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悪役令嬢の編集履歴

2022-11-24 19:28:44 バージョン

悪役令嬢

あくやくれいじょう

悪役令嬢とは、文字通りの「悪役」である「令嬢」の事

概要

読んで文字のごとし。いわゆる悪役令嬢を意味している。


様々な理由から主人公に敵対し、その行く手を阻む障害となるキャラクターの一類型。

昔の童話児童文学少女小説少女漫画などで、よく見られたステレオタイプキャラクター。

主人公と同じ土俵で正々堂々と自分の力だけで戦うライバルキャラクターとは異なり「(親の)権力や政治力・財力・組織力を笠に着て主人公を虐めまくる」事で(多くは平民であろう)読者に不平等や理不尽を感じさせる事で嫌われ、主人公に打倒される事で読者にカタルシスを感じさせる、いわばそのための「生贄」としての役割を与えられた「令嬢」(キャラクター)である。


類型として『シンデレラ』の継母義姉達みたいな例もある。

一方で主人公(読者)に対してアンチテーゼを示すアンチヒロインあるいはダークヒロインとしてもう一人の主人公となり気高く悪の美学を張り続ける例もある。


こうしたキャラクターが悪役として登場する作品では、主人公(ヒロイン)が結ばれる相手(ヒーロー)と共に困難を乗り越えて排除する事で、悪役令嬢側は人生そのものが破滅、自らのみならず一族縁者がもろともに死滅(一族郎党巻き添えにしての没落ないしは処刑)に至る、というパターンがよく見られる。


早い話がやられ役ラスボスの類型キャラクターの一種でもある。


パターンテンプレート

  • おおむね主人公(ヒロイン側)よりも上位の社会的地位を持っている。
    • この場合は令嬢自身の力というよりも、親の権力や財力をバックボーンとしたものであることが多い。
    • あるいはスタート地点では「主人公の親友」であるケースも見られる。その際には様々な理由(恋愛がらみ、身分差による社会規範、周囲の讒言、主人公との才覚の差の自覚、自身に責任の無い出来事で友である主人公に目を向ける余裕が奪われていく、など)で闇堕ちして悪役令嬢(時に哀しき悪役)となっていく事となる。
  • 主軸となる能力も(物語当初は)主人公よりも上である。
    • ただし、こうした部分は主人公よりも才能や努力がある、という描写ではなく、親の権力や財力によって八百長を重ねたがゆえの成果であったり、そうでなくとも実家の財力にまかせた優秀な指導者や理論的なマニュアル特訓の成果によって「ゲタを履かされている」(主人公とは、そもそものスタートラインが違う)描写となっている事が多い。
  • 自身の社会的地位により、友人(取り巻き)は多い。
    • ただし「友人」というよりも令嬢や彼女の家の権力や財力の、おこぼれにあずかろうという打算で付き従っている者がほとんどで、いわゆる利害を超えた付き合いを持つ本当の意味での友人(特に親友と言える者)はいない場合が多い。
    • 場合によっては、そのとりまきは「親から権力によってあてがわれた友人」である事もあり、本人は実は「他人との付き合い方を知らない(教えられたことも、自ら学んだこともない)」という上辺を取り繕うことだけが上手いコミュ障というケースもある。
  • やがて、主人公が持つ「自身には無い魅力」(どうあがいても覆せない「天性の才能」による差、主人公が苦境によって磨いてきた「人間的な魅力」、慣習や決まりやタブーなどものともしない「発想の勝利」など)に気付き、内心で激しく嫉妬羨望あるいは(主人公に対する)理解不能などに基づく恐怖を抱くとともに、それによって自らの内心に巻き起こる劣等感に耐え切れず、その原因となる主人公を自らの周囲(=主人公が目指す立場)から排除しようと働きかけるようになる。
    • 悪役令嬢側にとっても「努力をしていない」わけではなく、その立場にいるために自分なりの努力を重ねてきた(たとえそれが公平でないものや間違ったものであったとしても)経緯や自負がある。そのため、この時点で主人公側を認める事は「自らの努力を無意味かつ無駄なことだと認める」(=アイデンティティ崩壊の危機に至る)事になるため、そこで主人公と和解するという選択肢はなかなか取れない。場合によっては「努力をすれば報われると信じているからこそ、努力して主人公を追い込もうとする」(いわゆる努力の方向音痴に至っている)ケースも多い。
    • 最初は真っ当な忠告から始まるが、やがて些細な嫌がらせとなり、やがては笑えない悪意となってエスカレートして、最終的には主人公の周囲に(時に主人公の生活権をも脅かし、その周囲に死者や自殺者も出かねない)甚大な被害を巻き起こす。
    • あるいは、悪役令嬢のそうした行動は「自分が陥った苦境や悲しみを誰か(具体的に言えば主人公や相手役)に解って欲しい」あるいは「(主人公あるいはそれと関連して周囲がもたらす脅威・恐怖から)私を助けて」という意図に基づく心の悲鳴であるケースも多い。(これを「ただのかまってちゃん」や「甘え」だと切り捨てるか、あるいは「主人公ほか周囲の人々が解決すべき問題」と拾い上げるかで、作品の在り方が違ってくる。「悪役」であるため大抵は前者になるケースが多いが)
  • 最終的には主人公が物語内で目覚めさせて鍛え上げた才能や、あるいは主人公が築き上げた人脈によって敗れ去るとともに、主人公やその周囲に対して巻き起こした害悪を糾弾されて破滅に向かう(没落・逮捕・自殺・殺人など、社会的に生きていけない立場に追い込まれる)ことになる。
    • 時と場合によっては一族の没落や自分についてきた者たちもろともに破滅するなど、本人のみに留まらない逆ベクトルでの甚大な被害を生み出す場合もある。
    • 逆に最後の最期で主人公側に救いの手を差し伸べられ、辛うじて命だけは長らえる(あるいは主人公側に味方するようになる)ようなパターンもないでもない。(当然ながら逆に自らの誇りのために、その手を振り払い、自ら理解して破滅を選ぶというパターンもある)

新世代の悪役令嬢

しかし、近年では、小説家になろうに代表される小説サイトでメイン主人公扱いされる事も多くなったキャラクター類型であり、同様の文脈の作品が増える事で「悪役令嬢もの」としてテンプレ化およびジャンル化に至っている。

ただし悪役令嬢を主人公に据えた作品は少女小説の方で早く登場していて、森奈津子のお嬢さまシリーズ(GAKKENレモン文庫※新装版はエンターブレイン)が該当する。悪役令嬢ポジションの主人公とヒロインポジションのライバルが対立する巻もあり正に先駆者と言えるが、読書対象が小学生向けだけあって苛烈な報復劇は無く、転生・逆行要素も導入されていない。なお同作は、悪役令嬢をタイトルに採用した悪役令嬢ヴィクトリアシリーズ(ルルル文庫)にも影響を与えている。


