「ほっほっほっほっ。子を想う親の気持ちはいつ見てもいいものですね。」
概要
『ドラゴンクエストⅤ』でも非常に印象が強い敵キャラ。魔物たちが人間世界征服のために作った光の教団の幹部で、大神殿に座す教祖イブールの部下。幹部クラスの身分に相応しい実力者であり、メラ系の呪文や激しい炎といった火炎系の術を得意とし、戦闘でもそれらを多用している。
スーパーファミコン版
幼少時代終盤のラインハット編にて初登場。ならず者達に王子ヘンリーを攫わせ、救出に来た主人公を出口で待ち伏せし、圧倒的な力を見せつける。後方の魔物を足止めをしていたために遅れてやってきたパパスに対し、ジャミとゴンズを差し向け、様子を窺う。
そして、2人が返り討ちにされるや否や主人公を人質にしてパパスを無抵抗にさせ、そのままジャミとゴンズに痛めつけさせた。
そして満身創痍のパパスを焼き殺し、主人公とヘンリーを大神殿に連れ去り、主人公に懐いていたベビーパンサーも野に放ってしまう。また、この時に主人公が持っていた天空城の力の源の一つである『ゴールドオーブ』を破壊している。十数年後にボブルの塔で再会し、主人公たちに倒される。同作では教祖イブールを崇拝している設定で「教祖さまばんざい!ほっほっほっほっ。ぐふっ!」と述べて死亡した。後述するリメイク版とは違い「殉教」というべき最期であり、邪悪な印象が強い死に様となった。
PlayStation2以降のリメイク版
リメイク版では出番が大幅に増やされ、主人公にとって因縁の敵としての印象が強くなっている。
青年編前半では息絶えたジャミに代わって、主人公と妻(ビアンカ、フローラ、デボラのいずれか)を石化させる役目を担う。石化させた理由は「一息に殺しては面白くない。身動きできないまま世界の終わりを見物させる」という陰湿なもの。
青年編後半のボブルの塔では、SFC版の場合は「あの時○○を殺さなかったのは私の大きなミスでした。しかし同じミスは2度とはしません」という戦闘前台詞があるのだが、リメイク版では「今ここでお前たちのチカラを確かめさせてもらいますよ」という謎の上から目線になっている。リメイク版ではこの戦いで戦死することなく、「こんなところでチカラつきるまでたたかうほどバカではありません」と、その場を立ち去る。
その後は大神殿で姿を現し、主人公たちに敗北し魔界の入口を開けようとしたイブールに止めを刺す。リメイク版におけるゲマはイブールには面従腹背しているだけであり、黒幕であるミルドラースに忠誠を誓っているという設定になった。また、この時にイブールへ真相を明かしている。
後にエビルマウンテンで再会した主人公の前に再び現れ、マーサに重傷を負わし、主人公達との最後の戦いとなる。敗北後は彼女が放った聖なる光を全身に浴び身体を焼かれ苦しみながら最期を迎え、皮肉にも自らが葬ったパパスやイブールと同じく跡形も残らず死亡する最期を迎えた。この時のゲマの断末魔は「げぐぁ~っ!!」。その前の「ぎょえー!!」とどっこいどっこいである。
リメイク版の評価
印象が強くなった反面、デモンズタワーでジャミが最期の力で主人公夫婦を石化する活躍を奪ってまで登場した事で、その石像を運びも破壊もせずにその場を去るなど詰めの甘さが目立つようになり、SFC版からのプレイヤーからは「出過ぎではないか」という意見も少なからず見られた。ゴールドオーブを念のために破壊しておくような用心深い性格とは、辻褄が合わなくなってしまっている。
少なくともデモンズタワーでは自己顕示欲を抑えて出ない方が良かっただろう。
主人公やマーサに関しては肝心な所で止めを刺し損なったり、死ぬ間際に余計な真似をしようとしたイブールを殺害しながらも、主人公たちが魔界へ行き来する手段を封じずにいるなどの点も某ダニ並に残念な所である。しかしながら、パパスの仇と言うポジションの割にはSFC版での最期がややあっけな過ぎた上に、その最期もゲマ自身は満足しながら名誉の殉職を遂げており、狂信者としての悪役では釈然としないのも事実なので変更は賛否両論と言ったところ。
それ以外にも、誘拐の対象である大金持ちでなおかつ天空人の血を引いているフローラ(DS版ではデボラも)を誘拐しなかった。フローラは修道院で花嫁修業をしていたため、見落とした可能性があるので無理もないが、そもそもこういう点についてはゲマ本人というより光の教団の体制に問題があるのだが。また、妻の像が大神殿にあったのはイブールが別ルートで入手したからであり、下剋上する対象だったイブールにミスの尻拭いをしてもらっている事が分かる。
おまけにボブルの塔で重要アイテムである竜の目を奪っておきながら、それを破壊せずにいたりなどの致命的なミスを犯している。破壊出来なかったという見解もあるし、メタ的に言えばゲームなので、破壊や持ち逃げされても困るのだが。
追い討ちを掛けるように、ゲマが崇拝していたミルドラースに至っては、ゲマの働きを「どうでもいい事だ」と一蹴している始末。
ボスキャラクターとして
概要の項目で述べた通り、主に火炎系の呪文や特技を駆使する。
