概要
プラントがかつて『血のバレンタイン』事件の報復として地球へ撃ち込んだニュートロンジャマー(Nジャマー)によって地球連合・プラントと共に核分裂を使用したあらゆる装置が使用できなくなっている。この影響でモビルスーツ(MS)やモビルアーマー(MA)の動力源はバッテリーに頼らざるを得なくなった。
そんな中、元々はNジャマーが完成した時点で開発され、将来的な宇宙開発のための装置だったニュートロンジャマーキャンセラーが兵器として日の目を見ることとなった。
ちなみに、開発者はユーリ・アマルフィであり、Nジャマーを開発したオーソン・ホワイトではない。なお両者ともプラント最高評議会議員である。
名称が長いためか、作中ではほとんどの場合「Nジャマーキャンセラー」と略されている。ファンの間では「NJC」と略されることも多く、本記事でもこの略称を使用する。
機能
一定範囲内の自由中性子の運動を活発化させる。これによりNジャマーによる核分裂反応の抑制を相殺し、核分裂による核エンジンや原子力発電が再び使用可能となるというシンプルな装置であるが、「無力化するためのものを無力化する」という中々面白い構図となっている。C.E.世界特有の事象として、世界中がNジャマーの影響下である関係上、NJCによって起動している核エンジンもNJCを切ればその瞬間Nジャマーの影響下に入るため、核エンジンの即時停止が可能となる。
また、一定範囲内の自由中性子の運動を活発化させるという機能を応用した対核兵器装置である「ニュートロンスタンピーダー」も存在する(後述)。
副次効果として、Nジャマーによって引き起こされる電波障害も無効化できる。しかし、電波障害無効化による通信網の再構築を行うには広範囲にNJCを展開しなければならず、敵性勢力の核兵器利用を許してしまうリスクがあるため、基本的にこの副次効果は使用せず、主効果を目的として必要な範囲まで影響を抑えることになる。
製造にはベースマテリアルとなる特殊な物質(レアメタル)が必要であり、プラントはそれが採取可能な供給源(鉱脈)を持っていないためファーストステージシリーズ6機・ザク量産試作型47機・ジェネシスのNJCに使用する分しか確保できていなかった。一方、供給源を持っている連合(大西洋連邦)は膨大な数のMk5核弾頭ミサイルにNJCを搭載できるほど確保している。
C.E.73には火星で新たに大鉱脈が発見されたことがΔ ASTRAYで語られている。
撃墜されたMk5核弾頭ミサイルやプロヴィデンスが核爆発しているのを見るに、装置に何らかの異常が発生すると暴走して自由中性子の運動を異常に活発化させてしまう危険性を持っていると考えられる。
作中において
核エネルギーの復活
C.E.71年2月中旬から下旬にかけてNJCを搭載した核エンジンMSの基礎データ収集を目的としてYMF-X000A ドレッドノートがクラーク・アジモフ・ハインラインの3局の共同にて試作され、核エンジンの運用テストが行われた。このドレッドノートはテストでのデータ収集終了後に個々のパーツに分解され、核エンジンやNJCなどの機密パーツ以外は廃棄処分され兵器利用されない想定だった。この対応はプラントが血のバレンタインを経験して強い反核感情を抱いていることに由来している(アスラン・ザラもNJCの存在を聞かされた際には「何故そんなものを!プラントは全ての核を放棄すると…!」と反感を示している)。
それと並行する形でパトリック主導のもとでヴェルヌ局等の非MS分野を扱う局も巻き込んだ統合設計局が組織され、鹵獲した初期GAT-Xシリーズのうち4機(GAT-X303 イージス・GAT-X102 デュエル・GAT-X103 バスター・GAT-X207 ブリッツ)からビーム兵器やフェイズシフト装甲などのデータを得た事で、それらの技術を用いた次世代MS群用の火器・武装と、それを搭載する次世代MS群の開発が行われていた。設計が先行していたZGMF-X09A ジャスティスとZGMF-X10A フリーダムに採用予定の武装を試験したYFX-600R 火器運用試験型ゲイツ改はバッテリー駆動であり、GAT-Xシリーズ以上の威力を持つ武装に対し、いずれも短時間の使用でバッテリー切れを起こしてしまった。これにより、ここで試験された武装は廃案か性能を落としての採用が検討された。その直後、ドレッドノートの試験結果を受けて過激な反ナチュラル思想を持つプラント国防委員長パトリック・ザラが対地球連合の切り札となる開発中の次世代MSをNJC搭載型核エンジンによる圧倒的な性能を持たせるべく開発の際に搭載を指示したため、次世代MS群には試作機も量産機も関係なく核エンジンが搭載されることが決定する。それに伴って、高火力ながら燃費が劣悪だった武装群はそのままの性能で搭載されることとなった。なお、同じくバッテリー駆動である主力量産機のゲイツでは当初の検討通りにルプス・ビームライフルの性能を落としたものが採用された。