小説サイトでジャンルを引っ張る旗艦作品として有名になったのが『謙虚、堅実をモットーに生きております!(謙虚堅実)』だろうか。こちらは異世界転生(平成令和の現実的な現代日本→昭和の少女漫画的な現代日本)との複合ジャンルだが、「謙虚」がブレイクした事によりなろうでの悪役令嬢物が増え始めた。ただし同作以前にも有名な悪役令嬢作品が存在しなかった訳ではなく、『悪役令嬢後宮物語』『結構ハードな乙女ゲーの世界』『ヤンデレ系乙女ゲーの世界に転生してしまったようです』等が挙げられる。後発のなろう作品として『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…(はめふら)』や『公爵令嬢の嗜み』『起きたら20年後なんですけど!』『お前みたいなヒロインがいてたまるか!』『悪役令嬢は、庶民に嫁ぎたい!!』等がある。


基本的な世界観は、中世ヨーロッパの文明レベルを基準としたファンタジー世界の封建貴族社会が中心(上述の出例では、はめふら・公爵令嬢の嗜み・20年後・庶民に嫁ぎたい!!、などがこのタイプ)だが、あえて時代ものや非ファンタジータイプ(上述の出例では、謙虚堅実・お前みたいな、などがこのタイプ)の作品も散見される。

また、悪役令嬢物は同時に「婚約破棄」物であるパターンも多く、「婚約破棄を言い渡された悪役令嬢を主人公に据えた逆転劇」という展開が人気パターンの一つとなっている。


一方で、いわゆる上述の「悪役令嬢の試練に耐える、純朴でけなげな主人公」という「古典少女向け作品の伝統的テンプレ」に対する「アンチテンプレ」の側面を持つことから、作品によっては恋愛による達成譚(男女の協力による成功を是とする物語)やシンデレラストーリー全面否定するヘイト創作(恋愛否定)としての要素も強くなりやすいジャンルである。

「悪役令嬢を糾弾した周囲の人間」や「悪役令嬢を追い落として幸せになった正ヒロイン」を邪悪もしくは愚かに描き、悪役令嬢が逆に追い落とす事で良い気になる、と言うパターンが多く見られ、こういった要素は非常に好き嫌いが分かれる(そうでない作品も当然存在するが)。

特に二次創作でこのジャンルを取り扱う場合は、原作ヒロインを正ヒロインポジションに、オリキャラヒロインを悪役令嬢ポジションにおいて、オリキャラに嫉妬した原作ヒロインが苛めを捏造してオリキャラを断罪しようとして、捏造がばれてその原作ヒロインが破滅するというパターンになりやすく、原作者や原作ファンを不快にさせないよう注意が必要だろう。



新世代悪役令嬢のプロットテンプレート

前提

  • 現代日本の女学生OLが好きな乙女ゲーム少女マンガの世界に転生。ただし正ヒロインではなく正ヒロインを虐めた挙げ句最後に悪事が露見して破滅する意地悪お嬢様に転生。
    • もしくは、転生者ではない悪役令嬢が一旦破滅する結末を迎えるが、何らかの力によって時が巻き戻り、過去に遡って人生をやり直す。
  • 正ヒロイン虐めを理由に婚約者とその取り巻きから断罪を受け、婚約破棄され、当然と言っていいのか婚約者は正ヒロインにとられる、という一連の事象が運命づけられている。
  • だが実は正ヒロインには様々な問題(後述)があり、一方の攻略対象達も様々な理由(正ヒロインの立ち回りがガチで悪魔的に上手だったり、あるいは惚れた弱みだったりなど)から、それになかなか気付けない。
    • たとえ気付いたとしても、その時には別の要因(家族や家業を質に取られていたり、社会的立場が危うくなって正ヒロインの味方をした方が有利になれたり)のために正ヒロインの味方をする事になる(せざるを得なくなる)場合もある。
    • そうでなくとも悪役令嬢側は「悪役補正」(世界に刻まれ定められているとされる物語のプロットシナリオ・本人の力の及ばない前世代からの因果・運命の強制力・悪役令嬢の友人や取り巻きが誤った忖度をしてヒロインをいじめて連帯責任やいじめの首謀者に祭り上げられる、など)が働いて、不当ではあるが客観的には自身が疑われるに足る間の悪さを発揮してしまう。
    • 断罪を華麗に(あるいは泥臭く、ないしは紙一重のギリギリで)かわした後は実家の権力財力と現代日本(前世)の知識を生かして大活躍。あるいはその回避に疲れた結果、隠居やスローライフに方向転換したがることもある。
    • 断罪や破滅回避ないしは最悪の結末を回避したのちの活躍などにおける行動過程で、実は、この世界には「原典本編では明かされていなかった(原典のファンが本来なら知る事の無い)裏設定」「作品企画過程で没にされていたはずの設定の残滓」「ifルート」「隠しキャラ」などが存在していたと発覚する事がある。
  • 当初の婚約者より良い恋人をゲット!あるいは悪役令嬢としてのマイナス面が消えたことで関係は改善して婚約破棄に至らずにハッピーエンド!
    • 逆に正ヒロインやその取り巻き達は破滅してざまぁ
    • もしくは本来の歴史なら敵対していた筈の正ヒロインからも慕われてしまい良好な関係に。
  • 世界観として、特権階級の貴族は、権力という大きな力を与えられ、その恩恵で経済的・財政的に恵まれて裕福な生活を享受できる一方で、与えられた権力で個人の力では不可能な大業を果たして力無き人々を守るようにと義務を課せられ、それに相応しい振る舞いをもって役割(課せられた義務)を果たすことを求められる(貴族の役割、ノブレスオブリージュなど)という、一般階級には縁がない制約(いわゆる贅沢な悩み)にスポットが当たりやすい。
    • 庶民感覚が強い正ヒロインから見て、不可解で不合理に思われがちな礼節や冷淡に見える振舞いに対し、元々貴族として求められる振る舞いと役割を理解している令嬢が語ることにより令嬢側の正しさを読者に伝え、証明させるため。

もちろん、作品毎に細部は異なる。以下は一例。


本編開始時期

  • 舞台となる貴族学園入学より数年前の子供時代。この場合は破滅の未来を回避しようと周囲の環境変化や人間関係改善に行動する。(はめふら・庶民に嫁ぎたい!!・謙虚堅実・お前みたいな、などがこのタイプ)
  • 学園入学時点(原作本編開始時)。既にプライドの高いお嬢様という噂や悪名が流れているため、慎重に行動して破滅の回避を目指す。(今度は絶対に邪魔しませんっ!、はめふら絶体絶命!破滅寸前編、などがこのタイプ)
  • 婚約者から婚約破棄されて破滅した瞬間。すでに破滅後なので楽隠居の為に努力する。(嗜み・20年後、などがこのタイプ)