幼少期終盤で対峙した際は、ただ様子を見たり笑っているだけで何もしない事が多い。使う呪文や特技も「メラミ」や「かえんのいき」など、後に登場した際の戦闘と見比べても明らかに手加減している。ただ、時折「つうこんのいちげき」を繰り出すため、この時点では致命的。
最初から「マホカンタ」が掛かっており、バラモスの十八番である自動回復まで備えているため、勝利は困難である。勝つためには通常プレイでは考えられないほどレベル上げを行う必要がある。いわゆる負けイベントであり、仮に勝ったとしてもストーリーは負けた時と変化なく進行する。
そして、本格的に戦うボブルの塔では通常攻撃の他、「マホカンタ」と「メラゾーマ」、「激しい炎」を使用。SFC版とリメイク版では行動パターンが異なり、前者ではこれらに加えマヒ効果のある「やけつくいき」を使う。SFC版は1回行動だが、リメイク版では1~2回行動である。
余談だが、PlayStation2版の通常攻撃のアクションにて、過去に主人公を人質にした際に使っていた「死神の鎌」を振り回す事があるが、戦闘不能になってもザオリクで蘇生できなく事はない。
そしてリメイク版でのみの戦闘である、エビルマウンテンでの最終決戦。
「マホカンタ」を使わなくなった代わりに、ようやく本気を出したのか、上記の攻撃手段に加え新たに「やけつくいき」と「かがやくいき」を使ってくる。「いてつくはどう」を使ってこない分ダメージを抑えやすいが、この戦いでのゲマは補助呪文が一切効かないため、やや攻め難い。
1~2回行動で、やけつくいきを多用するため、マヒの治療手段を持たせていないと危険である。しかしエビルマウンテンには馬車を持ち込みできるため、やけつくいきで全滅する危険性はSFC版のボブルの塔よりは下がっている。
SFC版とPS2版のゲマの行動原理
人をいたぶって苦しめるという傾向は共通する一方、大きく異なるのはイブールへの忠誠心である。
SFC版は少なからずイブールへの忠誠心があり、加虐趣味よりも組織貢献を優先しており、ミスは少なかった。
幼少期の主人公を見逃した点は後に自身も認めるように結果的に大きなミスとなったものの、特別な血筋を有する子供だということは当時誰も見抜けておらず、教団の奴隷となる貴重な幼い子供を生かして連れ去った判断は教団の幹部として当然の行動で、ゲマの判断に何ら違和感はない。
しかしPS2版では「ミルドラースの威を借りて、教団の利益よりも加虐趣味を優先する下衆」へと性格が大きく変わっている。
主人公に敗北寸前となった絶体絶命のジャミに呼び出されたにもかかわらず、既にグランバニアとの関係や魔物使いの才覚が明らかになっていた主人公をただ石化したのみで立ち去るという明らかな失態をおかしている(このゲマの致命的失敗は光の教団がカバーした)。
また魔界への糸口となることが明らかな竜の眼を確保しながら壊さない(壊せなかったのか、主人公の目の前で破壊する予定だったのかは不明)等詰めが甘い所が目立つが、ゲマの目的を「他人を苦しめて楽しむ自分自身の欲望を満たす下衆な動機」(某ダニをリスペクトした性格)と考えると辻褄が合うのである。
そして弱ったイブールにメラゾーマを撃ってトドメをさす下剋上を行っている。
これはイブールに反旗を翻すどころか、イブールがミルドラースを崇め祀る存在であった以上ミルドラースに対する不義理にも近く、ミルドラースですら他者を苦しめる為の便利な存在として利用する事しか考えていなかった可能性がある。
もっとも、ミルドラースの方も部下たちの動きを「無駄な努力」とこき下ろしており自分一人いれば十分と考える某大魔王のような大雑把な性格で、ゲマの不真面目社員のような行動も気にしない無関心だったとすれば、お互いの利害は一致していたのかもしれない(その点は大魔王軍で監視され功績が無ければ処刑されている可能性が高かった某ダニよりも遥かに私利私欲を満たす環境に恵まれていた)。
ゲマはあえて脅威を殺さずに無力化して去った後にその無力化した他人を苦しむ姿を妄想でさらに楽しむという考察もされており、ドラクエシリーズの中でもかなりやばい奴と評価する声もある。
派生作品への登場
ドラゴンクエスト モンスターバトルロードシリーズ
この作品ではいつの間にか、魔王ポジションに収まっていた。
まあ実際のところ、ミルドラースの部下の中では最強(リメイク版)なので頷けるが。
ちなみに上司であるイブールはバトルロードに参戦していない。
ドラゴンクエストモンスターズシリーズ
『ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー2 プロフェッショナル』より登場。
ジャミとゴンズとの配合で誕生する。
常にマホカンタの特性にかしこさが1000とゾーマとは非常に似通った能力を持つ。それどころかゾーマの立ち位置を完全に食ってしまっていた。
本作では弱体化のあおりを受けたゾーマのHPはわずか620しかなく、それに対しゲマはHPが800あった為、HPアップSPで1000を上回り、カンストダメージ999を一度耐える事が出来た。
