概要
その国や地域で生まれた人が生まれてからどのくらい長く生きられるかという期待値のことである。
新生児の平均余命(へいきんよめい)とも言える。
一般論で言えば経済的に裕福な人が多い先進国では長く、逆に貧しい人が多い発展途上国や失敗国家では短い。
これは先進国は病院がちゃんと機能している場合が多いからであるとされる。(発展途上国や失敗国家はこの逆パターン)
他にも治安が良い国や気候が温暖な国、人口が少ない国が有利とされる。
逆に言えば戦争をしているなど治安が悪い国、人口が多い国、寒い国などは不利。
時々「平均寿命が長い国は高齢者が長生きしている」というイメージがあるが、それ以上に「健康な若者が多いこと」や「乳幼児の死亡率が低いこと」などが有利な要素である。
実際、平均寿命が短い国でも長生きする人は少なくないのだが、そういう国は乳幼児死亡率が日本とは比較にならないくらい高いことが多い。
先進国は平均寿命が80歳を超えている長寿国が多い。
ただしアメリカ合衆国(最新の統計だと77〜78歳)などの例外もある。
逆に発展途上国は平均寿命が短い国が多く、特に失敗国家と呼ばれる国々の中には65歳を下回る国も少なくない。
しかしチリのように80歳を超える長寿国も一部存在する。
一般には女性の平均寿命のほうが男性のものよりも長い。これについて、女性の身体のほうが耐久力が高く作られているからという説明もあるが、いっぽうで女性のほうが体調管理にこまめに気を配っている、すなわち健康意識が高いからとする説もある。
なお他の動物でもメスの方がオスより長生きする傾向がある。これは生物学的にメスの方が肝臓が強いからである。
識字率、一人当たりGDP、民主主義指数、人間開発指数などと共に先進国と発展途上国を見分ける指標の一つになっている。
各地域の事情
東アジア
日本、香港、マカオは世界トップクラスの長寿国として有名(最近の統計では男女総合で83歳くらい)。ただし、香港とマカオは中華人民共和国(中国)の一部と見做されているため、独立国家では無い。
韓国は昔は平均寿命が短かった(1980年代までは北朝鮮と大差なかった)が、高度経済成長(漢江の奇跡)によって先進国に昇格したのと同時に平均寿命が大幅に伸び、現在は東アジアの独立国家としては日本に次ぐ長寿国となっている。
台湾(中華民国)は79歳くらい。先進国の中では数少ない80歳を下回る国である。
中国本土はだいたい75 歳前後だが、人口大国であることを考慮するならばかなり健闘していると言える。
北朝鮮、モンゴルは70歳を下回る。最近の統計では68歳くらい。
東南アジア
シンガポールは世界でもトップクラスの長寿国である。ブルネイは78歳程度である。
それ以外の国はあまり長いとは言えない。比較的マシなタイ王国、マレーシア、ベトナムで74〜75歳くらい。
ラオスとミャンマーは65歳程度であり、世界的に見ても短命の部類に入る。
南アジア
インドを含め殆どの国は70歳を下回る。これは公衆衛生に問題がある国が多く、コレラや腸チフスなどが流行しているためである。また、医療体制も貧弱である。
西アジア(中東)
イスラエルは最近の統計で82歳程度であり、世界でもトップクラスの長寿国である。ただし、パレスチナは72歳と短い。
他にはキプロスが79〜80歳くらいで先進国に近い水準。レバノン、カタール、アラブ首長国連邦が77〜78歳くらい。
イエメンとアフガニスタンは65歳を下回っている。特にアフガニスタンはアフリカ以外で唯一60歳を下回る国である。
ヨーロッパ(西欧、北欧、南欧)
先進国が多いだけあって長寿国も多い。特にイタリア、スペイン、スイス、アイスランドは世界でもトップクラスの長寿国である。フランスやスウェーデンもそれに準ずる。
イギリス、ドイツは80歳くらい。一人当たりGDPではイタリアやスペインを上回るが、平均寿命では遅れをとっている感じである。
デンマークは西欧の中では数少ない80歳を下回る国だが、これはタバコやお酒が好きな国民性と移民の大量受け入れが理由とされる。しかしそれでも79歳程度であり世界基準で見れば長生きの部類である。
東欧、旧ソビエト連邦
東欧は西欧に比べて短い国が多い。これは経済的にあまり豊かで無いのと冬の厳しい寒さが原因。比較的マシなポーランドやチェコですら77〜78歳程度である。
