※メインイラストは2014年の安田記念優勝馬・ジャスタウェイ号。
基本データ
概要
中央競馬(JRA)の重賞競走(格付けはGⅠ)。東京競馬場・芝1,600m戦。
1951年、後述する政治家・安田伊左衛門の功績を称え「安田賞」の名称で創設。1958年に同氏の逝去に伴い現在の「安田記念」の名称に改称された。
なお現在のJRA重賞レースでは、有馬記念(JRA第2代理事長で創設に携わった有馬頼寧に由来)と並び皇族と海外王族以外の個人名に由来する珍しい競走名となっている。
創設以来長らくハンデキャップ競走として開催されていたが、1984年に定量戦への変更とグレード制導入によるGⅠへの格付けが実施され、同時期に新設されたGⅠ・マイルチャンピオンシップと並ぶ春のマイル王決定戦となった。
開催時期はグレード制導入前は6月上旬(1967・1970年は5月下旬、1951・1952年は7月初旬、1972年は7月下旬に開催)だったが、導入後は開催時期を5月中旬(現在のヴィクトリアマイルの週)に改められ、優駿牝馬の前週に行われていた。
1993年に国際競走となり、1995年にハートレイクが外国調教馬として初優勝。また、1995年の指定交流競走化で地方競馬の所属馬も出走可能となる。
1996年の高松宮杯のGⅠ昇格とNHKマイルカップの新設に伴い、東京優駿(日本ダービー)翌週の6月上旬の開催に変更。奇しくも創設時に近い開催時期に戻ることとなった。
本競走への優先出走権
JRA所属馬は同年に行われるマイラーズカップ又は京王杯スプリングカップで1着となった馬に、地方競馬所属馬はこの2レースに加えて高松宮記念または大阪杯の2着以内馬(本競走とヴィクトリアマイルのいずれかを選択)、NHKマイルカップの3着以内馬、ヴィクトリアマイルの2着以内馬に本競走の優先出走権が付与される。
また指定された海外の国際GⅠ競走の優勝馬、地方競馬のダート交流GI・JpnI競走の優勝馬にも出走資格が与えられる(2歳馬競走は除外)。
本競走において好成績を収めた出走馬に対する海外競走への優先出走権
本競走は2016年からブリーダーズカップ・チャレンジ対象競走に指定されており、優勝馬には当該年のブリーダーズカップ・マイル優先出走権と出走登録料及び輸送費用の一部負担の特権が与えられる。
また、2017年からはヴィクトリアマイルと共に、本競走の1着馬から3着馬に対しフランスのGⅠ「ジャック・ル・マロワ賞」の優先出走権が付与されることとなった(翌2018年からは上位馬にヴェルメイユ賞優先出走権が付与されることとなった優駿牝馬と共に「デスティナシオンフランス」と称されるようになった)。2021年からはこれに加えて、同じく本競走の1着馬から3着馬にフランスのGⅠ「ムーラン・ド・ロンシャン賞」への優先出走権も付与される(なお、代わりに優駿牝馬上位馬へのヴェルメイユ賞優先出走権付与は取り止めとなった)。
傾向
現在は春のマイル王者決定戦という位置づけであるが、短距離や中距離馬の参戦も少なくない。
前者の場合は高松宮記念以外に春夏期のGIタイトルがなく、かつ主要レースの間隔が空いているためで、後者の場合は2017年の大阪杯のGⅠ昇格以前は春競馬のレース体系やローテーションの都合上中距離適性の有力馬にとって狙い目となり得るためであるとされている。
実際にニホンピロウイナーやブラックホーク、ロードカナロアのようなスプリンターや、ニッポーテイオー、ウオッカやジャスタウェイなどの中距離馬が専門のマイラーを相手に物ともせず優勝するケースも時折見受けられた。
また、3歳馬の挑戦もそこそこ多く、世代戦のマイル距離GⅠがNHKマイルカップのみということもあり、マイルカップを好走した馬が出走する事がある。流石に古馬とは実力に開きがあるため、3歳馬は苦戦することが多いが、過去には安田賞時代のイツセイとスウヰイスー(※彼ら2頭は旧4歳。新表記では3歳となる。)、近年ではリアルインパクトが3歳馬として優勝している実績がある。
概ね1999年までは人気順と結果の内容が堅いGⅠの一つとされていたが、2000年頃から傾向が変わり荒れやすくなっていたとする見方が強い。
安田伊左衛門
本競走の競走名の由来となった安田伊左衛門(やすだ・いざえもん)は、日本の陸軍軍人・政治家(1872 - 1958)。
陸軍騎兵戸山連隊時代より競馬会発足に参加し、国会議員に転身後も旧競馬法の制定や現在の東京優駿の創設などに貢献したことから、「日本競馬の父」「日本ダービーの父」とも呼ばれる。