平然とカンストダメージを叩き出す強力な2枠モンスターが猛威を振るっていたため、1000を超えるHPは極めて大きな優位点であった。
『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド3D』でも続投、シュプリンガーとイデアラゴンの配合で誕生。
HPが引き上げられたが、大きな変更点はない。ただしその引き上げられたHPも、+値が25を超えると「常にマホカンタ」が解放されて上限値が下がってしまう。
『ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー3』ではリストラされてしまうものの、『ジョーカー3 プロフェッショナル』では復帰。その際にはハーゴンやバラモスに合わせたのか???系に変更された。
原作での立場や存在感に反してミルドラースの素材になったことは一度もないが……
『ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅』にて晴れてミルドラースの素材となった。
ドラゴンクエスト ユア・ストーリー
原作以上に禍々しいキャラクターデザインとなって登場。おそらく尺の都合でイブールの「魔界の入り口を開け、ミルドラースを復活させる」役もゲマに回されている。
ドラゴンクエストライバルズエース
真1段の拡張カードとして登場。
CVはファン待望の中尾隆聖氏である。
同系統のモンスター
死者を操る呪術師とされるモンスター。ゲマと同じ容姿をしている(スーパーファミコン版ではカラーリングもゲマと全く同じであり、通称量産型ゲマ。現在では茶色のローブに緑色の肌という配色になるなど差別化されている)。主に海の神殿や天空の塔などに出現する。
「マホカンタ」や「マホトーン」の補助呪文や、「ザオラル」で死んだモンスターを生き返らせてくる。
マイナーなモンスターだが、その後『ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー3 プロフェッショナル』や『ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト』で再登場を果たした。
『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』(2020年アニメ版)でも、ザボエラの仕掛けた魔法の玉に入っていた魔界のモンスターとして、ケンタラウスやグレンデルと共に登場している。流石にゲマと同じカラーリングではなくなっている。
- ムンライト
『星のドラゴンクエスト』に登場するボス。容姿はゲマと似ているが帽子の形が異なる。
- 執行補佐魔術師
『星のドラゴンクエスト』に登場するボス。その名の通り宇宙政府の執行補佐の魔術師とされるモンスター。上記のムンライトの色違いである。
担当声優
- 鈴置洋孝:『CDシアター ドラゴンクエストⅤ』
- 吉田鋼太郎:映画『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』
- 同氏と『ユア・ストーリー』にてヘンリー役として共演していた坂口健太郎氏は、『ファイナルファンタジー14 光のお父さん』でも親子のダブル主人公として共演していた。
- 中尾隆聖:『ドラゴンクエストライバルズエース』
- 同氏は他にも『ドラゴンクエストⅪS』で同じ敬語口調のボスキャラクター・フールフールや、アニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』(2020年版)では冥竜王ヴェルザーを演じている。
余談
その慇懃無礼な口調や笑い方、二人の側近を従えているなどの要素が、当時の『ドラゴンボール』の敵キャラクターであるフリーザに似ており、かなり影響を受けたと見受けられる。特に、PlayStation2版のパパス殺害シーンはまさにソレ。何気に後述の詰めの甘さも共通していたりする。後にフリーザ役である中尾隆聖が『ドラゴンクエストライバルズエース』にてゲマの声優を担当した。
『ドラゴンクエストⅨ』に登場したゲルニック将軍も性格や口調等、ゲマに酷似している。
『CDシアター ドラゴンクエストⅤ』では鈴置洋孝氏がゲマを演じている。
数多のプレイヤーに衝撃を与えた残酷かつ最凶の悪役で、ドラゴンクエストシリーズでは珍しく主人公と「因縁」の要素が強いネームドボス。
実はSFC版の最初のゲマ戦には、苦労の末にゲマを倒すドロップアイテムが存在する。
それはなんと―― 「ひのきのぼう」
散々苦労してこれっぽっちである……。
しかも確率としては1/4096という、異常なほどの低確率に設定されている。
スタッフによる一種のお遊び要素なのかもしれないが、結局倒したところで主人公がやられる流れになり、パパスも非業の死を遂げてしまう。ある意味、スタッフから「ストーリーとして変化はないから我慢して先に進んで欲しい」という、メッセージなのかもしれない。
関連イラスト
関連タグ
フリーザ:中の人&主人公と浅はかならぬ因縁を持つキャラ繋がり。
フールフール:中の人繋がり。