「皆の前でトリックの粗を言うのやめて…!!」(オペラ座館殺人事件の犯人)
「先に金田一殺せばいいんじゃない?」(雪夜叉伝説殺人事件の犯人)
「トリックに…近道なし…!!」(悲恋湖伝説殺人事件の犯人)
「追いつかん……ッ!!トリックに肉体が追いつかん…ッ!!」(金田一少年の殺人の犯人)
「Good Luck!!犯人諸君!!」(魔術列車殺人事件の犯人)
「ハピバ〜〜〜ッ!!トリックハピバ〜〜〜ッ!!」(墓場島殺人事件の犯人)
「ジェットコースター…!! 征丸ジェットコースター…!!」(飛騨からくり屋敷殺人事件の犯人)
概要から
漫画アプリ「マガジンポケット」で2017年7月30日から2020年3月25日まで連載された『金田一少年の事件簿』のスピンオフ作品。
原作は天樹征丸・金成陽三郎・さとうふみやで、作画は船津紳平が担当。
全10巻。第7巻までで累計140万部を突破している。
2021年7月1日にはマガポケ6周年記念読み切り『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』 がマガポケに掲載された。
金田一視点ではなく歴代の犯人達の視点で描かれており、彼等の心情を中心にトリックや犯行を実行する苦労、謎を解かれる焦燥(と恥)を中心に描かれ、ギャグ作品かつシュールな作風が特徴。
当然ながら本編未読の読者にはネタバレの嵐である。
推理物なのに。
如何に「金田一」の連載開始が20年以上昔の作品で大人気作品(既読者が多い)とは言え、犯人の正体(いわば本作の主人公であるため表紙にデカデカと載っている)は勿論、トリックから何からネタバレだらけであり、さらに本作の焦点は犯人(共犯の場合はその全員)の行動と心境、トリックの為の労苦が中心であり、トリックや話の流れや大筋そのものは既読者向けにダイジェストで省略され、内容を知らないとピンと来ない部分も多い。そういう部分も含め、本編を読んだ後での読書をお勧めしたい。
第6シーズンで遂にFile編のシナリオをすべて消化(※後述)してしまったため、第7シーズンからはCase編としてリニューアルした(タイトルカウントもリセットされている)。
そして遂に『金田一少年の決死行』も終え、過去に登場した犯人たちが総出演する感動の最終回を迎えた。
…かに思えたが今度は新シリーズ(2004-2011年までの不定期連載だった第Ⅱ期)が開始された。ナレーターによれば単行本2巻分は出せるので『血溜之間殺人事件』まで行いたいらしい。
巌窟王「おいナメられてるぞ! 犯人!!」
真の最終話では、上記のネタバレについて歴代犯人たちの口から「犯人を最初から明かすのは推理モノで最大のネタバレ」「これ以上新作のネタバレをするのも良くない」という自虐ネタが飛び出した。
そして歴代犯人達が集まり、感謝の言葉で最後を迎えた。
そしてラストシーンでは……
「敗因(データ)は揃った...。では、金田一を倒しに行こうか...」
-こうして また 新たな犯人が生まれた........
