概要
神奈川県の東海道本線国府津駅より進路を北へ取り、松田駅、山北駅を経由し、静岡県の御殿場駅を経て、東海道本線沼津駅へ至る60.2kmの路線。
全区間の1/3ほどが関東地方に属するがJR東海管轄となっている。
同社の在来線で唯一、神奈川県を通る路線である。
1889年に東海道本線の一部として開通(当時は複線)し、1934年の丹那トンネル開通に伴い現路線名(支線)となった。
1944年には、戦時中の鉄不足でレールが供出され、複線より単線となっている。
そのため現在も、トンネルや鉄橋などに複線であった頃の痕跡が残っている。
主な沿革
戦前・戦時中
- 1889年2月1日:国府津 - 御殿場 - 沼津間開通。合わせて松田駅、山北駅、小山駅(現・駿河小山駅)、御殿場駅、佐野駅(現・裾野駅)、沼津駅がそれぞれ開設。
- 1891年1月12日:御殿場 - 沼津間が複線化。3月1日には小山 - 御殿場間も複線化。
- 1896年4月1日:線路名称制定に伴い東海道線の一部となる。
- 1898年6月15日:初代三島駅(現・下土狩駅)新設。
- 1901年2月5日:国府津 - 山北間複線化。同年6月11日には山北 - 小山間も複線化。
- 1909年10月12日:線路名称制定に伴い、東海道本線の一部となる。
- 1912年:マレー式機関車の9750・9800・9850形蒸気機関車が山北~沼津間の急勾配区間で使用される。7月1日に小山駅が駿河駅へ改名。
- 1915年7月15日:佐野駅が裾野駅へ改名。
- 1922年5月15日:下曽我信号場が駅へ昇格、下曽我駅となる。
- 1925年5月頃:マレー式機関車9800形3両を使用した山北 - 沼津間での重量貨物列車牽引試験を実施。
- 1934年:10月1日に三島駅(初代)が下土狩駅へ改名。2ヶ月後の12月1日に丹那トンネル開通に伴い、国府津~御殿場~沼津間名称が御殿場線へ改称。
- 1943年7月11日:第二次世界大戦中の物資不足により不要不急線に指定され、単線化(外されたレールは現在の山陽本線岩国 - 徳山間に当たる柳井線新線建設に使われた)。
- 1944年:8月1日に富士岡信号場が富士岡駅、12月8日に岩波信号場が岩波駅となる。
戦後
- 1946年1月15日:大岡駅新設。
- 1947年7月15日:谷峨信号場が駅へ昇格、谷峨駅となる。9月15日には足柄信号場が移転・駅に昇格し足柄駅となる。
- 1948年6月1日:上大井駅新設。
- 1952年1月1日:駿河駅が駿河小山駅に改名。
- 1955年9月1日:旅客列車が気動車化。翌月1日には小田急電鉄新松田~松田間連絡線が開通、キハ5000形使用の新宿と御殿場を結ぶ準急列車「芙蓉」運行開始。
- 1956年12月25日:東山北駅・相模金子駅開設。
- 1959年7月2日:特別準急「朝霧」「長尾」運行開始。
- 1962年7月20日:南御殿場駅新設。
- 1968年4月27日:国府津 - 御殿場間が電化。東京 -御殿場間急行「ごてんば」運行開始。7月1日に御殿場 - 沼津間が電化したことで全線電化。これに伴い小田急電鉄からの乗入車両がキハ5000形から小田急3000形「SSE」へ変更され、同時に「芙蓉」「朝霧」「長尾」の名称が「あさぎり」へ統一される。
- 1979年:115系運行開始。入替わる形で電化当初から使用されていた72系が引退。
- 1982年:下曽我~沼津間貨物営業廃止。
- 1985年:東京 - 御殿場間急行「ごてんば」廃止。
国鉄分割民営化以降
- 1987年4月1日:国鉄分割民営化に伴い、JR東海が御殿場線を継承。JR貨物が第2種鉄道事業者となり、5年振りに貨物営業復活。
- 1989年10月:富士岡駅と岩波駅に交換設備新設。
- 1991年3月16日:あさぎり号が特急に格上げされ、区間を沼津まで延長(ダイヤ改正関連参照)
- 1994年11月27日:キハ82系を使用した「御殿場線60周年記念号」が沼津~下曽我間で運転される。同年12月4日には丹那トンネル開通60周年記念でEF58のプッシュプルと14系客車を連結した「丹那隧道60周年記念号」が函南~御殿場~国府津~熱海~沼津間で運行される。
- 1999年6月11日:老朽化した115系の置換用として313系3000番台の定期運用を開始。12月4日には一部列車でワンマン運行開始。
- 2002年9月7日:南御殿場駅以来約40年ぶりの新駅、長泉なめり駅が開業。
- 2004年11月20 - 21・23日:EF58重連と14系客車使用の「御殿場線70周年記念号」が運行される。
