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曖昧さ回避・検索の注意編集

ビートル(beetle)とは、英語甲虫類の昆虫を指す名詞。

一部では「カブトムシ」と訳されることもあるが、誤訳である(カブトムシの英語は「rhinoceros beetle」)。

しかし単にビートルというと、多くは自動車の「タイプ1」を指す。本項ではこれについて記述する。


また、部分一致で検索するとビートルズも引っかかる。そのため自動車のイラストを探したいときは詳細検索で「タグ(完全一致)」を選択するか、「フォルクスワーゲン」をキーワードに追加するとよい。


概要編集

フェルディナント・ポルシェが設計し、ドイツフォルクスワーゲンが製造販売していた乗用車。正式名称は「タイプ1」。

「ビートル」の名は、その形状がカブトムシを思わせるために自然発生的についた愛称であり、公式の名称ではない。


フォルクスワーゲンの象徴たる車種であり、旧式化が著しくなったとはいえ可愛らしい外観から人気が高い。そのため正式名称に「ビートル」の名を冠した後継車種も生産された。


歴史編集

アドルフ・ヒトラーが「低所得者でもアウトバーンで乗り回せる車」として立ち上げた「国民車計画」の一環としてフェルディナント・ポルシェ博士に開発を命令し、1938年に量産型のプロトタイプとして出来上がったのがこのタイプ1ことビートルである。開発に際してデザインラフを描き起こしたのもヒトラー自身だったりする。

しかし第二次世界大戦の開戦により量産ラインは軍用にシフト、その工場も空襲で破壊されるなどの被害を被っている。

戦後には工場の管理責任者として配属されたイギリス陸軍のイヴァン・ハースト少佐の尽力により工場が復旧され、1945年に晴れて本来の用途である民生用の乗用車として量産がスタートした。


量産開始から、2003年にメキシコ工場でラインが閉じられるまで、実に2153万台が生産された名車中の名車。生産台数記録は車名別で言えば1997年にカローラに抜かれて久しいが、これは多くのボディタイプやモデルの累計であり、フルモデルチェンジ抜きの単一モデル・単一ボディの自動車としてはビートルが堂々の世界最多。あのT型フォードすら上回る金字塔である。おそらく四輪自動車で、今後もこれを破る記録は現れないであろう。

比較対象を原動機付の乗り物全体に広げてもその数字は圧倒的なものであり、ビートルを超える記録を持った乗り物はホンダオートバイスーパーカブしかない。


基本的な設計が第二次世界大戦前の1930年代になされたにもかかわらず、イギリスミニフランスシトロエン2CVイタリアフィアット500(2代目)と並ぶ戦後大衆車の代表格として、モータリゼーションに多大な貢献を果たした。


また、第二次世界大戦中のキューベルワーゲンに始まり、1950年代から60年代にかけてワンボックス車のタイプ2、セダン/ワゴンボディのタイプ3、クーペボディを載せたカルマンギア、オフロード車のタイプ181などの多くの派生モデルを生み出した。ポルシェ最初の自社市販モデルとなったポルシェ356も、このビートルの設計を基本としている。


ドイツ敗戦の際には占領国に技術を持ちさられる可能性もあったのだが、その早すぎた設計思想にどの国も「こんな変態設計いらないよ」と興味を示さず、そのままドイツに残されることとなった。その後世界中で売れに売れたタイプ1はドイツ戦後復興に大きな役割を果たすこととなる。


他社に与えた影響としては、VWの兄弟企業であるポルシェの空冷各車種を別にすると、ルノー4CVスバル360にタイプ1の面影が色濃い。


モデルライフを通じて、サスペンションの刷新や1.0Lから1.6Lへの大幅な排気量拡大などの改設計はあれど、基本的な設計と外観は初期型から最終製造車まで同じである。これは、タイプ1後継としてVWがポルシェに設計を委託したEA266の開発が1960年代に頓挫したためで、1970年ごろになると前時代的なスペースユーティリティや高速走行時の挙動の不安定さ、ボンネット内の燃料タンクの危険性、空冷エンジンの騒音などが問題視されるようになる。1970年にポルシェの協力を得てフロントサスペンションをストラットに置き換える改設計を行い、操縦安定性は大幅に改善したが、その他の基本的な設計に起因する問題はそのままであった。

公称出力は最終グループの1.6L車においても44PSと現代の軽自動車にも劣る数字だが、これは日常生活で多用される低回転域において最大限のトルクを発揮するようにエンジンを設計した結果(高回転域でのトルクを重視していないため、トルクと回転数の積である出力は計算上小さくなる)であり、流れの速い高速道路の登坂でもない限り交通手段として別段の支障はない。ちなみに、日本車イタリア車に多いリッターあたり100PS以上の高出力小型車は、高回転域でのトルクを重視した設計にして出力を稼いでいるので、代償として低回転域でのクラッチ操作がやや難しくなる。


1974年に至り、タイプ1の後継を担う新しい大衆車として「ゴルフ」がようやく成功し、ドイツ本国での生産は1978年で終了することになった。


しかし、それ以降もメキシコで2003年まで製造が継続され、メキシコではタクシーや庶民の足として愛用され、日本などにも輸出された。メキシコ製のタイプ1を俗に「メキシコビートル」略して「メキビー」と呼ぶ。


各国での愛称編集

ドイツKäfer(ケーファー)ドイツ語甲虫の意)

フランスCoccinelle(コシネル)テントウムシ

イタリアMaggiolino(マジョリーノ)コガネムシ

ブラジルFusca(フスカ)ゴキブリ

メキシコVocho(ボチョ)スペイン語で虫を表す「Bicho」と「Volkswagen」を合わせた造語)

タイタオ


後継車種編集

いくつか後継も生まれたが、タイプ1とは基礎設計から全く違い、厳密には名前だけ借りただけの代物でしかない。しかし、ザ・ビートルの生産終了時に多くのメディアで「初代から通算して約80年の歴史に幕を下ろした」と紹介されたため、後継車種という認識で広まっていた様子がうかがえる。


ニュービートル編集

New Beetle

1998年から2010年まで生産された。タイプ1のデザインイメージを採り入れつつ、より丸っこく現代風にデザインされた。

ゴルフのプラットフォームを流用しているため、初代がリアエンジン・リアドライブ(RR)で後輪駆動であったのに対し、こちらはフロントエンジン・フロントドライブ(FF)で前輪駆動となる。


ザ・ビートル編集

2012 Volkswagen Beetle

ニュービートルの後継車種として2012年に生産開始。

よりタイプ1に近いシルエットになっている。2019年に製造終了。製造終了時点では後継車種の予定はなく、「ビートル」を名乗る車種の系譜はニュービートルから21年をもって途切れることになった。


アニメ等への登場編集


  • 名探偵コナン:登場人物の1人・阿笠博士愛車が黄色いビートル。少年探偵団キャンプに連れて行ったり、コナンたちの救援に向かったりするなどして登場頻度は多い。
    • 鳥取県東伯郡北栄町にある原作者の記念館前には、原作者の父親が手がけたレプリカ車が展示されており、運転席には博士の人形が「ワシじゃよ」と言わんばかりに乗っている。





関連タグ編集

自動車 フォルクスワーゲン VW ワーゲン ドイツ車

モータリゼーション 大衆車 アウトバーン スバル360

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