悪役令嬢自身

  • 前世の記憶を取り戻すまでは本当に性格の悪い意地悪お嬢様だったが、前世の記憶を取り戻したことにより人格が前世ベースに変貌し、周囲の環境を改善しようと奔走する。
    • このパターンでは上記の本編開始時期によって意地悪お嬢様だった時期が左右される。特に幼い頃に記憶が戻るパターンでは、原作に相当する時期の頃には既に善良な令嬢になっていることも多い。
  • 言動がキツイだけで、別に理不尽な意地悪をしているのではなく行動に正しく筋が通っている(貴族の役割を果たすよう口うるさかったり、礼儀にこだわる様を婚約者に疎まれていただけなど)
    • ただしこのパターンは異世界転生ではない方が多い(転生前から令嬢でないと説得力がないため)。
  • 正真正銘の悪役令嬢だったが、自らの行為の報いを受けて死刑となった事で深く後悔するも、目を覚ますと若かりし頃に戻っていたため心を入れ替えて善良な令嬢になろうとする。
    • こちらは転生と言うよりはループもの。前述の通り過去の行いを反省しているものの、生まれ持った性格の悪さが抜けきらずに苦心する場合もある。
  • 本人は全くの善良だったが、腹黒な正ヒロイン(後述)に嵌められて汚名が広まり、周囲から悪役令嬢だと濡れ衣を着せられていただけ。

悪役令嬢の能力

  • 令嬢自身の地位と能力のみ。
    • 転生者でなく生粋の令嬢である場合、高貴な立ち振る舞いと地位、そして、きちんと現実(関係者間の利害関係や国際感覚・政治情勢)に立脚した実効性のある正論による論破を武器とすることになる。
  • 転生前の現代知識+令嬢教育のみで、特殊能力等は無し。
    • 悪役令嬢物では現代日本の料理やお菓子等を今世で再現するなど、現代知識を生かした行動は世界に大きく影響しない些細であることが多い。ただし、破滅後に楽隠居するパターンでは自身の周りの環境を内政チートのように現代風に整えるものもある。
    • また、現代知識の中には「ゲームの知識=攻略対象の抱える悩みやトラウマ、この世界の行く末(エンディング)、世界の秘密(裏設定)」が含まれる事も多い。逆にゲーム完全クリア前に転生してしまって知識が中途半端な場合や、隠しルートや続編の追加キャラクターを知らないというケースもある。
      • 知識が半端な場合、「死ぬことは知っているが、犯人が誰かは知らない」などで自らの死の謎を探るところから始めなければならないミステリ風の進行になることも。
  • 領地持ちの家の悪役令嬢であった場合は「学園(王都)では高飛車な人を人とも思わぬ令嬢だと思われているが、領地(地元)では子どものころからお忍びで街中に出て遊んでいて市井の人々や領内各土地の実力者とも交流があり情け深く庶民を守ってくれる責任感ある気高い令嬢として深く慕われている」という設定が付与される事も多い。
    • 特に原作開始数年前覚醒のパターンの作品では「前世の平民感覚(貧乏舌や貧乏性・勤労癖)が抜けきらず、平民の暮らしが恋しくて」という理由で上記の行動(お忍びで街歩き)に出て庶民に慕われる、というケースもみられる。
    • こうした事情のため悪役令嬢の破滅後に領地の人々が「ウチのお嬢にナニしてくれてやがる!」と激怒して、領民たちの中で悪役令嬢に対して恩のある有能な人物が、彼女の手足となって逆転劇のために働き戦ってくれる(そうして集まってくれた人の中に令嬢の運命の人がいる)というケースもある。(新世代前の「従来の悪役令嬢」の結末が、下手をすれば悪役令嬢本人のみならず親兄弟一族郎党縁者領民、老若男女死者赤子胎児に至るまで処罰に及ぶ過酷なものになりやすいのは、この可能性を潰すためのものでもある)
  • 神や魔王とも張り合えるチート能力。その能力を得た経緯は
    • 転生特権として神から与えられる。
    • ゲーム知識を用いての効率的な修行や強力なレアアイテムの収集の結果(弱いけれど大量の経験値をもらえるレアモンスターの無限湧きポイントでレベル上げに勤しんだりするなど)
    • 原作ゲームで悪役令嬢がラスボスや裏ボスを勤めていた場合、その設定が転生後にも反映されて最初から、あるいは条件を満たすことでチート級の能力を得るケースもある。
    • 前世の原作ゲームで、レベルアップやDLCがあるゲーム世界に転生した場合は、やり込みや廃課金の結果と言う理由が多い。というかこういったケースに対しては「やり込みによるレベル上げや廃課金して強くなるのは正ヒロインの方では?」とツッ込まれる事もあるが、その辺は「キャラクターというガワ(操作キャラ)ではなく、プレイヤーとして鍛え上げられた魂(中身)そのものに努力(廃課金、レベル上げ)の成果が刻み込まれる」という説明が成される事も多い。中にはうっかり使うと、文字通り屍山血河か瓦礫の山を築き上げてしまうため、日常では役に立たず使い道がないものだ、として敢えて本人が能力を使わ(え)ない理由付けとするものもある。(上出例で言うと『庶民に嫁ぎたい!!』が、このタイプ)
    • ループ物など、悪役令嬢が転生者でない場合はお忍び中に偶然知り合った、怪我を治療するなど小さな恩を与えた小動物が伝説の神獣や精霊王の化身などの人外の存在で、後々その偉大なパワーで主人公に力を貸してくれる場合が多い。その場合はもれなくイケメン青年に変身できる擬人化能力があり、恋人候補に立候補してくる。
    • 中には「ゲームのジャンルを間違えてないか」「(前提となる原典の物語内容と)変わってないか」と言う方向に行っているものもある。
    • ただし素で正ヒロインより強いと「悪役令嬢って設定いらないじゃん」となるので少数派ではある。