- 2006年10月1日:313系3100番台定期運用開始。同年12月にはロングシート車も運行開始。
- 2007年2月14日:115系の定期運用終了。3月16日に113系直通運用をそれぞれ終了。
- 2010年3月13日:御殿場 - 沼津間でTOICA導入。
- 2012年3月17日:特急あさぎり号が御殿場発着になる。(ダイヤ改正関連参照)
- 2014年11月22 - 24・29・30日:御殿場線80周年を記念して急行「御殿場線80周年371号」が浜松 - 松田間運行される。なお、本列車最後に371系は引退し、最終日の松田駅と御殿場駅では式典が行われた。
- 2018年12月12日:「MSE10周年記念ツアー」用の団体臨時列車として綾瀬→御殿場を東京メトロ千代田線・小田急小田原線経由で結ぶ「メトロあさぎり号」を運行。
- 2019年3月2日:下曽我 - 足柄間でTOICA導入。
- 2021年3月13日:国府津駅でTOICAが導入されたことにより、全区間がTOICA対応区間となる。
- 2022年4月2日:神領車両区から静岡車両区に転属してきた313系8000番台が代走運用で初入線。
- 2024年:2月17日に神領車両区から静岡車両区に転属してきた313系1300番台が運行開始。11 - 12月頃には315系3000番台が沼津 - 御殿場間で運行開始予定。
- 2024年12月8日:E257系5500番台使用の「御殿場線90周年記念号」が品川 - 御殿場間で運行される(※ツアー扱い)。また、特急ふじさん3号の6号車を貸切るツアーも実施。
- 2027年(予定):315系3000番台を使用した4両編成によるワンマン運転を開始予定。
ダイヤ改正関連
※国鉄分割民営化以降の出来事を記載
- 1991年3月16日:ダイヤ改正。小田急乗入急行「あさぎり」が特急へ昇格。運行区間が沼津まで拡大され、運行車両は371系と小田急20000形「RSE」へ変更され、双方の車両が御殿場線と小田急線を相互直通する形へ改められる。
- 2006年10月16日:ダイヤ改正で東京方面からの直通列車が1往復に減便。
- 2007年3月18日:ダイヤ改正で上り東京行が国府津行へ短縮され、東京方面からの直通は下り列車のみとなった。
- 2012年3月17日:ダイヤ改正。371系と20000形「RSE」による「あさぎり」運行終了(相互直通廃止)。運行区間も新宿 - 御殿場間へ戻り、「あさぎり」全列車が小田急60000形「MSE」による運行となり、再度小田急車両による片乗り入れとなる。またJR東日本E231系乗入廃止。
- 2018年3月17日:ダイヤ改正で、特急「あさぎり」が「ふじさん」に改名。
- 2024年3月16日:ダイヤ改正で、211系御殿場 - 国府津間の定期運用を終了。沼津 - 御殿場間1往復のみの運行となる。
運行形態
幹線であるが、普通列車ダイヤは御殿場 - 沼津間が日中30分ヘッド、国府津 - 御殿場間が1時間ヘッドと、ローカル線並みである。
列車は日中が2 - 3両編成、ラッシュ時は5 - 6両編成列車も運行される。
運転士・車掌はいずれも沼津運輸区担当。
2両編成の一部列車はワンマン運転。
朝夕には東海道本線静岡方面及び、三島駅への直通列車が運行されている。
松田 - 御殿場間では、小田急電鉄片乗入による特急「ふじさん(旧・あさぎり)」が運行され、小田急線経由で新宿まで乗入れている。
「ふじさん」は小田急線新松田手前より連絡線を経由し、御殿場線松田へ発着する。
新松田・松田は至近距離にあるが、電車が頻繁に行き交う新松田と比べ、松田は鄙びた佇まいである。
交通系ICカード取扱
下曽我 - 沼津( - JR東海区間内)でTOICA/Suica/PASMOなどの交通系ICカードが利用可能であるが、国府津とこれを跨ぐ経路ではICカードは利用不可(松田で新宿方面に向かうふじさんに乗車する若しくは新宿方面からのふじさんで松田駅で下車する場合はPASMO利用可)。
そのため事前に当該区間乗車券を買っておく必要がある。
2021年春より全線でTOICAが利用可能となり、国府津を跨ぐIC定期券が発売された。
また、東海道本線熱海駅 - 函南駅も跨って行くことが出来ないので、交通系ICカードのみの移動の場合、松田/新松田で乗換える必要がある。
使用車両
現在使用されている車両
普通列車に使用されている主力車両。
3000番台(V編成):1999年6月より運用。2両編成のワンマン列車や、他の車両と連結した4~5両編成でも運行。
3100番台(V編成):2006年8月より運用開始。3000番台と共通運用。
