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潜特型潜水艦

せんとくがたせんすいかん

潜特型潜水艦は、大日本帝国海軍に所属した一等潜水艦の艦種の1つである。
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概要編集

潜特型潜水艦とは、大日本帝国海軍によって生み出された潜水空母の異名を持つ潜水艦である。

大日本帝国海軍の代表的な潜水艦の一つである。

水上攻撃機「晴嵐」を3機を搭載可能な全長122mの大型艦で、航続力に優れ、理論上「地球を1周半できる」という。これはすなわち地球上の全海域に進出し、帰還することが可能といえる(あくまで理論上の話ではあるが)。


歴史編集

切り札は潜水空母(経緯)編集

1942年1月、潜特型潜水艦の元となる新型潜水艦計画が持ち上がり、同年5月に水上攻撃機2機を搭載する潜水艦として計画される。

日本の潜水艦は、搭載した水上偵察機で敵艦を監視する技術があり、その航空機搭載能力を生かして発展したのが潜特型潜水艦と言える。

1942年、改マル5計画が計画されると潜特型潜水艦を18隻建造することが決定し、その内、2隻が旗艦能力を、別の2隻に予備旗艦能力を有する計画としていた。

1943年10月15日、軍令部商議により18隻から5隻に減らされるが、結局3隻の就役に留まっている。しかし、その削減の補填として、潜特型の「晴嵐」の搭載機数の3機に増やしたり、巡潜甲型改一潜水艦を潜特型仕様に改設計した巡潜甲型改二潜水艦を就役させている。

こうして、1944年12月30日に1番艦の伊号第四百潜水艦が、1945年1月8日に2番艦の伊号第四百一潜水艦が、1945年7月24日に3番艦の伊号第四百二潜水艦と竣工した。


実戦へ編集

大東亜戦争太平洋戦争)の開戦直後から、米国本土攻撃作戦は計画されていた。

小型偵察機による空襲や風船爆弾などの作戦は実行され、潜水空母が関わる最初の作戦案は『パナマ運河攻撃』であった。

建造と作戦の計画発案者は不明だが、有力説では山本五十六ではないかと言われる。


伊号第四百潜水艦伊号第四百一潜水艦は度重なる空襲にもめげずに完成し、45年の3月には訓練も終了していたが、肝心の攻撃機『晴嵐』は製造工場の破壊により、生産が遅れていたのだ。その上日本は劣勢で本土周辺の制海権、制空権も失っていた。


当初のパナマ運河攻撃は戦局の悪化でもはや不可能に、それならばせめてアメリカ西海岸の都市攻撃を……との希望もかなわず、6月、ウルシー環礁のアメリカ海軍基地への攻撃が決定される。

これに先駆けて、伊号第十三潜水艦伊号第十四潜水艦がトラック諸島に偵察機「彩雲」を輸送することになった(光作戦)。

だがこの作戦の最中、伊号第五十八潜水艦による重巡洋艦インディアナポリス撃沈で厳重になっていたアメリカ軍の警戒線に、先発の伊号第十三潜水艦が接触。必死の回避もむなしく、伊号第十三潜水艦はあえなく撃沈されてしまった。

一方、伊号第十四潜水艦の方はなんとか輸送に成功し、かくしてトラック諸島に「彩雲」が到着したのであった。

これにより、作戦は「8月17日に参加各艦が集合の上で決行」と決まった。

参加艦は残った伊号第十四潜水艦伊号第四百潜水艦伊号第四百一潜水艦である。


……と、決行を目前にした8月15日に玉音放送によって日本のポツダム宣言受諾が伝えられた。

即ち、終戦である。

こうしてウルシー攻撃を断念した伊号第四百潜水艦伊号第四百一潜水艦の両艦は、艦載機(晴嵐)、魚雷、砲弾などの装備を海中に投棄し、それぞれアメリカ軍に拿捕されることとなったのである。