正ヒロイン

  • 原作のゲームやマンガの設定では以下のパターンが多い。
    • 平民や男爵家など本来なら王族との婚姻は期待できない下層の家柄出身である。
    • 聖なる力を持っていたなどの理由で家柄を越えて王族や上位貴族との婚姻が可能なことについての説明をしている。
    • 本来の乙女ゲーや少女漫画の正ヒロインには主人公らしく機知に長けた才女や行動力と強さを兼ね備える女傑タイプもいるが、悪役令嬢ものの正ヒロインはだいたい優しさと美貌が取り柄の受け身タイプである。(とはいえ、「乙女ゲーの悪役令嬢」という超珍しい概念と比べたら「普通の主人公」の範疇ではある)
  • 実は腹黒で同情を買うために悪役令嬢を利用しようと策謀を巡らせる
    • 悪役令嬢と同じく転生者であることが多く、原作知識を利用して逆ハーレムを狙おうとする(が、原作と違う展開に困惑する)。(下記のバリエーション作品「婚約者が悪役で困ってます」がこのタイプ)
    • 転生者の場合、世界そのものをVRゲーム、周囲の人々を、あくまでも「キャラクター(NPC)」としてしか見る事が出来ずに相手にも感情や人格がある事を認めず、きちんとした人間関係を構築する事なく、結果として周囲から電波扱いされて自滅に向かうケースもある。
    • また、特に悪役令嬢側と同じように原作知識を持つ転生正ヒロインの場合、様々な理由から(たとえば悪役令嬢の前世以上の原典ヘビーユーザーであるケースや、より踏み込んだ場合には「実は正ヒロインの正体は原典の原作者本人」というケースも、まれに見られる)原作に関する知識が悪役令嬢(主人公側)を完全に上回っている、という場合がある。若しくは正ヒロイン以外の原作知識豊富な転生者がブレーンとして正ヒロインをサポートしている事もあり、その場合は悪役令嬢が後手に回って中々周囲を味方につけられない事も。
    • 転生者でない場合や「優等生の良い子」でも単に頭お花畑なバカだったり(「綺麗ごとしか言わない」事に対する嫌味の場合もある)現実味の全くない理想だけの正論しか言えずに、政治に対しては無力・無能のために悪い大臣や悪代官に良いように操られてしまったりで、ミクロ視点においては良い事をしていてもマクロ視点においては傾国としかいえない因子を持つ娘だったりする。(例に出すと「貧民対策によって国家予算を開放しバラマキ政策を実行して城下(都会)の民たちには聖女として敬われるが、対象が都市部に限定されて地方まで効果が波及せず、地方、特に辺境地などはバラマキの煽りで重税にあえぐ羽目になり、おまけにバラマキ政策のために軍事予算まで削ってしまって国軍・騎士団の弱体化を招き、隣国に侵略の口実を与えて戦争を喚起させてしまい、地方の民には悪女として恨まれる」など。ちなみにこの「正ヒロインの施策のしわ寄せを食らって恨む地方の民」が、悪役令嬢の家が守るべき領地の民だったりする事もある)
    • 実は正ヒロインは敵対国や国内の革命勢力あるいは王家の政敵より、内部から王家や国家を喰い破るために送られたハニトラだった、という場合もある。(嗜み・20年後、などがこのタイプ)このケースでは上述の「裏設定パターン」「ボツ設定残滓パターン」の合わせ技で明示される事もある。また、このケースではハニトラ要因だった正ヒロインには、その自覚が無い(正ヒロインを学園や王宮に送り込んだ者、すなわち原典となる作品内ではモブキャラや設定のみの存在であったはずの人物が、黒幕として言葉巧みに正ヒロインを操っていた)というケースもある。
  • 正ヒロイン(ひいてはプレイヤー)が原典ゲームでの攻略にて用いる好感度上昇アイテム(手作りスイーツ、手作りの装飾品や衣類、など)が、実はタチの悪い未発見の麻薬や、依存や服従を促すマインドコントロールアイテムであり、正ヒロインに「攻略」されてしまった者は、のちに禁断症状に苦しんでよりヒロインに依存する事になり、攻略対象たちは最終的には人格が崩壊して廃人に至ってしまう(至らないまでも、その未来をほのめかされて物語から退場に至る)というケースもある。
    • これが全面的に押し出されたタイプの例には『弱気MAX令嬢なのに、辣腕婚約者様の賭けに乗ってしまった』があり、同作の続編では「使われた麻薬の解明」によって「第1作では救えなかった攻略対象たちと、婚約破棄を免れる事ができなかった他の悪役令嬢たちを救う」という部分がテーマとなっている。
    • 他に、このパターンを扱った作品には『追放悪役令嬢、只今監視中!』などがある。
  • 原作通りの良い娘。なので善人となった悪役令嬢とは親友になる事も多い。(謙虚堅実など)
    • ただし「聖なる力に目覚めた」等の理由で平民ながらも貴族社会に放り込まれた結果、貴族社会の常識とは外れた行動を取り、虐めの標的になるケースもある。この場合でも「転生前は平民だった」悪役令嬢と親友になる事が少なくない。
    • 中には原作の攻略対象そっちのけで正ヒロインが悪役令嬢と親密になり、ゲーム的に見るとまるで「悪役令嬢が攻略されてしまうルート」に突入したような状況になってしまうケースもある。
  • 原作のヒロインの友人やクラスメイトなど別のキャラクターも転生者だった場合、この人物が原作知識を利用して本来のヒロインの立ち位置を乗っ取って上記の腹黒ポジションで立ち回り、脇役に追いやられてしまった本来の善良な正ヒロインを悪役令嬢が助けるという、正ヒロインを善良にしたまま(悪役令嬢以外の)腹黒ヒロインも登場させると言う変則的なパターンもある。
  • 悪役令嬢と同じく転生者だが、悪人ではない。
    • この場合は気弱だったり、正ヒロインなんて荷が重い役は嫌だ等の理由で、原作で本来行うはずの行動に消極的な場合もあり、転生者仲間である悪役令嬢が頼られたり振り回される場合もある。
    • 正ヒロインがよくある「新世代悪役令嬢ものテンプレ」を既に知っており、悪役令嬢も転生者であると判断した上で自分が逆に破滅させられるのを恐れて消極的になるなど、悪役令嬢もの自体へのメタ設定のケースもある。
  • せっかく悪役令嬢が原作よりも良い方向に変えていたはずの世界を、原作知識によって「原作通り」に元通りにする(悪い方向に捻じ曲げようとする)パターンもある。
    • 優等生ヒロインが良かれと思ってやったり、腹黒ヒロインがエゴで行ったり、原作との差異を絶対に許さない原作至上主義の持ち主といったパターンがあるが、いずれにしても悪役令嬢にとっては迷惑な行為である。
    • 正ヒロインが主人公の姉妹や義理の姉妹など、幼少期から同じ建物で生活していた場合は、主人公が苦心して信頼を得たメイドや家臣を即座に罠に嵌めて解雇または暗殺させて主人公の逃げ道を潰そうと先手を打ってくる狡猾な立ち回りを見せたりする。
  • 悪役令嬢の行動により歴史が変わった影響や、正ヒロイン自体が転生者で行動を変えたなどの理由で、本来のストーリーの舞台から正ヒロインが離脱してしまう(学園系ゲームなのに正ヒロインが入学してこない)等の変則的なパターンもある。