2500(T編成)・2600番台(N編成):2006年11月より運用開始。113・115系を置換、普通列車として運用。発電ブレーキを装備するN編成が主であるが、T編成も御殿場線運用がある。
2300・2350番台(W編成):2006年12月より運用。他車両と連結した運用が主であればが、過去には2両単独普通列車にも充当されていた。2350番台は霜取りパンタグラフ装備のため、冬季は専用運用へ入る。
8000番台(S編成):元セントラルライナーで2022年に静岡へ転属。定期運用はないが、代走で稀に御殿場線を走る場合がある。
1300番台(L編成):神領から転属して来た車両で、2024年2月より使用開始。同年3月ダイヤ改正より、ワンマン列車の大多数が当番台受持ちとなった。
300番台(K編成):大垣から転属して来た車両で、2024年6月より211系GG編成との併結運用で使用されている。
6000番台(GG編成)…2024年3月ダイヤ改正より、313系W編成と連結した4両編成で、沼津 - 御殿場間を1往復する運用がある。過去には2両単独運用もあった(編成名Gは御殿場の頭文字)。
5000(LL編成)・5600番台(SS編成)は、2024年3月ダイヤ改正までは、朝夜に313系と連結した5両編成での運用があった。この他にも多客時増結に使われていた。
2012年より特急「ふじさん」に使用されている小田急ロマンスカー。6両編成。
かつての使用車両
- 20000形「RSE」…371系同様特急「あさぎり」として走っていた小田急ロマンスカー。371系兄弟車で、同車両検査時は当車両が代走を行った。2012年に引退後、2014年に富士急へ譲渡され、「フジサン特急」として運行している。
- キハ5000形…非電化時代に小田急から直通して来ていた車両。
導入予定車両
- 315系…2024年11 - 12月頃に沼津 - 御殿場間で運行開始予定。
その他
- 373系…イベント時臨時列車に使用。
- キヤ97…レール運搬車両。
- 185系200番台…2014 - 2019年の間、修学旅行の臨時列車として、年に数回国府津 - 御殿場間へ乗り入れていた。6両編成。2020年に感染症拡大を理由に運行中止され、そのまま設定がなくなった。
- EF58形電気機関車、14系客車…JR東海所属122・157号機が、同社所属14系を牽引し「丹那隧道開通60周年記念号」(1994年12月)や「御殿場線70周年記念号」(2004年11月)などのイベントで使用された他、単機で冬期の霜払いにも使用された。157号機がリニア・鉄道館で静態保存、14系はJR四国を経て、現在は東武鉄道SL大樹用客車として使用されている。また、JR東日本所属61・89号機も団体臨時列車で走行したことがある。
- キハ82系…「御殿場線60周年記念号」(1994年11月)などのイベント臨時列車に使用。
エピソード
- 太平洋戦争の終戦を伝えた玉音放送は、御殿場線の複線を剥がし使われなくなったトンネル内より放送された。
- 1992年に伊東線来宮駅で発生した脱線事故により、東海道本線熱海駅 0 三島駅が不通となった際、寝台特急を御殿場線経由で運行させたことがある。
駅一覧
駅名 | 特急 | 乗換路線 | 備考 |
---|---|---|---|
国府津 | 東海道本線(JR東日本) | 主に3番乗り場。 | |
下曽我 | TOICAエリア最東端(2020年現在) | ||
上大井 | 別名ひょうたん駅 | ||
相模金子 | 1面1線 | ||
松田 | ● | 小田急小田原線(新松田駅) | 特急乗務員交代駅。小田急連絡線があり、特急ふじさんが使用。 |
東山北 | レ | 1面1線 学生利用が多い | |
山北 | レ | 国府津 - 当駅間区間列車がある。 | |
谷峨 | レ | 箱根ロープウェイ桃源台を除くと神奈川県最西端の駅。 | |
駿河小山 | ◯ | 特急は一部のみ停車。富士霊園最寄駅。 | |
足柄 | レ | 小田急の駅とは無関係。 | |
御殿場 | ● | 当駅 - 沼津間区間列車も多い。 | |
南御殿場 | 1面1線 | ||
富士岡 | かつてのスイッチバック跡が残る | ||
岩波 | |||
裾野 | 元特急停車駅 | ||
長泉なめり | 1面1線 御殿場線で1番新しい駅 | ||
下土狩 | かつての三島駅。約20分で歩いて行ける。 | ||
大岡 | 1面1線 | ||
沼津 | 東海道本線(JR東海) | 朝夕に東海道本線との直通列車あり。 |