銀色の晴嵐編集

搭乗員の証言によると、この作戦で使われる晴嵐はアメリカ軍機の塗装だったという。

塗装だけではない。国籍マークもアメリカのものに塗り替えられ、すっかりアメリカ機に成りすます予定だったという。

これは完全なる国際法(ハーグ陸戦条約など)違反である。

ただし、自らの愛機を敵機にやつさなければならなかった晴嵐搭乗員らの中にはこれについて「卑怯で情けない」と評する者もいた。

しかしこれが事実かどうかを確かめるすべは無い。

ただ一つ判っているのは、『命令の事実は無い』という事だけである。


その後の伊400編集

接収された伊号第四百潜水艦伊号第四百一潜水艦はその後ハワイで標的艦として沈没。伊号第四百二潜水艦は調査の上、同じく接収された他の潜水艦(大小23隻)と共に五島列島の沖合で海没処分とされた(この23隻の中には、インディアナポリスを撃沈した伊号第五十八潜水艦も含まれていた)。

ソ連に潜水空母の秘密が漏れぬよう、詳しい位置は機密とされた。

その後2005年6月に伊号第四百一潜水艦が、2013年8月に伊号第四百潜水艦が海底から発見された。

そして2015年8月7日、遂に伊号第四百二潜水艦(と思われる艦艇)が日本テレビの調査チームにより、長崎で発見される。


米海洋大気局の専門家によれば、この潜特型潜水艦はそれまで対艦兵器としかみなされていなかった潜水艦の用途を一変させ、第二次大戦後の潜水艦の設計・運用姿勢に大きな影響を与えた結果、核の時代の弾道ミサイル発射能力を持った米軍潜水艦に行き着いたという。


実際、戦後に米軍がバラオ級潜水艦カスクの艦上にパルスジェットミサイル(V1飛行爆弾やレギュラス)の発射実験の為に設置され、ミサイル発射時は必ず浮上しなければならない等、非常に潜特型に酷似した形をしていた

V1飛行爆弾

レギュラス


問題点編集

『潜水空母の潜特型の戦闘力が如何ほどのものだったのか』は、不運にも実戦の機を逃し続けたために不明である。

只航空機搭載潜水艦という発想は斬新であり、それを実用化できた技術は現在でも高く評価されている(他の国でもテストはされたが、成功はしなかった)。


しかし弱点として、

搭載機格納の為の大型化が隠密性を削ぐことになった。

潜水艦いちばんの特徴が「隠密性」である)

Uボートが活躍した第一次世界大戦期と違い、対潜哨戒機や哨戒艦・レーダーソナーなどが大幅に進歩し、並みの潜水艦ですら見つかり易くなってしまっていた。

これらの発展に対する対策(隠密性の向上)は手付かずのままだった。

また、この格納庫は全体で1つの巨大な水密区画であり、万一格納庫への浸水を許すと格納庫内だけでおよそ200トンもの海水が一度に流入してしまう恐れがあった。これに対し、格納庫浸水時には重油200トンを艦外に放出して艦の重量増加を防ぐという対策が取られていた。

