告として見せたビジョンの中で初めて現れ、彼に「憎しみに任せて力を振るうこと」への危機感を抱かせた。実際に五代は劇中で「これ以上強くならなくていい」とまで言っていた。
しかしアメイジングマイティフォームがダグバに対して圧倒的敗北を期した事から、ダグバに対抗できるにはこれしかないと悟った五代はこの姿への変身を決意した。
元々雄介自身が終盤までこの姿になるのを拒んでいたため、仮面ライダーシリーズの最終フォームとしては珍しく、本編ではEPISODE 48(つまり最終回前)の1話きりしか登場していない。しかもその出番も約2分しかない。これは今後のライダー作品の最強フォーム登場話数順の中でも最も遅く、2022年現在でも映画限定や最終回のみの特別フォームを除けば、仮面ライダーオーマジオウが並ぶのみである。それでも、ビジョンとして現れた次の回からOP映像には登場しており、「クウガの行きつく先」として独特な存在感を見せている。
元々『仮面ライダー』とは「正義の心を持った怪人」であり、作中一度も「仮面ライダー」の名称が登場しない「クウガ」でも、敵と同じ力を持つ者が主人公であることに変わりはない、ということを端的に表す姿である。
また、珍しいことに後に色々と強化形態が登場しており、ある意味で平成二期の「冬劇場版での最強形態更新」の先駆けともなっている。その一方で、それら派生形態が登場しても(特に後述のレッドアイは)特別性を損なわない扱いをされていることが多く、その点においてもある種の唯一無二の存在感を持つ最終形態と言える。
外見
黒いボディに金色のラインによる縁取りが施されており、白を基調としているダグバとは真逆である。ベルトはライジングフォームと同じくバックルが金色になっているものの細部が若干異なるライジングアークル(アルティメットアークル)になっている他、中央の「モーフィンクリスタル」も輝きを失い黒くなっている。
これまでのフォームではほとんど共通となっていた角の形状が鋭角に変化し、数は(中央を除いて)4本に増えている。顎のクラッシャー(アーマードマウス)もこれまでの姿と異なり、鋭い牙状に変化し、敵を咬み千切れるようになる。手足からは武器となる大きな棘が生えているなど、カラーリングや背面のマント以外は全体的にダグバに酷似した姿となっている。
変身プロセスは、エネルギーを流動させる血管状の組織が出現し、徐々に姿が変わっていくというもの。後の仮面ライダーファイズの変身プロセスに酷似している。
形態
ダークアイズ
『心清き戦士 力を極めて戦い邪悪を葬りし時 汝の身も邪悪に染まりて永劫の闇に消えん』
黒い複眼の形態。理性を失った生物兵器に成り果てた、アルティメットフォーム本来の姿。
ダグバが、ズ集団やベ集団の粛清を始め現場に残されていた戦士クウガと酷似した四本の角を持った文字から、冒頭の碑文の戦士の文字を再調査した結果、四本角の文字であったことが発覚した (これについては、二つの角が隠されており最初は3本だと思ったため2本で処理していたのが理由であった) 。
碑文によれば、本来なら五代もこの姿になるはずであった。しかし、実際にこの姿に変身したのは、いずれも五代雄介とは異なる者であった(更に前者はブラックアイでありながら理性を保ち続けていた)。
レッドアイズ
『清らかなる戦士 心の力を極めて戦い邪悪を葬りし時 汝自らの邪悪を除きて究極の闇を消し去らん』
赤い複眼の形態。碑文とは異なる優しい心と理性を保ったまま、アルティメットフォームへの変身に成功した状態である。五代はこの姿に変身してダグバと戦い、文字通り自らの邪悪すらも討ち払った。
また、この形態に変身できた証として、ゴウラムが砂にならなかったことが最終回にて判明している。
スペック・戦闘スタイル
身長 | 202.0cm |
---|---|
体重 | 150.0kg |
パンチ力(衝撃力) | 80.0t |
キック力(衝撃力) | 100.0t |
ジャンプ力 | 90.0m(ひと跳び) |
スペックはクウガの各フォームはもちろん凌駕しており、更には平成一期どころか、平成二期のライダーの最強フォームと比べても高水準にある。それだけでなく、劇中では語られていない様々な超能力を持つ。身体能力も桁違いであり、並のグロンギなら一撃で倒すことができる。
能力
モーフィングパワー
物質を原子・分子のレベルで分解し、他の物体に再構築するという某錬金術のような能力。通常もクウガへの変身や武器の生成に使われている能力だが、アルティメットフォームはこの力が極限まで高められており、あらゆるフォームの武器を作り出し、使用可能。武器の色は全て黒色となる。
