DATA
概要
『ウルトラマンブレーザー』第23話「ヴィジター99」から登場する怪獣(前回の第22話でも冒頭で存在を仄めかすような描写があった)。
バザンガやゲバルガと同様の軌道を通って地球へと接近していたことから、それらと同じくV99絡みの3体目の宇宙怪獣(所謂“サード・ウェイブ”)と思われ、同時に『ブレーザー』のラスボスを務める怪獣でもある。
容姿
第1形態
長い首に小さめの頭部を持つ、オーソドックスな二足歩行体型の怪獣だが、肩や背中、両腕から触手のような突起が生えている。
中でも一際目を引くのが頭部であり、顔の部分が赤い半透明な被膜で覆われ、その内側にある眼球と思われる複数の発光体が怪しく不気味に点灯している、エイリアン(=ゼノモーフ)のような顔付きである。
第2形態
ウルトラマンブレーザーのエネルギーを吸収したことで変貌した姿。
頭部に2対の角と突起が生え、肩の棘がシカの角のように巨大で禍々しい形に変化。
全身の突起の生え方も変わっており、両腕の突起も前向きに生えている。
能力・生態
「宇宙爆弾怪獣」の別名の通り、尻尾を肥大化させて切り離し、有機爆弾として武器にできる。
この爆弾の破壊力は凄まじく、数発起爆すれば月の軌道をずらしてしまう程。しかも、起爆タイミングはヴァラロンの意志で自由自在であり、格闘戦中に至近距離で爆破されれば回避するのはまず不可能。爆弾を作り出すのに必要な時間も非常に短く、戦闘中の連続使用も可能としている。
また、爆弾を付けた尻尾は打撃武器にもなり、さながら骨球を振り回すアンキロサウルスのように強力な一撃となる。
この爆弾は第2形態になるとさらに凄まじい破壊力になり、地上で複数一気に爆発させれば地表に大穴が開き、地球の軌道すら変わりかねない程。
一方で、尻尾を失うと爆弾の生成ができなくなるため、攻略には尻尾を破壊する攻撃が有効打となる。
また、爆弾はあくまで有機物であるため、他の怪獣に捕食させるなどして無力化すれば、連鎖爆発を食い止めることができる。
胸部の突起はノコギリのように高速回転し、敵を切り刻む。
頭部からは、自身のエネルギーを赤い雷状に放出が可能。第2形態になると、口から強力なビームも放てるようになる。
噛み付いて相手からエネルギーを吸収し、自身の強化に利用する能力も持つ。
攻撃力だけでなく防御力も非常に高く、自身の爆弾が至近距離で起爆しても、全くダメージを受けた様子がなかった。
頭部を貫かれても一部が破損したのみで動きがまったく鈍らないなど、生命力も異常なまでに高い。
このように全てのスペック自体は満遍なく高く、ラスボスとして十分に相応しい強さと厄介さを併せ持った強豪怪獣と総評できる。
また、ヴァラロン自身の能力かは不明だが、地球接近中は移動手段として用いていた小惑星諸共、周辺の空間を歪ませて周囲の宇宙空間に擬態して地球側の監視の目を欺いており、恐らく当初は地球に奇襲攻撃を仕掛ける算段だったと思われる。
さらに、当初予定していた奇襲作戦が想定外の事態で失敗しても即座に別の作戦に切り替えており、知能も非常に高い様子が覗える。
なお、単独での飛行能力はないようで、宇宙空間では隕石やデブリ等の浮遊物にしがみつき、それに何らかの形で推進力を加えることで移動していた。
劇中での行動
第23話「ヴィジター99」
小惑星に張り付き、周囲の時空を歪ませて姿を隠しながら宇宙空間を移動し、地球を目指していた。
地球防衛隊の監視衛星もその擬態を見破れなかったが、かつてバザンガ、ゲバルガが通ってきた軌道を個人的に監視していたアマチュア天文家のミッチー(オイカワ・ミチヒロ)が、不自然な空間の歪みが発生している点や、その歪みが日を追う毎に地球へと接近している事態に気付く。
その後、ミッチーはSKaRDのエミ隊員と接触した際にその旨を報告、SKaRDも防衛隊上層部にこの事実を進言するが、防衛隊側はそれまで散々サード・ウェイブへの警戒を行っていたにもかかわらず、本気で取り合おうとしなかった。
しかしその後、接近を本能的に察知し、危機感を覚えた2体のタガヌラーの放った熱光線によってカモフラージュを解かれ、地球側に自身の存在が完全に露呈してしまった。
ヴァラロン自身はタガヌラーからの攻撃を跳ね返して迎撃するも、攻撃の余波で小惑星から引き剥がされ、月へと墜落。
月面で人知れず不気味な咆哮を上げるのだった…。
第24話「第3波接近襲来」