そうして核エンジンによる膨大なエネルギー供給の実現と強力な武装の問題を概ね解決したZGMF-Xシリーズが誕生するに至った。このZGMF-Xシリーズの核エンジンには、ドレッドノートの運用テストにおいてNJCが一定宙域に機能してしまうという欠点が発覚したことでNJCの効果範囲を搭載しているMSの動力源付近のみに限定させる改良が行われている。
パトリックが最高評議会議長に就任したのと同じ4月1日にジャスティスとフリーダムが一足先にロールアウトされるも、前述した核兵器への忌避感から公式発表も実戦投入もされず最高機密として格納庫で動態保存されていたが、NJCの開発者であるユーリ・アマルフィが息子の戦死(4月15日)により過激派に鞍替えした際にNJCの兵器利用を正式に許可したため、ジャスティス・フリーダムを含めたZGMF-Xシリーズは解体や封印されることなく実戦投入されることとなる。
ザフトは当初これを独占することでMS戦において圧倒的優位を築く計画だったが、他のZGMF-Xシリーズがロールアウトし始めた5月5日にフリーダムが何者かによって奪取され、その計画は早くも頓挫する。
その後ジャスティスはパイロットの離反によってザフトを離れ、ZGMF-X11A リジェネレイトとZGMF-X12A テスタメントはそれぞれの形で戦後に連合に鹵獲される等、パトリックの思惑は悉く崩れ去っている。
フリーダムを奪取したキラ・ヤマトはこれが世界中に広がった場合の危険性を理解しており、アークエンジェルの船員にはNJCの存在を伝えた上でフリーダムのデータを絶対に取らないことを約束させている(おそらく、オーブ国防軍やモルゲンレーテ社にも同じようなことを約束させている)。キラはこの他、アスランにNJCの取り扱いを問われた際「あれで何か悪さをする人がいれば僕が撃つ」と、その力を絶対に広めない覚悟を示していた。
しかしその努力も虚しく、ラウ・ル・クルーゼの思惑によってNJCのデータはジャスティスとフリーダムの設計データという形でフレイ・アルスターの返還を通してブルーコスモス盟主ムルタ・アズラエルの手に渡ってしまい、連合はプラントに向けてMk5核弾頭ミサイルを発射する事態となってしまう(連合内ではNJCを用いて原子力発電を復活させエネルギー問題を解決させる案も出ていたが、反コーディネイター思想の強いアズラエルによって強行された)。幸い三隻同盟の尽力によってプラントへ命中することはなく、ザフトに唯一残ったファーストステージのZGMF-X13A プロヴィデンスもフリーダムに撃破され、NJCを使用した大量破壊兵器ジェネシスはジャスティスの自爆によって破壊される。
ユニウス条約の締結
連合・ザフト間の停戦条約「ユニウス条約」でNJCの使用(厳密には兵器へのNJC搭載)は禁止され、世界から核兵器は再び消滅した。
…かに思えたが、この条約と関係のないオーブ連合首長国では、国営軍需企業であるモルゲンレーテ(の子会社)が第1次連合・プラント大戦のどさくさに大破したフリーダムを回収し、同機の持ち主から依頼された修復の際にリバースエンジニアリングしており、そこから得たデータを使用してバッテリー仕様のMVF-X08 エクリプスとNJC搭載型核エンジンを搭載したMVF-X08R2 エクリプス2号機を開発している。加えて、ドレッドノートイータ、リジェネレイト、テスタメントもザフトの手を離れて秘密裏に運用されていたりと、NJCの存在は消えていなかった。
条約の締結により、ザフトは開発していたザク量産試作型や次世代のZGMF-Xシリーズへの核エンジン採用を諦めエネルギー変換効率の徹底改修したセカンドステージシリーズやニューミレニアムシリーズの開発に移行する。ファーストステージシリーズの武装と同等か、それ以上の出力のものをバッテリー機で実現するなど、目覚ましい技術革新が起きた。
時は流れC.E.73(『SEED DESTINY』)、10月に起こったアーモリーワンでのセカンドステージシリーズ強奪事件の1か月後、地球連合軍はMk5核弾頭ミサイルをプラントへ発射する(フォックストロット・ノベンバー)。ナスカ級のニュートロンスタンピーダーによって全基強制起爆したことでプラントへの被害は抑えられたが、これが事実上の開戦の狼煙となり停戦条約であるユニウス条約は形骸化する。
しかし、連合側はニュートロンスタンピーダーの存在から不用意に核兵器を使用できなくなり、ザフト側はニュートロンスタンピーダーでNJC用のベースマテリアルを殆ど使い切ってしまったために核兵器を新規に作れないという状態に陥ったため、第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦のように核兵器の応酬という惨状にはならなかった。
