東京都千代田区の秋葉原駅を中心とする外神田地域(外神田、岩本町、神田佐久間町など)、秋葉原の通称。古くは青果市場からラジオ街を経て、大規模な家電量販店などが立ち並ぶ電気街、そして「趣都」とも呼べるオタクの街を経て、現在も変化し続ける街である。
呼称について
オタクという日本の文化が発展してからは秋葉原(あきはばら)という地名の読みとは異なるアキバという呼び方が一般化したが、秋葉原とは本来秋葉神社(あきばじんじゃ)を地名の由来とするので、起源的にいえばこの呼び方は間違いではない(厳密に言えば、秋葉神社の総本社である浜松市の秋葉山本宮秋葉神社をはじめ、全国の秋葉神社ではあきはと発音する方が多く、あきばの読みは下町訛りによるものであったりするのだが)。
無論地名、駅名はあきはばらと読むので、あきばはらとは呼べない。
一般にアキバと呼ばれる地域及び駅は千代田区外神田だが、秋葉原の地名は台東区にある。
ピクシブのタグなどでもいえるが、基本的にカタカナ表記で「アキバ」と言うことが多く、ひらがなで「あきば」と言うことは少ない。
歴史
前史
明治時代初期に鎮火社(現在の秋葉神社)周辺を火除地(「ひよけち」。今で言う防火帯)にしていたことから付いた地名である。
江戸時代はこの辺り(に限った話ではなく、江戸の下町で)は火事が多く、明治初期の火事の後、新政府が今の秋葉原駅の辺りに火避けのための神社「鎮火社」を建立した。
当時の江戸の住民は「秋葉大権現を勧請して祀った」と誤認していたが、新政府から嫌われていた神仏混淆(こんこう)の代表例のような秋葉山では内部事情が混乱中でそれどころでなく(実際、少し後には修験系と僧侶系に分裂してしまう)、新政府がそんな所から勧請するわけもない。
とにかく、「秋葉神社」(ではない)の周辺の火除地は「秋葉の原(あきばのはら)」「秋葉っ原(あきばっぱら)」「秋葉原(あきばがはら)」と呼ばれるようになった。
そこに上野駅から貨物取扱を分離するために日本鉄道(後の国鉄、今のJR東日本)が路線を延長し秋葉原駅ができた際に、連濁して「あきば」と読むのは関東訛りだと判断したのか(実際、秋葉神社の本社は「あきは」であり濁らない)、「正しい」とした呼び名の「あきはばら」に「直し」た。
既成事実のように「秋葉社(あきばしゃ)」になっていた神社は、この際に現在の台東区内へ移転している。
神田川に近い立地上、貨物駅からの物資の集散で栄え、青果市場もあったが、河川輸送の衰退と市場の狭隘化により転出し、貨物駅も今は広場と商業施設になっている。
その代わり、旅客は総武本線の延長などによりどんどんと増加していった。
電気街の盛衰
戦後には東京電機大学が近かったこともあり電子部品の店舗が集まったのを始まりに、家電製品の量販店も吸い寄せられるように集まった。一時期は世界最大の電気街ともなり、特殊な文化の街と貸した。電気店がこれだけ集中している街は世界中見てもかなり珍しい。単に量販店などだけではなく、パーツショップなど細かな部品を取り扱う店も平行して多数存在する点では特に顕著である。
秋葉原の代名詞とも言える電気街だったが2000年代になると、新世代の家電量販店の拡大(秋葉原にもヨドバシカメラマルチメディアAkibaが開業。郊外型量販店の躍進も激しい)、インターネット通販の拡大、若者の理工系離れなどによって、衰退していく。
一方で新しく進出した家電量販店は、ニンテンドーDSのすれ違い通信勢などの新機軸となる層を呼び込み、一種のムーブメントが成立していた。
当時のゲーム『桃太郎電鉄』シリーズの2007年度版には物件駅として秋葉原が初登場したが、その物件リストには家電量販店が1件もなかった。このシリーズは日本全国をスタッフが実際に旅して制作しているため、旅先で感じ取った町並みがどのようなものか色々と反映されている。秋葉原に家電量販店を取り上げなかった点は、日本を舞台にした架空の世界観とはいえ、当時の状況を色濃く見せていたのかもしれない(なおヨドバシAkibaは電気街の反対側に立地)。
アキバの小規模電気店はその割を思いっきり食ってしまったほか、旧世代の量販店の閉店・縮小も相次ぎ、サトームセンは駅前店のビルそのものが解体され、ロケットもアマチュア無線館を除いて全滅、LAOXは中国の免税店に買収されかつての体をなしておらず、街の大部分を紅白のネオンで飾り、「石丸電気はあきはばらばら」で知られたシンボル的な家電量販店であったあの石丸電気すらもエディオンに買収され、現在はその看板すら残っていない。