旧ソ連諸国はロシアを含め70歳を下回る国が殆どである。これは経済的な貧しさに加えてお酒が大好きな国民性も理由と言われている。
アフリカ
長寿国が、無い…。公衆衛生に問題がある国が多く、マラリアやエイズ、エボラ出血熱などの感染症が流行しているのが原因。また、戦争をしている国も多い。
最もマシなアルジェリアとモーリシャスですら74歳程度である。
殆どの国が70歳を下回っており、60歳を下回る国も少なくない。最低の国は49〜50歳程度である。
ちなみに2000年頃には平均寿命が30歳代の国もあったので、これでも改善されてはいる。
独立国家では無いがレユニオンとマヨット島(共にフランスの海外県)は79歳程度でありアフリカの中ではダントツの長寿である。
北米
カナダは世界的に見てもトップクラスの長寿国である。
一方、アメリカ合衆国は先進国の中でも平均寿命が短い国(最新の統計だと77〜78歳)である。これは深刻な経済格差が存在し貧富の差が大きいことやファストフードをよく食べる生活スタイルなどが原因と言われている。
また、人種毎の格差も大きく、白人は西欧諸国と大差無く、ヒスパニック系に至っては日本人と大差無いレベルだが、黒人の平均寿命は発展途上国並みの70歳代前半である。
独立国家では無いがグリーンランド(デンマーク領の島)は70歳代前半であり、デンマーク本土よりかなり短い。
中南米
チリは81歳程度であり、発展途上国と呼ばれる国の中では最も長寿である。キューバ、コスタリカも79歳程度でまあまあ。
独立国家では無いがグアドループとマルティニーク(共にフランスの海外県)は80〜81歳程度でカリブ海の島々の中では長寿の部類。
それ以外の国はあまり長くない。主な国だとアルゼンチンとメキシコが76歳程度、ブラジルが74歳程度。
ハイチ、ガイアナ、ボリビアは70歳を下回っている。特にハイチは62歳程度と世界的に見てもかなり短い。
オセアニア
オーストラリアは世界でもトップクラスの長寿国である。ニュージーランドも81〜82歳程度でそれに準ずる。
それ以外の国はあまり長く無い。パプアニューギニアは62歳程度で世界的に見てもかなり短い。
ちなみに独立国家では無いがグアムと北マリアナ諸島(共にアメリカ合衆国の準州)は77〜78歳くらい。
日本の平均寿命
現在、日本人の平均寿命は世界でもトップクラスに長いと言われている。男性は80歳程度、女性は85歳を超えている。
ただし近年は香港、マカオ、モナコ、サンマリノ、アンドラには抜かされつつあり、ダントツの首位というわけでも無いようだ。
※しかしこれらの国々はいずれも人口が少ないミニ国々であり、「ある程度の人口規模を持った独立国家」の中では日本が世界一の長寿国であるということには変わりが無い。
実は日本が世界一の長寿国になったのは昭和時代末期のことであり、最近のことである。
戦前の日本は欧米諸国より短かった。これは赤痢や結核、マラリアなどの感染症で早く亡くなってしまう子供が多かったため。
とはいえ平均寿命が50歳未満と短かった武士の時代ですら長生きした人が沢山いたのも事実であり、一休宗純や葛飾北斎などは長生きしたことで有名である。
地域別の平均寿命
南関東、中部地方、近畿に長寿県が多いとされる。これは気候が温暖であり経済的に裕福であるのが理由と言われている。
かつては豚肉をよく食べる人が多い沖縄県民が長寿と言われていたが、最近は女性はともかく、男性の平均寿命が大きく下降している。これはファストフードをよく食べるというアメリカ式の食生活が原因と言われている。
逆に北海道、東北地方、北関東、南九州は平均寿命が比較的短いと言われている。これは経済的にあまり豊かでないのと、南九州以外は寒い気候により運動不足になる人が多いことが理由と言われている。
特に青森県は都道府県別の平均寿命ランキングの最下位の常連である(他の都道府県より0.5〜1歳程度短い)。とはいえ、世界的に見ればそれでも長寿であることに変わりは無いが。
また、近畿でも和歌山県は比較的短いと言われている。
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