概要
唐の高僧・玄奘(げんじよう、所謂“三蔵法師”)がインドへ行き、中国に仏教の経典をもたらした史実を軸に、そのお供の孫悟空・猪八戒(ちよはつかい)・沙悟浄(さごじよう)が妖怪悪鬼を退治して玄奘を助ける活躍ぶりを描く。
1570年頃成立。一般に著者は呉承恩(1504年頃 - 1582年頃、江蘇省出身の官吏・詩人)とされているが確証は無い。ストーリーに民間伝承と共通する内容が多数盛り込まれている事から、講釈師などによって在野の小話がひとつにまとめ上げられ、民衆が更なる完成に導いた可能性もある。
魑魅魍魎や神仏など多岐に渡る多彩な登場人物が出場するのも特色のひとつである。人間サイドの登場人物には名僧・玄奘三蔵や唐の皇帝・太宗など実在の人物が顔を並べるが、設定は完全にフィクションであり史実とは一致しない(余談だが、作中では敬虔な仏教徒として描かれる太宗皇帝だが、史実では熱烈な道教の支持者だった)。
世界首都が「天竺」だったりお釈迦様が「グレートタオマスター」だったりと、ナイスな世界観を持つ。
主な登場人物
三蔵一行
孫悟空(そん ごくう)
東勝神州・花果山で産まれた石猿。美猴王(びこうおう)を名乗って花果山の猿類の上に君臨していたが、仙術を学び、斉天大聖(せいてんたいせい)を名乗って天界に反逆するも、釈迦如来により調伏・封印される。後に三蔵法師の一番弟子となる。乱暴者だが義理人情には熱い好漢。詳細は孫悟空を参照。
猪八戒(ちょ はっかい)
本来の法名は猪悟能(ちょ ごのう)、八戒は通称。元は天の川の水軍大将「天蓬元帥」(てんぽうげんすい)。女犯により天界から追放され、雌豚の胎内に入ってしまった為容姿が豚となってしまう。後に三蔵法師の二番弟子となる。食と色気に弱い一行のムードメーカー。詳細は猪八戒を参照。
沙悟浄(さ ごじょう)
沙和尚とも呼ばれる。元は天帝の側近職「捲簾大将」(けんれんたいしょう)。罪を得て下界に追放され、水怪に身をやつす。後に三蔵法師の三番弟子となる。悟空と八戒との間を取り持つ役。日本では河童の妖怪とされる事が多いが、本場・中国では顔色が黒い大男として表現される。詳細は沙悟浄を参照。
三蔵法師(さんぞうほうし)
生まれる前に父を殺され、母を奪われて、生まれてすぐに川に流されるが、ある山寺で拾われそこで育てられ、高僧として大成する。観世音菩薩の命を受けて天竺へと取経の旅へ遣わされる。
前世で天界にいた時は釈迦如来の第二の弟子、金蝉子(こんぜんし)であったが、仏法をないがしろにした罪で下界に落とされた。
因みにこの人物には実在のモデルがいるが、劇中の三蔵のペルソナは史実とは全く異なる。
詳細は三蔵法師の項目を参照。
玉龍(ぎょくりゅう)
西海龍王の第3太子。罪を得て死罪に為るところを観世音菩薩に助けられ、紆余曲折を経て三蔵の乗騎たる馬に化身、取経の旅に同行する事になる。詳細は玉龍を参照。
神々
釈迦如来(しゃかにょらい)
西方の霊山大雷音寺に住む偉大な仏。天帝の依頼で孫悟空を調伏した。ストーリーの様々な局面で関わりがある重要なキャラクターである。詳細は釈迦如来を参照。
観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)
観音菩薩、または観自在菩薩とも呼ばれる。釈迦如来の弟子の一人。取経の旅を影からサポートする。劇中では大抵、柔和な女性の姿で描かれている。
三蔵が悟空に殺される事を恐れ、三蔵に妖魔調伏の神宝・緊箍児(きんこじ)を託す。詳細は観世音菩薩を参照。
哪吒太子(なたたいし)
少年の姿をした戦神。天界で暴れる孫悟空を討伐しようと諸神と共に出撃し、悟空と死闘を繰り広げる。詳細は哪吒太子を参照。
二郎真君(じろうしんくん)
美丈夫の姿をした戦神。孫悟空を軽くあしらう程の実力者。詳細は二郎真君を参照。
天帝(てんてい)
天の神々を統率する最高神。斉天大聖の反逆で天界を滅茶苦茶にされ、最終的に釈迦如来に調伏を依頼する。民間伝承では篤い崇拝を受ける神だが、本作ではやや頼りなく描かれている。一般的な神としての記事は天帝も参照。
太上老君(たいじょうろうくん)
道教の最高神のひとり。本作では神仙が用いる様々な神器や、仙薬を開発する巧の神としての側面が強い。斉天大聖が捕縛された時、自身の所有物である「八卦炉」で焼き殺そうと試みたが、却って斉天大聖を怒らせる結果となった。太上老君も参照のこと。
妖怪
牛魔王(ぎゅうまおう)
孫悟空の義兄弟。
羅刹女(らせつにょ)
牛魔王の妻。「鉄扇公主」とも呼ばれる。