多くの家電量販店が経営不振で秋葉原から消えていった中でも、オノデンだけは古くからの家電量販店の風情そのままに変わらず営業している。
オタクの町アキバ
そんな中で当時のギャルゲー・深夜アニメブームの影響を受け、オタショップが続々開店。アキバの象徴的存在メイド喫茶も続々増加していった。この地は「アキバ」と呼び親しまれ、アキバ系なる住人を多数抱えていた。オタク趣味をカミングアウトすることが死亡フラグであった平成前半期の時代、秋葉原は数少ない解放区であった。
長らく日曜日には電気街を横断する「中央通り」にて歩行者天国が実施されており、以前はキ○ガイじみた目立ちたがり屋による違法な撮影会やゲリラライブなどが頻発し、さながら無法地帯の様相も呈していた。だが皮肉にも2008年に発生した通り魔事件の影響で取り締まりが強化され、歩行者天国も一時中断。表向きにはこうした手合いは軒並み排除された(一部は裏通りなどに移動して、しぶとく生息しているが…)。
が、弊害として実施中は大掛かりなバリケードが築かれ多数の警官や警備員が巡回するなど、かなり物々しい雰囲気の歩行者天国となってしまっている。
こうした秋葉原関連の事件を受けてか、警察の巡回や職務質問が多い(買い物客を恐喝する、いわゆる「オタク狩り」があった影響。また買い物客自体を点数稼ぎの職質対象とする警察官によるオタク狩りも度々指摘されており、酷いケースでは所轄外から越境すらあった模様)。
またJKビジネスのようなブラックなサービスを提供する店や、いわゆる「エウリアン」の客引、街頭募金を装った募金詐欺が日常的に目立つのもアキバの特徴であり、こういった現状には批判的な向きも多い。ちなみに条例施行により客引きやJKビジネス店はかなり駆除されているが、その後もコンカフェを装った違法風俗店は再び蔓延しており、2021年5月に何軒も摘発されるも同年8月の報告では客引きが戻ってきていることから、手を変え品を変えのいたちごっこが始まりつつある模様。通りによっては2m置きに客引きが大量に並ぶなど、歓楽街そのものの様相を呈しており、エウリアンですら末広町に追いやられるほどである。
ちなみにアキバの町中には小学校があるため、エリアの殆どが性風俗店の出店規制地域とされている。つまり「合法」な風俗は一つも存在しない筈なのだが、詳しい人に言わせると開き直っている業者も見られ、油断できないとのこと。
2010年代に入るとさらに国内の消費が伸び悩み、国内電機メーカーも衰退。インバウンドによる外国人観光客を当て込んでの免税店が増えていく。電気街の衰退と上記の撮影会騒動、通り魔事件、客引きの増加などで「ハイテクの街」から一気にイメージダウンしていた秋葉原であったが、海外や若年世代のオタク文化浸透が知られるにつれ、いわゆる「聖地」化が進んだ。往年の電気街を知る人には複雑な心境でもある。
一方でこの頃から界隈の飲食店に注目が集まり、テレビなどのメディアでも取り上げられるようになる。実際、千代田区ではモーニングの激戦区として知られるが、家電量販店やホビーショップの開店待ちで朝早くから訪れる層や界隈を朝から歩くビジネスマン・OLを考えれば必然である。
コロナショック
2020年、新型コロナウイルス感染拡大のあおりを深刻に受ける形となり、国内はおろか外国からの観光客が激減。電気街の中核を成す店はおろかオタク向けショップや飲食店も休業や閉店が相次ぎ、駅前一頭地でも空きビルが乱立する事態へと発展した。
パーツショップがかつては多かった裏通りにも空き店舗が目立つと、歌舞伎町の浄化作戦で新宿などを追われたヤクザや半グレといった穏やかではない集団に目をつけられ、それまで隆盛していた普通のメイド喫茶およびコンカフェを模した「偽物」という形での違法風俗が急速に侵食している状態にある。たとえ合法のケースにおいても歌舞伎町の水商売関係者の左遷コースなので、秋葉原の水商売の店の質は総じて推して知るべしである。
また、コロナショックは政治との関係が深い町という面にも影響を及ぼしたとされる。自民党は総裁選で麻生太郎が秋葉原で演説を行った2006年以降、15年間にわたって国政選挙の最終演説地として秋葉原を選んでいたが、2021年の岸田政権下の衆議院選挙では高層マンションなどの再開発が進む品川区・大井町であった。