攻略対象

  • 画面越しでは見えなかった腹黒さやバカさが露呈する(もしくは、画面越しなら可愛いで済んだ欠点ウンザリするようになる)。そして正ヒロインと共に悪役令嬢を糾弾して、共に破滅する。
  • 上述した正ヒロイン腹黒タイプの作品では、顔だけがとりえで、正ヒロインの腹黒具合をマトモに見抜けないバカ揃い、というパターンも多い。何なら例の断罪劇でもこんな心清らかな正ヒロインが嘘をつくはずがない!という盲目理論を展開する事もしばしば。
    • 正ヒロインハニトラタイプの作品では攻略対象の中に諜報部に繋がりの深い人物も含まれ、この人物が正ヒロインにガッツリ篭絡される事で視点が色眼鏡と化し、本来は国防のために必要な諜報活動や情報防護活動を怠ったりする、あまつさえ正ヒロインに対して無自覚に様々な機密情報を流しまくり「俺ってこんな情報も扱ってすげえだろ」とドヤ顔する(そして正ヒロインにおだれられて自尊心をくすぐられ、さらに深みにハマる)というパターンもある。
  • 婚約破棄に対して、少しでも自分に有利なよう悪役令嬢に刺客や暴漢を差し向け、傷物や亡き者にしようとしたり、悪役令嬢と婚約していたことで得ていた共有財産やメリットなどの利益を破棄と同時に一方的に略取を目論む、又は悪役令嬢の復讐や出国を警戒して配下や傭兵に処刑を命じて幽閉したり、護送中に事故や強盗を装って暗殺を命じるなど、下手な悪党以上に身勝手な悪辣さを持ち合わせているパターンもある。
  • 原作通りの性格だが悪役令嬢の性格が変わったことで悪役令嬢に本当の好意を持つようになり、正ヒロインへの興味が薄れる。
    • この派生として、原作で彼に好かれるはずだった正ヒロインも悪役令嬢を慕っており、大好きな悪役令嬢を取られまいと、正ヒロインと攻略対象の間で火花が散るパターンもある。
    • 逆に悪役令嬢の方が非常に鈍感だったり、本来結ばれるべき正ヒロインの存在を知るが故に一歩引いてしまいなかなか結ばれないケースもある。傍から見ると悪役令嬢が攻略対象と交流を深めている構図になるため、家臣やメイドなど外野が買っても盛り上がって持て囃したり、噂を聞きつけた正ヒロインが嫉妬して過激な報復に動く事もある。
    • 攻略対象が未来で悪役令嬢を破滅させる直接の原因につながる場合(断罪を行う婚約者など)、破滅を恐れた悪役令嬢が彼から距離を置くようになり、その行為が逆に(自分はモテて当然と考えている)攻略対象の気を引いてしまう場合もある(所謂「おもしれー女」)。こうしたパターンでは悪役令嬢に近づくために手段を選ばない事が多く、メイドらに「俺、悪役令嬢の彼氏だから」と吹き込んで外堀を埋めようとしたり、「王太子の頼みを断るの?そうしたら君の家の立場はどうなるかな?」と半ば脅しに近い形でデートにこぎつけたりする。
  • 原作通りの性格だが正ヒロインも転生者だったために振り回される。
  • 原作では過去に悪役令嬢に虐められたなどで恨みを抱いていたが、悪役令嬢が恨まれるフラグを回避した(虐めないどころか虐めから守った)ことで逆に悪役令嬢に好意を持つ。
  • 実は彼も転生者で悪役令嬢と共にこの世界で生きるための協力関係となる。
  • 原作に攻略対象が複数いる場合、悪役令嬢が攻略対象の一人に好かれる一方で、正ヒロインも別の攻略対象と恋人同士になり、悪役令嬢とも良き友人関係を築く。このパターンでは悪役令嬢・正ヒロイン共に幸せなカップルとなり、ダブルデートになる場合もある。

世界設定

  • 舞台となる異世界は前世で見た作品の世界観に酷似した世界で、登場人物等も共通しているが、あくまで似ているのみできちんとした現実世界。
    • この場合は前世の現代に存在した創作作品が似ている理由として、現代の製作者が異世界を予知したり天啓的にアイデアを得て作った(つまり誕生的には異世界→創作作品の順)等と理由付けられている場合がある。
    • 一方で、異世界と創作作品が似ている理由については特に触れない作品も多い。
  • 世界に原作作品のルールが働いており、正しい展開や設定に導くような運命の強制力が発生する。
    • こちらは悪役令嬢が悲劇を回避しようとしていても、世界の方が作品設定のストーリーを起こすべく悪役令嬢を追い詰めるイベントを強制発生させてくる場合がある。
    • 例を挙げると「悪役令嬢が正ヒロインにぶつかって怪我をさせるイベント」を回避するためにイベント発生地点と違う場所に移動したらそこへ正ヒロインが現れて転倒。助けようとした所に攻略対象が現れ「正ヒロインに何ということを!君がそんな乱暴な人とは思わなかった!!」と非難してくるなど。
    • また、原作でキャラ設定として記述されていた特異な能力等を登場人物が唐突に発動する、状況が異なるはずなのに原作で発生していたイベントが脈絡なく同タイミングで起こる等、現実として考えると不自然な事象が発生することもある。(例えばモンスター襲撃イベントを防ぐために騎士団に命じて近隣のモンスターを狩り尽くしたのにイベント発生日になるとどこからともなくモンスターが出現して襲撃イベントが発生してしまうなど)
    • こちらも世界の成り立ちの裏設定として、実際にゲームから世界が生まれていたり、神のような存在がゲームのルールを支配している等の壮大な背景が解説される場合もあるが、敢えて理由に触れていない作品も多い。