また、小説版ではそれ以上の凄まじいモーフィングパワーを発揮できることが示唆されており、未だに底知れぬ可能性を秘めている。
棘の伸縮、高エネルギーの放射
腕から生えた棘「エルボースパイク」と太ももの棘を伸ばし、斬撃を与える。またマイティフォームでは右足内部にのみ存在していたという血管状組織が発達して全身を彩っているため、各フォームの必殺技に用いられる「高エネルギー」が全身から放出できるようになっており、キックやパンチといった通常攻撃だけで、アメイジングマイティキックを上回る効果を発揮することができる。ダグバを見ればわかるように、桁違いに身体能力が上がり過ぎて、他のクウガの形態の様に紋章による封印エネルギーで倒す必要性は無くなっている。
最終決戦ではダグバと殴り合っていたが、実はあのパンチ一発ごとに必殺技を叩き込んでいるのも同然である。非常に単純に考えれば、パンチ一発だけでアメイジングマイティキックを何発も打ち込まれるよりもっとひどい目に遭っているわけだが、アルティメットと同等の再生能力のダグバ相手には超常能力では決着が付かず、物凄い物理での純粋な殴り合いで決着をつけるしかなくなっている。
その他、ダグバが超自然発火能力といった驚異的な能力を発揮すると、周囲環境に影響を及ぼし常に強風や雷雨が巻き起こり必ず天候が悪化する他、瞬間移動やテレパシーを使っているような描写も見られるため、『ダグバに等しい力を持つ』とされており、またアマダムの持つ「使用者の意思を具現化する力」を最大限に発揮できるアルティメットフォームにもそういった力が使えるという推察もある。また、脚本の荒川氏曰く、EPISODE 48は元々「超自然発火合戦で互いに燃やし合いながらも再生力が拮抗するため決着がつかず殴り合う」という流れであることから、尋常ではない再生力も発揮するものと思われる。
必殺技
超自然発火能力
手をかざし、周囲の物質の原子と分子を操り、対象をプラズマ化させ、発火・炎上させる技(手先からプラズマイオンを放出して、対象を炎上させるという記述も存在する)。
対象を構成する分子をプラズマに置換して発火させるため、基本的に分子で出来ている物であればこの世に燃やせないものは存在しないので、理論上金属だろうが水だろうが溶解による液体化、蒸発による気化をさせずに焼却可能だと考えられる。
普通のグロンギに対しては絶大なダメージを与える事が出来るが、同様の力を持つン・ダグバ・ゼバには通じなかった。
ゲーム作品では「パイロキネシス」の名称で登場する事が多い。ただしガンバライド、ガンバライジングでは「凄まじき拳」という名称である。また、ガンバライジングにて「メモリアルフィニッシュ」としてより本編に近い形で再登場した時には発火部分だけの表版には「超自然発火能力」、殴る所まで入れたバースト版には「悲壮の拳」という名称が付けられている。何気にゲームで超自然発火能力の名称が出るのは珍しい。また、このカードが登場した少しあとに1週間限定のボスキャラとしてダグバが登場していたため、原作再現がある程度可能。
アルティメットキック
桁違いの肉体能力と、全身の血管状組織から送り込まれた高エネルギーによって強化されたキック。
アルティメットフォームは通常攻撃の際に、各フォームの必殺技に用いられる高エネルギーを常に放出するため、書籍によっては、ダグバとの戦いで繰り出した「通常のキックの呼称」になっている。
当時のテレビ朝日公式サイトと、Webの仮面ライダー図鑑においては、各フォームの必殺技の数値の後に表記される(衝撃力)の単語が、アルティメットフォームではパンチ力・キック力の方に表記されている。
後に、『仮面ライダーディケイド』の『てれびくん』特典DVDにて、(五代本人ではないが)ライダーキックの王道ともいえる急降下キックがお披露目された。
アルティメットパンチ
拳を打ち込む瞬間に高エネルギーを放つため、これもキック同様、書籍によってはダグバ戦で放った「通常パンチの呼称」になっている。
ディケイド第2話で夏海が幻視したライダー大戦の中で、ブラックアイ状態のユウスケが使用したと思われる攻撃。右手に収束させた炎状のエネルギーを放ちながら叩き込むパンチ。あくまでイメージに過ぎないが、その一撃は同様に未知のエネルギーを込めたディケイドのパンチとぶつかり合い、周囲一帯を消し飛ばす程の威力を見せた。下記『バトライド・ウォー』の必殺技の前身ともとれる攻撃。