一方、連合(とオーブ)・ザフト間の戦闘に武力介入するアークエンジェルは修復されたフリーダムの運用を再開、核兵器は再び表舞台に姿を現した。なお、アークエンジェルは既に連合艦ではない上、フリーダムも個人の所有物(持ち主は明言されていないが、キラは『ラクスから託された物』と一貫している)であるため条約違反にはあたらない。後にフリーダムはインパルスに撃墜されるが、キラの技量も相まってフリーダムの武力介入により両軍が被った被害は凄まじいものであり、皮肉にも2年前の旧式兵器であるフリーダムが戦場において最強とされるなど、C.E.において核という存在が凄まじい影響力を持つものであることが再び証明された。
ザフトも条約を無視して核エンジンとデュートリオンビーム送電システムのハイブリッドエンジンであるハイパーデュートリオンエンジンを開発する。セカンドステージで培ったエネルギー効率の技術も盛り込んだ最強のMS群サードステージシリーズの開発に漕ぎつけ、C.E.73年12月下旬(開戦から1か月半後)には実戦投入した。
なお、世間には秘匿する必要があるため、実戦投入されたZGMF-X42S デスティニーとZGMF-X666S レジェンドでは型式番号をセカンドステージのものに偽装している(本来ならば、サードステージを意味するTもしくはAtomicを意味するAとなる)。加えて、バッテリー機と同じく発進時に給電ケーブルを接続するという徹底ぶりまで見せた(核動力機で給電ケーブルを接続しているのはこの2機のみ)。
ハイパーデュートリオンエンジンの技術はターミナルへ流れており、ファクトリーで開発中のZGMF-X19A インフィニットジャスティス・ZGMF-X20A ストライクフリーダムにも搭載される。オーブ国防軍所属となった2機の活躍によりサードステージの2機は撃破され、ネオジェネシスとレクイエムも陥落し、大戦は終結する。再びNJCの存在は影を潜めるのだった。
『SEED FREEDOM』ではC.E.75の世界が描かれる。NJCがいずれかの陣営に使用されるのか、注目される。
なお、前述のファクトリー製の2機は現存しており、その運用データからSTTS-808 イモータルジャスティスとSTTS-909 ライジングフリーダムが開発されている。
搭載機
ザフト製
- ZGMF-X42S デスティニー
- ZGMF-X42S-REVOLUTION ハイネ専用デスティニー
- ZGMF-X666S レジェンド
実験機・試作機
その他
ファクトリー製
地球連合製
MS
MA
オーブ連合首長国製
マーズコロニー製
ライブラリアン製
ニュートロンスタンピーダー
NJCへのカウンターとなる装置。開発者は不明。
自由中性子の運動を暴走させ強制的に核分裂反応を起こす電磁波を放射する。そのため、効半径内に存在する核兵器をその場で起爆させることができる。
最強の兵器である核兵器を無効化できるNジャマーが存在し、そのNジャマーを無効化するNJCが存在して核兵器に組み込まれ、そのNJC込み核兵器を事実上無効化するNスタンピーダーが存在するという、C.E世界ならではの盛大な鼬ごっこが行われている。しかも、これらの装置は揃いも揃ってプラントで開発されている。
詳細はナスカ級高速戦闘艦を参照。
余談
機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZERでの発言
OVA『機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER』及び同作の漫画版では、D.S.S.Dのセレーネ・マクグリフがファントムペインとの戦闘でのスターゲイザーに関して「NJCが効いているので、パワーセル(バッテリー)しか使えない」と発言しているが、これはNJCが効いていればパワーセル以外も使えるはずであり、本来の発言は「Nジャマーが効いているので」が正しいと思われる。
サードステージシリーズとネオジェネシスの開発時期
ユニウス条約の形骸化を引き起こした「フォックストロット・ノベンバー」が起こったのがC.E,73年の11月、「ラクス・クライン暗殺未遂事件」が同年の12月、「メサイア攻防戦」が翌年の1月頭であることを考えると、サードステージシリーズとネオジェネシスは「フォックストロット・ノベンバー」前から開発されていた可能性が高い。
関連タグ
機動戦士ガンダムSEED 機動戦士ガンダムSEED DESTINY
機動戦士ガンダムSEED ASTRAY 機動戦士ガンダムSEED MSV 機動戦士ガンダムSEED ECLIPSE
ファーストステージシリーズ サードステージシリーズ ナスカ級
サイクロプス、ジェネシス、ヴォワチュールリュミエール:C.E.世界において兵器転用された技術繋がり。
ドン・キラー・キラー:全く関係ない作品に登場した「無力化するためのものを無力化するためのもの」繋がり。これの登場回はNJCもトレンド入りした。