バリエーション

  • 悪役令嬢本人ではなく、その周囲の脇役や名も出ないモブキャラに転生して、悪役令嬢を更生させる事で「巻き込まれ破滅」の回避を目指すパターンの作品もある。例としては『転生先が少女漫画の白豚令嬢だった』や『婚約者が悪役で困ってます』『転生しまして、現在は侍女でございます。』など。
    • あるいは悪役令嬢のファンである主人公が正ヒロインに転生して悪役令嬢に接近する『私の推しは悪役令嬢。』みたいなパターンもある。
  • 転生した悪役令嬢の破滅回避の奮闘を巻き込まれた非転生者の立場から語る作品も存在する。例としては『追放悪役令嬢の旦那様』『僕は婚約破棄なんてしませんからね』などが挙げられる。
  • 主人公はあくまでもゲームのプレイヤーでありながら、ゲーム内の登場人物と意思疎通が可能となって推しキャラである悪役令嬢のハッピーエンドのために助言という形で介入する『ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん』のような変則的な作品も挙げられる。
  • また、悪役令嬢物のテンプレートを途中まで使ったもの、つまり主人公の婚約者の王子様が他の令嬢と親しくしだして、やがてその令嬢から主人公に嫌がらせを受けたという訴えがなされ、公衆の面前での断罪イベントが行われるが、実は婚約者は主人公を愛していて、令嬢の父親の不正を調査する一環としてその娘に近づいたのを本当の好意だと思い込んだ令嬢の先走りにすぎず、婚約者自身が苛めが捏造であるとあばいてしまうというパターンもある。例としては『虫かぶり姫』などがある。
    • 更にそのバリエーションとして鉄面皮の主人公から何らかの反応を引き出すために(要は焼きもちを焼いて欲しい)敢えて他の令嬢と親しくする様を見せつけてくるパターンもある(この場合は偽の恋人役が本当の好意だと勘違いして断罪イベントを仕掛けてくるパターンと、裏事情を察していてちょっと火遊びを楽しんだだけであっさり引くパターンに別れる)
    • 何もかもすっ飛ばしていきなり王子が「○○○○!貴様との婚約を破棄する!」と宣言するお約束のクライマックスから始まり、そこから話を広げるという作品も多数生まれている。ここまで来ると悪役令嬢物のテンプレートを使った大喜利に近い状態かもしれない。
  • 正ヒロインによる断罪イベントの最中に悪役令嬢に好意的なヒーロー(しかも攻略対象より格上)が救いの手を差し伸べ、悪役令嬢への愛を告白する、というパターン。『悪役令嬢は隣国の王太子に溺愛される』(隣国の方が大国)等。
    • その救いのヒーロー自身にも実は婚約者がいて、悪役令嬢への愛を告白した結果、捨てられた形になったその婚約者が主人公という入れ子構造パターンもある。『乙女ゲームは終了しました』等。
  • 原作の時点で正ヒロインが腹黒で逆ハーレム志望の悪女で、公爵令嬢の婚約者を奪うべく嫌がらせを捏造して断罪イベントを起こすが、何股もかけていることや苛めを捏造したことなどをあばかれて破滅。その破滅した正ヒロインに転生という、もはや悪役令嬢物と呼んで良いのか分からないものまで現れた。
  • 特に破滅回避の為の行動をとる事もなく、善人だった(ついでに人生経験豊富な)前世の価値観や志向のまま生活していたら結果的に周りから好かれるようになったと言うパターンもある。例としては『悪役令嬢転生おじさん』など。
  • 悪役令嬢物の正ヒロインに転生し、悪役令嬢にざまぁされないような生きるというものも出た。
  • 上記のテンプレートを性別を変えて(男性主人公として)描写する悪役令息ものともいうべき派生ジャンルも出てくるようになった。

なろう以外の悪役令嬢

先述した作品の影響もあり、なろうの定番ジャンルの一つ「ゲームの世界に異世界転生」と複合した「乙女ゲームの悪役令嬢に転生した」と言うパターンは非常に多い。が「なろう」他投稿小説サイトにおいてムーブメントを産み出すまで、実際の乙女ゲームには悪役令嬢なるものは存在しなかったと言われている。例えば元祖乙女ゲー『アンジェリーク』のロザリア・デ・カタルヘナはライバルではあっても悪役ではなく、続編では主人公の親友になったと明言されている。


一応、明確な悪役が存在する乙女ゲームとしては『耽美夢想マイネリーベ』が存在する。ただし本作は「美少年誘惑ゲーム」というジャンルであり、ライバルは主人公の攻略キャラを堂々と奪い、バッドエンドは悪役令嬢と攻略キャラのダンスシーンを見せつけられるという典型的な悪役である一方、主人公もそれを阻止するために悪役令嬢の家を没落させる、手紙に涙の痕を偽造する等といった最低な行動を行うため、どっちもどっちである(流石に漫画版の主人公エリカはそこまで外道ではないが)。

また、同作は発売当時それほどメジャーではなく、内容的にも乙女ゲームの中でも極稀なケースと言えるため、これが現在の悪役令嬢ものテンプレの原型になったとは流石に言い難いだろう。


冒頭のように童話・児童文学(少女小説)・少女漫画においては、おおよそ2000年頃までに見られたキャラクターであり、代表格といえば『小公女』ラビニア・ハーバートや『スーキャット』のマリア三毛村、『キャンディ・キャンディ』のイライザ・ラガンなどが上げられる。他には『明日のナージャ』のローズマリー(ただし偽りの令嬢)等。

一応、現在の漫画やゲームでもライバル的なキャラクターは登場するのだが、なんだかんだで善人であったり、あるいは実は本人に責任の及ばない外的要因(毒親虐待・歪んだ家庭環境や教育洗脳など)によってその立場に追い落とされている哀しき悪役だったりする場合が多く、また本当に悪人だったとしても改心して和解を果たす事がほとんどであり、「破滅する」ようなことは少なくなっている(あくまでも少女漫画の話であって、大友向けは別)。


また童話や児童文学におけるステレオタイプ類型でもある事から、男性(男児)向け作品であっても悪役令嬢に類するキャラクターが登場する事は少なくない。破滅しそうな時に(破滅した後に)主人公に助けられて惚れてしまうのが大方の役割だが。


ここで言う「悪役令嬢」とは、現在はなろう系および、その物語累系を引き継いでいる作品で見られる、独自の存在なのである。

小説家になろうの「悪役令嬢」概念と「乙女ゲーム」(togetterまとめ)


とはいえ、なろうにて派生作品が多く登場して、上述のようにテンプレートが整備されてジャンル化してきた事もあり、近年はこのテンプレート自体がなろうとは関係の無い場所で流用される事も増えてきた。『転生悪女の黒歴史』(『LaLa』、白泉社。無原作作品)や、前述した『悪役令嬢転生おじさん』などは、その一例と言える。


pixivでは、イラストよりも小説で使用されるタグであり、小説家になろうではpixiv以上に該当タグの付いている小説を発見する事が出来るだろう。


悪役令嬢が主人公の作品

作品の分類

悪役令嬢の設定

転生現代人が異世界転生した悪役令嬢
過去破滅(処刑等)で死亡し過去の自分へタイムリープした悪役令嬢
無し転生や特別な記憶を持たない普通の悪役令嬢

物語概要

回避破滅フラグの回避に奔走
事後破滅後の物語(逆転・スローライフ等)
達成何らかの目的を達成する(物語本筋から異なる目的など)

物語の舞台となる世界観

現代現在の地球と同じ近代化された世界(現代の日本など)
中世中世ヨーロッパなど近代化前の世界

その他

RPGレベルやステータス・装備などRPG的な要素がある。
攻略正ヒロイン側から見た時に(主人公が)攻略対象である

作品一覧(令嬢主人公)