安倍政権との違いを鮮明にしたい思惑があったとされるが、バブル崩壊後もあまり不景気の影響を受けず、形を変えながら全盛期日本の大量消費社会を継承する存在として発展を続けてきた秋葉原のような商業中心の大衆の街から、23区南部的キラキラ系グローバル無味無臭都市への解体を政府中枢が望んでいることを暗示しているのかもしれない。また野党は野党でオタク層への攻撃を強めており、アキバの象徴である萌え絵の看板やメイド喫茶の類もクレーマーの攻撃が危惧される。
コロナ前まで溢れかえっていたホームレスたちもコロナを期に軒並み排除されている。特に駅前にテントを張って居付いていた類のホームレスは完全に全滅したと言って良い。これにより、日銭のために空き缶拾いをするホームレスがいなくなり、元々空き缶・空ペットボトルゴミ箱が撤去されていることが多かった秋葉原に空き缶や空ペットボトルが溢れ返る事態となった。界隈で清掃活動をしている清掃業者を見つけて回収でもして貰わないと、おちおち空き缶や空ペットボトルが処理できないことになりかねない状況となった。
現在と今後の展望
駅前周辺は再開発が進んでおり、かつての家電量販店などの跡地がホテルやマンション・オフィスビルへと建て替わっている事例も見られ、それまで品は変われど「物を売る街」だった形態そのものにも変化の兆しが見られる。
外国人観光客の間でも西のオタ街大阪日本橋の存在が徐々に広まり、大阪であれば他の観光地にも近いことから、こちらへのシフトも起こると思われる。
2021年になるとテナントが撤退して空き店舗になるビルが軒並み増えた。空き店舗にポケモンカードゲームの高騰によりTCG専門店が開店されるようになった一方、コンセプトカフェのようなオタク向け性風俗の店が入り始めるようになった。歓楽街には付き物の無料案内所が話題となったことで法令違反の店が同年5月あたりに一斉摘発されるなどしているため、ちょっとダークなイメージが付くようになっている。
上野・池袋・歌舞伎町などから風俗系資本が流入しているという情報もあり、根の深さが感じられる。
既存のホビーショップなどオフラインショップにしても、日本より物価の高い外国人観光客(彼らは日本語が分からないことが殆どで、日本のオンラインショップで買い物をすることは原則ない)を想定した価格設定となっている場合がおっくなり、そうした店では日本人客の無視が始まっている。
加えてこのような流れの影響なのか、2022年末あたりからはオタク仲間を装って近づいての宗教勧誘や、アンケートを装った個人情報収集などの報告も見られ始めており、人通りの多い時間帯にただ歩くだけでも一定の危険を考慮しなければならない状況になりつつある。
とりわけ他の繁華街と比較してなお様相が異なるものとして、他店や駅構内だろうとこうした者が紛れ込んで活動をしていることだろう。
また、現在のヨドバシ周辺が再開発されたように、オノデン周辺を再開発する計画がある。石丸電気本店の跡地がマンションになるなどの転向が見られる。
とらのあなやガンダムカフェ、肉の万世などといったランドマークが次々と閉店し、以前から予測されていた「ビジネス街への変遷」が進み、電気の町としてのイメージが失われていったように「アニメタウン」としての秋葉原の存在感も徐々に薄れていく可能性がある。
急速に変化する時代の中で、これまでの秋葉原らしさが失われるのを危惧する声もある。
かつての「電気街からアニメタウンへの変遷」なら街そのものが商業都市である点は変わらなかったが、今回の変遷は商業施設そのものが減っていくという点で、根本が異なる。
アキバ系なる住人
→オタクの項も参照。
秋葉原に通いつめる各方面の得意分野をこよなく愛するマニア達をアキバ族と呼び、分類すると生息地が異なる数種類に分けられる。昔は男性ばかりだったが、その後女性も増えてそれなりの数がいる。
しかしながら通販へのシフトと金の若者離れが激しく、店も少なくなり、秋葉原に来なくなった層も一定数出てきた。
- 電子工作マニア
最古参のグループで、秋葉原のアイデンティティたる存在。ラジオセンター付近や秋月電子通商がある通りに集中している。マニアから職業エンジニアまで御用達。某国のミサイルもここで調達した部品が使われていると言われている。近年はIoTのブームにより勢力を再拡大している。
