概要
肥後国八代城主であった松井家の旧蔵品であった、天保3年(1832年)に作成されたと伝わる妖怪絵巻。
巻頭・巻末に尾田淑と記載されていることから、松井家の御用絵師・甲斐良郷に学んだ矢野派の流れを汲む絵師・尾田淑太郎(尾田郷澄)の作であるといわれ、先行する妖怪絵巻『百怪図巻』の倍に及ぶ58体もの妖怪画が描かれている。
なお室町時代に描かれた同名の『百鬼夜行絵巻』は、器物や禽獣が化けた妖怪の行列を描いたものであり、それに対してこの絵巻は妖怪画一つ一つに名前を記載した一種の妖怪図鑑的なものであるが、解説文などは無い。
上記の『百怪図巻』の他、鳥山石燕による『画図百鬼夜行』などからも引用されたと思わしき妖怪画もあるが、この絵巻でしか見られない妖怪も数多く描かれている。
また21世紀になり、この絵巻独自のものと思われていた妖怪の一部が、『ばけ物つくし帖』や『百物語化絵絵巻』という書物や絵巻にも記載されていることが発見されている。
掲載妖怪一覧
冒頭には行燈を囲んだ百物語を行っている人々が描かれている。
内2体は名称無し。()内には参考として他の絵巻にある同じ姿の妖怪名を記載する。
- 黒坊(塗仏)
- 幽霊
- 逆髪
- にがわらい(苦笑)
- 猫また(猫又)
- あすこここ
- 川太郎(河童)
- 赤入道
- 毛一杯(おとろし/おどろおどろ/ししこり)
- 馬鹿
- いそがし
- 雪女
- わゐら(わいら)
- 土蜘蛛
- 一目坊(一つ目坊)
- 元興寺
- どうもこうも
- ※名称無し(ちからここ)
- じゅうじゅう坊(身の毛立)
- 五体面(下国の人)
- 姑獲鳥
- 幽谷響(山彦)
- 後眼
- ぶかっこう
- 撫坐頭(撫座頭)
- ぬらりひょん
- 山姥
- 大ふき(火ふき/ひょんな)
- 黄粉坊(かすくらい)
- 青女坊(青女房/下口)
- ぬっぺらぽう(ぬっぺふほふ)
- 覘坊
- 白うかり
- 山親父(山爺/夢の精霊)
- 胴面(あかはだか)
- いが坊(うわ口)
- 濡女(濡れ女)
- 二本足(二本の足/らちもない)
- 赤がしら(赤頭)
- 白子ぞう
- 赤舌(赤口)
- うわんうわん(苧うに/わうわう)
- 犬がみ(犬神)
- ひょうすべり(ひょうすべ)
- 野狐
- 金槌坊(大地打)
- べか太郎(ペロリ太郎)
- ※名称無し(はぢっかき)
- 山童
- ぶらり火(ふらり火/里羅利火/そはおしき)
- 横目五郎
- 山あらし(山荒/のぶすま)
- 天狗裸子(髪切り(妖怪))
- 海坐頭(海座頭)
- 牛鬼
- 窮奇(鎌鼬)
- 手目坊主(手の目)
- 狸の腹鼓(化け狸/狸囃子)