作品名設定概要世界観その他
お嬢さまシリーズ無し達成現代
悪役令嬢後宮物語無し達成中世
結構ハードな乙女ゲーの世界転生回避中世RPG
ヤンデレ系乙女ゲーの世界に転生してしまったようです転生回避中世
謙虚、堅実をモットーに生きております!転生回避現代
乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…転生回避中世
転生してヤンデレ攻略対象キャラと主従関係になった結果転生回避中世
今度は絶対に邪魔しませんっ!過去回避中世
お前みたいなヒロインがいてたまるか!転生回避現代
アルバート家の令嬢は没落をご所望です転生回避中世
公爵令嬢の嗜み転生事後中世
レディローズは平民になりたい転生事後中世
起きたら20年後なんですけど!転生事後中世
悪役令嬢は、庶民に嫁ぎたい!!転生達成中世RPG
婚約破棄から始まる悪役令嬢の監獄スローライフ無し達成中世
悪役令嬢の追放後!教会改革ごはんで悠々シスター暮らし転生事後中世
悪役令嬢は隣国の王太子に溺愛される転生事後中世
悪役令嬢になりました。転生回避中世
悪役令嬢になんかなりません。私は『普通』の公爵令嬢です!転生回避中世
悪役令嬢の怠惰な溜め息転生回避達成中世
悪役令嬢レベル99~私は裏ボスですが魔王ではありません~転生回避中世RPG
転生令嬢は冒険者を志す転生回避中世
転生悪女の黒歴史転生事後回避中世
JKからやり直すシルバープラン過去回避現代
悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。過去回避中世
108回殺された悪役令嬢過去回避中世
悪役令嬢転生おじさん転生中世
現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変転生回避現代
ドロップ!!〜香りの令嬢物語〜転生回避中世
やり直し悪役令嬢は、幼い弟(天使)を溺愛します過去回避中世攻略
贅沢三昧したいのです!転生達成中世
今度は絶対に邪魔しませんっ!過去回避中世
歴史に残る悪女になるぞ 悪役令嬢になるほど王子の溺愛は加速するようです!転生回避達成中世

悪役令嬢が「当初より主人公サイドのキーキャラクター」である作品

作品の分類

※「悪役令嬢の設定(令嬢)」「物語概要(概要)」「世界観」「その他」は前節である「悪役令嬢が主人公の作品」に準じた上で、以下の追加項目を設ける


主人公の設定(主人公)

転生現代人が異世界転生した存在
過去破滅(処刑等)で死亡し過去の自分へタイムリープした状態
無し特殊な事情を持たない、本来ならば一般人(モブ)である存在

悪役令嬢との関係(関係)

「悪役令嬢」(令嬢)と「主人公」の関係性を記す項目。作品によって様々。

原典世界においてモブキャラである場合はMを記す。


物語概要にある目的達成の手段(手段)

教育悪役令嬢に対する生活指導や教育
友情悪役令嬢に対して対等な友誼を結ぶことでアドバイザーやブレーキ役になる
回避とにかく悪役令嬢との接点を持たないように努める
愛情友情よりもさらに踏み込み、悪役令嬢に対して愛は勝つを実行
MG領地運営や商売・社会改革など(目的に対する生活のマネジメント)を行う

作品一覧(令嬢の周囲の人物が主人公)

作品名主人公令嬢関係概要手段世界観その他
乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です転生なしM(接点無し→同級生)回避達成友情→愛情中世RPG
婚約者が悪役で困ってます転生無し義姉(令嬢の兄の婚約者)/M回避友情/教育中世
転生先が少女漫画の白豚令嬢だった転生無し友人(取り巻き)回避回避のち友情/MG中世
転生しまして、現在は侍女でございます。転生無し筆頭侍女(実質上の育ての母)/M回避教育中世
私の推しは悪役令嬢。転生無し正ヒロイン(実はファン)回避達成愛情中世
追放悪役令嬢の旦那様無し転生夫/M事後愛情/MG中世
僕は婚約破棄なんてしませんからね無し転生婚約者(実は夫)回避達成愛情/MG中世攻略
自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。無し転生婚約者回避達成愛情/MG中世
町人Aは悪役令嬢をどうしても救いたい転生無し町人A/M(接点無し→同級生)回避達成友情→愛情中世RPG
エリスの聖杯無し幽霊バディ(憑依)事後達成友情/MG中世

批判意見


商品化された物のほかに小説投稿サイトなどにも大量の悪役令嬢物が投稿された結果としてジャンルそのものに対する批判意見も見られるようになった。


意見としては


  • 主人公が好きだった乙女ゲームや少女漫画の世界なのに攻略対象が顔だけが取り柄のバカだったり、正ヒロインが腹黒だったりととても好きになれるような舞台に見えない。
  • 家柄などで正ヒロインより有利な上、個人の能力でも上回っていたりと実質的にはチートヒロイン無双物と化している。
  • 大したことをしていないのにやたら評価されたり、正ヒロインサイドはやることなすこと裏目に出たり周囲から塩対応されたり、肩書きが違うだけで結局は昔の姫巫女ラブ系の一種に過ぎない。

などの事例が見られる。ただ、こうした批判意見の常ではあるが「きちんとジャンルを理解して行っているとは思えない(全体傾向の一部分のみをかいつまんで行っている)批判」や「まず批判ありきで行っている批判」あるいは「ジャンルそのものが進化しているにも関わらず、ジャンルの初期に出された批判を何も考えずにコピペして持ち出してきた(=ジャンルの現状に合ってない)批判」も相当量に混ざっている事もある。

(そうした批判に対しては上記のジャンルテンプレートそのものの中に対応反論となる内容があるケースも少なくない)ので、注意を要する。


一方で当然の事ながら、前述の批判がすんなりと当てはまる作品が少なからず存在する事も否定出来ない(でないと、そんな定型の批判は出ない)。

このあたりはネット小説であるがゆえに、ジャンル初期で未発達の古い作品も、それらの欠点を反映した新しい作品も同一のフィールドで生き残りやすく、ジャンル発展の樹系図が追い読みにくい、と言うのも理由の一つ。

そこをきちんと整理して読み込まないと批判の論点を間違えやすい……とはいえ、不幸にも初期にそうした「質の悪い作品」に複数当たってしまった読者に、「他にも良い作品があるから読んで」と言うのも、難しい話ではある。


これは悪役令嬢物に限らずあるジャンルが人気になると、特にそのテーマで書きたい訳ではないがPVを稼ぐのに都合良いなどの理由で参入する書き手が激増して、安易にテンプレをなぞっただけの作品が大量に投稿されるためである。魔法学園物や異世界転生物もかつて通った道である。


ただし逆に、こうした批判を織り込んだ上で、その部分をあえて戯画(定型あるいはパターニングされた上でのパロディ)化する事で物語の効果(伏線ギャグミスリードなど)として活かしたり、あるいは批判に対応する答えを盛り込んで形にしている作品もあるので「ジャンルを批判したとしても個々の作品の批判には繋がりようもない」事には留意を要する(これ自体は、どんなジャンル・どんな作品に対しても、言える事であるが)。



実際の作品に反映された批判への対案についても以下に記す。

○ミスリード

如何にもテンプレ通りな内容と思わせておいて実態が全く異なるという様式の物語にする。具体例としては

本当に悪質なイジめを繰り返していたが、断罪劇に先んじて苛めの証人に買収や脅迫を行って普通の注意をしただけだと偽証させ、その後も暗殺や脅迫、薬物を用いてのハニートラップなど悪辣な手段で正ヒロインや元婚約者達を陥れて権力や名声を得ていった。