月面に叩き付けられるも未だ健在であり、それどころか月で有機爆弾を次々と敷設し、爆発させて月の軌道を変えて地球へ落とそうとする。
自身の迎撃に現れたアースガロンMod.4に赤い雷で先制攻撃を仕掛けた後、仕掛けられた有機爆弾が誘爆する危険性から迂闊に砲撃できないのをいい事に接近戦に持ち込ませ、隙を突いて有機爆弾をゼロ距離で爆発させてアースガロンを無力化、この衝撃でパイロットもゲント隊長を除いて全員意識を失ってしまう。
続いて現れたブレーザーも腹部のノコギリや爆弾を駆使し迎撃、ゲントとブレーザーがこれまでの戦いで体を酷使して満身創痍(変身直後からカラータイマーが点滅した程)だったのも合わさり、まるで意に介さずに叩き伏せた。
そして、地中に潜り月面の爆弾を一斉爆破。どうにかブレーザーはアースガロンを連れて一時避難してSKaRD一同は窮地を脱するも、月が軌道を外れて地球に墜落しそうになってしまう。
咄嗟にブレーザーは月に組み付き押し戻そうとするも、地中から現れたヴァラロンはブレーザーに容赦なく攻撃を加え、噛み付いてエネルギーを吸収、第2形態へと変化してしまう。
ブレーザーはゲントだけでも助けようと一体化を解除、最後の力を振り絞って月の軌道を戻したものの、激しい攻撃で力を使い果たして意識を失い、デブリと共に宇宙の果てへと流されてしまう。
一方、彼から力を奪いさらなる進化を遂げたヴァラロンは、爆風で飛ばされた月のデブリの一片に掴まり、今まさに地球へと降下しようとしていた…。
最終話「地球を抱くものたち」
防衛軍の迎撃を掻い潜って地球に侵入、日本・東京へと降り立つ。
手始めに東京ビッグサイトを破壊し、逃げ惑う人々をビームで焼き払いながら品川方面へと突き進む。
一方、ブレーザーを救出し地球に戻ったSKaRD一行は、ゲント隊長に恩義がある補給部隊が応援に駆け付け、アースガロン復旧が早期に終了の目処が立つ。
そんな時、SKaRDだけで戦おうと決意するゲントの前でブレーザーは意識を取り戻し…
ブレーザー「お れ… 俺も 行く…」
彼はこんな体になってでも、まだゲントと共に戦おうとするのだった。
その想いを受け取り涙を流すゲントは、「医官に絶対安静と言われた」という名目で一時的にテルアキ副隊長に指揮権を譲渡、再び一体化しファードランアーマーを纏い、再びヴァラロンに立ち向かっていく。
そして復旧が終わったアースガロンも参戦するも、圧倒的な戦闘力を前に両者は苦戦。さらにV99の船団までも出現し、一触即発の状態に。
しかしそこへ、ハルノ元参謀長に救出されたエミが司令室一同とドバシ元司令へV99の真実を告げたことで、アースガロンは全武装を解除、ヴァラロンに一方的に攻撃されながらもV99との対話を試みる。それに呼応するように、ブレーザーや各地の防衛軍も武装を解除する。
さらにエミの提案を受けたアースガロンがただ一言「未来」と伝えると、V99の艦隊はこちらの意思を汲み取ったように同じく「未来」と返し、ワームホールを通って艦隊は撤退した。
これにより地球とV99の星間戦争の危機は去り、ブレーザーとアースガロン、防衛軍は尚も暴れ続けるヴァラロンへ決死の反撃を行う。
ブレーザーのレインボー光輪により尻尾を切断され、スパイラルバレードにより頭部を損傷するヴァラロンだが、直後に東京各所の爆弾が爆発寸前となり、首都壊滅の危機に陥ってしまう。…が、そこに防衛本能で現れたデマーガ親子やズグガン、デルタンダル達地球怪獣が有機爆弾を捕食・解体、連鎖爆発を阻止される。
それでもなお猛攻を続けるヴァラロンだったが、ゲント=ブレーザーが妻の結婚指輪と息子のお守りを通して彼の家族からの想いを受け取って生まれた新必殺技「ブレーザー光線」を発射。
ヴァラロンは逃げる術もなく打ち貫かれ爆弾四散、地球の危機は去った。
商品化
『ウルトラ怪獣アドバンス』にてソフビが発売。
大迫力の全高約170mmサイズで造形。
頭部や胴体パーツを付け替えて、2パターンの形態変化が再現可能(ただし、ソフビは第2形態を素体にしているため、実際の第1形態とはデザインがやや異なる)。
また、尻尾の爆弾の取り外しができ、劇中さながらの攻撃アクションを楽しめる。
余談
- 「ヴァラロン」と微妙に発音し難い名前のせいか、「ヴァロラン」と某FPSゲームの略語のように名前を間違えられるケースが多い。
