SF
えすえふ
拡散するSF
SFは(Science Fiction)の略であり、かつて多く用いられた和訳では「空想科学小説」となる。しかし現代ではSFの定義は明確ではなく、定義だけでも多くの論争を起こしてきた。和訳も、定義における意味内容の論争に深入りせずにそのまま「SF」(エスエフ)と呼ぶことが多い。
あるいは、サイエンス・ファンタジー(Science Fantasy)の略として使われることもある。
例えば、ジョン・クルートはSFを「いまだ存在していない変化した世界の問題を論じる物語」と呼ぶ。つまり、SFは物語の場面を描くのではなく、様々な世界の問題と世界の変化とを描かなければならないとする。また論じなければいけない、つまり現代科学の前提や議論と矛盾しないように提示しないといけないというのだ。クルートは、例えば太陽を取り巻く巨大なリングの回転を如何にリアルに詳述しても、そのリングは北欧神話のロキ神が置いたものだと書いてしまえば、もはやSFではなくファンタジーに過ぎないと例示している(J・クルート『SF大百科事典』)。言い換えるなら、単に物語を綴るのではなく、世界のありさまを主題とししかもその説明を現代科学の延長に立って為す物語を指すと言えようか。これぞ空想科学小説的なSF定義といえよう。
しかし伊藤典夫はSFとファンタジーの区分を曖昧にしておく方が好きであり、SFとはファンタスティックな話だと定義したいと明言する(伊藤典夫「はじめに」『SFベスト201』)。このように特に問題になるのがSFとファンタジーとの区別である。一般にSFは世界観に科学的(もしくは疑似科学的)な説明がなされているもの、ファンタジーは非合理的な説明がなされているものをさすが、実際には「魔法」や「魔術」が登場するのにSFを称しているもの(SFファンタジー)も多々あり、一方で世界観に合理的・科学的な説明が試みられているファンタジーも多く、両者を明確に区別することは困難である。ファンタジーを「仮想世界を前提にした物語」であると定義して、SFがファンタジーの一ジャンルであるという主張も存在する。「充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない。」というクラークの第一法則は有名である。
一方で、哲学的・社会的なテーマを扱い、科学的な道具立てを一切用いないSFも存在し、これを踏まえて「SF」をスペキュレイティブ・フィクション(Speculative fiction、思弁的創作)として定義する見解も存在する。藤子・F・不二雄は、自らのSF短編を、『すこしふしぎ(Sukoshi Fushigi)』の略としている。
定義の拡散の中で、SFという枠よりもスペースオペラやサイバーパンクなど細分化したジャンルにアイデンティファイする傾向もみられる。そこで細分化したSFの各ジャンルについて、SFとしての傾向と近年の日本での現状を中心に簡単にまとめる。SF以外のファンタジーなど他ジャンルでの扱い、もしくは現実の科学との接点など詳細は各記事を参照のこと。
スペースオペラ
別名「スペースファンタジー」。そのため「SFとはスペースファンタジーの略」と勘違いしている日本人も少なくない。
宇宙空間を舞台にした英雄譚を指す。宇宙ならではの壮大なスケールと人間ドラマを重視し、それを盛り上げるためにSF的な道具立てを活用する。科学考証はあまり重視しておらず、荒唐無稽な内容となることがしばしばである。
古くからあるジャンルだが、1977年の『スター・ウォーズ』の大ヒットがこのジャンルを一気にメジャーなものにした。日本では『宇宙戦艦ヤマトシリーズ』や『銀河鉄道999』、『機動戦士ガンダムシリーズ』などの作品が代表的。また小説での著名な作品には『銀河英雄伝説』や『タイタニア』等を挙げることができる。SFを設定に生かした上で、メインをむしろ英雄物語に置く、いわば仮想歴史小説のような仕立てとなっている。
サイバーパンク