電撃
『Over Quartzer』で使用。突き出した手から電撃を放ち、巨大化したバールクスを攻撃した。
劇中での活躍
本編
EPISODE 35「愛憎」にて、雄介の抱くゴ・ジャラジ・ダへの強い憎しみに反応したアークルが警告として見せた幻影の中で初登場。
それ以降、アルティメットフォームの危険性を見せ付けられた雄介はこの姿になる事を避けていたが、EPISODE 47「決意」での戦闘で黒の金のクウガの力をもってしてもン・ダグバ・ゼバに敵わない事を思い知らされ、EPISODE 48「空我」にて、ダグバとの最終決戦の地である九郎ヶ岳遺跡へと向かう中、一条薫の前で変身した。その際、ダグバとの初戦で既に自身の命に関わるアークルが損傷している事を告げ、自分がブラックアイ化した時はアークルを完全破壊して命を奪ってでも自分を止めて欲しいと頼んでいる。
対峙した両者は互いに超自然発火能力を繰り出すもお互いに打ち消してしまう上、本来この世の物質ならば必殺の攻撃にもかかわらずお互いの再生能力が上回る事で決着どころか文字通り擦り傷にもならず、格闘戦に突入。吹雪の中、一面白色の雪原で繰り広げられた互いの鮮血が飛び散る壮絶な殴り合いの末、ダグバのベルトを破壊するも同時に自らもアークルを破壊され互いに変身が解除される。
その後も人間の姿のまま満面の笑みを浮かべるダグバと悲壮な表情で絶叫しながら殴り合いを続け、その凄惨な戦いの果てに相討ち寸前の状態でダグバを倒した。
客演
仮面ライダーディケイド
光夏海の夢の中で登場。他のライダーたちが全員ディケイドに倒される中、ただ1人起き上がったクウガがアルティメットフォームに変身しディケイドと戦い、拳をぶつけ合った瞬間閃光と共に世界が滅亡する。
その光景の凄惨さは、「テレまんがヒーローズ」に掲載された藤沢真行氏の漫画版『オールライダー対大ショッカー』で夏海に「やめてください! 二人が戦ったら地球が滅亡します!」とまで言わしめている。
そして最終回ではキバーラの力によって瀕死の重傷を負った小野寺ユウスケが変身することになった。完結編である『MOVIE大戦2010』では自分が最後のライダーとなりながらも「世界の破壊者」となった士=ディケイドと激しい戦いを繰り広げる。序盤は優勢に戦いを進めるも、ディケイドの騙し討ちに遭い形勢が逆転してしまう。それでもアルティメットゴウラムに変形しディケイドを道連れにしようとしたが失敗、ライダーカードに封印されてしまった。
『ディケイド』本編でユウスケが変身するアルティメットフォームは、いずれもブラックアイであるが、「みんなの笑顔を守るためなら究極の闇にもなる」という五代とはまた異なる形での覚悟によってブラックアイのまま制御している。
てれびくんの特典でコンプリートフォームに召喚された時および、「MOVIE大戦2010」で変身完了直後の一瞬のみ、アルティメットフォームはレッドアイとなっていた。
PS1版
隠しキャラクターとして登場。ただし制作時期の関係で、マイティフォームの強化コンパチという性能である。
『バトライド・ウォー』
ディケイドコンプリートフォームがクウガを召喚した際にもレッドアイになっている。本編で描かれなかったファイナルアタックライド・クウガは拳から強力な火球を打ち出し、相手を焼き尽くすというものであり、平成ライダーでは珍しくライダーパンチが最強技になっている。
『シティウォーズ』
エボルトが擬態した姿としてブラックアイが登場。よりにもよって人格は暴走したIFの五代をベースにしているという悪趣味さで、アルティメットの力の恐ろしさを身を以て体験しているクウガは1号達と共にこれを撃破しており、エボルトの擬態能力の高さを改めてプレイヤーに見せつけた。
バトルスピリッツ
コラボブースター【仮面ライダー ~伝説の始まり~】とコラボブースター【仮面ライダー ~Extreme edition~】にて登場。
どちらもレッドアイであり、ブラックアイは2022年9月現在でも未登場。
前者はアルティメットカード、後者はスピリットカードであり、ルール上同名カードながらカードの種類が異なる珍しい事例となっている。
性能面はどちらも破格。前者は煌臨時に自分/相手問わず系統:究極を持たないスピリット/アルティメットを全て破壊しつつ、仮に生き残ったり後から登場したりしたとしても、BP20000以下であればアタック時効果で破壊できる。なお、BP20000以下とはBPインフレを起こしているバトルスピリッツ内でも、ブレイヴなしで上回るスピリットはそこまで多くないため、耐性を持たない限りはほぼ破壊できると見ても良い。