ストーリー展開
本作においては1エピソードは「金田一」本編よりも短い、3~4話1組の形式をとっている。
話の流れは、犯人が被害者を殺害に至る動機や流れが(簡潔に)語られるところから始まる。
そして決起した犯人のトリックの準備から工作と実行と言う原作では絶対に描写されない裏側が描かれ、常に付きまとう「巻き込まれただけの登場人物Aであり続ける為の演技」とその不安、完全犯罪を目論んで複雑なトリックを準備したのに時に金田一のせいで、時に全くの偶然により起こるハプニングによるズレを必死に修正する姿、更に解決編では言葉のみの説明で済まされているが実行していたら生じそうな粗を必死で隠す犯人の苦労話、そして金田一に容赦なく暴かれ、時には苦労して考案・実行したトリックをあっさりと再現されたりしていく苦難、ラストに(ある人物を除き)刑務所への面接、あるいは頭に輪っかがついて死の国からインタビュー方式で金田一への敗因やどうすれば金田一に勝てるのかその分析を語って終わる。
このインタビューは「金田一への敗北後」に事件を振り返るのを目的としているため、犯人が失踪、または記憶喪失等に陥る場合にはビデオの一時停止の如く時間を止めてでも敢行している。
作中(悲恋湖伝説殺人事件)で金田一が発言している通り一生を棒に振る覚悟で全てを投げうって殺人に手を染めているわけで、彼らの奮戦は嘆かわしくもその的外れな思考回路や他キャラ(金田一含む)の失策へのツッコミ、更には体を張りすぎなアクションなど全てが爆笑を誘う。
なお、最後に「こうすれば金田一に勝てた」と分析した通りの人物が、次のゲスト(のヒント)になる(ただし、堂々とネタばらしで次の事件を話す犯人もいる)。
収録作品
第1シーズン
- ファントム/『File:1 オペラ座館殺人事件』
- 放課後の魔術師/『File:4 学園七不思議殺人事件』
- Mr.REDRAM/『File:12 蝋人形城殺人事件』
- 招かれざる客/『File:5 秘宝島殺人事件』※『週刊少年マガジン』出張掲載版
第2シーズン
- 雪夜叉/『File:3 雪夜叉伝説殺人事件』
- 陰の脅迫者/『File:11 タロット山荘殺人事件』
- 殺人鬼ジェイソン/『File:6 悲恋湖伝説殺人事件』
第3シーズン
なお第3話(ファイル9)との箸休めとして、現在『イブニング』で掲載中の『金田一37歳の事件簿』とコラボした『ファイルEX:オーナーの事件簿』が掲載された。こちらは犯人ではなく、『オペラ座館・第三の殺人』(の前)で死んでしまったオペラ座館オーナーの黒沢和馬がゲスト。
第4シーズン
第5シーズン
- 黒死蝶/『File:16 黒死蝶殺人事件』
- 首狩り武者/『File:9 飛騨からくり屋敷殺人事件』
- 怪盗紳士/『File:13 怪盗紳士の殺人』
第6シーズン
- 赤髭のサンタクロース/『File:7 異人館ホテル殺人事件』
- 亡霊兵士/『File:14 墓場島殺人事件』
- 道化人形/『File:19 速水玲香誘拐殺人事件』
- 『短編集1巻収録 氷点下15度の殺意』※シーズンチェンジの箸休めとして、マガジン本誌にも掲載
- 『オーナーの事件簿』(第3シーズン参照)
第7シーズン
第8シーズン
- 白髪鬼/『ファイル22(Case3) 天草財宝伝説殺人事件』
- MONSTER/『ファイル25(Case6) 怪奇サーカスの殺人』
- 『ファイル23(Case4)雪影村殺人事件』
- 巌窟王/『ファイル26(Case7)金田一少年の決死行』:本エピソードは原作最長の大長編の為6話構成+エピローグ1話の長丁場となった
第9シーズン
- 吸血鬼/『ファイル27 吸血鬼伝説殺人事件』
- ファントム/『ファイル28 オペラ座館・第三の殺人』
- 雪霊タカハシ/『ファイル30 雪霊伝説殺人事件』
第10シーズン
登場人物
ゲスト方式のため毎回変わるが、本作の主人公たち。ただし最初の犯人であるためか、初代ファントム、放課後の魔術師、Mr.REDRAMはちょくちょくゲスト出演する。
本作の作風上、彼等の苦労を茶化されているが、動機は重いものが多いため、作者もそこまでは茶化してはならないと、動機の部分は序盤で語るだけで本筋にはあまり描写されない。それとあいまってトリックの正否や奔走、金田一や登場人物の行動及びその他想定外のアクシデントに一喜一憂して一種のキャラ崩壊を起こしている。時にはその苦労に妙な感情移入をすることもあるが、彼等が行っているのは許し難い犯罪なので、中には彼等の狂気とマッチしていると言う評価の高いゲストもいる。