○作者なりの回答

好きだった原作のはずなのに正ヒロインや攻略対象がクズ揃いという問題についてはそもそも正ヒロインも転生者で好きなゲームの世界に転生できて舞い上がった現代人で、ゲームのヒロインとは別人というのがポピュラー。作品によっては転生者が他人の肉体を乗っ取る悪霊状態で、正ヒロインの本来の人格が残っていて、転生者が自分の肉体で勝手なことをしているのに心を痛めているという作品もでた。

攻略対象については正ヒロインの魔法や薬物によって魅了や洗脳をされている状態で正常な精神状態ではなくなっていた、という設定のものが出ている。


変則的なものとしては、そもそも好きな原作ではなかった、というパターンもある。友達や姉妹に無理やり押し付けられた、誤ってゲームのセーブデータを消してしまって、お詫びにフルコンプ状態のデータを用意するため、などの理由でイヤイヤプレイしていて、話や登場人物をそんなに好きではなかった、といったパターンである。



これはもう、純然たる嗜好の問題である。「正ヒロインをざまぁする悪役令嬢」が好きな読者と、そういったものを不快に思う読者の溝は、決して埋まる事はない。


また、悪役令嬢物固有の問題として、「主人公は善性に満ちあふれていて自分を裏切った婚約者や正ヒロインを許していたが、周囲が主人公に忖度して対立相手を破滅させていく。主人公は何も知らないまま」と言う、主人公が過剰に保護されている作品も少なからず散見され、そういった点も(嫌いな人からは)批判を受けやすい。


また、もちろんそういったざまぁ要素を極力省いている作品も存在する。ただ、「ざまぁ好きに向けた作品」が、「ざまぁ嫌いにも楽しめるように改善されること」はまずあり得ないので、他の問題と比較しても偏見とも言い難い所があるのもまた事実である。


さらに、ざまぁ特化とでもいうべき悪役令嬢物も出ており、これらは肝心の悪役令嬢の出番がほとんど無く、裏切った元婚約者と彼を奪った正ヒロインが破滅していく様をひたすら描くという内容でざまぁ嫌いの読者からはより一層嫌われるものとなっている。


これに関しては「自分の嫌いな作品でも、それを好きな人がいる」「自分の好きな作品でも、それを嫌いな人がいる」とお互いを尊重し、距離を取るしか方法はないだろう。


乙女ゲーとの関わり


悪役令嬢物の多くは乙女ゲーの世界に転生している。

では、実際の乙女ゲーの世界をどの程度再現しているかというと、ほとんど再現していない。


小説の表紙・挿絵やコミカライズでは、かつて乙女ゲーム関連の仕事に携わったイラストレーターや漫画家が起用される例もあるせいか、実在する商業乙女ゲームでも悪役令嬢が付き物だと誤解されがち。

だが、前述の通り、そもそも悪役令嬢に該当するキャラが登場する乙女ゲー自体が非常に稀。テンプレイベントである『お前との婚約を破棄する!』宣言に始まる断罪劇も出てこない。

少し考えれば分かるし、当の悪役令嬢物でも言及されるように、政略結婚だろうと婚約者がいながら正ヒロインに目移りしたり、正ヒロインが婚約者のいる男性にすり寄ったりするのはイメージが悪い。不倫や略奪愛をテーマにしたゲームでもない限り攻略対象に妻だの婚約者だのを用意してもデメリットばかりでメリットが無いのである。

その上、登場したとしても悪役令嬢側の方がまともで正ヒロインや攻略対象の方が卑劣で愚か、などというゲームはまず存在しない。


また、悪役令嬢物には内政物やチート無双物の要素を含む物も有り、その場合は転生先の乙女ゲーが戦闘パートや領地経営パートが充実していて、転生者はそのゲームをやり込んでいた、という設定のものが多い。だが、そういった乙女ゲーもほぼ存在しない。


そもそも乙女ゲーの市場は非常に小さく、1万本売れたらヒット、5万本売れたら数年に1度の大ヒットといわれている。

実際にNintendo Switchでは100作以上の乙女ゲーが出ているが5万本以上売れたのは一作品(ときメモGS4)のみでほとんどの乙女ゲーが売上1万本未満である。

よって、凝った戦闘要素や経営要素を入れていたら高確率で赤字になってしまうため、戦闘要素や経営要素があったとしてもミニゲームレベルの簡易的なものでそれ目当てにやり込むような物ではない。

本格的な戦闘や領地経営を楽しめるゲームを作りたいなら乙女ゲーでは無い一般のRPGやSLGとして出した方がよほど売上が見込めるのである。

実際、牧場物語シリーズやルーンファクトリーシリーズなど、恋愛要素のある一般のRPGやSLGでなら10万本、20万本売れたゲームはある。特にファイアーエムブレムシリーズなどは1作毎に国内50万本、世界200万本売れている。

なお、これらのシリーズは

・主人公が性別選択式で男性主人公を選んだ場合は交際相手が女性キャラになる(※最近のシリーズではポリコレの影響か同性とも交際可能だったりするが)

・恋愛は数ある要素の1つにすぎず告白などの重要なイベントでも会話テキストだけで処理され、専用のイベントスチルが存在しない

といった状態で一般的な意味での乙女ゲーとは言えない。


ジャンルの人気増加にともない実際に乙女ゲームで悪役令嬢が用いられることもあるようになったが、そもそもこのジャンルは「ファン(執筆者)がイメージ先行で都合良く作ったもの」である。

悪役令嬢物のほとんどは実際の乙女ゲーとはかけはなれた内容で、作者・読者ともに乙女ゲーを知らないままに書いたり読んだりしているケースが非常に多いということは留意しておくべきだろう。

特に、悪役令嬢物に出てくる頭が悪くて下衆な行いばかりする正ヒロイン(主人公)や攻略対象を見て、実際の乙女ゲーもそういうものだと思い込むのは厳に慎むべきである。


悪役令嬢ものにのめり込みすぎたことで、半可通な知識で現実の乙女ゲームジャンル全体を批判する、小馬鹿にするなどといった残念なファンも見受けられるが、「自分のジャンルを偏見で批判してほしくない」と言いながら、「他のジャンルは偏見で批判する」などと言う行いは断じて許されるものではない


関連タグ

ダークヒロイン アンチヒロイン 必要悪

やられ役 ラスボス


婚約破棄 追放もの 復讐もの 異世界転生


チャゴス:性別は異なるが、横暴を傘に着せた典型的な嫌われ役の代表例としてわかりやすい


月光条例:キャラクターが物語の枠から外れたところで、一個人としてその境遇に思い悩み、行動すると言うコンセプトをもった作品


外部リンク

ニコニコ大百科(一部参考にいたしました)

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