- 無線マニア・ラジオマニア
以前から見られるグループで、年配者も多いのが特徴。アマチュア無線に強く、ラジオセンター付近に一大拠点がある。
- オーディオマニア
これも以前から見られたグループで、勢力は小さいが「音の違いが解る」お金持ちが多い。
- パソコンマニア
80年台から伸びてきたグループ。かつてのマイコン族。ナイコン族なんてのもいた。Windows98発売頃は最大勢力であった。通販シフトやスマートデバイスの隆盛のより勢力は衰えてきているが、「オーバークロッカー」「エンスー」とよばれる筋金入りパソコンオタクは未だ健在で一定勢力を誇る。
- アニメマニア
中央通の東側付近に生息し、アニメの中のキャラクターに取り込まれているちょっと危ない夢の世界に入り込んでしまっている傾向が有る。2000年代には最も数が多い種族だったが、アプリゲーム(俗に言うソシャゲ)の影響を受けて以前の勢いは無い。
- ゲームマニア
中央通の西側付近に生息し、お店で新作の発売日のチェックをし、店頭にある試しに出来るゲームに集まる。あまりに数が増え過ぎると迷惑がられる事もしばしば……。
以前はえっちぃゲーム屋も多数存在し、その巨大な広告が秋葉原の風景の一部となっていた時代もあったが、市場の縮小とともに看板もアプリゲームのキャラ達に乗っ取られ、現在は雑居ビルの片隅に追いやられてるのが現状。
- アイドルマニア
中央通と駅の間に生息し、将来ブレイク必至のアイドルを求めて秋葉原で開かれることの多いサイン会に出現。 電車男やAKB48ブーム当時のマスコミはアニメ漫画ゲームに詳しくなかったためか、あるいは詳しくなりたくなかったためか、「メイドカフェとアイドルに萌え~」がアキバ系というイメージで語られていた。
- コスプレマニア
アイドルマニア、アニメマニアに近いグループで、普段はあまり目にしないが、歩行者天国が始まると何処からか現れ、派手なパフォーマンスを始める者も。海外出身者も多いらしく、アキバ族の中では最も国際的に友好な種族だが、警察などの狩りの恰好のカモにされているとか…
- 模型・玩具マニア
意外と注目されていないグループではあるが、主に家電量販店のホビー関連ショップに現れる。ラジオセンター付近にもお店が多い。
さらに、外神田五丁目交差点付近にはいわゆるスケールモデルを主力商品とするディープなお店がいくつか纏まっている。
いわゆる模型・玩具マニアとは毛色の違う特撮マニアも、特撮のなりきり玩具目当てに出没することがある。また、数あるホビーショップの中にはトレーディングカードを扱ったものもあるため、それら目当てにカードゲームマニアが現れることも。
- 鉄道マニア
こちらも意外と知られていないグループであり、アキバ族の中でも分布する範囲が最も広く、神田川を越える唯一の種族である。主に模型・玩具マニアに似たタイプとそうでないタイプに分かれるが、2006年を境に後者のタイプは激減している。
理由としては、神田川を越えた先の旧万世橋駅駅舎跡の敷地に、かつては交通博物館が存在しており、こちらへの最寄り駅が秋葉原駅であったためだが、2006年5月14日に交通博物館が閉館したことから、鉄道模型を収集する通称模型鉄とアニメと両方が好きな通称アニ鉄以外の層の大半は、鉄道博物館のある埼玉県大宮(さいたま市大宮区)等に移っている。
現在は残ったグループが、主に家電量販店のホビー関連ショップや中央通りと昌平橋通りの間の秋葉原駅から末広町駅付近までの割と広い範囲に地味に生息している。
- サブカルチャー関連の店・建物の一部
余談
秋葉原の深夜販売
秋葉原は世界で最初に新製品を入手出来る街とされる(現地時間午前0時販売解禁というルールであればだが)。
IntelやAMD、NVIDIA等の新製品が発売されるときは、大抵何らかの深夜販売イベントが開かれる。
このため最速レポートを売りにしている海外メディアやブロガーはわざわざ日本に来て秋葉原で製品を入手し、拠点から新製品のレポートを行っているという。
外部リンク
関連イラスト
関連タグ
神保町 - 秋葉原の隣(徒歩15分程度)にある、こちらはこちらで趣味の町。
ネプリーグ - 深夜枠時代は秋葉カンペーなるネプチューンの堀内健がオタクになりすまして秋葉原のイベントでカンペを使って色々やらかすコーナーがあった。