トリックを駆使する原作の都合上、その下準備や実行に伴う苦労を中心に描かれることが多く、また閉じられた空間やその他トリックに必要な仕掛けを作るために遠隔操作の爆発や発火装置の製作等といった高度な専門技能を一から学んだり、怪人やトリックなどの演出と言う本編の裏側、中にはぶっつけ本番でいざ度胸のままに成し遂げたり、自分のトリックにハマった警察官や怪人の仕業だと真に受けた周囲の人間達が勝手に盛り上げてくれる事に脳内で感謝したり、完全なる才能の無駄使いと凄まじい努力の方向音痴ぶりこそ本作の見所である。あと、アリバイ工作として演技した際に、自分自身の名演技っぷりに酔うシーンもよく登場する。
余談だが、女性の犯人は大体下の名前で呼ばれている。
「SASUKE出れるわ・・ッ!!」
「なんで俺が人を殺す時に限ってめちゃめちゃ雨降りだしたの!?」
「結局フィジカル…!!トリックって…最後はフィジカル…!!」
「知らなかった?犯人からは逃げられない....!!」
「私の中のモラルが悲鳴を上げている」
「心配するフリ…襲ったの私だけど…」
「そして登場…おじさん…!!インチキおじさん…!!」
「いい仕事するわ・・・・」
「天才子役…!!全員もれなく安達祐実や!!」
「その反応(リアクション)を待っていた!!」
「ナマモノ..!!トリックはナマモノ...!!」
尚、真の完結編ではこれまでの犯人が総出演でゲストを応援する形で登場した(死亡・生存・記憶喪失・失踪した者を含む)。
原作の主人公であるが、本作においてはラスボス。
次々とトリックを暴き、彼等の思惑をくじいていく存在で、いかに彼の存在が犯人たちにとって驚異なのか本作で読むとわかりやすい。
時には彼本人がハプニングを起こして、あるいは全くの偶然から犯人の目論見を砕き、一旦事件が収束して帰ったと思ったら引き返しても来る。更に金田一本人に直接殺意を向けても生還してくる。
また、トリックを暴くために犯人が命や精魂かけて成し遂げたトリックを(中にはフィジカル頼りなものを一晩でというとんでもまで)再現して、ゲストたちを辱めていく。
「不死身なの…?」
「こ…これが…金田一一…!!謎を解くのに命を懸ける男…!!」
「これアレだろ…?楽しい感じで推理始めといて最後めっちゃ怖い顔で犯人の名前告げるヤツだろ?どうかしてるよ!!」
「HK(はじめきんだいち)に用はないんだよ…!」
「ハ…ハメ技じゃないか…」
「堂本剛君に激似…‼いや…でもよく見ると松本潤君…いや亀梨君…?山田涼介君にも見える…絶妙な顔立ちだわ…」
「知恵がすっごい…いや…知恵だけじゃない…生命力…そして運も… 東大出てないのに…!!」
「謎を解くのにこんなことする必要ある?」
「忍者かコイツは…」
「呼ばれなくても来る...」
「もう少し考えろ..!!コンプライアンスを..!!」
「コイツ...人を騙し慣れてる....」
「もう普通に犯人はお前だって言ってくれよ!!」
「とどめの刺し方完璧じゃないですか?」
「コイツの腕にコンプラって彫ってやりたい..」
「ジッチャンジッチャン....うるせーんだよ!!あたしたちは今を生きてんだよ!!」
「勝つことでしか証明できないものがある」
事件が起こる都合上、切っても切れない存在だが、作中の都合で犯人たちの隠蔽工作やトリックに翻弄される役割。その中で犯人たちに心中でポンコツ扱いされるのが本作における一つのお約束。
「ノーフューチャー!!日本の治安ノーフューチャー!!」
「ワークライフバランス..ッ!!ゆっくり休んでね....!!」
「正直警部より俺のがIQ高いと思う」
「警察のポンコツ革命や〜〜!!」
時には犯人の想定の斜め下を行く迷推理で逆に犯人を困惑させる事も。
「こっちがなんてこっただよ!!」
ただし約1名はたまに犯人にとんでもない逆襲を行う。
「キャリアを超えるキャリア…!!一瞬にしてこの場の権力構造が入れ替わった!!」
「どう考えても……犯人に対する接し方!!」
- インタビュアー
章のラストで犯人たちにインタビューに赴く謎の人物。刑務所のみならず、最期を迎えたゲストには死の世界に赴いたり、中にはとんでもないタイミングにも実行するため、一部からは正体はこの人または神のような超常的存在と推測されていたが、最終話では……。
時にゲストにダメ出しや無茶な反論をかまされるが、言葉を荒立てたりせずたまにシレッと毒のあるツッコミを返すこともある。
インタビューの内容は敗因を振り返るものであり、最後まで目的は明かされなかった。