1938年にそれまで日本競馬の開催を行っていた11の競馬倶楽部を統合する形で創設された「日本競馬会」の第2代理事長に就任。その後戦時期を越えて、日本競馬会がGHQに独占禁止法に抵触すると判断されたために解散することとなった1948年までその職務にあたった。
1954年、日本競馬界を引き継いで1948年から開始された国営競馬が、国が競馬を開催することそのものへの批判が強まったことから特殊法人に承継されることとなり、その特殊法人である日本中央競馬会(JRA)が同年に設立された。安田はその初代理事長に就任し、翌1955年に有馬頼寧を後任として退いた後は同会顧問となった。
1958年、86歳で逝去。現在は東京競馬場のパドック脇に胸像が建立されている。
2022年は同氏の生誕150周年にあたり、本競走に「安田伊左衛門生誕150周年記念」の副題が付けられ開催された。
歴代優勝馬
馬の太字はJRA最優秀短距離馬受賞馬、騎手の太字は騎手顕彰者。
回次 | 年 | 馬名 | 騎手 | 備考・イラスト |
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昭和 | ||||
第1回 | 1951年 | イツセイ | 保田隆芳 | 初代勝ち馬。 |
第2回 | 1952年 | スウヰイスー | 保田隆芳 | 同年の桜花賞・オークス二冠牝馬。鞍上の保田は史上初の騎手連覇。 |
第3回 | 1953年 | スウヰイスー | 保田隆芳 | 史上初の連覇。保田は史上唯一の三連覇。 |
第4回 | 1954年 | フソウ | 高橋英夫 | |
最良スプリンター設置 | ||||
第5回 | 1955年 | クリチカラ | 森安弘明 | |
第6回 | 1956年 | ヨシフサ | 渡辺正人 | |
第7回 | 1957年 | ヘキラク | 蛯名武五郎 | 皐月賞馬 |
第8回 | 1958年 | ラプソデー | 坂本栄三郎 | 菊花賞馬 |
第9回 | 1959年 | ヒシマサル | 小野定雄 | ヒシスピードの祖父。初代ヒシマサルと言われる。 |
第10回 | 1960年 | オンワードベル | 高橋英夫 | |
第11回 | 1961年 | ホマレボシ | 八木沢勝美 | 同年の有馬記念馬。 |
第12回 | 1962年 | トウコン | 山岡忞 | |
第13回 | 1963年 | ヤマノオー | 森安弘明 | |
第14回 | 1964年 | シモフサホマレ | 油木宣夫 | |
第15回 | 1965年 | パナソニツク | 嶋田功 | |
第16回 | 1966年 | ヒシマサヒデ | 小野定雄 | |
第17回 | 1967年 | ブツシヤン | 大和田稔 | |
第18回 | 1968年 | シエスキイ | 郷原洋行 | |
第19回 | 1969年 | ハードウエイ | 加賀武見 | |
第20回 | 1970年 | メジロアサマ | 矢野一博 | 同年の天皇賞(秋)馬。 |
第21回 | 1971年 | ハーバーゲイム | 野平祐二 | |
第22回 | 1972年 | ラファール | 中島啓之 | |
第23回 | 1973年 | ハクホオショウ | 伊藤正徳 | |
第24回 | 1974年 | キョウエイグリーン | 東信二 | |
第25回 | 1975年 | サクライワイ | 小島太 | |
第26回 | 1976年 | ニシキエース | 森安重勝 | |
第27回 | 1977年 | スカッシュソロン | 横田吉光 | |
第28回 | 1978年 | ニッポーキング | 郷原洋行 | |
第29回 | 1979年 | ロイヤルシンザン | 的場均 | |
第30回 | 1980年 | ブルーアレツ | 嶋田功 | |
第31回 | 1981年 | タケデン | 増沢末夫 | |
最優秀スプリンターに名称変更 | ||||
第32回 | 1982年 | スイートネイティブ | 岡部幸雄 | 2着ブロケード |
第33回 | 1983年 | キヨヒダカ | 郷原洋行 | |
グレード制導入 | ||||
第34回 | 1984年 | ハッピープログレス | 田原成貴 | |
第35回 | 1985年 | ニホンピロウイナー | 河内洋 | 前年マイルCS優勝。秋春マイルGⅠ制覇。 |
第36回 | 1986年 | ギャロップダイナ | 柴崎勇 | 前年天皇賞(秋)馬。 |