同じく収録されたン・ダグバ・ゼバとLv4までは同じBPだがLv5BPは僅かにこちらが上であり、劇中さながらの名勝負を再現できる仕様となっている。
余談だが、バトルスピリッツの世界においてスピリットとアルティメットは別の種族(宇宙の中の地球人と火星人のような違い)と設定されており、系統:究極についてもアルティメットを日本語訳したものではなく、「究極の闇を持つ者」だからあてられた系統であるため、両者の語源は無関係ということになっている。
後者は煌臨条件が厳しいものの、アタック時効果の系統:究極を持たないスピリット/アルティメットの破壊は小回りが利くようになり、【煌臨中】のアタック時効果も超自然発火能力の再現からか、(煌臨している状態以外は)無条件でライフダメージを与え、アタックステップ終了も封じる強力な効果を持つ。
あちらが破壊に特化しているとするならば、こちらはライフを直接狙う効果に特化していると言えるだろう。
こちらはスピリットカードであるため回復手段を別途用意すれば、エンドカードにもなりやすい。
なお、本記事のマスクド氏の描いたイラストは、元はこちらのカードイラストとして利用されたものである。
ライドウォッチ
究極の力!凄まじき戦士!クウガ アルティメットフォーム!
凄まじき戦士!クウガー!アルティメーットー!
プレバン限定「DXライドウォッチセット vol.1」の一つとして発売。
必殺技は「究極」。
有名になるまでの非難轟々
今でこそ人気があり、評価されているアルティメットフォームだが、実は当時、いろいろと批判されまくっていたのをご存知だろうか?
クウガの最終形態という触れ込みで登場した黒い異形の姿。
尖った肩や腕・足の装甲と、むき出しの牙と鬼の角を連想させる形相のマスク……。
その姿はまさしく悪魔と言った感じでヒーローらしからぬデザイン…はどちらかというと関係は少ない。
そんなこと言ったら仮面ライダー1号の時点でバッタと髑髏(初期案はもっと髑髏要素が強かった)である。
実はこのアルティメットフォーム、2000年の10月発売の児童誌に初めてその全体の姿が発表されたのだが、前述のように雄介が見た幻影、放送開始前のジャンクション、OP映像を除けば実際にTV本編内に登場・活躍したのはなんと翌年の1月。つまり最終回の一つ前の第48話だけだった。
挙句の果てにアルティメットフォームが登場した場面での戦闘はダグバとただ延々殴り合うというもの。
しかも途中で変身が解けてしまうため、実質的な活動はほとんどなかったに等しい。
つまり、出番の少ないライジングフォームやアメイジングマイティよりもさらに少なかった訳だ。
普通、児童誌に新しい要素が発表されるとだいたいその月の内にそれは登場するというのがセオリーだった。
そしてどのような登場をするだろうかという注目を一身に集めた話題のアルティメットフォームであったが、この月の放送におけるアルティメットフォームは「五代雄介が見る幻影」として登場しただけで、それから第48話に登場するまで、ひたすらその存在を引っ張り続けたのだ。
少し話題がずれるが、アルティメットフォームは他のクウガと同じく装着変身のフィギュアが売っていた。
メインのクウガ商品ではほぼラストの時期に発売されたものだが、本編登場よりもはるか前から発売されていたこの商品、先のライジングフォームセットをも凌駕する不人気で、更なる在庫過多状況を作り上げてしまった。
理由はいたって単純で、当初アルティメットフォーム自体が「正体不明の存在」という扱いで発表されており、「五代雄介ではない、まったく別のクウガ」とも取れるような表記がされていた。
ところが商品宣伝媒体ではしっかり素体の顔部分が公開されており、雄介が変身する姿だという事を堂々とバラしてしまっていた。
スタートがこんなんだったうえに、全体的にどこかおかしな宣伝がまかり通ってしまった感があった。
当然アルティメットフォームはこの時でまだ画面にまともに登場していない存在だった。
商品が店頭に並んでも、本来のターゲット層である子供も、そしてマニア・コレクター達も今回ばかりは躊躇したのだ。
ところでこれを見てほしい。
“最強にして最悪の正義をその身にまとえ!”
“心清き戦士、力を極めて戦い邪悪を葬る時 汝の身も邪悪に染まりて永劫の闇に消えん”
“ゴ集団最強の怪人「ゴ・ガドル・バ」をクウガと同スケールで再現! 劇中シーンが君の前に!!”