如意真仙(にょいしんせん)
牛魔王の実弟。落胎泉(らくたいせん)と言う魔法の水が沸く泉を独占している。
金角・銀角(きんかく・ぎんかく)
兄弟の魔王。元は太上老君の傍仕えの童子だが、天界の神宝を盗んで下界に逐電した。「金角大王」、「銀角大王」とも呼ばれる。
白骨夫人(びゃっこつふじん)
白骨の精。巧みな変幻術で三蔵一行を翻弄し、孫悟空が三蔵に破門されるきっかけを作った。
霊感大王(れいかんだいおう)
元は観世音菩薩の寺にある池に住んでいた金魚。津波に乗じて下界に逐電し、多大な神通力を傘に来て人間達に生贄を要求する。
地湧夫人(ちようふじん)
ネズミの妖魔。三蔵に懸想し、自らの婿に迎える為に三蔵を誘拐する。哪吒太子に命を救われた事があり、その事から彼を「尊兄」と呼んで崇拝している。
(こと本作に登場する妖怪の類については、ここに述べた以外にも多数存在し、とてもこの場で網羅できる規模では無い。興味が湧かれた方は是非とも関連書籍を購読されたい。)
他
人物:獅駝王 万聖竜女 玉面公主 紅孩児 混世魔王 賽太歳 如意真仙
西遊記に関連した作品
ドラマ
- 西遊記(1978~1980)、孫悟空役として堺正章が出演した実写版テレビドラマ。今でもドラマの西遊記と言ったらこちらを思い浮かべる人は多い。
- 新・西遊記、1994年の実写版テレビドラマ。1978年版と同じく日本テレビ。孫悟空役は唐沢寿明、三蔵法師役は牧瀬里穂。
- 西遊記2006、孫悟空役として香取慎吾が出演した実写版テレビドラマ。2007年には映画化。堺正章もある役で出演した。
特撮
- 五星戦隊ダイレンジャー、龍星王のモチーフが孫悟空
- 忍者戦隊カクレンジャー、戦隊メンバーのイメージが三蔵一行と同じ
- 仮面ライダーゴースト、三蔵一行の力を使うサンゾウ魂なるフォームが登場
- 仮面ライダーセイバー、西遊ジャーニーなるワンダーライドブックが登場
漫画・アニメ
- ドラゴンボール、西遊記がモチーフとなっている。
- 聖闘士星矢、西遊記の概念を部分的に採用(乙女座のシャカ)
- のび太のパラレル西遊記、1988年のドラえもん映画作品。
- 悟空の大冒険、 手塚治虫が西遊記を題材にした漫画「ぼくのそんごくう」を原作としたTVアニメ。
- SF西遊記スタージンガー フジテレビ系列で放送されていたSFアニメ。
- マシュランボー、2000年放送の冒険活劇アニメ
- アソボット戦記五九、2002年に放送されたアニメ。
- 西遊記~旅の終わり~ 「ギャグマンガ日和」の作品のひとつ
- 珍遊記、漫☆画太郎によるギャグ漫画
- 西遊筋 、三蔵法師は怪力男、悟空をはじめお供も敵も皆のオンナというパロディギャグ漫画
- 電撃テンジカーズ 、古賀亮一のギャグ漫画。
- Go空伝・ゴゴゴ西遊記 ドラマ西遊記(2006)(ゴゴゴでは西遊記(1978~1980)も)をモチーフにした、小西紀行のギャグ漫画。
- パタリロ西遊記! 、魔夜峰央の漫画作品。『パタリロ!』のスピンオフ作品。
- 最遊記 、峰倉かずやの漫画作品、大幅にアレンジされ、玄奘が破戒僧という説を採用している。
- DearMonkey西遊記 、白井三二朗の漫画作品。
- 玄奘西域記、諏訪緑の漫画作品。
- 三獣士、田中加奈子のアクション漫画。登場人物の大半が西部劇風になっている。
ゲーム
- Koei西遊記、光栄から発売されたシミュレーションRPG。主人公である三蔵法師の性別が選べる。
- 西遊釋厄傳2、西遊記を題材にしたアクションゲーム。
- Fate/GrandOrder、玄奘三蔵のピックアップイベント「星の三蔵ちゃん、天竺に行く」
- ゲーム「LIVE A LIVE」功夫編の老師と弟子達の名前などは『西遊記』の登場人物からとっている。
- ふぁみこんむかし話 遊遊記、パックス ソフトニカと任天堂が共同開発のアドベンチャーゲーム。
- 元祖西遊記スーパーモンキー大冒険、 ファミコン専用ロールプレイングゲーム。伝説のクソゲー「なか゛いたひ゛か゛はし゛まる‥」
- 俺タワー、イベント「天竺への道 序章/終章/EX」。孫悟空、猪八戒、沙悟浄モチーフの建姫が初期から登場、三蔵法師とお釈迦様がこのイベントで追加。
その他
- 飛べ!孫悟空 ザ・ドリフターズの面々が声優として出演した人形劇。前述の「西遊記(1978〜1980)」及び「SF西遊記スタージンガー」と共に1970年代後半の西遊記ブームの立役者となる作品。
- 西へ行く、buzzG作詞作曲のGUMIオリジナル曲。