第37回 | 1987年 | フレッシュボイス | 柴田政人 | |
第38回 | 1988年 | ニッポーテイオー | 郷原洋行 | 前年天皇賞(秋)・マイルCS優勝。2頭目の秋春マイルGⅠ制覇。 |
平成 | ||||
第39回 | 1989年 | バンブーメモリー | 岡部幸雄 | 初重賞かつ10番人気の勝利。 |
第40回 | 1990年 | オグリキャップ | 武豊 | レコードタイム1.32.4。3頭目の秋春マイルGⅠ制覇。 |
第41回 | 1991年 | ダイイチルビー | 河内洋 | |
第42回 | 1992年 | ヤマニンゼファー | 田中勝春 | 田中勝初GⅠ制覇。 |
最優秀短距離馬に名称変更 | ||||
第43回 | 1993年 | ヤマニンゼファー | 柴田善臣 | 柴田善初GⅠ制覇。同年天皇賞(秋)勝利 |
第44回 | 1994年 | ノースフライト | 角田晃一 | 同年マイルCS優勝し、初の春秋マイルGⅠ制覇。 |
第45回 | 1995年 | ハートレイク | 武豊 | 初の外国馬(UAE) |
第46回 | 1996年 | トロットサンダー | 横山典弘 | 浦和競馬出身馬で、前年のマイルCS優勝で4頭目の秋春マイルGⅠ制覇。最高齢勝利(現7歳)。ラストラン。 |
第47回 | 1997年 | タイキブリザード | 岡部幸雄 | |
第48回 | 1998年 | タイキシャトル | 岡部幸雄 | 二人目の騎手連覇かつ、5頭目の秋春マイルGⅠ制覇。顕彰馬 |
第49回 | 1999年 | エアジハード | 蛯名正義 | 2着グラスワンダー。同年のマイルCSも制し2頭目の春秋マイルGⅠ制覇。 |
第50回 | 2000年 | フェアリーキングプローン | ロバート・フラッド | 2頭目の外国馬(香港) |
第51回 | 2001年 | ブラックホーク | 横山典弘 | 2頭目の最高齢勝利タイ、ラストラン。 |
第52回 | 2002年 | アドマイヤコジーン | 後藤浩輝 | 後藤初GⅠ制覇。 |
第53回 | 2003年 | アグネスデジタル | 四位洋文 | 最後のGⅠ勝ち。 |
第54回 | 2004年 | ツルマルボーイ | 安藤勝己 | |
第55回 | 2005年 | アサクサデンエン | 藤田伸二 | |
第56回 | 2006年 | ブリッシュラック | ブレット・プレブル | 3頭目の外国馬(香港)。 |
第57回 | 2007年 | ダイワメジャー | 安藤勝己 | 前年天皇賞(秋)、マイルCS制覇で6頭目の秋春マイルGⅠ制覇。 |
第58回 | 2008年 | ウオッカ | 岩田康誠 | |
第59回 | 2009年 | ウオッカ | 武豊 | 2頭目の連覇。顕彰馬 |
第60回 | 2010年 | ショウワモダン | 後藤浩輝 | 第49回優勝エアジハード産駒。 |
第61回 | 2011年 | リアルインパクト | 戸崎圭太 | 第2回優勝馬・スウヰイスー以来の3歳馬制覇。 |
第62回 | 2012年 | ストロングリターン | 福永祐一 | レコードタイム1.31.3 |
第63回 | 2013年 | ロードカナロア | 岩田康誠 | 前年スプリンターズS、香港スプリント、同年高松宮記念優勝。顕彰馬 |
第64回 | 2014年 | ジャスタウェイ | 柴田善臣 | 前年天皇賞(秋)優勝、同年ドバイシーマC制覇。 |
第65回 | 2015年 | モーリス | 川田将雅 | 同年マイルCS、香港マイル優勝し、3頭目の春秋マイルGⅠ制覇。 |
第66回 | 2016年 | ロゴタイプ | 田辺裕信 | 2013年皐月賞馬。最後の勝利。 |
第67回 | 2017年 | サトノアラジン | 川田将雅 | |
第68回 | 2018年 | モズアスコット | クリストフ・ルメール | |
令和 | ||||
第69回 | 2019年 | インディチャンプ | 福永祐一 | レコードタイム1.30.9。同年マイルCS優勝し、4頭目の春秋マイルGⅠ制覇。 |
第70回 | 2020年 | グランアレグリア | 池添謙一 | 前年桜花賞馬。同年マイルCS優勝し、5頭目の春秋マイルGⅠ制覇。 |
第71回 | 2021年 | ダノンキングリー | 川田将雅 | |
第72回 | 2022年 | ソングライン | 池添謙一 |