ルール無用JCJCタイムアタック
るーるむようじぇーしーじぇーしーたいむあたっく
この企画は2022年8月からニコニコ動画やYouTubeで行われている、ミニ四駆の非公式競技である。ためにならない氏(以下ためおじ)が最初の動画を投稿し、以降アズパカ氏やにわから氏、ユウタ氏等、様々な投稿者が参加している。
その名の通り使用パーツ規格や寸法等一切の制限を設けずに制作したマシンで、ジャパンカップジュニアサーキット(通称「JCJC」)での走行タイムを競う。参加者が増えるたびに元から無いも同然の制限はどんどん緩くなっていき、2024年1月現在のレギュレーションは「計測地点は固定」「コースレイアウトに手を加えない」「コースアウトを直接的に防ぐ細工をコースに施さない(一度ためおじ氏が試したが却って遅くなった)」「その上で3周のタイムを競う」「コースアウトしたら失格」くらいである。ただしこれらはあくまで参加者の独自の縛りに近く、あくまで提唱者のためおじ氏が定めているルールは「計測地点」のみであり、それ以外は何をしても本来は何の問題もない(例えばコースの加工等には「最後の良心」、ルールの行間には「個人のプライド」と語っている)。
ルール無用ならではの多種多様なアプローチで人気を博しており、どんな発想でタイムの壁をぶち破るかを楽しむ動画群となっている。また、ただ速くするだけでなく、ルール無用と言いつつシャーシの原型を可能な限り保ったり、ダイソーの模造品(パチ四駆)を原型にしたりなど、各投稿者のこだわりと愛も見どころである。
2023年4月22日から30日まで開催されるイベント「ニコニコ超会議2023」のミニ四駆ブースにて、日本のベアリングメーカー「日本精工株式会社」の協賛のもと(公式の記事)、「超ルール無用JCJCステージ」という名称で公式種目に採用された。発案者含む10人が、協賛会社のベアリングの使用を条件に、レースに参戦。参加予定のレーサーに非公式ミニ四駆パーツとしてベアリングが支給された。
最速記録は外部リンクを参照されたし。
- タイヤをモーターに直接差す(ダイレクトドライブ。尚トルク不足の可能性が発覚している)
- 公式レース使用不可の超高回転モーターや、飛行ドローン用の小型モーター、更には海外から取り寄せたマイクロモーターを搭載し省スペース・軽量化。
- カーボンプレートや3Dプリンター等を駆使してシャーシを自作。
- 動力を高出力のリチウムポリマー充電池に置き換え、軽量化や出力の限界突破を試みる。
……のような基本スペックを限界を超えて積み増しする改造の他にも、
- コース側の空気を吸い出すためのファンを搭載、路面と車体の間を負圧にし強烈なダウンフォースを発生させる。
- マイコンを搭載しモーター出力やローラーの食い付きの自動制御を行う。ある意味リアルスピンコブラ。
- 一昔前ならスパコンと呼ばれた規模の業務用コンピュータを利用した空力シミュレーションを用いてのボディ形状の最適化。
- モーターの高速回転で生まれるジャイロ効果の最適化、および駆動用モーターとは別のその用途に特化した姿勢制御ユニットの搭載。
……という実際のレーシングカーさながらのカスタムも行われ(強制負圧発生機構などは実際にカーレースで使われるも、あまりの強さに一発で公式戦使用が禁止されることになった代物)、
- コースに銅テープを貼り疑似スロットカー化する事で、バッテリー車では搭載不可能な超高電力をぶち込む。
- 二輪駆動や一輪駆動、果ては壁面駆動などの既存の発想にとらわれない加速形式。果ては車の範疇に入れていいのか悩む形状。
- 業務用扇風機や送風機の風圧でレーンチェンジ時の飛び出し阻止を試みる。
- 車体下部に耐震ゲルを貼り、レーンチェンジの凹凸文字に擦り付けてブレーキとし飛び上がり防止
- 計測機体の前にジャンプ台を搭載した車両を走らせ、壁を飛び越えて1周目から3周目にショートカット
- パイプとエアコンプレッサーで内部にBB弾を飛ばす(0.23秒)、光ファイバーを這わせレーザー光を通す(ほぼ光速)というミニ四駆どころか車両の枠すら超えたものを「走らせる」
……果てはこのようなトンチキ魔改造まで、挑戦者の思考と試行が枯れない限り無限の挑戦が生まれ続ける。
- 投稿者ごとに計測方法(動画から解析、計測アプリで測るなど)やサーキットの設置状況、マシンが誘発する振動などによって記録に誤差が生じる。つまりタイムは正確ではない。
- マシンの制作はためおじ氏をはじめとした完全手作業(通称『手動3Dプリンター』)勢、フライス盤などを用いる工作機械勢、アズパカ氏等の3Dプリンター勢に分かれる。
- ただ速度を追い求めれば良いというわけではなく、スピードを上げ過ぎたり軽量化しすぎたりするとウェーブセクションやレーンチェンジで簡単にマシンがコース外に吹っ飛ぶ。良い記録を出そうとすると直進性能以外の全てをミニ四駆以上にバランス良く要求される、奥の深い競技でもあったりする。
- 一部の投稿者はコース上を走行しているマシンを安全に回収できるよう、タミヤ公式でも発売しているキャッチャーを使用している。しかし元々改造マシンを想定したツールではなく、手で保持してマシンを回収する前提であり、加えて高速化の進んだマシンとは相性が悪いためかコースから何度か叩き出されてしまうことがしばしば。
- ちなみにルール無用でミニ四駆コース最速を目指す試みは「フェンスカー」というジャンルが昔から存在する。刃のように鋭いローラーでコースの壁にマシンを固定し、軽量ボディ&高出力モーターの力でベストタイムを目指すものだが、挑戦者の間では「フェンスカーの技術は使わない」という縛りが暗黙の了解としてある模様(先人の努力の結晶だし、速くなると分かり切ってるものを使っても面白くないから、らしい)。
- 休暇争奪戦
- 動画中やコメントなどで重量の数値の後ろに「Y」というアルファベットがついていることがあるが、これはファンの間で使われる非公式の単位で「ワイ」「ユウタ」と読む。
- 日本精工が支給したベアリングやそれを圧入した低摩擦樹脂ローラーは転がり抵抗が非常に少なく(=高品質)、従来のマシンに移植しただけではカーブでブレーキが利かな過ぎてコースアウトするほど。そのためレーサーらはサーキットを最後まで走破できるマシンの再開発を迫られた。
- 2024年秋に複数の参加者が実走データを積み重ねた上で「1.6秒台からの記録はマシン単体の性能向上での実現は不可能(JCJCコースの個体差・コンディション・劣化などがタイムに跳ね返ってしまう)」という結論に至り、引退を表明する者も現れた事から、以降の活動は下火になっていくものと推測される。