人体の諸機能をコンピュータネットワークによって拡張した電子的リアリティの世界を描く作品。厳密には抑圧的な政治権力や荒廃した社会を前提としたものを指す。実際にはそのような厳密さを要求せず、サイバースペースを扱ったSFを漠然とさすことも多い。
1980年代に一世を風靡。小説『ニューロマンサー』や映画『マトリックス』が典型として挙げられる。日本では『攻殻機動隊』、『.hackプロジェクト』などが典型だが、インターネットが普及し仮想現実が浸透しつつある現在、サイバースペースを扱った作品はごく一般的なものとなっており、ジャンルとしては拡散の傾向にある。
タイムトラベル
通常の時間の流れを超えて未来、あるいは過去に移動する物語の要素。SFとしては、どのようにして時間の流れを超越し、そしてその帰結としてどのような現象が起こるかといった科学的説明が題材となる。例えばタイムマシンの仕組み、タイムパラドックスやバタフライ効果といった現象である。
知名度の高い作品では『ドラえもん』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』など。『涼宮ハルヒの憂鬱』をはじめとしてタイムパラドックスの面白さは近年も多くの作品で取り上げられているが、あまり科学的説明を重視していない作品も多く、ファンタジーとの境界は曖昧である。
超能力
科学で説明できない現象を起こす能力を中心としたSFである。一見SFとして定義矛盾であるが、超心理学におけるPKとESPの二分法のような科学的説明の試みがSFとしても成立させている。
歴代作品では『幻魔大戦』が名高い。近年は『とある魔術の禁書目録』・『とある科学の超電磁砲』が量子論をアレンジした世界観で超能力理論を展開している。
その他
その他、スチームパンクなどのレトロフューチャーもの、未来史や歴史改変もの、パラレルワールド、物語の中で登場人物が同じ期間を何度も繰り返すループもの、世界の滅亡を扱った終末もの、文明崩壊後の荒廃した世界を描くポストアポカリプス、人工知能(体)を題材としたAIものやロボットもの、突然変異体を題材としたミュータントもの、軍事をネタにしたミリタリーSFなどがある。近未来風の世界観、ロボや宇宙人のキャラクターを使ったSFベースの冒険活劇、コメディ、伝奇、SLG、シューティングゲームも定番となっている(SF初心者には、この手の作品=SFだと思われていることが多い)。セカイ系のように世界設定を空想科学と哲学の両面から説明する試みもみられる。電波ジャック、時限爆弾などを扱ったパニックものはギャグ漫画において定番になっている。もちろん、一つの作品でこれら複数の要素が用いられることもよくある。
なお、いわゆるロボットアニメ全体をそのままロボットSFと呼ぶのは問題がある。伝統的なSFにおけるロボットの定義は、自律的な判断力を持つ機械であることを一般に含む。すなわち、人間の操縦に従って動くだけの人型戦闘兵器はロボットではない。これもあってガンダムではロボットではなく「モビルスーツ」という用語を用いている。
また、娯楽性を追求するとどうしても科学考証が疎かになりがちなのがSFの問題点である。科学考証を重視したSF作品を特にハードSFと呼ぶが、ハードSFの中でも極度に科学考証に傾倒した作品は、娯楽性や人間描写を疎かにしているという批判を受けることがある。
関連タグ
フィクション 物語 SF・ファンタジー(pixiv小説のカテゴリータグ)
SF小説 SF漫画 SFアニメ SF映画 ハードSF sci-fi/サイファイ
SFアクション SFファンタジー 近未来 サイバーパンク スチームパンク スペースオペラ タイムトラベル 超能力 パラレルワールド サイエンス・ファンタジー
人物…未来人 宇宙人 / ファーストコンタクト ロボ/ロボット アンドロイド ヒューマノイド 人工知能 ホログラム ハッカー
食べ物…宇宙食
乗り物…UFO エアバイク ロケット 宇宙船 宇宙戦艦 空飛ぶ円盤 タイムマシン ハッチ 軌道エレベーター ワープ
武器…レーザーガン レーザーブレード / ビームサーベル ミサイル