....しかし、ラストシーンで....。
備考
- 絵柄が初期の「金田一」に近く(と言うか連載当時のタッチに合わせている)、本家より原作に近いという逆転現象が起こっている。女性キャラが巨乳に見えるのも原作準拠。原作作画担当のさとうふみや曰く「あの頃の絵を改めて見させられると恥ずかしい」らしい。
- Pixivに作画担当の船津氏本人が本作のイラストを投稿しているが、当然犯人のネタバレがあるので閲覧の際は注意が必要である。
- 単行本も、案からネーム、連載までの楽屋ネタのオマケ漫画があり、更にカバー裏に関して登場人物がツッコんだりと、原作の単行本を持っているとニヤリと感じる小ネタが豊富。
- 小説版(『オペラ座・館新たなる殺人』『幽霊客船殺人事件』『電脳山荘殺人事件』『鬼火島殺人事件』『雷祭殺人事件』『上海魚人伝説殺人事件』『邪宗館殺人事件』『殺戮のディープブルー』)は作者がトレースしづらい事もあり、取り上げられる事はないと思われる。
- この漫画にピッタリな『鬼火島殺人事件』の犯人が未登場に終わるのは悲しい…。
- 『殺戮のディープブルー』の犯人向きのパロディは、なぜか『黒死蝶殺人事件』の犯人が担当した(余談で、蝶々が出てくるのはこのプ○キュアである)。
- 小説版が初登場作品の某犯人はがっつり取り上げられた(ただし小説出身の本人の友人には触れられず)。悲恋湖の犯人、魔犬の森の犯人のように、複数の話を跨いでいるキャラもいる(高遠は言わずもがな)。
- 原作『オペラ座・第三の殺人』には一代目ファントムと二代目ファントムが登場するコマが存在するが、この漫画の『オペラ座・第三の殺人』に二代目ファントムは登場せずに終わった。自裁した訳ではないため、背後霊になれないというのもありそうだ。
- やはり…というべきか、事情が事情なだけに、File:2『異人館村殺人事件』の六星竜一の登場はなかった。同じくギャグパロディである金田一少年の1泊2日小旅行では(原作では故人となっているものをその旨のツッコミと脚注を付けてまで)登場したのだが。しかし、描かれなかった理由は飽くまで推測のため、真実は定かではない。また、六星は結果論ではあるが目的を全て果たし、一に勝ち逃げしたとも言える犯人でもある。
- 原作や他のスピンオフと同様に男の裸とおばさんの裸に夢がなく、少年漫画のルールがよく分かる漫画。単行本のおまけカット、おまけ四コマでコスプレ姿、水着姿、へそ出しルックを披露した犯人はいたりする。
- 「1泊2日小旅行」と同様に、「原作と地続きか」は意見が分かれるところであり、「黒魔術殺人事件」の後で「獄門塾殺人事件」が発生するなど、ハッキリとドラマ版やアニメ版のような別軸だと分かる描写もある。「原作でもこれぐらい苦労していたのでは?」という各読者のバラバラな妄想こそに醍醐味があると言っていいだろう。
余談
原作において『殺人レストラン』『女医の奇妙な企み』『速水玲香と招かれざる客』など、倒叙もので犯人視点でギャグ風に描かれた作品があるほか、セガサターンで発売された『星見島 悲しみの復讐鬼』では犯人となって金田一から逃げ回るという異色の作風が取られており(同作ではオープニングで「このゲームは犯罪を助長するものではありません」という注意書きが流れる)ゲームオーバーになると歴代の怪人がアドバイスしてくれるという謎のサービスがある。
本作は「二つにまとめちゃいました」という原作と抱き合わせにした電子書籍が発売されている。これは、過去に金田一少年の影響で金田一のじっちゃんに若者読者が流れたのと同様の流れを期待しているのかもしれない(似たような例)。
関連タグ
金田一少年の1泊2日小旅行:本作同様金田一少年のスピンオフコメディ。本作と異なり、主要キャラをメインにした事件のその後が舞台なのが特徴。死亡しているキャラが生きてたり極端な性格アレンジが加えられていたり身体能力の異常さをそのままネタとして取り込んでいたりとこちらはよりキャラ崩壊気味な作風であり方向性は別物。
犯人の犯沢さん:こちらは作中の犯罪者ではなくモブ犯人(オリ主)の視点から描かれたお話。作風としては1泊2日小旅行の方が近い。
3年B組一八先生:金田一のパロディが登場した。
犯人たちの事件簿パロ:とうとう二次創作でも本作のパロディが始まった。スピンオフのパロディとは…。
タルト少年の事件簿:金田一とプ○キュアを掛けるネタは昔から流行っていたのだ。本作に俳優ネタは出たが声優ネタは出ずに終わったのが悲しい(ただし、本作を描く際に作者がアニメ版を視聴したことが記述されている)。