- 第1形態は、爆弾として利用可能な肥大化した尻尾などを除けば、ここ最近のウルトラシリーズのラスボスと比べると比較的シンプルで、オーソドックスなゴジラ型怪獣の外見をしている。しかし上記の玩具の仕様から、姿を変えていくのはファンの間では早い段階でほぼ判明しており、そして実際に第24話の後半で形態変化をしてみせた。
- 頭部が半透明な被膜で覆われている、眼球が顔面に埋没しているなどの要素から、外見モチーフは恐らく前者はデメニギス、後者はミスジオクメウオなどの深海魚類と推測できる。
- 仮にモチーフ元が上記の通りであれば、バザンガやゲバルガと同じ水棲生物モチーフで統一されている。
- 第23話で防衛隊がミッチーもといSKaRDの証言・進言を一蹴した経緯については、出所がアマチュア天文家の証言故に「信憑性に乏しい」との判断に加え、仮にこの証言が事実だとしても「 防衛隊が一民間人に指摘されるまで、侵略者が地球へ接近している事態に気付かなかったと認める=組織の面目が完全に丸潰れになってしまうため、それを避けたかったのではないか?」とする見方もある。
- 第24話のスチール写真では、アースガロンMod.4と共に月面でヴァラロンと戦闘しているものがあるが、本編ではブレーザーが戦闘していた時にはアースガロンは機能停止して戦線から里出した状態であったため、あくまで宣伝用に撮られたスチール写真である(ウルトラシリーズではこうした本編にはないシーンを撮影したスチール写真が宣伝に使われることは珍しくない)。
- TVシリーズのラスボス怪獣が初登場回のラストで顔見せ程度の出番の形になるのは、メガロゾーア、マザースフィアザウルスに次いで3度目である。また、田口清隆メイン監督作品のラスボス怪獣は、これまで田口氏自らの監督回で初登場していたが、ヴァラロンの初登場回は田口氏以外の監督が担当した。
- スーツアクターを務めた桑原氏は、前作でのマザースフィアザウルスをはじめ、グリーザや[ベリアル>ウルトラマンベリアル]]アトロシアスなど多数のラスボスを担当している。
- 最終的に地球とV99とで和解が成立したものの、V99の船団はヴァラロンを放置して退去していったため、一部の視聴者から「和解したのなら責任を持ってヴァラロンを回収しろよ」とツッコまれたとか。
- あるいは「既に回収が不可能なまでに暴走しているため、放置せざるを得なくなったのでは?」との意見も。実際、このようなラスボス怪獣は後述するように前例がある。
- デザインを担当した楠健吾氏によると、これまで最も難産なデザインだったとの弁。また、胸の棘は元々「まだ見ぬ第3形態」への布石のつもりで入れたものらしい。
関連タグ
ウルトラシリーズ
- 特空機4号ウルトロイドゼロ:田口監督がメインを担当した作品で、地球怪獣達が脅威と判断し、排除に動いた存在繋がり。こちらも最終的にラスボスへと変貌した。
- グリーザ:同じく複数の形態を持つ、田口監督がメインを担当した作品のラスボス怪獣。こちらもウルトラマンの力を吸収したが、その結果純粋なパワーアップというよりは別ベクトルへの進化を遂げた。なお、『ブレーザー』最終話に登場したV99の宇宙船には、第3形態のパーツが使用されている。
- マガタノオロチ:同じく、田口監督がメインを担当した作品のラスボス怪獣。ウルトラマンの力を口から吸収した点も同じ。
- ゴーストロン:別名「爆弾怪獣」繋がりだが、こちらは単に事故で爆弾が肉体に埋まってしまっただけ。
- デアボリック:田口監督が担当した劇場版作品のボス怪獣。『タイガ』版は怪獣が爆弾から出現する、通称「怪獣爆弾」。
- パンドン:主役ウルトラ戦士が満身創痍の中、戦わざるを得なくなったラスボス怪獣。
- ヌアザ星人イシリス:こちらも月を地球にぶつけようとした敵繋がり。ただし、こちらは重力発生装置で月を操った。
- カオスダークネス:月面で消耗し切っていたウルトラマンを一度はエネルギー切れ及び変身者との分離に追い込み、その後地球に降り立って最終決戦を展開するという流れが同じラスボス怪獣。対象が自身という違いこそあれ、最終的に対話を果たしたという点も同じである。
- ギガバーサーク:送り主と地球人類の間で和解が成立しながらも、既に回収も停止も不可能で撃破するしかなかったラスボス怪獣。こちらも登場作品のウルトラマンを一度は倒している強豪である。
他作品
令和ウルトラシリーズのラスボス
マザースフィアザウルス→ヴァラロン→???