  • 搭載機発進

潜水艦を海面に浮上させて格納庫から搭載機を甲板に出し、装備を取り付けてから発進。

  • 搭載機収納

潜水艦のそばに着水させて艦内の小型クレーンで回収、装備を取り外してから格納。


どちらも手間や時間がかかる上、この間に敵に発見される恐れは十分あり、実際に運用できたかはよく分からない。


ただし『搭乗員のみ回収・航空機は放棄』とした場合なら素早く潜水できる。

当然ながら「母艦」としての機能はその一回のみに限られ、二度と攻撃機の発進は行えない。

また、晴嵐もフロートの投棄が可能だったようで、投棄した際も艦内収容は不可能となる(着水が不可能なため)。

どうしてもこの潜水空母はゲリラ的な活動に限られてしまい、数を揃えられなければ戦局を覆す活躍は出来なかっただろう。

潜水艦では搭載量が限られてしまい、運用にも様々な制限が課せられてしまう為だ。


攻撃機も数を揃えられず(潜特型でも分解した予備機含めて3機)、その攻撃機さえ小型で搭載量・航続距離も限られる。

これでは有効な打撃はあまり期待できない。

もし万が一パナマ運河やアメリカの都市に有効な打撃を与えられたとしても修理されるとあまり意味がない。継続的に行えば心理的にも経済的にも大打撃を与えられただろう。


映像の潜特型編集

1983年、日本テレビの木曜スペシャルにて「さらば海底空母イ401 幻のパナマ運河大爆撃」として、ミニチュア特撮による艦載機晴嵐の組立・発艦、パナマ運河爆撃計画の再現を交え、水野晴朗の司会と、宝田明演じる有泉竜之介大佐によるドラマ、当時建造に係わった技師等へのインタビューで紹介された。これは1979年の「さらば空中戦艦・富嶽 幻のアメリカ本土空襲」に続く企画であった。製作は大映だったが、本作の特撮は東宝の川北紘一が担当している。両作とも予算の厳しさがうかがわれ、空気感や照明などに言い表しがたいものがあった。


他に、昭和39年の東宝映画「海底軍艦」に、史実では計画中止になったイ403が登場している。


歴史秘話ヒストリア編集

2015年5月6日、HNKの番組「歴史秘話ヒストリア」にて、潜特型特集が放送された。

沈没した伊号第四百潜水艦の映像を始め、性能や運用法とその生涯を、元乗組員へのインタビュー、大量の設計図(テレビ初公開とのこと)や晴嵐の発射マニュアル、アメリカの調査報告書といった資料を交えて紹介した。


関連項目にもある、中国地方を地盤とするスーパーマーケットのゆめタウン(株式会社イズミ)の創業者、山西義政も元乗組員として出演し、イズミ創業のきっかけが伊400乗組員時代の戦友との干し柿についての会話であったことが語られている。なおこの番組放送後、ゆめタウンのサーバーがアクセス集中でダウンした。



同型艦編集

1番艦伊号第四百潜水艦

2番艦伊号第四百一潜水艦

3番艦伊号第四百二潜水艦

仮称艦名第5234号艦 ― 未起工

4番艦伊号第四百四潜水艦 ― 未成

5番艦伊号第四百五潜水艦 ― 未成

仮称艦名第5237号艦~仮称艦名第5248号艦 12隻 ― 未起工


潜特型をモチーフにしたキャラクター・艦船編集

イ401蒼き鋼のアルペジオ ― 伊号第四百一潜水艦を模した潜水艦。ヒロインのイオナイ401が創り出した「メンタルモデル」という存在である。

イ400蒼き鋼のアルペジオ ― 伊号第四百潜水艦を模した潜水艦。イオナと同じく「メンタルモデル」が存在する。

イ402蒼き鋼のアルペジオ ― 伊号第四百二潜水艦を模した潜水艦。イオナと同じく「メンタルモデル」が存在する。


伊400艦隊これくしょん ― 伊号第四百潜水艦をモデルとした艦娘。

伊401艦隊これくしょん ― 伊号第四百一潜水艦をモデルとした艦娘。


伊400モンスターストライク ― モンスターとして登場し、紀伊に進化する。


伊500型@紺碧の艦隊 ― 潜特型の発展型の潜水艦として登場し、推進機関がワルター推進で、サイズも150mと巨大になっている。

関連タグ編集

潜水艦 潜水空母

大日本帝国海軍


山西義政 ― 株式会社イズミゆめタウン)創業者。機関兵長として伊号第四百潜水艦に乗り組む。戦後、広島で始めた商店から大企業を築き上げた。


第一次世界大戦終焉から第二次世界大戦末期の1等潜水艦

巡潜1型潜水艦 巡潜2型潜水艦 巡潜3型潜水艦

巡潜甲型潜水艦 巡潜甲型改一潜水艦 巡潜甲型改二潜水艦

巡潜乙型潜水艦 巡潜乙型改一潜水艦 巡潜乙型改二潜水艦

巡潜丙型潜水艦 巡潜丙型改潜水艦

機雷潜型潜水艦

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第七十一号艦

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