これは「装着変身 仮面ライダークウガ アルティメットフォーム」のパッケージに記述されているキャッチコピーの一部である。……気づいていただけたであろうか?
実はアルティメットフォームは当初、最強のゴ怪人ゴ・ガドル・バと戦う予定だったのだ。
「あれ?アメイジングマイティは?」と思う人もいるかもしれないが、実はアメイジングマイティは当時日本国内では正式には発売されておらず(装着変身は香港版のみ)、登場したのもアルティメットフォームより後である。
改めてガドルの能力を見直すとクウガ同様に4つの形態を使いこなし、更にその能力は基本形態の時点でライジングフォームをも上回る化物中の化物。
対してアルティメットフォームは前述した通り、手首のコントロールリングからは黒色のライジングフォームの武器3種類を作り出し使用することが可能。
ガドルの強さを示したうえで、それと互角以上に戦うのにこれ以上ない能力である。しかし実際に戦ったのは言い方は悪いが、ぽっと出のアメイジングマイティだった。
髙寺成紀Pのツイートによると、アメイジングマイティの登場自体は既定ラインだったのだが、当初はライジングマイティのリペイントでソフビを発売する予定が、「ガドルを倒すのは両足キックの方が理にかなっている」との判断から、両足にアンクレットを追加。
結果金型の変更を余儀なくされ、この辺りでバンダイとモメた……というのが真相の模様。
よって、よく言われる『アルティメットの正体を上述の装着変身の素体という形でネタバレしたバンダイにキレた公式が、急遽予定を変更してアメイジングマイティを登場させ、寝耳に水の形態にバンダイが逆ギレした』という話は間違いである。
ちなみにアルティメットフォームの登場が最終回まで引っ張られたのはシナリオの都合が大きく、そのために「過渡期」の形態が必要になった結果、既に出番を終えていたグローイングフォームのスーツを改造して生まれたのがアメイジングマイティである。
余談
ライジングフォーム系列とはベルトの一部形状が酷似し、設定・玩具のみの武器もライジングフォームとの完全な色違い。
メタ的にもあちらはアルティメットフォームをスムーズに登場させるために後から追加された形態であり、俗に言う「中間フォーム」の先駆けと言えるだろう。
ただし、具体的な関連性は公式でも明言されておらず、一般に力の前借とする説がファンの間では有力ではあるものの、公式として断定はされていない。
また、登場までに予定が紆余曲折で変化した形態でもあり、当初発売された玩具ではゴ・ガドル・バとの対決を再現できるとされていたが、実際にはあちらの退場後の登場となった。
本編の後日談である「小説 仮面ライダークウガ」によれば、超古代に存在したリントの科学者が最初に製作したクウガ・プロトタイプがこの形態になったことがあり、その凄惨な場面を観たリントたちは2度と同じことが起きないように、クウガが憎しみに任せてこの形態にフォームチェンジした際にはゴウラムが砂と化す安全装置を組み込み、更に装着者がそうなりかけた時の警告として上記のビジョンを見せるように施したことが明らかになった。
ちなみに、本放送終了後に発売されたケイブンシャの『仮面ライダークウガ大百科3』初版の紹介によれば「身長・202メートル」という事になっている(「仮面ライダーJ ジャンボフォーメーション」の5倍強)。言うまでもなく「cm」から「c」が抜けた脱字であるが、時折ネタにされる事がある。
また、宿敵ダグバとの配色の対比や「同等の存在である」という設定から、『仮面ライダーBLACK』のブラックサンとシャドームーンの関係との類似性を指摘される事もある。
アーケードゲーム『ガンバライド』では、サポートカードとしては第2弾から登場していたが、プレイヤーキャラクターになったのは最終弾「シャバドゥビ6弾」のみ。原典での登場の少なさを、稼働期間の短さという妙な形で再現されることになった。
平成最初繋がりの特撮ヒーローの最終形態であるグリッターティガは人々の希望の光が集まって生まれた形態で、ただ一人で心の闇を清めて変身したクウガ・アルティメットフォームとは正反対である為、両者の作風の違いの象徴として何かと引き合いに出される事が多い。
関連タグ
ライジングアルティメット:仮面ライダーディケイドに登場した更なる強化形態。
キングフォーム、プトティラコンボ、極アームズ:変身する、または重ねていくと暴走や人外化の危険性・可能性がある主役ライダーの最強形態。
チャージアップ →
アルティメットフォーム → シャイニングフォーム